第2節 担保

39 担保の種類

猶予をする場合に、納税者が提供できる担保の種類は、次に掲げるものである。

(1) 国債及び地方債(通則法第50条第1号)

(2) 社債(特別の法律により設立された法人が発行する債券を含む。)その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの(通則法第50条第2号)

「税務署長が確実と認めるもの」とは、次に掲げる有価証券などその発行する法人の財務内容及び事業の状況から元本の償還、利息の支払等が確実であると認められるもの又は見積価額以上の金額で確実に換価することができると認められるものとする。

なお、有価証券には、通則令第16条第1項《担保の提供手続》に規定する振替株式等など、その権利を表示する券面が発行されていないものが含まれる(通基通第50条関係1)。

  • イ その元本の償還及び利息の支払について政府が保証する債券
  • ロ 金融機関が特別の法律により発行する債券
  • ハ 金融商品取引所に上場されている有価証券

(3) 土地(通則法第50条第3号)

(4) 建物等で保険に付したもの(通則法第50条第4号)

  • イ 「建物等」とは、次に掲げるものをいう。
    • (イ) 建物
    • (ロ) 立木
    • (ハ) 登記される船舶
    • (ニ) 登録を受けた飛行機
    • (ホ) 登録を受けた回転翼航空機
    • (ヘ) 登録を受けた自動車
    • (ト) 登記を受けた建設機械
  • ロ 「保険」には、所得税法第77条第2項第2号《地震保険料控除》に規定する共済に係る契約(共済金の支払を受ける権利の譲渡又は差押えが禁止されているものを除く。)を含み、保険料又は共済掛金が月掛のものを含まない(通基通第50条関係4)。
    なお、担保財産に付すべき保険の金額は、その担保財産により担保される国税の額及びこれに先立つ抵当権等により担保される債権その他の債権の合計額を超えるものでなければならない(通基通第50条関係5)。

    (注)

    1. 1 共済金の支払を受ける権利の譲渡又は差押えが禁止されているものには、農業災害補償法の規定による共済に係る契約がある(同法第89条)。
    2. 2 月掛火災保険については、普通火災保険に契約変更ができることに留意する。

(5) 鉄道財団等の財団(通則法第50条第5号)

「鉄道財団等の財団」とは、次に掲げるものをいう。

なお、これらの財団であっても、その財団としての存続期間(鉄道抵当法第2条の2第2項、第13条、工場抵当法第8条第3項、第10条等参照)の終期が、国税の担保としての抵当権設定の登記又は登録(以下「登記等」という。)が通常されると見込まれる日前に到来するものは、その性格上、国税の担保としては不適格であるものとする(通基通第50条関係3)。

  • イ 鉄道財団
  • ロ 工場財団
  • ハ 鉱業財団
  • ニ 軌道財団
  • ホ 運河財団
  • ヘ 漁業財団
  • ト 港湾運送事業財団
  • チ 道路交通事業財団
  • リ 観光施設財団

(6) 税務署長が確実と認める保証人の保証(通則法第50条第6号)

  • イ 「税務署長が確実と認める保証人」とは、金融機関その他の保証義務を果たすための資力が十分であると認められる者をいう(通基通第50条関係6)。この場合における保証義務を果すための資力が十分であるかどうかの判定は、その者の財産又は収入の状況等を総合して勘案し、その者に対して滞納処分を執行した場合において、保証に係る国税の全額の徴収が可能であると認められるかどうかの観点に立って行うものとする。
    なお、保証人が2人以上である場合又は2人以上となる場合には、保証人間において連帯させる(通基通第54条関係5)。
  • ロ 法人による保証(物上保証を含む。)については、その法人がその国税の保証をすることが、その法人の定款に定める目的の範囲内に属する場合に限る。
    なお、次に掲げる法人による保証は、定款に定める目的の範囲内に属するものとする(通基通第50条関係7)。
    • (イ) 担保を提供すべき者と取引上密接な関係のある営利を目的とする法人(昭和33.3.28最高判、昭和41.2.28東京地判参照)
    • (ロ) 担保を提供すべき者が取締役又は業務を執行する社員となっている営利を目的とする法人(会社法第356条《競業及び利益相反取引の制限》、第365条《競業及び取締役会設置会社との取引等の制限》又は第595条《利益相反取引の制限》の規定により株主総会の承認、取締役会の承認又は社員の過半数の承認を受けたものに限る。)

40 担保の選定

担保の選定に当たっては、次に留意する。

(1) 担保は、可能な限り処分が容易であって、かつ、価額の変動のおそれが少ないものから提供を受けるものとする(通基通第50条関係8)。

(2) 担保は、その担保に係る国税が完納されるまでの延滞税、利子税及び担保の処分に要する費用をも十分に担保できる価額のもの(担保が保証人の保証である場合は、その国税等の保証義務を十分に果たせる資力を有する保証人)でなければならない(通基通第50条関係9)。

なお、担保を徴する場合において、その猶予に係る国税につき差し押さえた財産(徴収の共助又は保全の共助によって差押えに相当する処分をした財産及び担保の提供を受けた財産を含む。)があるときは、その担保の額は、その猶予する金額から差押財産の見積価額(差押えに係る国税に先立つ抵当権等により担保される債権その他の債権の合計額を控除した額)を控除した額とする(通則法第46条第6項、通基通第46条関係15)。

また、上記39《担保の種類》に掲げるもの(保証人を除く。)の価額が猶予に係る国税、完納されるまでの延滞税、利子税及び担保の処分に要する費用の額に満たない場合であっても、その猶予に係る国税の額、完納までに要すると認められる期間、当該担保の価額の多寡等を踏まえ、特に必要があると認められるときは、当該財産を担保として徴することができる。

41 担保の評価

担保の評価は、担保の種類に応じ、次の方法により行うものとする(通基通第50条関係10)。

また、その財産上に既に担保権が設定されているときは、その被担保債権の額を控除する。

なお、担保の価額を評価する場合における時価は、担保を評価する日における客観的な市場価格による。この場合の評価方法は、平成26年6月27日付徴徴3−7「公売財産評価事務提要の制定について」(事務運営指針)を参考とする。ただし、徴収上の支障がないと認められるときは、相続税若しくは固定資産税の課税標準となる評価額又は最近における財務諸表に計上されている価額等を参考として、評価することとして差し支えない。

(1) 国債

国債の額面金額とする。ただし、割引の方法によって発行された国債で、担保として提供する日から5年以内に償還期限の到来しないものは、その国債の発行価額と額面金額との差額を発行の日から償還の日までの年数(1年未満の端数は切り捨てる。)をもって除して得た金額に、発行の日から担保として提供するまでの年数(1年未満の端数は切り捨てる。)に4を加えた数を乗じて算出した金額をその発行価額に加算した金額とする(政府ニ納ムヘキ保証金其ノ他ノ担保ニ充用スル国債ノ価格ニ関スル件(明治41年勅令第287号)、政府ニ納ムヘキ保証金其ノ他ノ担保ニ充用スル国債ノ価格ニ関スル件第二項ノ規定ニ依リ国債ノ発行価格ニ加算スベキ金額ニ関スル件(昭和14年大蔵省令第26号))。

(2) 地方債、社債その他の有価証券

地方債、社債その他の有価証券については、時価の8割以内において担保の提供期間中に予想される価額変動を考慮した金額とする。

(3) 土地

土地については、時価の8割以内において適当と認める金額とする。

(4) 建物等及び鉄道財団等の財団

建物等及び鉄道財団等の財団については、時価の7割以内において担保提供期間中に予想される価値の減耗等を考慮した金額とする。

42 担保の提供及び徴取手続

(1) 共通の提出書類

  •   担保の徴取に当たっては、「担保提供書」(様式307010-086)(担保を提供する者以外の第三者が有する財産を担保として提供する場合には、当該第三者がその提供について承諾した旨が記載されたものに限る。)ほか、提供する担保の種類に応じて下記(2)掲げる書類を併せて提出させる(通則令第16条及び通則規則第11条)。ただし、下記(2)ハ(イ)、ニ(イ)B及び(ロ)Bの登記事項証明書については、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第11条《添付書面等の省略》の規定により添付が不要とされる場合には、納税者等からの提出は要しない。
     なお、特段の記載がないものについては、納税者等の押印は不要であるから、留意する。
     おって、担保及び関係書類を受領した場合には、担保物整理一覧表(様式307010-088)に記載し、その事績を明らかにしておくものとする。

(2) 担保の種類ごとの提出書類

  • イ 国債、地方債及び社債その他の有価証券(下記ロを除く。)
    • (イ) 供託書の正本(通則規則第11条第2項第1号)
    • (ロ) 担保として提供する財産が登録国債である場合には、国債規則の規定により担保の登録をした旨の同令第41条《登録済通知書の交付》に規定する登録済通知書 (通則規則第11条第3項第1号)
    • (ハ) 担保として提供する上記イの財産が、制限行為能力者(民法第13条第1項第10号《保佐人の同意を要する行為等》に規定する制限行為能力者をいう。)又は任意後見契約上の本人(任意後見契約に関する法律第2条第2号《定義》に規定する本人をいう。)(以下42において「制限行為能力者等」という。)の所有財産である場合(任意後見契約上の本人の所有財産について、当該任意後見契約上の本人が自ら担保として提供する場合を除く。)には、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める書類
      • A 法定代理人(その代理行為が民法第826条《利益相反行為》の規定に該当するときは特別代理人)、成年後見人、任意後見人(任意後見監督人が選任されているものに限る。)、保佐人又は補助人(以下42において「法定代理人等」という。)に国税の担保提供手続について代理権が付与されているとき 
         次の制限行為能力者等の区分に応じて、当該制限行為能力者等に関する次に定める書類
        • (A)未成年者の場合 
          戸籍謄(抄)本
        • (B) 成年被後見人の場合 
          登記事項証明書
        • (C) 任意後見契約上の本人、被保佐人又は被補助人の場合 
          登記事項証明書(代理権目録が添付されたもの)
      • B 保佐人又は補助人に国税の担保提供手続について代理権が付与されておらず、保佐人又は補助人の同意が必要とされているとき
         被保佐人又は被補助人の登記事項証明書及び保佐人又は補助人がその担保の設定に同意した旨が記載された書面(以下「同意書」という。)
    • (ニ) 担保として提供する上記イの財産が、法人の所有財産である場合には、それぞれ次に定める書類
      • A 代表者の資格を証する書面
      • B 法人による保証が会社法第356条第1項第3号《競業及び利益相反取引の制限》、第365条第1項《競業及び取締役会設置会社との取引等の制限》、第419条第2項《執行役の監査委員に対する報告義務等》又は第595条第1項第2号《利益相反取引の制限》の規定に該当する場合には、その提供等につき株主総会の承認、取締役会の承認又は社員の過半数の承認を受けたことを証する書面
  • ロ 振替株式等
    • (イ) 振替株式等の種類、銘柄並びに銘柄ごとの数及び金額を記載した書類(通則規則第11条第4項第1号)
    • (ロ) 担保として提供する振替株式等が制限行為能力者等の所有財産である場合(任意後見契約上の本人の所有財産について、当該任意後見契約上の本人が自ら担保として提供する場合を除く。)には、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める書類
      • A 法定代理人等に国税の担保提供手続について代理権が付与されているとき 
        上記イ(ハ)Aに掲げる書類
      • B 保佐人又は補助人に国税の担保提供手続について代理権が付与されておらず、保佐人又は補助人の同意が必要とされているとき 
        上記イ(ハ)Bに掲げる書類
    • (ハ) 担保として提供する振替株式等が法人の所有財産である場合には、上記イ(ニ)に掲げる書類
  • ハ 土地、建物等及び鉄道財団等の財団(以下この章において「不動産等」という。)
    • (イ) 担保として提供する不動産等の登記事項証明書その他の登記又は登録がされている事項を明らかにする書類(通則規則第11条第5項第1号イ、第2号イ及び第3号イ)
    • (ロ) 担保として提供する不動産等の評価の明細(地方税法第341条第9号《固定資産税に関する用語の意義》に掲げる固定資産課税台帳に登録された価格について市町村長が交付する証明書を含む。)(通則規則第11条第5項第1号ロ、第2号ロ及び第3号ロ)
    • (ハ) 抵当権設定登記承諾書(様式307010-98。以下同じ。)その他の抵当権の設定登記又は登録について不動産等の所有者が当該設定を承諾する旨の書類(当該所有者の記名押印があるものに限る。)(通則規則第11条第5項第1号ハ、第2号ハ及び第3号ハ)
    • (ニ) 不動産等の所有者の印鑑証明書(通則規則第11条第5項第1号ニ、第2号ニ及び第3号ニ)
    • (ホ) 担保として提供する財産が建物等である場合には次に定める書類(通則規則第11条第5項第2号ホ、へ)
      • A 保険業法第2条第1項《定義》に規定する保険業その他これに類する事業を行う者に対して提出する書類で担保となる建物等に付された保険に係る保険金請求権に質権を設定することの承認を請求するための書類
      • B 担保として提供する建物等に付された保険に係る保険証券の写し
    • (ヘ) 担保として提供する不動産等が制限行為能力者等の所有財産である場合(任意後見契約上の本人の所有財産について、当該任意後見契約上の本人が自ら担保として提供する場合を除く。)には、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める書類
      • A 法定代理人等に国税の担保提供手続について代理権が付与されているとき 
         上記(2)イ(ハ)Aに掲げる書類のほか、抵当権設定登記承諾書その他の抵当権の設定登記又は登録について不動産等の所有者が当該設定を承諾する旨の書類(法定代理人等の記名押印があるものに限る。)及び法定代理人等の印鑑証明書
        (注)この場合には、上記(ハ)及び(ニ)に規定する書類等の提出は要しない。
      • B 保佐人又は補助人に国税の担保提供手続について代理権が付与されておらず、保佐人又は補助人の同意が必要とされているとき
         上記(2)イ(ハ)Bに掲げる書類(同意書については、保佐人又は補助人の記名押印があるものに限る。)及び保佐人又は補助人の印鑑証明書
    • (ト) 担保として提供する不動産等が、法人の所有財産である場合には、上記(2)イ(ニ)に掲げる書類のほか、抵当権設定登記承諾書その他の抵当権の設定登記又は登録について不動産等の所有者が当該設定を承諾する旨の書類(法人の代表者の記名押印があるものに限る。)及び法人の代表者の印鑑証明書
      (注)この場合には、上記(ハ)及び(ニ)に規定する書類等の提出は要しない。
  • ニ 税務署長等が確実と認める保証人の保証
    • (イ) 保証人が個人である場合 
      • A 納税保証書(様式307010-015。以下同じ。)(当該保証人の記名押印があるものに限る。)(通則規則第11条第6項第1号イ)
      • B 当該保証人が所有する不動産等に係る上記(2)ハ(イ)及び(ロ)に掲げる書類(通則規則第11条第6項第1号ロ)
      • C 当該保証人の収入の状況を確認できる書類並びに当該保証人の財産及び債務の明細を記載した書類(通則規則第11条第6項第1号ハ)
      • D 当該保証人の印鑑証明書(通則規則第11条第6項第1号ニ)
      • E 保証人となる個人が制限行為能力者等である場合(任意後見契約上の本人が保証人となる場合で、当該任意後見契約上の本人が自ら担保を提供する場合を除く。)には、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に定める書類
        (A) 法定代理人等に国税の担保提供手続について代理権が付与されているとき 
        上記(2)イ(ハ)Aに掲げる書類のほか、納税保証書(法定代理人等の記名押印があるものに限る。)及び法定代理人等の印鑑証明書
        (注)この場合には、上記A及びDに規定する書類等の提出は要しない。
        (B) 保佐人又は補助人に国税の担保提供手続について代理権が付与されておらず、保佐人又は補助人の同意が必要とされているとき 
        上記(2)イ(ハ)Bに掲げる書類
    • (ロ) 保証人が法人である場合
      • A 納税保証書(当該保証人の代表者の記名押印があるものに限る。)(通則規則第11条第6項第2号イ)
      • B 当該保証人に係る登記事項証明書(通則規則第11条第6項第2号ロ)
      • C 当該保証人の代表者の印鑑証明書(通則規則第11条第6項第2号ハ)
      • D 上記(2)イ(ニ)に掲げる書類
        (注) 上記(イ)A、E(A)及び(ロ)Aの納税保証書には、所定の金額の印紙税が課されることに留意する(印紙税法第7条別表第1第13号文書)。

(3) 担保の種類ごとの徴取手続

  • イ 国債、地方債及び社債その他の有価証券
    • (イ) 国債、地方債及び税務署長が確実と認める社債その他の有価証券(下記(ロ)に掲げるものを除く。)の場合
      納税者に、次の手続により国債、地方債及び社債その他の有価証券を供託させ、その供託書正本を担保提供書に添付して提出させる(通則令第16条第1項本文)。
      なお、供託は、可能な限り担保の提供を受けるべき税務署(国税局及び沖縄国税事務所を含む。以下同じ。)の所在地にある供託所(供託有価証券の受入れを取り扱う法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは出張所をいう。以下同じ。)にさせる(通基通第54条関係2)。
      • A 振替国債
        • (A) 担保のための供託書(正副2通)を供託所に提出し、供託官から供託受理決定通知書の交付を受ける(供託規則第13条第3項、第19条第1項)。
        • (B) 供託をしようとする振替国債を管理している口座管理機関(金融機関等)に供託受理決定通知書を提示し、その振替国債について日本銀行代理店の委嘱先金融機関等に開設されている供託所の口座への振替の申請を行う。
        • (C) 供託官からその振替国債を受け入れた旨が記載された供託書正本の交付を受ける(供託規則第19条第3項)。
      • B 地方債及び税務署長が確実と認める社債その他の有価証券(下記(ロ)に掲げるものを除く。)
        • (A) 担保のための供託書(正副2通)を供託所に提出し、供託官から供託を受理する旨が記載された供託書正本及び供託有価証券寄託書の交付を受ける (供託規則第13条第1項及び第18条第1項)。
        • (B) 供託官から交付を受けた供託書正本と供託有価証券寄託書に供託する有価証券を添えて、供託所から指定された日本銀行(本店、支店又は代理店をいう。以下同じ。)に提出する。
        • (C) 日本銀行からその有価証券が納入された旨が記載された供託書正本の交付を受ける。
    • (ロ) 振替株式等の場合
      納税者に、担保提供書を提出させ、手続依頼書を交付の上、次の手続を行わせる(通則令第16条第2項)。
      • A 手続依頼書に必要事項を記載の上、税務署長等の名義の口座の管理業務を委託する口座管理機関(以下「証券会社等」という。)に送付し、証券会社等に納税者(物上保証人により担保提供される場合は物上保証人。以下(ロ)において同じ。)名義の口座を開設する。
      • B 担保として提供する振替株式等を証券会社等の納税者名義の口座(保有欄)に振り替えた後、証券会社等に税務署長等の名義の口座(質権欄)への振替の申請を行う。
      • C 税務署長等名義の口座(質権欄)への振替手続を了すると、証券会社等から「担保振替に関する受入(差入)完了通知」が送付されるので、当該通知と担保提供書の記載内容を照合して、振替株式が担保として提供されたことを確認する。この場合において、当該通知は担保関係書類として取り扱う。
        なお、振替株式が担保提供されている間は、証券会社等から「残高報告書」が毎月送付されるため、その内容を確認後、担保関係書類とともに保管する。
  • ロ 不動産等
    不動産等については、納税者に上記(2)ハに掲げる書類を提出させ、税務署長において、不動産登記法、立木ニ関スル法律、船舶登記令及び工場抵当法等の関係法令に従い抵当権設定の登記等を関係機関に嘱託する(通則令第16条第3項)。

(注)

  1. 1 この登記については、登録免許税法第4条第1項の規定により登録免許税は課されないことに留意する。
  2. 2 抵当権設定の登記等の嘱託の方法等については、徴収事務提要によるほか、昭和36年12月23日付徴徴2−52「航空機差押登録等の嘱託手続について」(事務運営指針)により処理する。

(4) 保険金請求権に対する保全措置

担保として提供しようとする財産に保険が付されている場合には、次の手続によりその保険金請求権に対して質権を設定する(通基通第54条関係4)。

  • イ 納税者から保険会社等の所定の質権設定承認請求書を2通提出させ、税務署長が連署して納税者に2通とも交付する。
    納税者は、この質権設定承認請求書に保険証券又は保険契約証書を添付して保険会社等に対して質権設定の請求を行う。
    なお、この質権設定に当たっては、継続契約についても併せて質権設定が継承されるよう、継続契約に基づく保険金請求権の上に質権を設定した旨を質権設定承認請求書に記載することに留意する。
  • ロ 納税者は、保険会社等から質権設定の裏書がされた保険証券若しくは保険契約証書又は質権設定承認書(以下「保険証券等」という。)の交付を受けた後、法務局又は公証人役場において、質権の設定に関する書類に確定日付を受け、税務署長に提出する(民法第364条、第467条参照)。
  • ハ 税務署長は、提出された保険証券又は保険契約証書の質権設定の裏書及び確定日付を確認した上、当該証券等の写しを受領し、原本は納税者に返付する。当該写しは税務官庁にて保管する。

(5) 第三者の所有財産又は保証人の保証を担保として徴する場合の取扱い

第三者の所有財産又は保証人の保証を担保として徴する場合には、納税者及びその第三者又は保証人(以下「物上保証人等」という。)に対して、次によりその意思に基づき保証をしたこと、又は担保財産を提供したことを確認した上で担保を徴する(通基通第54条関係6参照)。ただし、物上保証人等が、納税者とともに税務署において担保を提供するために必要な手続をしたこと等により、担保を提供する意思が明らかに認められる場合は、この限りでない。この場合は、納税者及び物上保証人等が、署名(記名を含む。)するなど、自らの意思において担保を提供するために必要な手続をしたことを的確に記録しておくことに留意する。

  • イ 確認する事項
    • (イ) 物上保証人等が猶予に係る国税の担保として、その財産の提供又は保証をすることにつき、納税者に対して承諾を与えていること。この場合において、担保する国税(附帯税を含む。)の額についても承諾を与えていること。
    • (ロ) 担保提供書、抵当権設定の登記等の承諾書、納税保証書、委任状、供託書正本等の担保を提供するために必要な書類が納税者から提出されたものであるときは、これらの書類は真正に成立(作成名義人による作成)したものであること。この場合において、これらの書類のうち、物上保証人等が作成すべき書類を納税者が作成したもの、又は物上保証人等が関係機関(市町村等をいう。以下42において同じ。)から交付を受けるべき書類を納税者が交付を受けて提出したものがあるときは、納税者が物上保証人等から書類の作成等につき委任を受けていること。
    • (ハ) 上記(ロ)に掲げる書類が、第三者から提出されたものであるときは、これらの書類は、その第三者が納税者から委任を受けて提出したものであること。この場合においても、これらの書類が真正に成立したものであることを確認する必要があることに留意する。
  • ロ 確認の方法
    上記イに掲げる確認は、物上保証人等に対して、文書による照会、臨場等による面接調査によって行う。この場合において、臨場等による面接調査を行ったときは、その確認した事項を記載した書面に物上保証人等の署名(記名を含む。)を徴するものとする。
    なお、確認した事項は的確に記録し、回答を受けた書面等は、関係書類に編てつする。

(注)

  1. 1 物上保証人等が未成年者又は成年被後見人である場合にはその法定代理人、被保佐人又は被補助人である場合には、物上保証人等及びその保佐人又は補助人、法人である場合にはその法人について代表する権限を有する者に対して、それぞれ調査することに留意する。
  2. 2 納税者と物上保証人等が同居している場合において、文書による照会に対して書面により回答を受けたときは、電話連絡等により本人(物上保証人等)が回答の内容を承知していることを確認する。

(6) 担保の変更等

  • イ 税務署長は、おおむね次に掲げる事由の発生により、提供された担保では猶予に係る国税を担保できないと認められる場合には、その担保を提供した納税者に対し、通常必要と認められる日数を見込み、期限を指定して増担保の提供、保証人の変更、その他の担保を確保するために必要な行為(例えば、保険契約の更新等(通基通第51条関係3))をすべきことを命じ、担保の差換え等の処理を行うものとする(通則法第51条第1項、通基通第51条関係1)。 なお、担保の変更等の命令をする場合は、納税者に対し、「担保変更(増担保)要求通知書」(様式307010-112)を送付する。
    • (イ) 担保財産の価額が滅失その他の理由により減少したとき。
    • (ロ) 保証人について、所有財産の滅失その他の理由によりその資力が減少したとき。
    • (ハ) 担保財産について、その後所有権の帰属に関する訴えが提起された場合等で、担保の提供の効力に影響があると認められるとき。
    • (ニ) 担保財産に付されている保険契約が失効したとき。
    • (ホ) 通則法第46条第6項《差押財産がある場合の担保の額の特例》(徴収法第152条《換価の猶予に係る分割納付、通知等》において準用する場合を含む。)の規定が適用された差押財産について、滅失その他の理由によりその価額が減少したとき。
    • (ヘ) 国債等で既に償還期限が到来したとき又は近く到来するとき。
  • ロ 猶予を受けた納税者から提供した担保について変更の申立てがあった場合には、新たに提供するものが担保として適格なものであり、かつ、変更することにつき徴収上の支障がないと認められるときは、その申立てを承認するものとする。この場合においては、原則として、変更のため提供された担保の徴取手続を了した後に、既に徴している担保の解除手続を行うものとする(通則法第51条第2項参照)。

(7) 猶予期間終了後の担保の取扱い

当初の猶予の終了時点において国税が完納していない場合において、別の猶予の適用が可能である場合には、既に徴した担保の処分を行うことなく、当該担保の額を再評価し、当該別の猶予に係る国税を充足するときは、当該担保を当該別の猶予の担保として取り扱って差し支えない。

なお、担保が第三者の所有財産又は保証人の保証である場合には、上記(5)ロの方法に準じて、当該物上保証人等に改めて保証の意思を確認することに留意する。

また、既に徴した担保が、当該別の猶予に係る国税に不足する場合は、担保を追加して提供させるため、新たな担保財産等の徴取又は抵当権の変更登記等の手続を行うが、抵当権の変更登記を嘱託する場合において、不動産登記法第66条《権利の変更登記》の規定により、納税者から登記上の利害関係を有する第三者の承諾書の提出を受けたときは、その第三者に対し、上記(4)に準じて承諾の意思を確認する。

43 担保の解除

(1) 解除の要件

担保の解除は、おおむね次に掲げる要件のいずれかに該当する場合に行う。

  • イ 猶予に係る国税が納付、充当、更正の取消し等により、その全額が消滅したとき。
  • ロ 通則法第51条第1項又は第2項《担保の変更等》の規定により、変更に係る担保の提供を受けたとき。
  • ハ 猶予に係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消し又は差押財産がある場合の担保の額の特例(通則法第46条第6項、徴収法第152条第3項、第4項)の適用がある差押財産について価額の高騰等があったことにより担保を引き続き提供させておく必要がなくなったと認められるとき。

(2) 解除の手続

  • イ 解除の通知等
    担保を解除する場合には、その旨を担保解除通知書(様式307010-094)により担保を提供した納税者に通知する(通則令第17条第2項)。この場合においては、担保の種類に応じ、次の処理をしなければならないことに留意する(通基通第54条関係8参照)。
    • (イ) 国債、地方債、社債その他の有価証券等
      • A 国債、地方債、社債その他の有価証券(振替株式等を除く。)の場合
        「供託原因消滅証明書」(管理運営事務提要(様式編)様式管理番号459-252)を作成し、保管中の供託書正本とともに、納税者に返還する(通則令第17条第3項第1号)。
      • B 振替株式等の場合
        証券会社所定の指図書に所要事項を記載して、証券会社等に対し、証券会社等内の税務署長等の名義の口座(質権欄)から納税者名義の口座(保有欄)(物上保証人の振替株式等を担保として徴取した場合は、納税者名義の口座(質権欄))への振替を申請する(通則令第17条第3項第2号)。

        (注)

        1. 1 指図書は書留郵便により送付する。
        2. 2 納税者名義の口座への振替手続を了すると、指定金融機関から「担保振替に関する払戻(返戻)完了通知」が送付されるため、記載内容を確認し、担保物整理一覧表に返還事績を記載する。
          なお、当該通知は、下記ロの担保関係書類受領証に代えることができる。
    • (ロ) 不動産等
      「抵当権抹消登記嘱託書」(様式307010-103)及び「登記原因証明書」を作成し、税務署長において抵当権設定の登記等の抹消の登記等を関係機関に嘱託する(通則令第17条第3項第3号)。
      なお、保険金請求権に対して質権を設定している場合には、担保原因が消滅した旨の証明書(「担保原因抹消証明書」)を作成し、納税者に送付する。

      (注)

      1. 1 上記の抹消の登記等については、登録免許税法第5条第11号《非課税登記等》の規定により登録免許税は課されないことに留意する。
      2. 2 担保を解除する旨の通知は、抵当権設定の登記等の抹消の登記等がされたことを確認した後に行うものとする。
      3. 3 抵当権により担保されている国税が、第三者により納付された場合の担保の解除は、通則令第11条《国税を納付した第三者の代位の手続》の規定による代位要件としての書面が通常提出されると見込まれる期間内に提出されなかったことを確認した後に行う(通基通第54条関係7)。
    • (ハ)  保証人の保証
      保管中の納税保証書(保証人の印鑑証明書等を含む。)を納税者に返還する。
  • ロ 担保関係書類受領証の徴取
    担保を提供した納税者に担保(その担保に関して提供されている書類を含む。)を返還するときは、その担保の正当受領者であることを確認した上で担保関係書類受領証(管理運営事務提要(様式編)様式管理番号459-256)を徴し、これと引換えに担保を返還する。ただし、返還すべき担保が保証人の保証である場合には、書留郵便をもって納税保証書(保証人の印鑑証明書等を含む。)を納税者に送付し、その書留郵便物受領証をもって、担保関係書類受領証に代えて差し支えない。
    なお、担保を返還したときは、担保物整理一覧表にその旨を記載する。

(注)

  1. 1 返還すべき担保が第三者所有のものであっても、担保関係書類受領証は、返還を受ける納税者から提出させることに留意する。
  2. 2 担保の返還に当たり、担保物整理一覧表の返却受領印欄に担保の返却年月日を記載し、担保を提供した納税者の受領印を徴することによって、担保関係書類受領証の徴取に代えて差し支えない。
  3. 3 担保関係書類受領証には、印紙税法に規定する収入印紙の貼付を要しないことに留意する。

納税の猶予等の取扱要領主要項目へ戻る