(1) 要件
申請による換価の猶予をすることができるのは、次に掲げる要件の全てに該当する場合であり(徴収法第151条の2、第152条第4項)、具体的には下記(2)から(8)までに定めるところによる。
(2) 申請による換価の猶予を受けることができる者
申請による換価の猶予を受けることができる者については、上記16(2)《職権による換価の猶予を受けることができる者》と同様である(徴基通第151条の2関係1)。
(3) 事業継続又は生活維持の困難
「国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合」とは、次のいずれかに該当する場合をいう。
(4) 納税についての誠実な意思
「納税について誠実な意思を有する」とは、上記16(3)《納税についての誠実な意思》と同様である(徴基通第151条の2関係2)。
なお、滞納者から換価の猶予の申請に際して提出された書類が適切に記載されたものである場合は、原則として、納税についての誠実な意思を有しているものと判定して差し支えないが、他の要件についての調査を省略して、直ちに換価の猶予該当とすることはできないことに留意する。
(注)
(5) 納税の猶予との関係
通則法第46条第1項から第3項までの規定により現に納税の猶予をしている国税については、申請による換価の猶予をしない(徴基通第151条の2関係10)。
(6) 他の国税の滞納
「換価の猶予の申請に係る国税以外の国税の滞納」とは、換価の猶予をしようとする場合において、換価の猶予の申請に係る国税以外の国税であって、納期限(法第151条の2第1項に規定する納期限をいう。)までに納付されていないものをいう。ただし、次に掲げる国税を除く(徴収法第151条の2第2項、徴基通第151条の2関係9)。
(注) 個人の同年分の申告所得税と消費税、修正申告に係る本税と加算税など、近接して納期限が到来する国税についても滞納となることが見込まれるときは、その近接して納期限が到来する国税についても、合わせて換価の猶予の申請をすることを勧奨する。
(7) 換価の猶予の申請
滞納者が換価の猶予を受けようとする場合には、所要の事項を記載した換価の猶予申請書(様式307010-056-6)に所定の書類を添付し、猶予を受けようとする国税の納期限から6月以内に、これを税務署長に提出しなければならない(徴収法第151条の2第1項、第3項、徴収令第53条第1項、第2項)。
(注)
(8) 担保の提供及び徴収
申請による換価の猶予をする場合における担保の提供及び徴取については、上記4(8)《担保の提供及び徴取》と同様であるが、「猶予に係る国税の額」の判定は、換価の猶予の申請時において行う。
申請による換価の猶予の対象となる国税については上記17(1)《職権による換価の猶予の対象となる国税》、猶予をする金額については同(2)《職権による換価の猶予をする金額》と同様である。
(注) 督促状が発付されていない国税について換価の猶予の申請があった場合の取扱いは、上記17(1)《職権による換価の猶予の対象となる国税》注1と同様である。
(1) 猶予期間
申請による換価の猶予をする期間は、1年を限度として、下記(3)《合理的かつ妥当な金額による分割納付》に基づき、その猶予に係る国税を完納することができると認められる最短期間とする(徴基通第151条の2関係7)。
(2) 猶予期間の始期等
猶予期間の始期は、換価の猶予の申請書が提出された日とする。ただし、その日が申請に係る国税の法定納期限以前の日であるときは、法定納期限の日の翌日とする(徴基通第151条の2関係8)。
(注) 換価の猶予申請書に記載された猶予期間の終期がその申請書が提出された日よりも前の日であるときは、その換価の猶予を不許可とする。
(3) 合理的かつ妥当な金額による分割納付
合理的かつ妥当な金額による分割納付については、上記18(3)《合理的かつ妥当な金額による分割納付》と同様である。
(4) 1年以内に完納が見込まれない場合の取扱い
徴収法第151条の2第1項の要件を満たす場合において、納付能力調査の結果、換価の猶予の申請を許可しようとする国税の完納までに要する期間が1年を超えると認められるときの取扱いは、上記18(4)《1年以内に完納が見込まれない場合の取扱い》と同様である。