この章は、参加差押えをした税務署長による換価執行決定及びその取消しに関する一連の手続について定めたものである。
 なお、換価執行決定に基づく換価手続については、第1章(換価の実施に当たっての基本的な考え方)から第10章(不服申立てがあった場合等の処理)までに定める手続によるほか、この章で定めるそれぞれの手続による。

第1節 換価執行決定

(換価執行決定をすることができる場合)

165 参加差押えをした税務署長は、その参加差押えに係る不動産(以下「参加差押不動産」という。)が、徴収法第87条第3項の規定による換価の催告をしてもなお換価に付されないときは、差押行政機関等の同意を得て、参加差押不動産につき、換価執行決定をすることができる(徴収法第89条の2)。
 なお、換価執行決定をすることができる財産は、不動産に限られるが、工場財団、鉱業権その他不動産とみなされ、又は不動産に関する規定の準用がある財産並びに鉄道財団、軌道財団及び運河財団については、換価執行決定を行わない。

(注) 次に掲げる場合においても、換価執行決定をすることができる。

1 参加差押えをした税務署長よりも先に参加差押えをした他の行政機関等がある場合(徴基通第89条の2関係1)

2 同一の不動産につき2以上の参加差押えをした場合(徴基通第89条の2関係2)

(例) 以下の場合、参加差押不動産甲について、参加差押えA及び参加差押えBに基づいて換価執行決定をすることができる。
1 参加差押えA 参加差押不動産:甲
2 参加差押えB 参加差押不動産:甲、乙
 なお、参加差押不動産甲及び乙について換価執行決定する場合は、参加差押えBに基づき換価執行決定する(参加差押えAについては、参加差押不動産甲の換価代金から配当を受ける)。

3 参加差押不動産に仮差押えがされている場合(徴基通第89条の2関係3)

(換価執行決定をすることができない場合)

166 次に掲げる場合については、換価執行決定をすることができない。

(1) 強制執行又は担保権の実行としての競売(以下「強制執行等」という。)が開始されている場合(徴収法第89条の2第1項ただし書)

(注) 換価執行決定後に強制執行等が開始された場合には、滞納処分と強制執行等による換価手続が競合した場合と同様の取扱いとなる。
 なお、強制執行続行の決定に係る求意見書については、換価同意行政機関等が、換価執行行政機関等の意見を踏まえ、執行裁判所に意見を申述する必要があることに留意する(滞調法第13条、第17条による準用後の第9条、第10条第1号参照)。

(2) 国税に関する法律の規定で換価をすることができないこととするものの適用がある場合(徴収法第89条の2第1項ただし書、徴基通第89条関係6)

(3) 参加差押不動産につき、差押行政機関等が既に他の行政機関に対し換価執行決定の同意をしている場合(徴収法第89条の2第2項ただし書)

(4) 参加差押えをした不動産の価額がその参加差押えに係る滞納処分費及び参加差押えに係る国税に先立つ国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがない場合(徴収法第89条の3第1項第3号、徴基通第89条の2関係5)

(5) 換価の執行をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあると認められる場合(徴収法第89条の3第1項第4号、徴収令第42条の3第2項、徴基通第89条の3関係5)

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