この章は、農地等、酒類製造施設等の特殊財産の換価手続について定めたものである。
 なお、この章に掲げるそれぞれの特殊財産の換価手続については、第1章(換価の実施に当たっての基本的な考え方)から第7章(換価代金等の処理)までに定める一般手続によるほか、この章で定めるそれぞれの手続による。

(農地等の換価)

141 農地等の換価については、特に次の事項に留意する。

(1) 農地等に当たるか否かの確認
 土地登記簿上の地目が田又は畑である土地の公売に当たって、当該土地の現況が農地等以外となっていると認められる場合には、農地法第4条第1項《農地の転用の制限》、第5条第1項《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定による許可(同法第4条第1項第8号又は第5条第1項第7号の規定による届出を含む。)があったことが明らかである場合を除き、当該土地が農地等に該当するか否かについて、「農地等の現況に関する照会書」(様式308020-007)により農業委員会に照会し、「農地等の現況に関する照会についての回答書」(様式308020-008)によりその回答を受けた後、農地等として公売するか農地等以外として公売するかを決するものとする(昭和58.2.24付58構改B第203号農林水産省構造改善局長通達)。
 なお、土地登記簿上の地目が牧場で、現況が農地等以外となっている土地の公売に当たっても、これに準じて取り扱うものとする。

(注)

1 上記の照会を受けた農業委員会は、照会を受けた日から2週間以内に回答することになっているが、農業委員会の総会又は農地部会の開催の都合等によりその期間内に回答することができないときは、回答に代えて、農業委員会事務局長から調査結果の報告がされる。

2 上記の照会に係る土地について、農地法第51条第1項《違反転用に対する処分》の規定による原状回復命令が発せられる見込みである旨の回答(調査結果の報告を含む。)があった場合には、その回答の日から2週間以内に、農業委員会又は農業委員会事務局長から税務署長に対して、都道府県知事が原状回復命令を発した旨又は原状回復命令を発する見込みがなくなった旨の通知がされるので、その通知を受けた後に公売を実施することに留意する。

(2) 買受適格証明書の提出等
 農地等の換価に当たっては、下表の区分に従って、農業委員会等から交付を受けた「買受適格証明書」を有する者に限りその買受けに参加させること。したがって、農地等の公売公告には、次の事項を特に明記すること。

イ 「買受適格証明書」の提出(電子情報処理組織を使用する方法により入札がされる場合は、写しの送信)又は提示がないときは公売に参加させない旨(徴収法第95条第1項第7号)

ロ 農地等の権利移転及び危険負担の移転の時期は、(4)による許可又は届出の受理があった時とする旨(98、徴収法第95条第1項第9号、徴基通第116条関係3参照)

区分 行政庁

1 農地法第3条第1項の許可

農業委員会

2 農地法第5条第1項の許可又は同条第4項の協議の成立

都道府県知事又は指定市町村(農地法第4条第1項に規定する指定市町村をいう。)の長

3 農地法第3条第1項第13号の規定による届出の受理

農業委員会

4 農地法第5条第1項第7号の規定による届出の受理

農業委員会

(注) 

1 「買受適格証明書」の交付申請は、それぞれ当該許可の申請又は届出の手続に準じて行うこととされている。

2 公売公告の期間については、農業委員会の総会又は農地部会の開催時期等を考慮し、「買受適格証明書」の交付に要する日時を見込んで決定することに留意する。

3 北海道にある農地等に係る農林水産大臣の許可は、農林水産省行政文書決裁規則(平成12年農林水産省訓令第14条)第7条第1項第5号の規定により農村振興局長が決裁委任により処理する。

(3) 換価の方法
 農地等の換価は、(2)の「買受適格証明書」を有する者に対し、原則として公売の方法により行うこと。

(4) 権利移転手続
 農地等の譲渡については、農業委員会等の許可又は届出の受理を要することとなっているので、換価事務担当者は、買受人に対して農業委員会等宛に許可の申請、協議又は届出を行わせることとし、農業委員会等が交付する「許可書」、「協議が成立した旨を記載した通知書」又は「受理通知書」を速やかに提示するよう指示すること。この場合において、その「申請書」、「協議書」又は「届出書」には、「売却決定通知書」を添付させること。
 なお、この許可又は届出の受理がされない場合には、譲渡の効力が生じないことに留意する(農地法第3条第6項、第5条第3項)。

(注) 農地等の権利移転登記の嘱託に際しては、上記の「許可書」、「協議が成立した旨を記載した通知書」又は「受理通知書」の添付を要しないことに留意する(昭和21.9.3付民事甲第569号民事局長通達参照)。

(5) 買受人がない場合
 農地等を換価に付しても買受人がない場合((2)による「買受適格証明書」を有しない者がその公売に参加した場合を含む。)には、文書により、農林水産大臣(手続は、地方農政局長(北海道に所在する農地等にあっては経営局長、沖縄県に所在する農地等にあっては沖縄総合事務局長。以下この項において同じ。)が行う。)に対し、その農地等の買取りの申出ができる(農地法第23条第1項、昭和27.12.8付農林水産省地局第3876号「農地法関係事務処理要領(既墾地の部)その(二)について」通達)。

イ 上記の申出の文書には、次の事項を記載する必要がある(農地法施行規則第70条)。

(イ) 行政庁の名称及び所在地

(ロ) 滞納者の氏名又は名称及び住所

(ハ) 公売に付された農地等の所在、地番、地目及び面積

(ニ) その土地の上に留置権、先取特権、質権若しくは抵当権又は地上権、永小作権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利があるときはその権利の種類及び設定の時期並びにその権利を有する者の氏名又は名称及び住所

(ホ) 買受人がなかった事由

(ヘ) 代金納付の期限

ロ 上記の申出があった場合には、地方農政局長は、丸1農地等の買受け後、その農地等の上にある担保権で担保される債権を弁済する必要があるとき、丸2売却条件が国に不利になるように変更されているとき、丸3農地等の買受け後もその土地につき所有権に関する仮登記上の権利又は仮処分の執行に係る権利が存続するときを除き、その農地等を買い取る旨を申し入れなければならないこととされている(農地法第23条第1項)。この場合の公売手続は、随意契約の手続に準じて行うものとするが、国の買取価額は、農地法施行令第19条《農地又は採草放牧地の対価の算定方法》で定めるところにより算出された額となっていることに留意すること。

(注) 地方農政局長の買入れ手続は次のとおりである。
 〔昭和27.12.8付農林水産省地局第3876号「農地法関係事務処理要領(既墾地の部)その(二)について」通達(抄)〕

4 公売の場合

(1) 地方農政局長は、公租公課を主管する行政庁から農林水産大臣が農地等を買い取るべき旨の申出があったときは、申出書と申出に係る農地等について真実のものであるかを審査した上で受理する。

(2) 地方農政局長は、次に掲げる場合には買取りを申し入れることはできない。

ア 国が買受人となれば、その土地の上にある担保権で担保される債権を弁済する必要がある場合

イ 売却条件が国に不利になるように変更されている場合

ウ 国が買受人となった後もその土地につき所有権に関する仮登記上の権利又は仮処分の執行に係る権利が存続する場合

(3) 地方農政局長は、この申入れを滞納者の氏名又は名称及び住所、公売に付された農地等の所在、地番、地目及び面積並びに法第12条第1項の政令で定めるところにより算出した額を記載した買取申入書をもって行う。

(4) 当該行政庁は、(3)の買取申入書を受領した場合にはその受領の日の後10日以内に農林水産大臣に対して代金の納付書を送付する。

(5) 地方農政局長は、所有権移転の登記をすべき旨の請求書を当該行政庁に対して送付する。

5 地方農政局長が3又は4によって農地等の買取りを行った場合には、次に掲げる事項を各都道府県を経由して農業委員会に通知する。

(1) 農地等の所在、地番、地目及び面積

(2) 買取りの価額及び期日

(3) 債権者の住所及び氏名

(4) 買取りを行った事由

6 農業委員会は、前項の通知を受けたときは、その旨を公示の日の翌日から起算して20日間縦覧する。

(現況非農地の換価)

142 土地登記簿上の地目が田又は畑となっている土地であって、現況が農地以外となっているもの(141の(1)により農地以外とされたものをいう。以下この項において「現況非農地」という。)の換価については、農地法の適用はなく、買受人の制限をしないで換価することができる。
 なお、この場合の地目の変更の登記については、次により処理するものとする。

(1) まず滞納者に対して地目の変更の登記の申請を行うようしょうようすること。

(2) 滞納者が上記の申請を行わない場合において、農地法第4条第1項《農地の転用の制限》及び第5条第1項《農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限》の規定による許可(同法第4条第1項第8号又は第5条第1項第7号の規定による届出を含む。)がされていないときは、141の(1)の「農地等の現況に関する照会書」に対する農業委員会の「回答書」を得た上で、当該土地が土地登記簿上の記載にかかわらず農地等には該当しない旨を公売公告し、農地等以外として公売を行うこと。

(注)

1 滞納者が地目の変更の登記の申請を行う場合には、滞納者に上記「回答書」を交付し、当該「回答書」を「申請書」に添付させて地目の変更の登記の申請を行わせることとして差し支えない。
 なお、この場合、「回答書」の余白に滞納者が行う地目の変更の登記の申請の添付書類として使用させる目的で交付したものである旨を記載するとともに、滞納者から適宜の「受領書」を徴することに留意する。

2 買受人が地目の変更の登記の申請を行う場合にも、上記「回答書」を交付して差し支えない。

(酒類製造施設の換価)

143 酒類製造施設の換価については、特に次の事項に留意する。

(1) 国税局長への上申
 酒類製造施設を換価する場合には32(公売実施の上申)により国税局長に上申し、その指示によって公売の方法により換価すること。

(2) 公売公告の内容の周知
 新聞等の刊行物の活用を含め、公売公告の内容を広く情報提供する方法を検討するとともに、酒類製造業者等への買受勧奨を行うこと(38)。

(3) 注意書等への記載
 酒類製造施設を換価する場合には、34(公告すべき事項)に掲げる事項を公売公告するほか、公売により酒類製造施設の買受人となった場合であっても、当該施設を利用して酒類を製造しようとするときは、新たに酒類製造免許を必要とする旨を必要に応じて注意書等に記載し、公売参加者に注意喚起すること(35の(2))。

(酒税等課税前の財産の換価)

144 酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税(以下「酒税等」という。)の課税前の物品の換価については、特に次の事項に留意する。

(1) 見積価額の公告
 酒税等の課される物品に係る見積価額の決定については、公売財産評価事務提要第2章第4節《見積価額の決定》に定めるところによるが、その見積価額を公告する場合には、その公告中に、次の事項を付記すること。

イ 酒税等の課税の対象となる物品を課税前に換価する場合には、その物品に係る酒税等の税額相当額を含んだ見積価額である旨(通則法第39条、徴収法第11条参照)。

ロ 引取り課税に係る物品の場合には、その物品の引取人が納税義務者となる関係上、その物品の見積価額には、酒税等の税額相当額が含まれない旨。したがって、その物品の公売による買受人は、買受け後引取りの際その物品に係る酒税等を納付することを要する旨。

(2) 未納税移出となる物品の換価
 酒税等の課される物品につき、酒税等に関する法律の規定による当該物品が換価の時に移出したものとみなされる場合において、当該物品を未納税移出の規定に該当するものとして一定の場所へ未納税で移出する場合には、税抜価額で換価することができること(酒税法第6条の3第1項、第28条第1項等参照)。
 なお、この未納税移出は、公売財産の所有者である滞納者の申告が要件となっているので、この申告が行われないと見込まれる場合には税込価額で売却することに留意する(酒税法第28条第2項等参照)。

(3) 酒税等の徴収
 酒税等の課税前の物品を換価した場合における当該物品に係る酒税等は、その売却代金につき他の国税、地方税その他の債権に優先して徴収することができること(徴収法第11条)。この場合においては、あらかじめその執行機関(当該換価をした税務署長)及び納税者に対し、通則法第39条第1項《強制換価の場合の消費税等の徴収の特例》の規定により徴収すべき税額その他必要な事項を通知すること(通則法第39条第2項)。

(注) 上記の通知は、その物品が換価されたときは、その納税者につきその通知に係る税額に相当する酒税等が決定によって確定されたものとみなされ、その執行機関に対する通知は、交付要求とみなされることに留意する(通則法第39条第3項)。

(販売業者又は消費者の手持酒類の換価)

145 酒類販売業者(酒税法第10条第2号《免許の要件》に規定する酒類の販売業免許を受けた者をいう。)が販売のために有する酒類又は消費者が有する酒類の換価については、特に次の事項に留意する。

(1) 見積価額の決定
 その酒類の小売価格を基とし、公売の特殊性を考慮して妥当な見積価額を決定すること。ただし、換価すべき酒類の数量が多い場合には、特に酒類指導官又は酒税担当統括官と協議の上決定するものとすること。
 なお、協議した価額により売却することができない場合には、その実情に応じて見積価額を改訂して差し支えない。

(2) 同業者への買受勧奨
 換価すべき酒類が多い場合には、事前に酒類指導官又は酒税担当統括官と公売について協議するとともに、買受人のあっせん協力を依頼すること。また、公売により売却できなかったときは、徴収法第109条第1項第3号《公売に付しても入札等がないとき等における随意契約による売却》に規定する随意契約による売却を考慮すること。この場合においては、換価未済のまま存置しておくことのないよう特に留意する。

(たばこの換価)

146 耕作者(たばこ事業法第3条第1項に規定する日本たばこ産業株式会社(以下「JT」という。)に売り渡す目的をもってたばこを耕作しようとする者で、かつ、JTとたばこの売渡しに関する契約を締結した者をいう。以下同じ。)の所有する葉たばこについては、たばこ事業法の規定により譲渡の相手方が単独で特定されているので、この場合の換価は88(随意契約による売却ができる場合)の(1)に該当するものとして随意契約により売却する(徴基通第89条関係22)。
 なお、小売人(たばこ事業法第11条《製造たばこの特定販売業者の許可》、第20条《製造たばこの卸売販売等の登録》及び第22条《製造たばこの小売販売業の登録》に規定する販売業者をいう。以下同じ。)又は消費者の所有に係る製造たばこの換価については、特に次の事項に留意する。

(注) 耕作者以外の者が製造所有している葉たばこについては、譲渡の相手方が特定されていないので、通常の動産の換価方法によることに留意する。

(1) 換価の方法
 小売人又は消費者の所有に係る製造たばこの売却については、法令上別段の譲渡制限がないから、公売の方法により小売人又は消費者に売却して差し支えないこと。ただし、多量の製造たばこを換価する場合には、必要に応じJTと事前に協議を行い、そのあっせん等により特定の者をその公売に参加させるように措置すること。

(注) 製造たばこの公売は、たばこ事業法第22条第1項《製造たばこの小売販売業の許可》に規定する販売には該当しないことに留意する。

(2) 見積価額の決定等
 製造たばこの見積価額については、たばこ事業法に別段の制限がないから一般動産と同様に決定すること。ただし、特に、多量の製造たばこを公売する場合の見積価額の決定については、必要に応じJTと事前に協議して行うものとすること。

(注) 小売人の所有に係る製造たばこを公売する場合には、たばこ事業法第36条第1項《小売定価以外による販売等の禁止》の規定の適用はないから、小売価格による必要がないことに留意する(たばこ事業法施行規則第35条参照)。

(郵便切手類及び印紙の換価)

147 郵便切手類販売者(郵便切手類販売所等に関する法律第2条第1項《郵便切手類の販売等の委託》に規定する郵便切手類を販売し、及び印紙を売りさばく者をいう。)又は消費者の所有に係る郵便切手類又は印紙(郵便切手類販売所等に関する法律第1条《定義》に規定する郵便切手その他郵便に関する料金を表す証票及び郵便切手を保存用の冊子に収めた物その他郵便に関する料金を表す証票に関し周知し、又は啓発を図るための物並びに収入印紙、自動車重量税印紙、特許印紙及び登記印紙をいう。以下同じ。)の換価については、法令上別段の制限がないから、公売の方法により換価する。この場合の換価は、郵便切手類又は印紙の販売若しくは売さばき業務とはみなされず、消費者が自由に公売に参加して買受人となることができ、その売却価額については、必ずしも券面金額による必要はない。
 なお、いわゆる「記念切手」として取引されている種類の郵便切手については、その見積価額の決定については、特にその時価を勘案して評価することに留意する。

(振替株式等の換価)

148 振替株式等の換価については、委託売却を原則とする(92参照)が、公売によって行う場合は、特に次に掲げる事項に留意する。

(1) 買受人の資格
 公売公告には、買受人の要件として、振替株式等の振替を行うための口座(買受人自らが振替機関等に開設したものに限る。)を有していることを記載する(徴収法第95条第1項第7号)。この場合の口座は、必ずしも滞納者と同じ振替機関等である必要はない。

(2) 権利移転手続
 振替機関等から売却代金の支払を受けた場合には、滞納者の口座を有する振替機関等に対して、滞納者の口座(保有欄)から買受人の口座(保有欄)に振替株式等の振替を請求することにより買受人に対する権利移転手続を行う(振替法第132条第2項等)。
 なお、滞納者の振替株式等が特別口座に記載又は記録されている場合であっても、滞納処分による公売に基づく権利移転手続においては、振替法第133条第1項《特別口座に記載又は記録がされた振替株式についての振替手続等に関する特例》の規定による振替制限にかかわらず、買受人の口座(保有欄)に振替の請求を行うことができる。

(譲渡制限のある財産の換価)

149 法令の規定により譲渡制限のある財産の換価については、特に次の事項に留意する。

(注) 149で定める財産以外の財産で、法令の規定により譲渡制限のある財産を換価に付する場合には、この149の定める手続に準じ、それぞれの法令の定めるところによるものであるから留意する。

(1) 譲渡の相手方が単独に特定されている場合
 法令の規定により、譲渡の相手方が単独に特定されている財産については、徴収法第109条第1項第1号《法令の規定により公売財産を買い受けることができる者が1人であるとき等における随意契約》に規定する随意契約により、特定者に売却すること。この場合における随意契約による売却の手続については、90(随意契約による売却手続)によること。
 なお、随意契約により売却することができる財産及びその財産の買受人となることができる者は、おおむね次に掲げる者であることに留意すること。

イ 耕作者の所有している葉たばこについては、JT(たばこ事業法第3条第4項、徴基通第89条関係22)

ロ あへん(あへん法第3条第2号《あへんの定義》に規定するけしの液汁が凝固したもの及びこれに加工を施したもの(医薬品として加工を施したものを除く。)をいう。)については、国(同法第7条第1項、徴基通第89条関係14)

(2) 譲渡の相手方に一定の資格が必要とされている場合
 法令の規定により、譲渡の相手方に一定の資格が必要とされている特定財産については、その資格を有する者だけを公売に参加させ、その資格を有しない者の参加を認めないこととし、その財産の「公売公告」には、その財産の譲渡ができる者以外の者には売却しないこと及び譲渡を受ける資格のある旨の証明を要することを付記すること(徴収法第95条第1項第7号)。
 なお、上記の場合における特定財産及びその財産につき譲渡を受けることができる者は、おおむね次に掲げるとおりであることに留意する(徴基通第89条関係15から18、第95条関係13)。

イ 大麻(大麻取締法第1条《大麻の定義》に規定する大麻草及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。)については、大麻取扱者(同法第3条第1項)

ロ 特定毒物(毒物(毒物及び劇物取締法第2条第1項《毒物の定義》の規定による同法別表第一に掲げるものであって、医薬品及び医薬部外品以外のものをいう。)であって、同法別表第三に掲げるものをいう。)については、毒物劇物営業者、特定毒物研究者又は特定毒物使用者(同法第3条の2第6項)

ハ 覚せい剤製造業者が製造して所有する覚せい剤(覚せい剤取締法第2条第1項《覚せい剤の意義》に掲げるフェニルアミノプロパン、フェニルメチルアミノプロパン等をいう。)については、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者(同法第17条)

ニ 麻薬(麻薬及び向精神薬取締法第2条第1号《用語の定義》の規定による同法別表第一に掲げるコカ葉、モルヒネ等をいう。)については、麻薬営業者、麻薬診療施設の開設者又は麻薬研究施設の設置者(同法第26条第1項)

ホ けしがら(あへん法第3条第3号《けしがらの定義》に規定するけしの麻薬を抽出することができる部分(種子を除く。)をいう。)については、けし栽培者、麻薬製造業者又は麻薬研究施設の設置者(同法第7条第2項)

(3) 譲渡についての主務官庁等の承認等を要する場合
 法令の規定により、特定の財産の譲渡につき主務官庁その他第三者の承認、認可、許可、同意、届出等(以下「承認等」という。)を必要とするもの((4)に掲げる場合を除く。)については、その承認等がなければ権利の移転ができないから、これらの財産を換価する場合においては、権利の移転につき必ずその承認等を了すること。
 なお、上記の承認等を必要とする財産及びその承認等をする主務官庁等は、おおむね、次に掲げるとおりである(徴基通第89条関係20から24)。

イ 火薬類(火薬類取締法第2条《定義》に掲げる黒色火薬等の火薬、ニトログリセリン等の爆薬及び信管等の火工品をいう。ただし、同法第17条第1項各号《譲渡又は譲受の許可》の一に該当する場合の火薬、爆薬及び火工品を除く。)については、都道府県知事の許可(同法第17条)

ロ 日本の国籍を有する者又は日本の法令により設立された法人その他の団体が所有する国際船舶を、それらの者以外の者に譲渡する場合については、当該譲渡をしようとする日の20日前までの国土交通大臣への届出(106の(注)、海上運送法第44条の2)

ハ 漁港施設については、漁港漁場整備法第25条各号《漁港管理者の決定》に掲げる漁港ごとに、漁港管理者として当該各号に定める地方自治体の許可(同法第37条第1項)

ニ 銃砲(銃砲刀剣類所持等取締法第2条第1項《定義》に規定するけん銃、小銃、機関銃等をいう。)又は刀剣類(同法同条第2項《定義》に規定する刃渡り15センチメートル以上の刀、剣、やり等をいう。)については、買受人の住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可(同法第4条)

(注)

1 上記の銃砲又は刀剣類の譲渡については、銃砲刀剣類所持等取締法第21条の2《譲渡の制限》の規定により、その譲受人が同法第3条第1項第2号の2、第4号の4、第4号の5、第8号若しくは第12号《銃砲等を所持できる場合》に該当することを確認した場合又はその譲受人が同法第7条第1項《許可証の交付》の許可証を提示した場合でなければ、その譲渡ができないこととされていることに留意する。

2 上記の銃砲又は刀剣類については、銃砲刀剣類所持等取締法第3条《所持の禁止》の規定により、同条各号に該当する場合を除いては、その所持が禁止されているが、次の事項に留意する。

(1) 所持の許可については同法第4条《許可》の規定があること。

(2) 許可証、許可の失効、許可証の返納、許可とともにする譲渡等については、同法第7条から第9条《許可証、許可の失効及び許可証の返納》までの規定があること。

(3) 登録等については、同法第14条《登録》、第17条《登録を受けた銃砲又は刀剣類の譲受け、相続、貸付け又は保管の委託の届出等》、第18条《登録証とともにする譲渡等》等の規定があること。

(4) 携帯又は運搬については、同法第24条第1項《許可証及び登録証の携帯等》の規定があること。

(4) 特定の者の承認等を要する無体財産権等の場合
 無体財産権等で法令の規定により、これらの譲渡につき特定の者の承認、同意、承諾等(以下「特定の者の同意等」という。)を必要とするものについては、特定の者の同意等がなければ権利の移転ができないから、これらの権利を換価する場合においては、権利の移転につき特定の者の同意等を必要とすること。
 なお、特定の者の同意等を要する権利及びその同意等をする特定の者はおおむね次に掲げるとおりである。

イ 電話加入権については、NTTの承認

ロ 入漁権については、漁業権者の同意(漁業法第98条第3項)

ハ 定置漁業権及び区画漁業権については、都道府県知事の認可(漁業法第79条第1項)

ニ 特許権の実施権のうち専用実施権については、特許権者の承諾(特許法第77条第3項)、通常実施権については、特許法第83条第2項、第92条第3項、第4項若しくは第93条第2項《裁定の請求》、実用新案法第22条第3項《裁定の請求》又は意匠法第33条第3項《裁定の請求》の裁定による通常実施権を除き、特許権者の承諾(専用実施権についての通常実施権にあっては、特許権者及び専用実施権者の承諾(特許法第94条第1項))

ホ 実用新案権の実施権については、ニに準ずる(実用新案法第18条第3項、第24条第1項)。

ヘ 意匠権の実施権については、ニに準ずる(意匠法第27条第4項、第34条第1項)。

ト 商標権の使用権のうち専用使用権については、商標権者の承諾(商標法第30条第3項)、通常使用権については、商標権者の承諾(専用使用権についての通常使用権にあっては、商標権者及び専用使用権者の承諾(商標法第31条第3項))

チ 育成者権のうち専用利用権については、育成者権者の承諾(種苗法第25条第3項)、通常利用権については育成者権者の承諾(専用利用権についての通常利用権については、育成者権者及び専用利用権者の承諾(種苗法第29条第1項))

リ 回路配置利用権のうち専用利用権については、回路配置利用権者の承諾(半導体集積回路の回路配置に関する法律第16条第3項)、通常利用権については、回路配置利用権者の承諾(専用利用権についての通常利用権にあっては、回路配置利用権者及び専用利用権者の承諾(半導体集積回路の回路配置に関する法律第17条第3項))

ヌ 著作物を利用する権利については著作権者の同意(著作権法第63条第3項)

ル 持分会社(会社法第575条第1項《定款の作成》に規定する合名会社、合資会社及び合同会社をいう。以下同じ。)の社員の持分については、原則として、他の社員全員の承諾(会社法第585条第1項)

ヲ 持分会社の社員の持分のうち、業務を執行しない有限責任社員の持分については、業務を執行する社員全員の承諾(会社法第585条第2項)

ワ 協同組合等の組合員の持分については、組合等の承諾(中小企業等協同組合法第17条、水産業協同組合法第20条、第86条第1項、第92条第2項、第96条第2項、第100条第2項、第105条第2項、農業協同組合法第14条、森林組合法第30条第1項、第100条第1項、第109条第2項、農住組合法第17条第1項)

カ 信用金庫の会員の持分については、金庫の承諾(信用金庫法第15条)

ヨ 民法の組合の組合員の持分については、組合員全員の同意(民法第667条参照)

タ 無尽講又はたのもし(頼母子)講の講員の持口については、講員全員の同意(講規約に特約のある場合を除く。)

レ 営業無尽の加入者の権利については、会社の承認(会社の承認を要する旨の契約がある場合に限る。)

ソ 信託の受益権については、その信託の受託者の承諾又は受託者への通知(信託法第94条第1項)

ツ 公有水面埋立権については、都道府県知事の許可(公有水面埋立法第16条第1項)

(共有持分の換価)

150 共有持分の換価については、特に次の事項に留意する(徴基通第73条関係32から34まで参照)。

(1) 持分についての換価

イ 共有物についての滞納者の持分(持分権)の換価については、他の共有者の同意を必要としないこと。

ロ 他の共有者に対して、公売への参加を勧奨するほか随意契約により売却する場合には差押持分の買取りを勧奨すること。

ハ 持分の見積価額については、共有者である滞納者が他の共有者に対して有する債務の履行もその買受人が承継するので、その承継分に相当する部分につき考慮すること(民法第254条参照)。

(注) 持分の買受人は、新たに共有者となり、滞納者の有していた一切の権利(例えば、共有物の分割請求権)を承継するとともに、共有物を分離することができない共有者間の権利関係(例えば、分割禁止の特約、共有物の管理に関する特約等から生ずる権利義務等)もすべて承継することに留意する。

(2) 共有物の分割換価

イ (1)による持分の換価が実際上において困難な場合に、分割禁止の特約がなく、かつ、他に差し押さえるべき適当な財産がないときは、滞納者に代位して(通則法第42条、民法第423条)他の共有者の全員に対して共有物の分割を請求し(民法第256条第1項本文)、滞納者の分割物の引渡請求権を差し押さえ、分割物の引渡しを受けた上で、これを換価すること(徴基通第73条関係34の(1)参照)。
 ただし、その共有物について分割禁止の特約がある場合には、その分割禁止期間は分割を請求することができないこと(民法第256条第1項ただし書)。

(注) 民法第256条第1項ただし書《共有物の不分割契約の更新の期間》の規定に基づく共有物不分割契約がない限り、共有者の1人がした分割請求に対しては、他の共有者はこれを拒むことができないことに留意する。

ロ イにより分割を請求した場合で、各共有者又は共有者の一部が、分割の協議に応じないために分割の協議が調わないときは、滞納者に代位して裁判所に対し、他の共有者全員を被告として共有物分割の請求をすることとし(民法第258条第1項、大正13.11.20大判)、裁判の確定を待ってその現物分割された部分について差押えを行い、換価すること(徴基通第73条関係34の(2)参照)。
 なお、上記の場合において現物分割が不能であるとき又はこれによって著しくその価額が減少するおそれがあるときは、裁判所は、職権をもってその共有物を競売し、その売得金の分配を命ずることとなるので(民法第258条第3項)、この場合には換価をすることなく民事上の競売による滞納者の代金請求権を差し押さえて、これを滞納税額に充当すること。

(3) 船舶の共有持分等の換価
 船舶、区分所有建物、民法による組合、共同相続財産等の共有関係については、商法、区分所有法、民法等にそれぞれ共有に関する特別規定が存することに留意する(商法第692条から第700条まで、区分所有法第4条、第5条、第7条、第8条、第10条、第14条から第19条まで、第22条から第24条まで、民法第674条から第677条まで、第681条、第898条、第906条から第914条まで等)。

(共同抵当の目的となっている財産の換価)

151 同一の債権の担保として、数個の不動産(滞納者を異にするものを含む。)の上に抵当権の設定があるとき(共同抵当)において、その財産を換価する場合には、特に次に掲げる事項に留意する。

(1) 換価の方法
  共同抵当の目的となっている財産であっても、原則として、個々に換価するが、次のいずれにも該当するときは、当該財産を一括換価することができる(24の(2)参照)。

イ 共同抵当財産の価額が滞納税額を著しく超過しないこと。

ロ 共同抵当財産を一括換価することにより高価有利に売却できること。

ハ 一括換価することを不当とする事由がないと認められること。

(2) 共同抵当の目的となっている財産の一部に設定されている他の抵当権(以下「競合抵当権」という。)がある場合

イ 共同抵当の目的となっている財産を各別に換価する場合には、換価が容易である限り、原則として競合抵当権の設定されていない財産から換価するほか、次によること。

(イ) 競合抵当権が国税に劣後する場合には、国税の充当は、競合抵当権が設定されていない財産の売却代金からまず行うこと。

(ロ) 競合抵当権が共同抵当権に劣後する場合には、共同抵当権者に配当する金額は、共同抵当財産の各別の売却価額によってあん分すること(民法第392条)。

ロ 共同抵当財産を一括換価した場合には、売却代金の総額を各財産の見積価額に応じてあん分して得た額を各財産に対応する売却代金の額として、イの(イ)及び(ロ)に準ずること(民事執行法第86条第2項、徴収法第182条第2項、徴基通第128条関係7参照)。
 なお、「配当計算書謄本」には、財産ごと(権利関係が同一の財産にあっては、その権利関係に係る複数の財産ごと)に「配当計算書附属書類」を作成し、添付すること。

(電話加入権の換価)

152 電話加入権の換価については、特に次に掲げる事項に留意する。

(1) 買受人による支払義務の承継
 換価した電話加入権の買受人は、その譲受けにより、加入電話加入者(滞納者)の有していた一切の権利義務を承継することとなるが(電気通信事業法附則第9条、旧公衆電気通信法第38条第3項、NTTの電話サービス契約約款(以下「電話約款」という。)第21条第4項)、この場合における買受人の承継する義務とは、未払いの電話料金、延滞利息(電話約款第80条)、保証金(電話約款第78条)、割増金(電話約款第79条)、工事代金等(電話約款第73条から76条まで)の支払義務をいい、電報料金、電報宅送料、電話番号簿広告料、賠償金は含まれないこと。
 なお、差し押さえた電話加入権について上記の滞納に係る金額がある場合には、その見積価額の決定に際しては、NTTにおいて、当該電話加入権に係る上記の未納料金等を調査し、その金額相当額を電話加入権自体の評価額から控除すること(昭和54.10.30付徴徴2−21「電話加入権等に対する滞納処分手続について」(法令解釈通達)の別冊第6の1)。

(2) 譲渡承認
 滞納処分により電話加入権を換価した場合においても、NTTの譲渡承認がなければその譲渡の効力は生じないこととされているので(電気通信事業法附則第9条、旧公衆電気通信法第38条第1項、電話約款第21条第1項)、NTTの譲渡承認が得られない場合(電気通信事業法附則第9条、旧公衆電気通信法第38条第1項、電話約款第21条第3項)には売却決定を取り消すこと。

(3) 注意書等への記載
 電話加入権を換価する場合には、34(公告すべき事項)に掲げる事項を公売公告するほか、次の事項を必要に応じて注意書等に記載し、公売参加者に注意喚起すること(35の(5))。

イ 電話加入権の買受人は、加入電話加入者(滞納者)の権利移転のときまでの未払いの電話料金、延滞利息、解約金、割増金、工事代金等の支払義務を承継する旨

ロ NTTの譲渡承認が得られない場合には、売却決定を取り消す旨

(4) 加入契約の解除
 加入契約の解除については、NTTはその差押え後においても、電話約款第24条《当社が行う加入電話契約の解除》の規定により加入契約の解除をすることができることとされており、この場合には、遅くとも解約予定日の3日前までにその旨をNTTから電話又は書面により連絡があることとなっているから、この連絡を受けたときは、速やかに換価に付することとし、加入契約の解除予定日の前日までに(その後公売期日等を変更したときはその都度直ちに)NTTに対して電話又は書面により公売期日等を通知すること。
 なお、NTTは上記の通知を受けたときは、その期日までは加入契約の解除をしないこととされていることに留意する(昭和54.10.30付徴徴2−21「電話加入権等に対する滞納処分手続について」通達の別冊第4の7の(注)3)。

(注) 電話加入権を差し押さえたままで納税の猶予(通則法第46条)又は換価の猶予(徴収法第151条又は第151条の2)をしているものについては、NTTから上記の加入契約の解除の予告通知があった場合においても、その納税の猶予等の取消しを行った後でなければ、その電話加入権を換価に付することができないことに留意する。

(担保権の引受けを条件とする財産の換価)

153 担保権の引受けを条件とする財産の換価については、特に次に掲げる事項に留意する。

(1) 担保権の引受けを条件とする換価ができる場合
 差押財産等上に登記がされている質権、抵当権又は先取特権がある場合において、次に掲げる全ての要件に該当するときは、これらの負担を買受人に引き受けさせる方法により、当該財産を換価することができること(徴収法第124条第2項前段、徴収令第47条)。

イ 当該財産が不動産、船舶、航空機、自動車又は建設機械であること。

ロ 差押えに係る国税(特定参加差押不動産を換価する場合にあっては、換価同意行政機関等の滞納処分による差押えに係る国税、地方税又は公課を含む。)が当該質権、抵当権又は先取特権の被担保債権に劣後して徴収するものであること。

ハ 当該質権、抵当権又は先取特権の被担保債権の弁済期限が当該財産の売却決定期日から6月以内に到来しないものであること。

ニ 当該質権、抵当権又は先取特権を有する者から「担保権の引受けの方法による換価申出書」(様式308020-056)により、公売公告の日又は随意契約により売却する日の前日までに、担保権の引受けを条件とする換価の実施方についての申出があったこと。

(2) 公売公告への記載
 担保権の引受けを条件とする公売を実施する場合には、あらかじめ「公売公告」にその旨を記載すること(徴収法第95条第1項第9号、徴基通第95条関係17の(5))。

(3) 見積価額の決定
 担保権の引受けを条件とする換価を実施する場合における当該財産の見積価額の決定に際しては、当該財産自体の評価額から、その質権、抵当権又は先取特権の被担保債権の売却決定期日における債権相当額を推定して、その金額を控除することとして取り扱うこと。この場合においては、これらの担保権者、債務者等につきその内容を聴取する等の方法によりその金額を推定すること。

(4) 換価の効果
 担保権の引受けを条件とする換価の方法によった場合には、当該財産上の質権、抵当権又は先取特権は、換価によっても消滅せず、買受人は、その担保権の負担のある財産を取得することになること(徴基通第124条関係4、6)。

(5) 権利移転手続
 担保権の引受けを条件として当該財産を換価した場合の権利移転手続については、当該財産の権利移転の登記の嘱託に際して併せてするその担保権に係る登記の抹消は、嘱託しないこと。

(6) 担保権の引受けを条件とする換価をしない場合
 (1)の全ての要件を満たす場合においても、次に掲げるときは、担保権の引受けを条件とする換価はしないものとして取り扱うこと(徴基通第124条関係9)。

イ 最も先順位の担保権に対抗できない用益物権、賃借権等の権利があるとき。

ロ 仮登記(保全仮登記を含む。)がされた質権、抵当権及び先取特権であるとき。

ハ 担保権の引受けをさせることとした場合には、見積価額の決定に煩さな手続を要すると認められるときその他税務署長が担保権の引受けをさせることが徴収上適当でないと認めるとき。

(注) 上記の「担保権の引受けをさせることが徴収上適当でないと認めるとき」には、例えば、その財産の価額がきん少である場合、担保権の被担保債権の数額について争いがあるため見積価額の決定が困難な場合等が該当することに留意する。

(ゴルフ会員権及びリゾート会員権の換価)

154 預託金会員制のゴルフ会員権及びリゾート会員権の換価については、特に次の事項に留意する。

(1) 権利移転に必要な書類の整備
 ゴルフクラブ等の会則等により、ゴルフ会員権等の権利移転に際し、「預託金預り証書」等の提出を必要としている場合があることから、必要に応じ、公売実施決議前にこれらの書類等を整備すること。
  なお、権利移転の際に、ゴルフ場を経営する株式会社等が、譲渡人の「印鑑証明書」の提出を求めている場合であっても、公売処分においてはその提出を要しない。

(2) 注意書等への記載
 ゴルフ会員権等を換価する場合には、34(公告すべき事項)に掲げる事項を公売公告するほか、次の事項を必要に応じて注意書等に記載し、公売参加者に注意喚起すること(35の(6))。

イ 会員権の譲渡につきゴルフクラブ等の承認等が必要とされる場合にはその旨及び承認等が得られない場合には売却決定を取り消す旨

ロ 年会費等会員が負担すべき費用のうち未納となっている費用の支払義務は買受人が承継する旨

ハ 権利移転に伴う名義書換手続は買受人において行うべき旨及びこの場合の名義書換手数料は買受人の負担となる旨

(3) 見積価額の公告
 原則として見積価額を公告するものとして取り扱う(徴収法第99条第1項第3号)。

(4) 第三債務者等に対する売却決定通知書の交付
 買受人がその買受代金の全額を納付したときは、速やかに「売却決定通知書」を第三債務者であるゴルフ場を経営する株式会社等に交付する(徴収法第122条第1項)。また、買受人に対しては「売却決定通知書」を交付するほか(徴収法第118条)、権利移転手続に必要な証書類も併せて交付すること。

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