第4節 供託の手続

(供託)

138 換価代金等の供託については、次による(供託通達1、2、管理運営事務提要(事務手続編)第4編第5章第5節第2款第5の1、2参照)。

  1. (1) 供託する場合
     次に掲げる場合には、換価代金等を供託すること(供託した後の取扱いについては139参照)。
    1. イ 換価代金等の交付期日までに「配当計算書」に関する異議の申出があった場合において、換価代金等を交付することができないとき(133の(4)、徴収法第133条第3項、徴収令第50条第1項参照)。
    2. ロ 換価代金等を配当すべき債権が停止条件付きである場合(徴収法第133条第3項、徴収令第50条第4項)。

      (注) 保全差押え又は繰上保全差押えに代わる交付要求(徴収法第159条第9項、通則法第38条第4項)を受けている場合において、その交付要求に係る国税が確定していないときは、上記に該当するものとして取り扱う。
        なお、その国税が確定後納期限未到来の場合には、ニにより供託することに留意する(徴基通134条関係1)。

    3. ハ 換価代金等を配当すべき債権が、仮登記(保全仮登記を含む。)がされた質権、抵当権又は先取特権により担保される債権である場合(徴収法第133条第3項、徴収令第50条第4項)。

      (注) 換価代金等の交付期日までに、本登記に必要な要件を備えた場合又は仮登記の抹消登記の要件を備えた場合には、それらの事実を確認した上、換価代金を交付することに留意する(昭和54.7.2付徴徴4−3外4課共同「仮登記担保契約に関する法律の制定に伴う滞納処分の取扱いについて」通達の別紙第5の4ただし書)。

    4. ニ 換価代金等を配当すべき債権の弁済期が到来していない場合(徴収法第134条第1項)。
    5. ホ 換価代金等を配当すべき債権が、仮差押えの登記後又は執行停止に係る強制執行等による差押えの登記後に登記された抵当権等又は先取特権により担保される債権であるため、配当額が定まらない場合(滞調法第33条第2項及び第34条第2項において準用する民事執行法第91条第1項第6号、仮登記担保契約に関する法律第17条第4項参照)。

      (注) 仮差押えに係る本案訴訟又は執行停止に係る訴訟の結果の影響を受けない部分の国税その他の債権(徴収法第129条第1項)に相当する金銭は、供託することなく配当(交付)することに留意する(滞調法逐条通達第33条関係8の(1)の(注))。

       上記による配当を計算例によって示せば、次のとおりである。
      設例
    6. ヘ 次に掲げる理由により、換価代金等を交付することができない場合(通則法第121条、民法第494条)
      1. (イ) 配当を受けるべき債権者等に対し金額を受領すべき旨の催告をしたにもかかわらず受領の申出がないとき。

        (注) 上記により供託しようとする場合には、履行期限経過後速やかに適宜の書面により期限を指定(書面を発する日から起算しておおむね10日を経過する日とする。)し、これらの金銭を受領すべき旨及び指定期限までに受領しないときは供託する旨の予告をするものとする。

      2. (ロ) 配当を受けるべき債権者等が法律上又は事実上の事由に基づきこれらの金銭を受領することができないとき。例えば、その所在が不明であるとき、これらの者が制限行為能力者である場合に法定代理人がいないときがこれに当たる。

        (注) その所在が不明であるかどうかについては、郵便物の返戻があったことの一事のみによることなく、署内調査、実地調査、市町村役場の調査等その所在の確認について必要と認められる調査をして確認するものとする。

      3. (ハ) 換価事務担当者に過失がなく、配当を受けるべき債権者等を確知できないとき。例えば、これらの者の相続人が不明であるとき、当該配当金交付請求権等が譲渡されたが、その譲渡の効力について争いがあるときがこれに当たる。
    7. ト 換価代金等の配当金交付請求権又は滞納者等に交付すべき残余金について、差押命令、仮差押命令、滞納処分による差押え、配当要求等が競合したことにより、供託しなければならない場合(134の(5)のロ、ニ、ヘ、(6)参照)又はそれらがあったことにより供託することとした場合(134の(5)のイ、ハ、ト、(6)参照)
  2. (2) 供託の手続
     換価代金等を供託する場合の手続は、次による。
    1. イ 供託書等の提出
       税務署長は、「供託書」(供託規則第4号様式「その他の金銭供託のOCR用供託書」)を作成し、供託所(税務署等の所在地の法務局若しくは地方法務局又はその支局若しくは法務大臣の指定する出張所をいう。以下同じ。)に提出すること(供託法第2条、供託規則第13条)。
       なお、(1)のニ又はヘにより供託する場合には、供託官に対し、被供託者(供託金の還付を請求することができる者をいう。以下同じ。)への「供託通知書」の発送を請求することができる。このときには、その旨を「供託書」に記載した上、被供託者の数に応じて、供託書に封筒(表面に被供託者の住所(所在地)及び氏名(名称)を記載し、裏面に税務署等の所在地及び名称を記載し、簡易書留郵便(郵便法第45条第4項参照)料金に相当する額の郵便切手をちょう付する。)を添付すること(供託規則第16条、供託事務取扱手続準則第33条第1項、第45条第1項)。ただし、被供託者が所在不明であるときは、これらは添付する必要がない。

      (注) 税務署等の所在地に供託所がないときは、所在地の属する行政区画内における最寄りの供託所に供託することに留意する(昭和23.8.20民事甲第2378号民事局長通達)。

    2. ロ 供託金の払込み
      1. (イ) 供託金の受入れを取り扱わない供託所に供託しようとする場合には、供託官は、イによる供託を受理すべきものと認めるときは、「供託書正本」に供託を受理する旨、供託番号、一定の納入期日(原則として、供託を受理した日から1週間以後の日(供託事務取扱手続準則第37条))までに供託金を日本銀行に納入すべき旨及びその期日までに納入しないときは受理の決定は効力を失う旨を記載して記名押印し、「保管金払込書」(保管金払込事務等取扱規程第一号書式)とともに税務署長(供託者)に交付することになっているから、その交付を受けたときは、その納入期日までに日本銀行に供託金の払込みをすること(供託規則第18条)。この場合においては、供託官から交付を受けた「供託書正本」及び「保管金払込書」に供託金を添えて提出し、「供託書正本」に受入れの記載を受けて返還を求める。
      2. (ロ) 供託金の受入れを取り扱う供託所に供託をしようとする場合には、イに掲げる書類とともに供託金を当該供託所に提出すること。この場合において、供託官は、供託を受理すべきものと認めるときは、「供託書正本」に供託を受理する旨、供託番号及び供託金を受領した旨を記載して記名押印し、税務署長に交付されることとなっているから留意する(供託規則第20条)。
    3. ハ 執行裁判所等に対する事情届
        (1)のトにより供託した場合には、その事情を執行裁判所又は保全執行裁判所若しくは徴収職員に届け出なければならない(民事執行法第156条第3項、民事執行規則第138条、保全法第50条第5項、滞調法第20条の6第2項、第36条の6第2項、滞調令第12条の5、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する規則第43条)。この場合には、「供託書正本」を添付する必要があることに留意する。
  3. (3) 供託書正本の保管
     (2)により日本銀行又は供託官から交付を受けた「供託書正本」は、日付順に編てつし、金庫等に収蔵し保管すること。
  4. (4) 供託をした旨の通知
     被供託者等に対する供託をした旨の通知は、次によること。
    1. イ (1)のニ、ヘ及びト(134の(5)のイ、ハ及び(6)の場合に限る。)により供託した場合においては、供託官は、日本銀行から供託金受領の証書の送付を受けたとき又は供託金を受領したときは、「供託通知書」を被供託者に発送することとなっているから、税務署長は、被供託者に供託をした旨の通知(徴収法第134条第2項、通則法第121条、民法第495条第3項)をする必要がない(供託規則第18条第3項、第20条)。
    2. ロ (1)のイ、ロ、ハ及びホにより供託した場合には、異議に関係を有する者に対して供託した旨の通知を行わなければならないが(徴収法第133条第3項、徴収令第50条第1項、第4項)、この通知は、税務署長が供託すべき金銭を供託所又は日本銀行に提出し、「供託書正本」の交付を受けた後速やかに「供託の通知書」(供託通達第16号様式)により行う。
    3. ハ 滞納者が異議に関係を有する者に当たらない場合であっても、滞納者に対して「供託の通知書」により、供託した旨の通知を行うものとする(徴基通第133条関係19の(1)のなお書、(4))。

(供託後の配当等の措置)

139 138(供託)の(1)のイ、ロ、ハ及びホにより供託した場合において、それぞれ次に掲げる事由が生じたときは、「判決書」や「同意書」の提示を求める等の方法によりその事実を確認した上で配当を行う(徴収令第50条第2項、第4項、滞調法第33条第2項及び第34条第2項で準用する民事執行法第92条参照)。この場合には、配当を受けるべき者に「配当額支払証」(供託通達第12号様式)を交付するとともに「支払委託書」(供託通達第11号様式)を供託所に送付する(徴収令第50条第2項、第4項、供託規則第30条第1項)。

(注)

  1.  供託所に「支払委託書」を送付する場合には、簡易書留郵便とすること。
  2.  配当を受けるべき者に「配当額支払証」を交付する場合には、「供託の通知書」又は「印鑑証明書」の提示を求める等の方法により、本人であることを確認した上、「受領証」を徴してこれを交付すること。この場合において、当該「配当額支払証」を「供託金払渡請求書」(供託通達第7号様式)に添付して提出する旨の教示をすること(供託規則第30条第2項参照)。
  3.  138の(1)のニ、ヘ及びトにより供託した場合には、それによって配当手続は終了することに留意する。
  1. (1) 138の(1)のイにより供託した場合
     確定判決、異議に関係を有する者の全員の同意その他の理由により、換価代金等の交付を受けるべき者及び金額が明らかになったとき。
  2. (2) 138の(1)のロにより供託した場合
      停止条件が成就したとき(民法第127条第1項)若しくは成就したとみなされるとき(民法第130条)又は停止条件の不成就が確定したとき。
  3. (3) 138の(1)のハにより供託した場合
      仮登記が存続していたと仮定した場合、その本登記に必要な要件(本登記を命ずる確定判決、和解調書、認諾調書、調停調書等)を備えたとき又は仮登記の抹消登記の要件(被担保債権の不存在確認請求訴訟における認容の確定判決等)を備えたとき。
  4. (4) 138の(1)のホにより供託した場合
    1. イ 仮差押債権者が、本案訴訟において勝訴して確定判決を取得したとき若しくはこれに準ずる和解調書その他の債務名義を取得したとき又は敗訴判決の確定その他の仮差押執行が存続していたと仮定した場合のその取消事由(訴えの取下げ等)が生じたとき。
    2. ロ 強制執行等の執行停止に係る訴訟、本案訴訟等の終局判決の確定、請求の放棄・認諾、訴えの取下げ、訴訟上の和解等の事由により終了したとき。

(供託金の取戻し)

140 供託金の取戻しについては、次による(供託通達4、管理運営事務提要(事務手続編)第4編第5章第5節第2款第5の4参照)。

  1. (1) 供託金の取戻しをする場合
     次に掲げる場合には、供託金の取戻しをすることができること。
    1. イ 供託が錯誤に基づく場合(供託法第8条第2項)
    2. ロ 138(供託)により換価代金等を供託した後、その売却決定が取り消された場合
    3. ハ 138(供託)の(1)のホにより供託した後、執行裁判所に残余を交付することとなった場合(滞調法逐条通達第33条関係8の(2)のイの(ロ)、第34条関係9参照)
  2. (2) 供託金の取戻しの手続
    1. イ 供託金の取戻しをしようとするときは、「供託金払渡請求書」(供託通達第7号様式)に、「取戻しをする権利を有することを証する書面」を添付して供託所に提出すること(供託法第8条、供託規則第22条、第25条)。

      (注)

      1. 1 この書面については、次に留意すること(供託通達4の(2)のロの(ロ)参照)。
        1. (1) 供託の原因が消滅したことを理由として取戻しをしようとするときは、「供託原因消滅証明書(金銭用)」(供託通達第14号様式)等
        2. (2) 供託が錯誤によったことを事由として取戻しをしようとするときは、その事実を証する書面
      2. 2 138(供託)の(1)のヘにより供託した場合において、被供託者がその供託を受諾する旨を記載した書面又は供託を有効とする確定判決の謄本を供託所に提出していないときは、「供託金払渡請求書」のみを提出すれば足りることに留意する(民法第496条、供託規則第25条第1項ただし書)。
    2. ロ 徴収職員は、供託官が払渡しの請求を認可する旨の記載をした「供託金払渡請求書」の受領欄に記名押印をした上、これを供託官に提出し、引換えに日本銀行宛の記名式持参人払いの線引小切手を受領すること(供託規則第28条第1項、保管金払込事務等取扱規程第8条第1項、第3項)。
       なお、この小切手を日本銀行に提出し、現金を受領した場合には、「保管金提出書兼受入書」を作成し、管理運営事務提要(事務手続編)第4編第5章第5節第2款第2の1《領収に伴う取扱い》により処理すること。

      (注)

      1. 1 税務署長が供託金の取戻しを請求する場合には、昭和33.1.29付蔵計第87号「国を請求者とする供託金利息の取扱いについて」通達の適用はなく、供託金利息の請求ができることに留意する。
      2. 2 供託金の利息は、元金と同時に払渡しを受けることができることに留意する(供託規則第34条第1項)。

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