この章は、換価の効果及び換価財産の権利移転手続を定めたものである。
 なお、この章に定める権利移転手続に関する様式が関係機関により異なるときは、それぞれの機関において定めている様式による。

(換価の効果)

97 換価の効果については、次に留意する。

(注) 特定参加差押不動産を換価した場合は、この項の差押えに関する記述(不動産の差押えに関するものに限る。)については、換価同意行政機関等による差押えを指すものとする。

(1) 承継取得
 換価は、滞納者と買受人との間に売買契約を成立させるものであるから、買受人の権利取得は原始取得ではなく、滞納者からの承継取得であること(徴基通第89条関係7)。

(2) 担保権等の帰すう
 買受人が買受代金の納付により換価財産を取得したときは、その換価財産上の質権、抵当権、先取特権、留置権、担保のための仮登記に係る権利及び担保のための仮登記に基づく本登記(本登録を含む。以下同じ。)でその財産の差押え後にされたものに係る権利は消滅すること(徴収法第124条第1項前段、徴基通第89条関係8)。
 この質権、抵当権、先取特権には、仮登記(保全仮登記を含む。)がされた質権、抵当権、先取特権が含まれる(徴基通第124条関係1)。
 ただし、買受人に質権、抵当権又は先取特権を引き受けさせることを条件として換価した場合には、その引受けに係る質権、抵当権又は先取特権は消滅しないこと(徴収法第124条第2項後段)。
 なお、譲渡担保権者の物的納税責任に基づき譲渡担保財産に対して滞納処分を執行した場合において、滞納者がした再売買の予約の仮登記があるときは、その仮登記により保全される請求権も上記と同様に消滅すること(徴収法第124条第1項後段)。

(注)

  • 1 滞納処分による換価によって消滅する権利には、根担保目的の仮登記に係る権利も含まれることに留意する(徴基通第124条関係1-2)。
  • 2 担保のための仮登記に基づく本登記でその財産の差押え後にされたものに係る権利とは、担保のための仮登記のある財産が滞納処分により差し押さえられた後、仮登記担保契約に基づく本登記をしたものに係る権利をいうことに留意する(徴基通第124条関係2)。
  • 3 担保のための仮登記がある財産が特許権、意匠権、実用新案権、商標権、育成者権又は回路配置利用権のような不動産登記法の適用又は準用のない財産であるときは、利害関係人の承諾を要しないでその仮登録に基づく本登録をすることができるが、差押え後になされたその本登録は、換価により消滅することに留意する(徴基通第52条の2関係1の(注))。
  • 4 担保権の設定後に共有となった不動産の共有持分を換価した場合における担保権の登記の抹消は、「嘱託書」に抹消すべき登記として、「平成 年 月 日受付第 号担保権設定登記のうち共有者何某の持分に対する担保権」と記載することに留意する(徴基通第129条関係16)。

(3) 用益物権等の存続
 換価財産が不動産その他の登記を権利移転の対抗要件又は効力発生要件とする財産であって、その財産上に差押えの登記前に第三者に対抗できる地上権その他の用益物権、買戻権、賃借権、配偶者居住権、仮登記(担保のための仮登記を除く。以下この項において同じ。)等(以下「用益物権等」という。)がある場合には、その用益物権等は、換価によっても消滅しないこと。ただし、第三者に対抗できる用益物権等であっても、これらの権利の設定前に換価によって消滅する質権、抵当権、先取特権、留置権、買戻権又は担保のための仮登記がある場合には、その用益物権等も消滅すること(徴基通第89条関係9)。

(注)

  • 1 抵当権の設定登記後に登記その他の対抗要件を備えた賃借権(借地借家法第31条等)であっても、その賃貸借が平成16年4月1日に存在し(その後、差押え前に更新されたものを含む。)、民法第602条《短期賃貸借》に定める期間を超えないものである場合は、その賃借権は抵当権に対抗することができる(担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律附則第5条、徴基通第89条関係9)。
  • 2 不動産について差押えの登記がされる前に当該不動産に仮登記があり、その仮登記に優先する抵当権の設定登記がある不動産を公売した場合において、当該抵当権が公売処分によって消滅するときは、この抵当権に劣後する仮登記に係る権利も消滅するので、当該仮登記については、換価に伴い消滅する権利として登記の抹消の嘱託をすることに留意する(徴基通第125条関係2の(注)2)。
  • 3 公売処分によって消滅する権利の抹消の嘱託に遺漏があった場合において、当該遺漏に係る権利については、後日その抹消の嘱託のみをすることができることに留意する(徴基通第125条関係1の(注))。

(4) 賃借権等の消滅
 差押え前に換価財産上に(3)本文に掲げる賃借権以外の賃借権、使用貸借権等の権利が設定されている場合においても、これらの権利は、買受人に対抗することはできないから消滅すること(徴基通第89条関係10)。

(5) 土地の賃借権の存続
 換価により建物の所有を目的とする賃借地上の建物の所有権を取得した買受人は、その土地の賃借権も取得する(徴基通第89条関係11)。

(6) 仮差押え等の消滅
 換価財産上の仮差押えは、換価によって消滅する。
 また、仮処分が執行された財産を差し押さえた場合における換価については、次の事項に留意する。
 なお、滞納処分による差押え後に係争物に関する仮処分(保全法第23条第1項)が執行された場合、処分禁止の仮処分等差押えに対抗することができない仮処分の効力は、滞納処分による換価によって消滅する(民事執行法第59条第3項参照)が、仮処分債権者が、本案において係争物に係る実体上の所有権を主張しているときは、本案の帰すうが定まるまでの間は換価を行わないものとする(徴基通第140条関係21)。

イ 所有権についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合における換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わない(徴基通第140条関係13)。

ロ 所有権以外の権利の移転又は消滅についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合における換価は、当該不動産を仮処分の負担付きで換価できる場合等を除き、本案の帰すうが定まるまでの間は行わない(徴基通第140条関係14)。

ハ 所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分がされた不動産を差し押さえた場合における換価は、当該仮処分が担保権の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分であるときは行うことができるが、当該仮処分が不動産の使用又は収益をする権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分であるときは、本案の帰すうが定まるまでの間は換価を行わない(徴基通第140条関係15)。

ニ 不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについて、登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分がされている場合の換価については、イからハに準ずる(徴基通第140条関係16)。

ホ 不動産及び不動産以外の権利でその処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするもの以外の財産について処分禁止の仮処分がされている場合の換価については、イからハに準ずる(徴基通第140条関係17)。

ヘ 物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するため、債務者に対し、その物の占有の移転を禁止し、及びその占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずるとともに、執行官にその物の保管をさせ、かつ、債務者がその物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官がその物を保管している旨を公示させることを目的とする仮処分(保全法第62条)がされた物を差し押さえた場合における換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わない(徴基通第140条関係18)。

ト 建物収去土地明渡請求権を保全するための処分禁止の仮処分(保全法第55条)がされた建物を差し押さえた場合における換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わない(徴基通第140条関係19)。

チ 係争物に関する仮処分(保全法第23条第1項)のうち、イからトまでに掲げた以外の仮処分がされた財産を差し押さえた場合における換価は、本案の帰すうが定まるまでの間は行わない(徴基通第140条関係20)。

(7) 差押え後の権利の消滅
 換価財産につき差押え後に取得又は設定した所有権、担保権、用益物権等は、これらの権利を有していた者が当該換価財産の買受人に対してその権利を主張することができず、換価によって消滅すること(徴基通第89条関係13)。

(権利移転及び危険負担の移転の時期)

98 換価財産の権利移転及び危険負担の移転の時期は、次のとおりである。

(1) 権利移転の時期
 換価財産の権利移転の時期は、買受人が買受代金の全額を納付した時である(徴収法第116条第1項、徴基通第116条関係2)。
 なお、次に掲げる財産については、それぞれに掲げる要件を満たさなければ権利移転の効力が生じないことに留意する(徴基通第116条関係2)。

イ 鉱業権又は特定鉱業権の移転については鉱業原簿又は特定鉱業原簿への登録(鉱業法第59条第1項、第60条、日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法第32条第1項第1号)

ロ 特許権、実用新案権若しくは意匠権及びこれらについての専用実施権又は通常実施権の移転については特許原簿、実用新案原簿又は意匠原簿への登録(特許法第98条第1項、第99条第3項、実用新案法第26条、第18条第3項、第19条第3項、意匠法第36条、第27条第4項、第28条第3項)

ハ 商標権及びその専用使用権又は通常使用権の移転については商業原簿への登録(商標法第35条、第30条第4項、第31条第4項)

ニ 育成者権若しくは回路配置利用権及びこれらについての専用利用権又は通常利用権の移転については品種登録簿又は回路配置原簿への登録(種苗法第32条第1項、半導体集積回路の回路配置に関する法律第21条第1項)

ホ 電話加入権の移転については、NTTの承認(電気通信事業法附則第9条第1項、旧公衆電気通信法第38条第1項)

ヘ 農地又は採草放牧地の所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃貸借若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利の移転については、農業委員会の許可(農地法第3条第1項、第6項)

ト 定置漁業権及び区画漁業権の移転については、都道府県知事の許可(漁業法第79条第1項)

(2) 危険負担の移転の時期
 換価財産の換価に伴う危険負担の移転の時期は、買受代金の全額を納付した時である(徴基通第116条関係3)。
 なお、危険負担の移転については、次に留意する。

イ 換価財産の買受人から買受代金の全額の納付を受ける前において、その財産上に生じた危険(例えば、滞納者が保管している差押動産の盗難、差押建物の焼失等)は、滞納者が負担すること。

ロ 換価財産の買受人から買受代金の全額の納付を受けた後において、その財産上に生じた危険は、その財産の権利移転の登記手続の既未済又は現実の引渡しの有無にかかわらず、買受人が負担すること。

(注) 上記の場合には、買受代金の返還を要しないことに留意する。

ハ 上記(1)のイからトに掲げる一定の要件を満たさなければ権利移転の効力が生じない財産については、当該要件が満たされ、その権利が移転した時に、換価財産の換価に伴う危険負担が買受人に移転すること。

(動産の権利移転手続)

99 動産の権利移転手続については、次による(徴収法第119条)。

(1) 動産を搬出している場合
 換価に付すべき動産を公売の場所又は随意契約により売却する場所に搬出して換価した場合において、買受人が買受代金の全額を納付したときは、換価事務担当者は直ちにその動産を買受人に次のいずれかの方法により引き渡すこと(徴収法第119条第1項)。ただし、その搬出した動産を(2)に掲げる者以外の第三者(例えば、倉庫業者等(徴基通第60条関係4参照))に保管させている場合には、民法第184条《指図による占有の移転》の規定によって引渡しをすること(徴基通第119条関係1のただし書)。
 なお、換価した当該動産を買受人が受領しない等引渡しができない場合には、受領すべき旨の催告及び受領できない事情等についての所要の調査を実施した上で、税務署においては局徴収課と協議を行い、やむを得ない場合は、通則法第121条《供託》の規定に基づき、昭和44.12.11付徴徴2-30外1課共同「滞納処分における供託手続について」(法令解釈通達)(以下「供託通達」という。)により、これを供託すること。この場合には、その事績を明確にしておくこと。

イ 買受人に直接引渡しをする方法
 換価した動産については、原則として、買受人に対し直接の引渡しをする。この場合には、買受人から所要事項を記載した「公売財産引渡確認書」(様式308020-097)を徴するものとする。ただし、期日競り売りの方法により換価した場合には、「公売財産引渡確認書」を徴する方法に代えて「競落整理票」(甲片)(様式308020-101)の「買受人」欄に署名をさせる方法によることとして差し支えない。

ロ 買受人の指定する運送業者に運送させることにより買受人に引渡しをする方法
 期間入札又は期間競り売りの方法により換価した場合において、買受人が運送業者による運送を希望するときには、この方法によることができる。期間入札の場合には、買受代金の納付期限までに、買受人から「公売財産送付依頼書」(様式308020-098)とともに、住所(所在地)及び氏名(名称)を記載した運送伝票を提出させる。
 また、期間競り売りの場合には、買受代金の納付期限までに、買受人にインターネット上のサイトで運送業者や配達希望日時等の必要な情報を登録させる。ただし、買受人が当該サイトにこれらを登録せず、かつ、運送業者による運送を希望するときには、期間入札の場合に準じるものとする。
 なお、次に掲げる場合には、原則として運送業者への引渡しをしないこと。

(イ) 買受代金の納付の期限までに必要書類の提出がない場合若しくは提出書類に不備がある場合又は買受代金の納付の期限までにインターネット上のサイトにおいて運送依頼に関する登録がない場合若しくは登録内容に不備がある場合

(ロ) 買受人が運送業者に運送を依頼した場所が買受人の本人確認書類と相違する場合(買受人から直接その確認ができている場合を除く。)

(ハ) 買受人が運送業者に運送を依頼した受取人が買受人と相違する場合(買受人が海外居住者である場合における日本国内に居住する代理人を除く。)

(注) これらの取扱いは、買受人の責任において運送業者を指定し、税務署長を通じて手配した運送業者への公売財産の運送を依頼するものであり、運送中に生じた事故等による損害について税務署長は責任を負わない。

(2) 動産を搬出していない場合
 換価に付すべき動産を搬出しないで徴収法第60条第1項《差し押えた動産等の保管》の規定により滞納者又はその動産を占有する第三者に保管をさせたままで換価した場合には、買受人が買受代金の全額を納付したときは、直ちに次の手続をとること(徴基通第119条関係2)。

イ その買受人に対し、「売却決定通知書」を交付する方法によりその財産の引渡しをすること(徴収法第119条第2項前段)。この場合の「売却決定通知書」には、その動産の引渡しをする旨並びにその引渡しに係る動産を保管する者の氏名及び住所又は居所を付記すること(徴収令第45条第1項)。

ロ イによる引渡しをしたときは、「売却財産の引渡通知書」(様式308020-055)により、その旨を滞納者又は第三者に通知すること(徴収法第119条第2項後段、徴収令第45条第2項)。この場合において、当該動産を保管する者がその現実の引渡しを拒否したときは、国は、その現実の引渡しを行う義務を負わないが、あらかじめその旨を注意書等により買受人に対し明らかにしておくこと。

(有価証券の権利移転手続)

100 有価証券の権利移転手続については、次による。

 なお、振替株式等を換価した場合の権利移転手続等については、148(振替株式等の換価)に定めるところによる。

(注) 有価証券を換価した場合には、その買受人に「売却決定通知書」の交付を要しないが(徴収法第118条本文)、譲渡制限がある株式を換価した場合には、これを取得した者は、その株式会社に対して譲渡承認の請求をすることができることから、この場合における換価により取得したことを証する書面として、その買受人に対して、「売却決定通知書」を交付するものとして取り扱う(57なお書、会社法第137条、第138条第2号、会社法施行規則第24条第1項第3号参照)。

(1) 徴収職員が保管している場合
 徴収職員が保管している有価証券については、99(動産の権利移転手続)と同様の方法により、その引渡しをすること(99の(1)、徴収法第119条第1項)。

(2) 日本銀行に寄託している場合
 政府保管有価証券取扱規程により日本銀行(日本銀行本店、支店又は代理店をいう。以下同じ。)に寄託した有価証券については、同規程第12条及び第13条《寄託した政府保管有価証券の払渡手続》の定めるところにより、買受人をして日本銀行からその有価証券の払渡しを受けさせること。

(3) 裏書又は名義変更を要する場合
 有価証券の移転につき、裏書、名義変更又は流通回復の手続を必要とするものについては、一定の期限を指定して滞納者に権利移転に必要な裏書又は名義変更の手続をさせた上で、現実の引渡し手続をとること。この場合において、滞納者が一定の期限内にこれらの手続を行わないときは、税務署長は、滞納者に代わり次の手続をとること(徴収法第120条、徴基通第120条関係2)。
 なお、記名株式を換価した場合の権利移転手続は、株券の交付のみでよいから(会社法第128条第1項参照)、徴収法第120条《有価証券の裏書等》に規定する手続は必要でないことに留意する(徴基通第120条関係1)。

(注) 上記の「一定の期限」は、換価した有価証券の内容、数量等を考慮して定めることに留意すること(徴基通第120条関係1)。

イ 権利移転につき裏書を必要とする有価証券については、「国税徴収法第120条第2項の規定により滞納者何某に代わり、公売(又は随意契約)による買受人何某に譲渡する」旨をその証券の裏面に記載し、税務署長がこれに署名押印すること。

ロ 権利移転につき名義変更を必要とする有価証券については、買受人に、「公売(又は随意契約)により買受人何某に譲渡したから、国税徴収法第120条第2項の規定により、滞納者何某に代わり、名義変更を請求する」旨を記載した書面に税務署長が署名押印して交付し、その証券の発行者(名義書換代理人を含む。)に対して名義変更の請求をさせること。この場合において、名義変更手数料等名義の変更に伴って生ずる費用については、買受人に負担させること(徴収法第123条)。

(不動産の権利移転手続)

101 不動産登記法第115条《公売処分による登記》の規定の適用を受ける不動産の権利移転手続については、次による。

(注) 特定参加差押不動産を換価した場合は、この項の差押えに関する記述については、換価同意行政機関等による差押えを指すものとする。

(1) 買受人による権利移転の登記の請求
 買受人が買受代金の全額を納付した場合には、その買受人に対して、直ちに「売却決定通知書」を交付する(徴収法第118条)とともに、書面又は口頭により速やかに当該不動産の権利移転の登記の請求をさせること。この場合には、「換価事務進行状況表」にその旨を記録しておくこと。

(2) 住所証明書の提出
 税務署長は、買受人から(1)の請求があったときは、買受人の住所を証するもの(以下「住所証明書」という。)として、買受人の住所を証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第252条の19第1項に定める指定都市にあっては区長とする。)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(買受人が個人の場合には住民票の写し(個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第5項《定義》に規定する「個人番号」をいう。)の記載がないもの)、法人の場合には、商業登記簿に係る登記事項証明書等)を提出させること(不動産登記令第7条第1項、別表の30参照)。

(3) 登録免許税の負担
 税務署長は、買受人から(1)の請求があったときは、買受人に次により登録免許税を負担させること(徴収法第123条、登録免許税法附則第7条、登録免許税法施行令附則第3項)。

イ 登録免許税の納付の方法
 登録免許税の額に相当する金額を国に納付させて、その「領収証書」を提出させること。ただし、登録免許税の額が3万円以下であるときは、当該登録免許税の額に相当する印紙を提出させることとして差し支えない(登録免許税法第23条)。

ロ 登録免許税の課税標準
 登録免許税の課税標準となる不動産の価額は、次に掲げる価額によるものであるから、換価事務担当者は、その不動産について次に掲げる価額を調査するとともに、買受人が納付した登録免許税の額又は提出した登録免許税の額に相当する印紙の金額に誤りがないかどうかを確認すること。

(イ) 登記の嘱託の日がその年の1月1日から3月31日までの期間内であるもの
 その年の前年12月31日現在において地方税法第341条第9号《固定資産課税台帳》に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額

(ロ) 登記の嘱託の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるもの
 その年の1月1日現在において地方税法第341条第9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格に100分の100を乗じて計算した金額

(ハ) 地方税法第341条第9号に掲げる固定資産課税台帳に登録された価格のない不動産
 当該不動産の登記の嘱託の日において当該不動産に類似する不動産で、その固定資産課税台帳に登録された価格のあるものについて(イ)及び(ロ)の区分に応じた金額を基礎として当該登記所が認定した価額

(注)

1 換価したその不動産の所有権移転の際の登録免許税の税率は、ロに掲げる価額の1,000分の20であることに留意する(登録免許税法第9条、別表第1)。

2 買受人から登録免許税の額に相当する印紙を提出させる場合には、その印紙に消印をさせてはならないことに留意する。

(4) 印紙等受領書の交付
 買受人から登録免許税の「領収証書」又は印紙の提出を受けた場合には、「印紙等受領書」(様式308020-100)を買受人に交付するとともに、その受入れ及び払出しについては、「印紙等受払整理簿」(様式308020-099)により整理しておくこと。

(5) 移転登記の嘱託
 税務署長は、買受人から(1)の請求があったときは、「登記嘱託書」(様式306011-036・037)及び「登記原因証明書」を作成し、次により登記の嘱託を行うこと。
 なお、「登記嘱託書」の作成に当たっては、買受人に「登記識別情報」の通知希望の有無を確認し、「登記識別情報の通知に関する確認書」(様式306011-038)を徴した上で、買受人が「登記識別情報」の通知を希望しない場合には、「登記嘱託書」にその旨を表示することに留意する(不動産登記法第21条、不動産登記規則第64条第1項第1号参照)。

イ 登記嘱託の方法
 登記嘱託に当たっては、電子情報処理組織を使用する方法による登記申請又は登記情報を記載した書面を提出する方法による登記申請のいずれかの方法によらなければならない(不動産登記法第18条)が、当分の間、滞納処分等に係る登記嘱託手続は書面を提出する方法により行うものとする。

ロ 嘱託の手続
 「登記嘱託書」に「登記原因証明書」、買受人から提出があった「住所証明書」及び登録免許税の「領収証書」又は登録免許税の額に相当する印紙を添えて、遅滞なくその不動産の所在地を所轄する登記所に送達すること(登録免許税法第23条参照)。この場合において、換価に係る差押えの登記の抹消及び権利移転の登記に加え、換価に伴い消滅する権利の登記の抹消の登記を併せて嘱託するときは、上記の「登記嘱託書」に「配当計算書」の謄本を添付して行うこと(徴基通第121条関係4)。
 なお、同一債権を担保するため、担保のための仮登記が他の担保権と併用されていて、その仮登記又は担保権のうちいずれか先順位のものについて配当がされた場合には、後順位の仮登記又は担保権については、「配当計算書」の「備考」欄に、例えば、「何番抵当権(又は仮登記)と併用」と記載してその仮登記又は担保権の登記の抹消を嘱託する。
 また、滞納処分手続において効力を有しない根担保仮登記がある場合には、「配当計算書」の「備考」欄に、例えば、「根担保目的のため配当なし」と記載して、その仮登記の抹消登記を嘱託する(昭和56.1.7付徴徴4−1「滞納処分による換価財産上に担保のための仮登記等がある場合における当該仮登記等のまっ消登記の嘱託について」(事務運営指針))。
 おって、特定参加差押不動産の権利移転登記については、「登記原因証明書」の「登記の原因となる事実又は法律行為」欄に、徴収法第89条の2による換価執行決定を行った旨を記載する。

(注)

  • 1 差押えの登記に後れてなされた登記については、当該登記に係る権利の設定ないし移転が実体的に滞納処分庁ないし公売処分における買受人に対抗できるものであるか否かを問わず、公売処分における換価が行われた場合には不動産登記法第115条第2号により抹消の登記を嘱託することができることに留意する(徴基通第125条関係2の(注)3)。
  • 2 滞納処分による差押え後に強制執行等による差押えがされている不動産を滞納処分により換価したとき又は強制執行等による差押え後に滞納処分による差押えをしている不動産を滞納処分続行承認の決定(滞調法第33条、第26条第1項)によって滞納処分により換価したときは、強制執行等による差押えの登記は、登記官が職権で抹消する(滞調法第16条、第20条、滞調法逐条通達第33条関係6)から、その抹消の登記の嘱託をする必要がないことに留意する。なお、仮差押えの登記がある不動産を滞納処分により換価したときは、その抹消の登記の嘱託をしなければならないことに留意する(徴基通第140条関係11参照)。

ハ 送達費用
 「登記嘱託書」の送達に要する費用は、買受人の負担とし、その費用相当額の郵便切手(現金は受領しないこと。)を提出させること(徴基通第123条関係3参照)。この場合における受入れ及び払出しの処理については、(4)に準ずること。

(6) 移転登記の嘱託の特例

イ 差押登記後の第三取得者が買受人となった場合
 差押登記後にその不動産を取得した第三者が買受人となった場合には、差押登記後の権利移転の登記の抹消を嘱託するとともに、その第三者への権利移転登記の嘱託をすること(昭和30.5.31付民事甲第970号民事局長通達参照)。

ロ 買受人から第三者に譲渡されている場合
 換価した不動産の買受代金納付後所有権移転登記の嘱託前に当該不動産がその買受人から第三者に譲渡されたとしても、当該第三者への権利移転登記の嘱託をすることなく、買受人への権利移転登記の嘱託を行うこと。

ハ 物上保証人が買受人となった場合
 担保財産を滞納処分の例により処分した場合(通則法第52条参照)において、その物上保証人が買受人となったときは、当該処分により消滅した権利の登記の抹消のみを嘱託し、当該買受人への権利移転登記の嘱託は要しないこと(昭和35.7.7付民事甲第1725号民事局長通達参照)。

ニ 譲渡担保権者が買受人となった場合
 譲渡担保権者の物的納税責任の追及(徴収法第24条第1項)により譲渡担保財産を換価した場合において、その譲渡担保権者が買受人となったときは、ハに準じて処理すること。

ホ 死亡、合併等により名義が相違している場合
 滞納者の死亡、滞納者である法人の合併又は信託の受託者の変更若しくは分割があり、徴収法第139条第1項から第4項までの規定に基づき、滞納処分を続行した場合においては、買受人に代わって相続人、合併法人、新受託者又は分割承継法人たる受託者への権利移転の登記の嘱託をした後、買受人への権利移転の登記の嘱託を行うこと(徴基通第139条関係1参照)。

(7) 登記識別情報の交付
 買受人が「登記識別情報」の通知を希望した場合には、登記後、登記所から「登記完了証」とともに「登記識別情報」が発行されることから、「登記識別情報」を受領したときは、これを遅滞なく買受人に交付すること(不動産登記法第117条、不動産登記規則第181条)。この場合には、買受人から適宜の「受領書」を徴すること。
 なお、買受人からあらかじめ「登記識別情報」の郵送を依頼された場合には、簡易書留、書留又は配達証明による特殊取扱郵便により送付することとし、その費用相当額の郵便切手を提出させること(現金は受領しないこと。)。この場合における受入れ及び払出しの処理については、(4)に準ずること。

(注) 上記の「登記完了証」は、登記の完了の事実を証明する機能を有する通知である(不動産登記規則第181条参照)から、その交付を受けたときは、換価関係書類とともに保管することに留意する。

(8) 不動産の引渡し
 居住者又は占有者のある不動産を換価した場合の当該不動産の引渡しについて、その居住者又は占有者が、買受人からの当該不動産の引渡しの請求に応じない場合には、買受人は当該不動産の明渡しを求める民事訴訟を提起し、その勝訴判決に基づいて引渡しを受けることとなり、換価事務担当者において当該不動産の買受人への直接の引渡しはできないことに留意する。

(注)

1 不動産の明渡し訴訟の審理については、裁判所において特段の促進方の措置が採られていることに留意する(昭和34.6.12付徴徴4−19「国税滞納処分の手続により公売した不動産の明渡しに関する訴訟の審理の促進について」(事務運営指針))。

2 借地上の建物を換価した場合において、その買受人から借地借家法第20条第1項《建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可》に定める賃借権譲渡の許可(同条第5項《転貸借への準用》において準用する場合を含む。)の申立てに要する添付書類とするため、建物を換価により買い受けた事実及び建物の代金を支払った日についての証明の申請があったときは、その証明をして差し支えないことに留意する(昭和42.3.27付徴徴2−8外1課共同「借地上の建物を換価した場合の買受人に対する証明の取扱いについて」(事務運営指針)参照)。

(9) 登録免許税を納付しない場合等の事後処理
 換価した不動産の買受人が、(1)の権利移転の登記の請求をせず、かつ、(3)の「領収証書」又は印紙を提出しない場合においては、買受人に対してその請求をするよう催告するものとする。
 なお、催告してもその請求がされないときは、その換価に係る関係書類は、請求があるまでの間別途保存するものとする。

(注) 換価した不動産の買受人が上記の請求をしない場合においては、その請求があるまでの間は差押えの登記の抹消は行わないことに留意する。

(工場財団等の権利移転手続)

102 工場財団、鉱業財団、漁業財団、道路交通事業財団、港湾運送事業財団、観光施設財団及び立木の権利移転手続については、101(不動産の権利移転手続)に準じて行う(工場抵当法第14条第1項、鉱業抵当法第3条、漁業財団抵当法第6条、道路交通事業抵当法第8条、港湾運送事業法第26条、観光施設財団抵当法第8条、立木ニ関スル法律第2条第1項)。
 なお、立木を除き、次の点に留意すること(昭和31.6.14付民事甲第1273号民事局長通達参照)。

(1) 財団の所有権移転の嘱託(登記原因は「公売」)を行うとともに、財団の組成物である個々の土地、建物についても所有権移転の嘱託(登記原因は「財団の所有権移転」)を行うこと。
 なお、この場合における嘱託は、それぞれ別件で行うこと。

(2) 登録免許税は、財団の組成物である個々の土地、建物等の権利移転について課され、財団の権利移転については課されないこと。

(鉄道財団等の権利移転手続)

103 鉄道財団、軌道財団及び運河財団の権利移転の登記等の嘱託手続は、売却代金の配当手続を行った後に、国土交通大臣(鉄道財団及び軌道財団については国土交通省鉄道局、運河財団については国土交通省港湾局)に差押えの登録の抹消を嘱託して行う(鉄道抵当法第77条ノ2、第68条第2項、軌道ノ抵当ニ関スル法律第1条、運河法第13条、徴基通第121条関係5参照)。

(注) 国土交通大臣は、上記の嘱託を受けたときは、不動産又は自動車に関する権利の移転及び鉄道抵当法第11条第2項により効力を失った登記の抹消を嘱託することになっていることに留意する(鉄道抵当法第77条ノ2、第68条第3項、軌道ノ抵当ニ関スル法律第1条、運河法第13条)。

(自動車の権利移転手続)

104 自動車の権利移転の手続については、次による。

(1) 登録自動車の場合
 登録自動車(道路運送車両法の規定により登録を受けた自動車をいう。以下同じ。)の買受人が、その買受代金の全額を納付したときは、その買受人に対して直ちに「売却決定通知書」を交付するとともに(徴収法第118条)、書面又は口頭により、速やかに当該登録自動車の権利移転の請求をさせること。この場合には、「換価事務進行状況表」にその旨を記録しておくこと。
 なお、買受人からその所有権移転の登録の嘱託の請求があったときは、次に掲げる書類を地方運輸局運輸支局長(沖縄県にあっては、沖縄総合事務局陸運事務所長。以下同じ。)宛に送付して移転登録の嘱託を行うこと(徴収法第121条、徴収令第46条、道路運送車両法第13条第3項、徴基通第121条関係1、2)。この場合における登録自動車の権利の移転登録は、所有者の変更のあった日から15日以内に申請しなければならないから、おおむね5日以内に嘱託することができるように買受人に所要の書類を提出させるとともに登録に必要な手数料の額に相当する自動車検査登録印紙を貼付した「手数料納付書」を併せて提出させること(道路運送車両法第13条第1項、第102条、徴収法第123条、道路運送車両法関係手数料令)。

イ 「登録嘱託書」(様式306012-002)(自動車の登録及び検査に関する申請書等の様式等を定める省令(以下「自動車登録様式省令」という。)第2条に規定する第6号様式)

(注)

  • 1 登録権利者(買受人)の住所及び氏名については、個人の場合は共通番号管理システムを確認した上で、法人の場合は商業登記簿に係る登記事項証明書等の提示を求めこれを確認した上で、嘱託すること。
  • 2 買受人からの申出に係る自動車の使用の本拠の位置が所轄地方運輸局運輸支局長の管轄区域外となる場合の当該自動車に係る「登録嘱託書」は、変更後の使用の本拠の位置を所轄する地方運輸局運輸支局長あてに送付すること(昭和47.1.21付自管第212号、自車第927号「自動車登録ファイルに登録された自動車の差押登録の嘱託手続等について」運輸省自動車局長通達(以下「自動車差押手続47年通達」という。)4の(ロ)参照)。

ロ 「売却決定通知書」の謄本

ハ 「自動車検査証」(道路運送車両法第13条第3項)
 ただし、「自動車検査証」を添付することができないときは、その理由をイの「登録嘱託書」の「添付書類」欄に記載すること(自動車差押手続47年通達5参照)。

ニ 買受人の「自動車保管場所証明書」

(注) 登録自動車の移転登録(使用の本拠の位置の変更を伴う場合に限る。)を受けようとする者は、地方運輸局運輸支局長に対して上記の書面を提出しなければならないこととされており、その書面の提出がない場合には、その移転登録に応じないものとされていることに留意する(自動車の保管場所の確保等に関する法律第4条第2項)。

ホ 換価に伴い消滅する権利がある場合には、「配当計算書」の謄本(徴収法第125条、徴収令第46条)

(注) 地方運輸局運輸支局長は、滞納処分による差押え後に強制執行等による差押えのされた自動車について、公売による権利移転の登録をしたときは、強制執行等による差押えの登録を職権により抹消することとなっている(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する政令(以下「滞調令」という。)第12条の3第1項において準用する滞調法第16条)ので、換価に伴うこれらの抹消登録の嘱託は要しないこと(滞調法逐条通達第20条の2関係3の(7)において準用する第16条関係)。

ヘ 「自動車検査証記入申請書」(道路運送車両法第13条第2項、第67条第1項、自動車登録様式省令第2条第1項)
 なお、この「申請書」は、買受人に自動車登録様式省令第2条第1項に規定する第1号様式又は第2号様式を作成させて提出させること。

ト 買受人の「印鑑証明書」(自動車登録令第16条第1項)

(2) 大型特殊自動車で建設機械の場合
 大型特殊自動車で建設機械抵当法施行令第1条《建設機械の範囲》の規定による別表に掲げる建設機械については、107(建設機械の権利移転手続)により権利移転を行うほか、登録自動車の移転登録の嘱託をも行うものとして取り扱うこと(昭和43.9.30付徴徴2−27「建設機械である大型特殊自動車を滞納処分により換価した場合の登録嘱託の受否について」(事務運営指針))。
 なお、この場合における手続は、(1)に準じて行うこと(道路運送車両法第4条、自動車登録令第45条)。

(3) 未登録自動車等の場合

イ 未登録自動車及び一時抹消登録(道路運送車両法第16条)を受けた自動車(以下「未登録自動車等」という。)を換価した場合には、その買受人に対して「売却決定通知書」を交付すること。この場合には、その「売却決定通知書」の「売却した財産」欄に、次の事項を併せて記載すること(道路運送車両法第33条、道路運送車両法施行規則第64条参照)。

(注)

  • 1 買受人への「売却決定通知書」の交付は、買受人が未登録自動車等の新規登録を申請する場合に、「譲渡証明書」(道路運送車両法第33条)の添付を必要とするためであることに留意する(徴収法第118条、道路運送車両法第7条、道路運送車両法施行規則第64条参照)。
  • 2 買受人に対する「売却決定通知書」の交付については、差押財産を搬出しないで公売した場合にはもちろん、公売財産を搬出して公売した場合にもその交付をすることに留意する。
  • 3 買受人は、「申請書」に上記の「売却決定通知書」又はその謄本を添えて、単独で新規登録を申請できることに留意する(自動車登録令第11条、第15条)。

(イ) 換価年月日

(ロ) 自動車の表示(車名、型式及び形状、車台番号、原動機の型式、使用の本拠の位置等)

(ハ) 所有者の氏名又は名称及び住所

ロ 未登録自動車等が、抹消登録を受けたものである場合において、換価事務担当者が「抹消登録証明書」(道路運送車両法第16条第2項)を占有しているときは、「売却決定通知書」を交付する際に、併せてこれを買受人に交付するものとする(道路運送車両法第33条第1項)。
 なお、「抹消登録証明書」を交付することができない場合には、「売却決定通知書」にその旨を記載すること。

(注)

  • 1 「抹消登録証明書」は、抹消登録を受けた自動車につき、新規登録を申請する場合に提出するものであって、当該自動車1両につき1通に限り、抹消登録を受けた者に交付されることに留意する(道路運送車両法第16条第1項、第7条第1項)。
  • 2 「抹消登録証明書」を交付することができない場合は、新規登録の申請について、事前に地方運輸局と協議の上処理することに留意する。

(4) 自動車の引渡し
 登録自動車又は未登録自動車等を換価した場合において、買受人が買受代金の全額を納付したときは、これらの財産をその買受人に引き渡すこと(徴収法第119条)。この場合の引渡手続は、99(動産の権利移転手続)と同様であること。

(船舶の権利移転手続)

105 船舶の権利移転手続については、次に掲げる書類等の提供が必要であることを除き、101(不動産の権利移転手続)に定める不動産の場合と同様である(船舶登記令第35条、徴基通第121条関係4参照)。この場合における登記所は、その船舶の船籍港を管轄する登記所であることに留意する(船舶法第34条第1項、船舶登記令第4条)。
 なお、上記の船舶の権利移転に伴う船舶原簿への変更の登録及び「船舶国籍証書」の書換えは、買受人が当該船舶を買い受けた日から2週間以内に申請しなければならないこととされているから、速やかに権利移転の登記を嘱託し、併せて買受人にその手続をとるように勧奨するものとする。

(1) 買受人が個人である場合
 買受人が日本人であることを証する情報(船舶登記令第13条第1項第4号イ)

(2) 買受人が法人である場合
 買受人である法人の本店又は主たる事務所の所在地及び丸1当該法人の代表者の資格を証する情報、丸2当該法人が会社であるときは、当該会社の全ての代表者(丸1の代表者を除く。)その他の業務を執行する全ての役員の資格を証する情報、丸3当該法人が会社であるときは、全ての代表者及び業務を執行する役員の3分の2以上の者が日本人であることを証する情報、丸4当該法人が会社以外の法人であるときは、当該法人の全ての代表者(丸1の代表者を除く。)の資格を証する情報、丸5当該法人が会社以外の法人であるときは、当該法人の全ての代表者が日本人であることを証する情報(船舶登記令第13条第1項、別表1第8項)

(注) 上記の船舶の所有権の移転については、次の事項に留意する。

  • 1 船舶の所有権の移転については、船舶登記簿への登記及び「船舶国籍証書」への記載が第三者対抗要件とされていること(商法第687条、船舶法第34条第1項、第5条、船舶登記令第35条)。
  • 2 船舶の新所有者(買受人)は、船舶原簿に船舶所有者の変更登録をするため上記の公売処分による船舶の権利移転に係る登記簿の謄本若しくは抄本又は「登記済証」を添付して2週間以内に船舶所有者の変更の登録を管海官庁に申請しなければならないこと(船舶法第10条、船舶法施行細則第25条第1項)。
  • 3 2の申請に際しては、同時に「船舶国籍証書」の書換えの申請を要すること(船舶法第11条、船舶法施行細則第31条)。
  • 4 3の申請を受けた管海官庁は、「船舶国籍証書」を新たに調製してこれを申請者(買受人)に交付することとされていること(船舶法施行細則第34条)。
  • 5 4の交付があった場合には、遅滞なく旧「船舶国籍証書」を管海官庁に返還することとされていること(船舶法施行細則第35条)。
  • 6 「船舶国籍証書」を取り上げ、換価事務担当者が保管している場合において、船舶法第5条ノ2に規定する検認期日が到来するものについては、船舶所有者に船舶法施行細則第30条ノ3の規定による検認の申請をさせること。ただし、船舶所有者に検認の申請をさせることが著しく困難である場合には、換価事務担当者は、同施行細則第30条ノ5の規定による「船舶国籍証書」の提出期日の延期申請の手続をすること(船舶法第5条ノ2第3項参照)。この場合における「船舶国籍証書」の検認の申請は、滞納処分による換価により買受人となった者が、その権利移転の登記及び登録の手続を完了した後に行うこと(昭和55.11.27付徴徴4−12「民事執行法の施行に伴う滞納処分の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「民執法取扱通達」という。)第3の5の(2))。

(換価の結果日本船舶の要件を満たさなくなった船舶の権利移転手続)

106 換価の結果、日本船舶の要件(船舶法第1条)を満たさなくなった船舶の権利移転手続については、99(動産の権利移転手続)の(2)の動産と同様である。この場合において、「船舶国籍証書」を取り上げ、換価事務担当者が保管しているときは、「売却決定通知書」の写しに買受人が日本国籍を有しないことを証する書面及びその「船舶国籍証書」を添付して、管海官庁に通知すること(船舶法第14条、民執法取扱通達第3の5の(3))。

(注)

  • 1 換価に係る船舶が海上運送法施行規則第43条第1項《国際船舶》に規定する国際船舶である場合において、日本の国籍を有する者及び日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者に譲渡をしようとするときは、譲渡をしようとする日の20日前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならないとされていることに留意する(149の(3)のロ参照、海上運送法第44条の2)。
  • 2 管海官庁は、上記の通知を受けたときは船舶登録を抹消し(船舶法第14条第2項)、その登記の抹消を嘱託することとなっている。

(建設機械の権利移転手続)

107 建設機械の権利移転手続については、次による。

(1) 登記建設機械の場合
 登記建設機械(建設機械抵当法の規定により登記を受けた建設機械をいう。以下同じ。)の権利移転の登記の嘱託手続については、101(不動産の権利移転手続)に定める不動産の場合と同様である(建設機械登記令第16条、道路運送車両法第5条第2項、建設機械抵当法第7条、徴基通第121条関係4)。
 なお、登記建設機械のうち、自動車登録原簿に登録されている大型特殊自動車であるものについては、上記の権利移転の登記の嘱託手続を行うほか、自動車の権利移転登録の嘱託手続も行うことに留意する(104の(2)参照)。

(2) 未登記建設機械の場合
 未登記建設機械(建設機械抵当法の規定による登記を受けていない建設機械をいう。以下同じ。)を換価した場合には、その買受人に対して「売却決定通知書」を交付すること。
 なお、未登記建設機械のうち、自動車登録原簿に登録されている大型特殊自動車であるものについては、自動車の権利移転登録の嘱託手続を行うことに留意する(104の(2)参照)。

(3) 登記建設機械の場合の特例
 登記建設機械のうち、差押えをした後にその所有権保存登記のあったものについては、その登記は差押権者である国に対しては効力を生じないから(建設機械抵当法第3条第2項)、(2)により権利移転の手続を行うこと。

(4) 建設機械の引渡し
 登記建設機械又は未登記建設機械を換価した場合の引渡手続は、104(自動車の権利移転手続)の(4)と同様であること(徴収法第119条)。

(航空機の権利移転手続)

108 航空機の権利移転手続については、次による(徴収法第121条、徴収令第46条、航空機登録令第8条、第9条、第12条)。

(1) 買受人による権利移転の登録の請求
 航空機の買受人がその買受代金の全額を納付したときは、その買受人に対して直ちに「売却決定通知書」を交付するとともに(徴収法第118条)、書面又は口頭により、速やかに当該航空機の所有権移転の登録の請求をさせること。この場合には、「換価事務進行状況表」にその旨を記録しておくこと。
 なお、航空機の所有権移転の登録は、所有者の変更のあった日から15日以内に申請しなければならないから、おおむね5日以内に嘱託し、併せて買受人に対して速やかに国土交通省航空局へ出頭して「登録証明書」の交付等を受けるよう指示すること(航空法第7条の2)。

(2) 登録免許税の負担
 税務署長は、買受人から所有権移転の登録の請求があったときは、登録免許税を101(不動産の権利移転手続)の(3)に準じて負担させること。

(注) 航空機の所有権移転の場合の登録免許税の税率は、航空機の重量1トンにつき3万円であるから留意する(登録免許税法第9条、別表第1第3号)。

(3) 登録資格を有しない者
 買受人が、次のイからニまでに掲げる事由の一に該当するときは、航空機登録原簿に航空機の登録を行うことができないことに留意する(航空法第4条第1項)。

イ 日本の国籍を有しない人

ロ 外国又は外国の公共団体若しくはこれに準ずるもの

ハ 外国の法令に基づいて設立された法人その他の団体

ニ 法人であって、上記イからハに掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の3分の1以上若しくは議決権の3分の1以上を占めるもの

(4) 移転登録の嘱託
 税務署長は、買受人から所有権移転登録の請求があったときは、「航空機公売処分による登録嘱託書」を作成し、次に掲げる書類を添付して国土交通省航空局に対して権利移転の登録の嘱託を行うこと(昭和36.12.23付徴徴2−52「航空機差押登録等の嘱託手続について」(事務運営指針))。

イ 「売却決定通知書」の謄本

ロ 「印鑑証明書」

ハ 買受人が上記(3)に掲げる事由の一に該当しないことを証する書面

ニ 「登録証明書」
 ただし、「登録証明書」を添付することができないときは、その理由を「嘱託書」の「添付書類」欄に記載すること。

ホ 「登録免許税納付済領収証書」又は登録免許税の額に相当する印紙

(5) その他
 担保権等の抹消の嘱託その他の権利移転手続に関しては、101(不動産の権利移転手続)に定める不動産の権利移転手続に準ずること。

(換価の結果日本の国籍を有しなくなった航空機の権利移転手続)

109 換価の結果、航空法第4条《登録の要件》第1項各号に規定する者が買受人となり、したがって、日本の国籍を有しないこととなった航空機(航空法第4条第2項、第3条の2)の権利移転手続については、99(動産の権利移転手続)の(2)の動産と同様である。この場合において、徴収職員が「航空機登録証明書等」を取り上げているときは、その「航空機登録証明書等」を添付して、その旨を国土交通大臣(送付先は、国土交通省航空局)に通知すること(民執法取扱通達第3の6の(2))。

(電話加入権の権利移転手続)

110 電話加入権の権利移転手続は、次による。

(1) 第三債務者に対する売却決定通知書の交付
 電話加入権については、買受人がその買受代金の全額を納付したときは、速やかに「売却決定通知書」を第三債務者であるNTT(所轄電話局)に交付すること(徴収法第122条第1項、徴基通第122条関係2)。

(2) 買受人による権利移転手続
電話加入権は、買受人が単独でNTTに対して譲渡承認の請求をすることができるから、買受人に「売却決定通知書」を交付して、速やかに権利移転の手続を行わせること。この場合において、換価した電話加入権上に質権の設定があるときは、買受人からNTTに対し、併せてその抹消登録の請求を行わせること(電話加入権質に関する臨時特例法施行規則第8条第2項)。
 なお、買受人から相当の期間内にその電話加入権の権利移転の手続がされない場合における事後の処理手続については、101(不動産の権利移転手続)の(9)に準ずるものとする。

(注)

  • 1 譲渡承認済みの有無については、売却決定後相当の期間内に所轄電話局において確認するものとする。
  • 2 NTTは、滞納処分による差押え後に強制執行等による差押えのされている電話加入権、滞納処分続行承認の決定を受けた電話加入権又は滞納処分と競合する仮差押えの執行がされている電話加入権について滞納処分による換価が行われ、それに基づく譲渡承認をしたときは、強制執行等による差押え又は仮差押えの登録を抹消することとしていることに留意する。

(債権等の権利移転手続)

111 換価した債権又は無体財産権等のうち第三債務者等のある財産(電話加入権を除く。)の権利移転手続については、次による(徴収法第122条)。

(1) 第三債務者等に対する売却決定通知書の交付
 買受人が買受代金の全額を納付したときは、速やかに「売却決定通知書」を第三債務者等に交付すること。この場合においては、買受人にも「売却決定通知書」を交付することに留意する(徴収法第118条)。

(2) 債権証書等の引渡し
 取り上げた債権に関する証書(徴収法第65条)又は権利に関する証書(徴収法第73条第5項)があるときは、これを買受人に引き渡すこと(徴収法第122条第2項)。この場合においては、99(動産の権利移転手続)の(1)に準じて、その事績を明らかにしておくこと。

(3) 権利移転の登録を必要とする場合
 特許権、実用新案権若しくは意匠権及びこれらについての専用実施権又は通常実施権、商標権及びその専用使用権又は通常使用権、育成権若しくは回路配置利用権及びこれらについての専用利用権又は通常利用権、出版権及び登録公社債等に係る債権の権利移転の手続は、(1)及び(2)によるほか、101(不動産の権利移転手続)に定める不動産の権利移転手続に準じて行うこと(徴収法第121条、第125条、徴収令第46条)。

(鉱業権等の権利移転手続)

112 登録公社債等に係る債権、鉱業権、特定鉱業権、漁業権、入漁権、ダム使用権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、育成者権、回路配置利用権、著作権、著作隣接権、出版権等についての権利移転の嘱託の手続については、101(不動産の権利移転手続)に定める不動産の権利移転手続に準じて行う(徴収法第121条、第125条、徴収令第46条、徴基通第121条関係1から3まで)。

(小型船舶の権利移転手続)

113 小型船舶の登録等に関する法律(以下「小型船舶登録法」という。)の規定により登録を受けた小型船舶の権利移転手続については、次による(平成15.3.14付徴徴4-2「小型船舶に対する滞納処分手続等について」(事務運営指針)参照)。

(1) 換価した小型船舶の買受人の請求により、当該小型船舶の船籍港を管轄する日本小型船舶検査機構の支部に対し、「売却決定通知書」の謄本を添付した「移転登録嘱託書」により、その買受人への所有権移転登録の嘱託を行う。
 なお、上記の移転登録は、買受人が当該小型船舶を買い受けた日から15日以内に申請しなければならない(小型船舶登録法第10条第1項)こととされていることに留意する。

(2) 所有権移転登録の手数料は、買受人が負担する(小型船舶登録令第26条第2項)。

(注) 未登録の小型船舶については、動産として換価を行うことに留意する。

換価事務提要主要項目別へ戻る