第3節 見積価額の公告及び通知

 この節は、公売の公正かつ合理的な実施を保つための措置の一環として見積価額の公告制度が採られている趣旨にかんがみ、公告すべき財産の範囲及び公告の方法についての基準を定めたものである。

(見積価額の決定等)

41 見積価額は、平成26.6.27付徴徴3-7「公売財産評価事務提要の制定について」(事務運営指針)(以下「評価事務提要」という。)の定めるところにより決定する。この場合においては、差押財産等を公売により強制的に売却するためのものであることを考慮しなければならない(徴収法第98条第1項後段、徴基通第98条関係3本文)。
 なお、見積価額の決定に当たっては、次に掲げる事項に留意する。

(1) 見積価額の決定
 見積価額は、公売財産の時価に相当する価額(消費税及び地方消費税相当額を含んだ価額をいい、以下「基準価額」という。)を求めた上で、公売の特殊性を考慮した減価をその基準価額のおおむね30%程度の範囲内で的確に控除して決定する。ただし、買受人に対抗することができる公売財産上の負担があるときは、その負担に係る金額を更に控除して決定する(徴基通第98条関係2の(2)、3の(1)、(2)参照)。

(2) 鑑定人に対する評価の委託
 特に評価困難なもの及び見積価額が相当高額なものについては必要に応じて鑑定人にその評価を委託してその評価額を参考とし、その他のものについても努めて精通者の意見を徴して評価の適正を図ることとする(徴収法第98条第2項、徴基通第98条関係3の(3)参照)。
 なお、鑑定人に公売財産の評価を委託する場合には、公売財産の種類、性質などにより市場性が劣ること等による固有の減価(以下「市場性減価」という。)を適切に反映させた基準価額を求めることに留意する(徴基通第98条関係2の(2)の(注)、5参照)。

(一括換価する場合の見積価額の決定等)

41-2 複数の差押財産等を一括換価する場合の見積価額の決定に当たっては、41(見積価額の決定等)に定めるところによるほか、次に掲げる事項に留意する。

(1) 基準価額の算定
 一括換価する財産の評価に当たっては、原則として、一括換価する全ての財産を一体とした基準価額と各財産の基準価額を求める(鑑定人に評価を委託する場合は、同様の評価額の鑑定を依頼する。)。
 なお、次のいずれにも該当する場合は、全ての財産を一体とした基準価額のみを求めることとして差し支えない。

  • イ 一括換価する各財産の所有者が差押え(特定参加差押不動産の換価にあっては、特定差押え)の時点において同一であること。
  • ロ 担保権等の権利関係が公売公告時点において同一で、売却決定までの間に権利関係が変動しないことが明らかな財産であるなど、担保権者等に対する配当に支障を来すおそれがないと認められること。

    (注)

    1 全ての財産を一体とした基準価額と各財産の基準価額の合計額が一致していないときは、全ての財産を一体とした基準価額を各財産の基準価額によりあん分して、各財産に対応する基準価額を求めるものとする。

    2 あん分計算に当たり、1円未満の端数が生じる場合は、四捨五入により端数を処理するものとし、各財産を一体とした価額と各財産に対応する価額の合計に差が生じる場合は、各財産に対応する基準価額の多寡により調整する。

(2) 見積価額の決定
 (1)により全ての財産を一体とした基準価額と各財産に対応する基準価額を求めたときは、各財産に対応する基準価額から公売の特殊性を減価して各財産の見積価額を求めた上で、その見積価額を合計することにより、全ての財産を一体とした見積価額を決定するものとする。

(3) 見積価額評定調書の作成
 (2)により全ての財産を一体とした見積価額と各財産の見積価額を求めたときの「見積価額評定調書」(様式308020-009)には、全ての財産を一体とした見積価額と各財産の見積価額を記載する。
 なお、各財産の所有者が異なる場合には、財産の表示欄に各財産の所有者を明示する。

(見積価額公告の期限等)

42 公売財産のうち、次に掲げる財産を公売に付するときは、それぞれに掲げる日までに見積価額を公告しなければならない(徴収法第99条第1項)。

(注) 見積価額の公告は、換価事務の公正、公売参加の促進等を企図したものである。

  • (1) 不動産、船舶及び航空機  公売の日から3日前の日

    (注) 見積価額の公告は、公売の日の前日を第1日として逆算して3日目に当たる日の前日以前にしなければならないことに留意する。
     なお、上記の「3日目に当たる日の前日」が、休日等に当たるときは、これらの日の前日に公告すること(徴基通第99条関係2)。

  • (2) 競り売りの方法又は複数落札入札の方法により公売する財産((1)に掲げる財産を除く。)  公売の日の前日(ただし、公売財産が不相応の保存費を要し又はその価額を著しく減少するおそれがあると認めて公売公告の期間を短縮して公売する場合(26の(1)のロ参照)は、公売の日)

    (注) 「公売の日の前日」までに公告しなければならないとは、公売の日の前日に当たる日のうちには、公告しなければならないことをいい、また、「公売の日」までに公告しなければならないとは、公売する時前までに公告しなければならないことをいい、これらの日が、休日等に当たっても延長されないことに留意する(徴基通第99条関係3)。

  • (3) その他の財産で税務署長が公告を必要と認めるもの  公売の日の前日

    (注)

    1 (1)及び(2)以外の財産の見積価額についても、原則として公告するものとするが、値動きの激しい店頭取扱いの株券その他公売の日の前日に公告することが適当でないと認められるもの又は行政上公告することが適当でないと認められるもの等については、これを公告しないこととして差し支えない。

    2 上記の「公売の日の前日」については、(2)の(注)と同様である(徴基通第99条関係3)。

(見積価額公告の方法、場所等)

43 見積価額の公告については、次の事項に留意する。

(1) 見積価額公告は、「公売実施等決議書」により、必要な決裁を了した上で、「見積価額公告」(様式308020-037)によって行うものとするが、その方法及び場所等については、公売公告に準じて行うこと(37参照)。。
 なお、次に掲げる事項に留意する。

  • イ 複数の財産を一括換価する場合
    • (イ) 一括換価の方法により公売する旨を記載すること。
    • (ロ) 「公売財産の表示」欄には、一括換価する全ての財産を記載すること。
    • (ハ) 全ての財産を一体とした見積価額と各財産の見積価額を求めたときは、それらの見積価額を記載すること。
  • ロ 特定参加差押不動産を公売する場合
    • (イ) 換価執行決定に基づく公売である旨を記載すること。
    • (ロ) 差押財産と特定参加差押不動産を一括換価する場合は、該当する不動産について、特定参加差押不動産である旨を記載すること。

(2) 公売公告をするときまでに見積価額が決定されている場合には、「公売公告兼見積価額公告」により、その見積価額を公売公告と同時に公告するものとすること。

(3) 公売財産が動産である場合には、「見積価額公告(動産用)」(様式308020-038)を作成し、これをその動産にちょう付する等直接表示して上記(1)の見積価額公告に代えることができること(徴収法第99条第3項)。この場合には、適宜の方法により「見積価額はその動産に直接表示してある」旨を周知すること。ただし、搬出しない動産については、例えば、既に滞納者が事業を休廃止し、その差押動産を単に保管しているにすぎないような場合等見積価額をその動産に直接表示することとしても滞納者等の社会生活に著しく不利益とならないことが明らかであると認められる場合に限り、この取扱いによるものとすること。

(見積価額の通知)

44 公売公告と同時に見積価額を公告した場合には、「公売通知書」にその見積価額を併記して滞納者及び公売財産上の権利者に通知するものとする。
 なお、同通知書の作成に当たっては、次に掲げる事項に留意する。

  • (1) 複数の財産を一括換価する場合
    • イ 一括換価の方法により公売する旨を記載すること。
    • ロ 「公売財産の表示」欄には、一括換価する全ての財産を記載すること。
    • ハ 「公売に係る国税等の額」欄には、「公売財産の所有者」欄に記載された滞納者に係る滞納国税等のみを記載するとともに、その滞納者に係る公売処分の基礎となっている滞納国税等である旨を記載すること。
    • ニ 全ての財産を一体とした見積価額と各財産の見積価額を求めたときは、それらの見積価額を記載すること。
  • (2) 特定参加差押不動産を公売する場合
    • イ 換価執行決定に基づく公売である旨を記載すること。
    • ロ 差押財産と特定参加差押不動産を一括換価する場合は、該当する不動産について、特定参加差押不動産である旨を記載すること。
    • ハ 「公売に係る国税等の額」欄には、特定参加差押えに係る国税を記載すること。

(見積価額を公告しない場合)

45 見積価額を公告しない財産を公売するときは、その見積価額を記載した書面を封筒に入れ、封をして、入札書の提出をする場所であって入札者が封筒の状況を見ることができる場所に置かなければならない(徴収法第99条第2項、徴基通第99条関係8)。
 なお、この場合には、開札後においても、その見積価額を公開しないものとする(徴基通第99条関係9)。

(賃借権等の内容の公告)

46 公売財産上に賃借権(不動産又は船舶に係るものに限る。)又は地上権がある場合の権利の内容の公告については、次による。

  • (1) 見積価額を公告する場合において、その財産上に賃借権(不動産又は船舶に係るものに限る。)又は地上権があるときは、併せてその存続期限、借賃若しくは地代その他これらの権利の内容(前払いの借賃若しくは地代又は敷金があるときは、これらに関する事項を含む。)を公告すること(徴収法第99条第4項、徴基通第99条関係6)。
  • (2) (1)の賃借権又は地上権の内容の記載に当たっては、不動産登記簿又は船舶登記簿に登記されているものについては当該登記簿の表示によるが(当該登記簿の表示と事実が相違している場合には、その内容を併記する。)、登記なくして対抗できる賃借権又は地上権(借地借家法第31条、農地法第16条等)があるときは、できるだけその権利者及び滞納者の双方について調査を行い、契約書等により把握した客観的な事実によること。この場合において、契約書等によって客観的な事実を把握できないときは、例えば、「滞納者及び借地権者の双方から聴取したところによれば地代何円と申し立てている。」等と記載することとする。
      なお、公売財産上に、配偶者居住権、地役権、永小作権、採石権、租鉱権等その財産を評価するに当たって重要と認められる権利及び建物の居住形態等についても上記に準じて取り扱うものとする。

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