第4節 差押手続等の確認

(差押手続についての確認)

11 差押手続の適正性については、おおむね次に掲げるところにより確認し、把握した事実に基づき所要の措置を講ずるものとする。

  • (1) 督促を必要とするものについては、その督促がされているか(通則法第37条)。
  • (2) 納税の猶予(通則法第46条第1項から第3項まで)、不服申立てに伴う徴収の猶予(通則法第105条第2項、第6項)等法令の規定により差押えができない場合であるにもかかわらず差押えをしていないか(昭和41.8.22付徴徴4-13外5課共同「国税徴収法基本通達の全文改正について」(法令解釈通達)(以下「徴基通」という。)第47条関係16)。
  • (3) 捜索に引き続き差押えをした場合には、「差押調書」に、差押えをした徴収職員の署名押印(記名押印を含む。)及び立会人の署名(記名を含む。以下同じ。)がされているか、また、立会人の署名がない場合にはその理由を記載しているか(国税徴収法施行令(以下「徴収令」という。)第21条第1項、第2項)。
  • (4) 徴収法第54条各号《差押調書》の一に該当する財産を差し押さえた場合には、「差押調書謄本」を滞納者に交付しているか(徴収法第54条、徴収令第21条)。捜索によってこれらの財産を差し押さえた場合には、その「差押調書謄本」を捜索を受けた滞納者又は第三者及びこれらの者以外の立会人に交付しているか(徴収法第146条第3項、徴収令第21条第2項、第26条の2第2項)。
  • (5) 動産(徴基通第54条関係2に規定する動産をいう。以下同じ。)又は有価証券(徴基通第54条関係2に規定する有価証券をいう。以下同じ。)を差し押さえた場合には、これらの財産を徴収職員が適法に占有しているか(徴収法第56条第1項、徴収令第23条参照)。この場合において、その動産又は有価証券を滞納者又はその財産を占有する第三者に保管させているときは、「封印」、「公示書」その他差押えを明白にする方法により、差し押さえた旨を表示しているか(徴収法第60条第2項、徴収令第26条)。さらに、上記の財産の保管については、次の措置が採られているか(徴収法第60条第1項)。
    • イ 滞納者に保管させている場合には保管命令(徴基通第60条関係8)
    • ロ 上記の財産を占有する第三者に保管させている場合で、運搬が困難なものについては保管命令(徴基通第60条関係9)
    • ハ ロの場合で、運搬が困難でないものについてはその者の同意(徴基通第60条関係12)
  • (6) 無体財産権等(徴収法第5章第1節第2款《動産又は有価証券の差押》、第3款《債権の差押》及び第4款《不動産等の差押》の規定の適用を受けない財産をいう。以下同じ。)のうち特許権、著作権その他第三債務者等(第三債務者又はこれに準ずる者をいう。以下同じ。)のない財産を差し押さえた場合には、滞納者に対して「差押書」が送達されているか(徴収法第72条第1項)。また、無体財産権等でその権利の移転又は処分の制限につき登記(登録を含む。以下同じ。)を効力発生要件又は対抗要件とするものを差し押さえたときは、差押えの登記がされているか(徴収法第72条第3項、第5項)。
  • (7) 無体財産権等のうち、電話加入権、合名会社の社員の持分その他第三債務者等がある財産を差し押さえた場合には、第三債務者等に対する「差押通知書」が送達されているか(徴収法第73条第1項)。また、これらの財産で、その権利の移転又は処分の制限につき登記を効力発生要件又は対抗要件とするものを差し押さえたときは、差押えの登記がされているか(徴収法第73条第3項、第4項)。
  • (8) 不動産(徴収法第68条第1項《不動産の差押手続》に規定する不動産をいう。以下同じ。)、船舶(徴収法第70条第1項《船舶又は航空機の差押》に規定する船舶をいう。以下同じ。)、航空機(同条同項に規定する航空機をいう。以下同じ。)、自動車(徴収法第71条第1項《自動車、建設機械又は小型船舶の差押え》に規定する自動車をいう。以下同じ。)、建設機械(同条同項に規定する建設機械をいう。以下同じ。)又は小型船舶(同条同項に規定する小型船舶をいう。以下同じ。)を差し押さえた場合には、滞納者に対して「差押書」が送達されているか(徴収法第68条第1項、第70条第1項、第71条第1項)。また、その差押えの登記がされているか(徴収法第68条第3項、第4項、第70条第1項、第71条第1項)。
  • (9) 債権(徴収法第54条第2号《債権の定義》に規定する債権をいう。以下同じ。)を換価に付する場合(徴収法第89条第2項)においては、第三債務者に対して「債権差押通知書」が送達されているか(徴収法第62条第1項)。また、債権のうち、その移転について登録を要するものを差し押さえたときは、その差押えの登録がされているか(徴収法第62条第4項)。
  • (10) 「差押書」、第三債務者等に対する「差押通知書」等が返戻された場合には、更に交付送達、公示送達等の方法により送達されているか(通則法第12条から第14条)。
     また、公示送達の方法によった場合には、公売公告をする日(随意契約により売却する場合には、その売却の通知書を発する日)が、その公示送達の効力の発生後となるか。
  • (11) 債権が抵当権又は登記することができる質権若しくは先取特権の被担保債権であるときは、その差押えの登記がされているか(徴収法第64条前段)。また、その抵当権若しくは質権が設定されている財産又は先取特権がある財産の権利者(第三債務者を除く。)に差し押さえた旨の通知がされているか(徴収法第64条後段)。
  • (12) 質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利(担保のための仮登記に係る権利を除く。)の目的となっている財産を差し押さえた場合には、これらの権利者に対して差押えの通知をしているか(徴収法第55条第1号)。
     なお、上記の「質権、抵当権、先取特権」には、民事保全法(以下「保全法」という。)第53条第2項《不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行》(同法第54条《不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行》において準用する場合を含む。)の規定による仮処分の仮登記(以下「保全仮登記」という。)がされた質権、抵当権及び先取特権が含まれる(徴基通第55条関係8、徴収法第133条第3項、徴収令第50条第4項参照)。
  • (13) 仮登記(仮登録を含む。以下同じ。)がある財産を差し押さえた場合には、その仮登記の権利者に対して差押えの通知をしているか(徴収法第55条第2号)。この場合において、その仮登記が、担保のための仮登記(徴収法第23条第1項《法定納期限等以前にされた仮登記により担保される債権の優先等》に規定する担保のための仮登記をいう。以下同じ。)であるときは、仮登記権利者に対してその旨の通知をしているか(徴収令第22条第1項第3号)。
  • (注) 昭和53年改正前の徴収法第23条が適用される担保目的の仮登記(仮登記担保契約に関する法律附則第5条参照)については、昭和53年改正前の徴収法第23条第2項(昭和53年改正前の徴収令第7条)の通知がされているか否かを確認する必要があることに留意する。
  • (14) 仮差押え又は仮処分を受けている財産を差し押さえた場合には、保全執行裁判所又は執行官に対して差押えの通知をしているか(徴収法第55条第3号)。
  • (15) 第二次納税義務者、保証人又は徴収法第24条《譲渡担保権者の物的納税責任》に規定する譲渡担保財産(納税者がその所有する財産を譲渡し、その譲渡により債務の担保の目的となっている財産をいう。以下同じ。)につき差押えをした場合には、その差押えが、徴収法第32条第1項《第二次納税義務者に対する納付通知》若しくは通則法第52条第2項《保証人に対する納付通知》に規定する「納付通知書」、徴収法第32条第2項《第二次納税義務者に対する納付催告》若しくは通則法第52条第3項《保証人に対する納付催告》に規定する「納付催告書」又は徴収法第24条第2項《譲渡担保権者に対する告知》に規定する譲渡担保権者(譲渡担保財産の権利者をいう。以下同じ。)に対する「告知書」を送達した後に行われているか。
     なお、上記の納付通知又は告知をする場合において、その者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。以下同じ。)の所在地を所轄する税務署長及び納税者に対してその旨を通知しているか(通則法第52条第2項、徴収法第32条第1項、第24条第2項)。
  • (16) 財産の差押えに当たっては、その財産上の第三者の権利の尊重につき配慮されているか(徴収法第49条)。
  • (17) 差押財産につき差押換えの請求(徴収法第50条第1項、第51条第2項)又は差押換えの申出(徴収法第79条第2項第2号)がされているか否か。また、当該請求又は申出がされている場合には適切な措置が採られているか。
  • (18) 連帯納付責任があるものについては、次の配慮がされているか(昭和45.6.24付徴管2―43外9課共同「国税通則法基本通達(徴収部関係)の制定について」(法令解釈通達)(以下「通則法基本通達」という。)第8条関係4参照)。
    • イ 相互連帯納付責任者(相続税法第34条第1項、第2項)に対する差押えは、固有納税義務額だけでなく、相互連帯納付責任額を考慮して行われているか。また、他の相互連帯納付責任者の固有納税義務額につき延納、納税の猶予又は換価の猶予がされているときは、その期間に対するそれに見合う額について滞納処分の執行が見合わされているか。
    • ロ 一方連帯納付責任(相続税法第34条第3項、第4項)の場合には、一方連帯納付責任者に対し、納税の催告及び督促を経た後に差押えがされているか。また、その納税の催告及び督促は、納税者に対して滞納処分を執行してもなお徴収不足を生ずると認める場合においてされているか。さらに、納税者の固有納税義務につき延納、納税の猶予又は換価の猶予がされているときは、その期間、一方連帯納付責任者に対する徴収手続が見合わされているか。
  • (19) (1)から(18)までに掲げるもののほか、法令の規定(例えば、徴収法第58条第2項、第3項、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律(以下「滞調法」という。)第21条第2項、第3項、第29条第2項等)により差押手続が特定されているものについては、その規定に従って適法に差押手続が行われているか。

(差押財産等についての確認)

12 差押財産等の確認については、その財産が徴収法その他の法令の規定により差押えが禁止されているか否かを次により調査し、把握した事実に基づき所要の措置を講ずるものとする。
 なお、差押財産等の確認に当たっては、単に関係書類の調査にとどめることなく、必要に応じてその現況の確認調査も併せて行うことに留意する。

  • (1) 確認すべき事項
    • イ 徴収法の規定によるもの
      • (イ) 差押財産が、一般の差押禁止財産に該当していないか(徴収法第75条)。
      • (ロ) 差押財産等が、条件付差押禁止財産に該当する場合には、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供しないためにやむを得ず差押えをしたものであるか(徴収法第78条)。
    • ロ 他の法令の規定によるもの
       差押財産等が、徴収法以外の法令の規定により差押えが禁止されているもの(例えば、生活保護法の規定により被保護者が既に給付を受けた保護金品(生活保護法第58条)、工場抵当法の規定により抵当権の目的となっている財産を個々の財産として単独に差し押さえた場合のその財産(工場抵当法第13条第2項)等)に該当しないか(徴基通第75条関係25、昭和58.7.13付徴徴4−2「差押禁止財産の範囲及び差押えの登記又は登録を嘱託する場合の関係機関について」(法令解釈通達)の別表1参照。)。
  • (2) 確認結果に基づく所要の措置
    • イ 差押財産の場合
       差押財産が、上記(1)のイの(イ)又はロに該当する場合には、差押えを解除すること。また、上記(1)のイの(ロ)に該当する場合において、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、差押換えをすること。
       なお、一般の差押禁止財産又は条件付差押禁止財産であるか否かについて判定が困難な場合において、他に差押えに適する財産があるときは、これら以外の財産に差押換えをすること。
    • ロ 特定参加差押不動産の場合
       特定参加差押不動産が、上記(1)のロに該当する場合には、特定参加差押えを解除すること。
       また、上記(1)のイの(ロ)に該当する場合において、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その財産を差し押さえること。

(注) 滞納者が提供した財産を差し押さえた場合は、換価執行決定を取り消すことができる(徴収法第89条の3第2項第2号)。

(法令の規定による換価の制限の有無)

13 次に掲げる国税については、原則として、それぞれ次に掲げる期間内は換価をすることができないことに留意する(徴基通第89条関係6)。
 なお、上記の換価の制限に該当していた場合においても、その制限期間経過後、納付すべき税額についてなお納付がないときは、換価に付すべき対象となるので、その旨を符せん表示する等の措置を講じておくものとする。

(注) 国税徴収法第89条の2第1項の「国税に関する法律の規定で換価をすることができないこととするものの適用があるとき」とは、特定参加差押不動産の換価に当たっては、参加差押えに係る国税によりその財産を差し押さえたとしたときに換価が制限される場合であり、その規定については、次に掲げる期間内と同様である(徴基通第89条の2関係4)。

  • (1) 納税者の国税を第二次納税義務者又は保証人から徴収する場合におけるその第二次納税義務者及び保証人の納付すべき国税  その納税者の財産を換価に付すまでの期間(徴収法第32条第4項、通則法第52条第5項)又は第二次納税義務者若しくは保証人が、「納付通知書」による告知、「納付催告書」による督促若しくはこれらに係る国税に関する滞納処分につき訴えを提起した場合におけるその訴訟の係属する期間(徴収法第90条第3項)
  • (2) 担保のための仮登記がされた財産を差し押さえた場合の徴収法第55条第2号《仮登記の権利者に対する差押えの通知》の通知(担保のための仮登記に係るものに限る。)に係る国税  同条第2号の通知に係る差押えにつき訴えを提起した場合におけるその訴訟の係属する期間(徴収法第90条第3項)
  • (3) 徴収法第24条第1項《譲渡担保財産からの国税の徴収》の規定により譲渡担保財産から徴収する納税者の国税  その納税者の財産を換価に付すまでの期間(徴収法第24条第3項、第32条第4項)又はその譲渡担保権者が同条第2項の告知(同条第4項の規定による場合のものを含む。)若しくはこれに係る国税に関する滞納処分につき訴えを提起した場合におけるその訴訟の係属する期間(徴収法第90条第3項)
  • (4) 徴収法第50条第3項《第三者による換価の申立てと換価の制限》の申立てがあった場合において、その申立てに係る財産が換価の著しく困難なもの又はその申立者以外の第三者(滞納者を除く。)の権利の目的となっているもの以外のものであるときの、その申立てに係る財産についてのその差押えをすべき国税  その申立てがあった時からその申立てに係る財産を換価に付すまでの期間
  • (5) 徴収法第151条第1項又は第151条の2第1項《換価の猶予の要件等》の規定による換価の猶予がされている場合におけるその猶予された国税  その猶予期間
  • (6) 通則法第23条第5項ただし書《更正の請求があった場合の徴収の猶予》又は第105条第2項及び第6項《不服申立てに係る徴収の猶予等》の規定による徴収の猶予がされている場合におけるその猶予された国税  その猶予期間
  • (7) 通則法第46条第1項から第3項まで《納税の猶予の要件》等の規定による納税の猶予がされている場合におけるその猶予された国税  その猶予期間(通則法第48条第1項等)(徴基通第89条関係6(7))
  • (8) 不服申立てに係る国税  その不服申立てについての決定又は裁決があるまでの期間(通則法第105条第1項ただし書)
  • (9) 通則法第105条第2項及び第6項《不服申立てに係る滞納処分の続行の停止等》の規定により滞納処分の続行が停止されている場合におけるその停止に係る国税 その続行の停止期間
  • (10) 滞調法第9条《強制執行続行の決定》等の規定により強制執行等(強制執行又は担保権の実行としての競売をいう。以下同じ。)の続行の決定があった場合のその滞納処分による差押えに係る国税  その強制執行等の係属する期間(滞調法第10条、第22条等)
  • (11) 会社更生法第24条第2項《滞納処分の中止命令等》の規定により滞納処分(共益債権を徴収するためのものを除く。)の中止命令がされた場合におけるその中止に係る国税  その中止命令の決定があった日から2月を経過した時又は更生手続開始の決定があった時のいずれか早い時までの期間(会社更生法第24条第3項参照)
  • (12) 会社更生法第25条第1項《包括的禁止命令》の規定により包括的禁止命令がされた場合における既にされている滞納処分に係る国税  その包括的禁止命令の日から2月を経過した時又は更生手続開始の決定があった時のいずれか早い時までの期間(会社更生法第25条第3項参照)
  • (13) 会社更生法第41条《更生手続開始の決定》の規定により更生手続開始の決定があった場合におけるその更生会社の滞納国税(共益債権を除く。)  その更生手続開始の決定があった日から1年間(1年経過前に更生計画が認可されることなく更生手続が終了し、又は更生計画が認可されたときは、その終了又は認可の時までの間)(会社更生法第50条第2項)
  • (14) 会社更生法第169条第1項《租税等の請求権の取扱い》の規定による猶予がされている場合におけるその猶予された国税  その猶予期間
  • (15) 没収保全がされている財産に対してした滞納処分に係る国税  その没収保全の効力が失われ、又は代替金が納付されるまでの期間(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第40条第1項、第35項、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律第19条第4項、国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律第47条)
  • (16) 行政事件訴訟法第25条第2項本文《執行停止》の規定により執行の停止を命ぜられた処分に係る国税  その停止期間
  • (17) 企業担保権の実行手続の開始があった株式会社に係る国税  その実行手続の係属する期間(企業担保法第28条)
  • (18) 予定納税額に係る所得税  その年分の所得税に係る確定申告期限までの期間(所得税法第117条)。
     なお、法人税、消費税等の中間申告分については換価の制限がないことに留意する。
    (注) 上記のほか、次に掲げるものについては、法令の規定によりその換価が制限されることに留意する。
    • 1 果実は成熟した後、蚕は繭となった後でなければ換価することができないこと(徴収法第90条第1項、徴基通第90条関係3、4参照)。
    • 2 生産工程中における仕掛品(栽培品その他これらに類するものを含む。)で、完成品となり、又は一定の生産過程に達するのでなければその価額が著しく低くて通常の取引に適しないものについては、完成品となった後又は一定の生産過程に達した後でなければ換価することができないこと(徴収法第90条第2項、徴基通第90条関係5から8参照)。
    • 3 差押財産等で、土地収用法第5条《権利の収用又は使用》等の規定により収用されたもの、刑法第19条《没収》の規定により没収されたもの等については、当該差押えの効力が失われることとなるため、換価することができないこと(徴基通第47条関係53)。
    • 4 保全差押え(徴収法第159条第1項)又は繰上保全差押え(通則法第38条第3項)により差し押さえた財産で、その差押えに係る国税につき納付すべき額が確定していないものについては、その確定があった後でなければ、換価することができないこと(徴収法第159条第8項、通則法第38条第4項)。

(特に換価をしないことを適当とする場合)

14 次に掲げるときは、換価をしないものとする。

  • (1) 通則法第55条第1項第3号《納付委託》の規定により納付委託を受けたとき。
  • (2) 賦課交渉中、相続があった場合における承認又は放棄をすべき熟慮期間中(民法第915条)及び訴えの提起があった場合で特に換価をしないことが適当と認められるとき。
  • (3) その他特に換価をしないことを適当とするとき。

(差押えに係る滞納国税についての確認)

15 差押え又は特定参加差押えに係る滞納国税が、納付、充当、更正の取消し等により異動しているか否かを確認し、おおむね次により処理するものとする。

  • (1) 滞納国税の全額が、納付、充当、更正の取消し等により消滅した場合において、差押解除又は特定参加差押えの解除の手続がされていないときは、所要の措置を講ずること(徴収法第79条第1項第1号、第88条第1項)。この場合においては、その「差押調書」又は「参加差押調書」に解除を行った旨を明確に記載しておくこと。
     なお、特定参加差押えを解除した場合は、換価執行決定を取り消すことに留意する(徴収法第89条の3第1項第1号参照)。
  • (2) 滞納国税の一部が、納付、充当、更正の取消し等により消滅している場合においては、16(超過差押えの有無についての確認)により差押解除又は換価執行決定の取消しを検討し、所要の措置を講ずること(徴収法第79条第2項第1号、第89条の3第2項第1号)。
  • (3) 換価の実施につき、法令上の制限を受けている国税(以下「制限国税」という。)と法令上の制限を受けていない国税(以下「非制限国税」という。)とを併せて同一の「差押調書」により差し押さえている場合において、他に差押えに適する財産がないときは、おおむね次により処理すること。
     なお、この場合においては、差押財産についての権利変動の有無、優先被担保債権の有無、参加差押えの有無等を総合的に検討して行うこと。

    (注) 差押えの前において制限国税と非制限国税とが明らかである場合においては、徴収上支障のない限りこれらの国税について同一の「差押調書」により差し押さえることのないように留意する。この場合において、他に差押えに適する財産がないときは、非制限国税について差押えを行い、制限国税については交付要求(参加差押えを含む。以下同じ。)をする等の配慮が必要となること。

    • イ 差押えを解除しても徴収上不利にならない場合
      • (イ) 差押財産が可分物の場合には、差押えを解除するとともに、解除した財産を制限国税に対応する部分と非制限国税に対応する部分とに分離し、それぞれの部分について改めて差押えをすること。
      • (ロ) 差押財産が不可分物(物の性状から分割することができない1個の動産のようなもの、分割することはできるが分割することにより物の経済的価値を著しく害する1棟の建物のようなもの、法律上分割して売却することができない工場財団の組成物件のようなもの等)の場合には、差押えを解除するとともに、解除した財産を非制限国税について改めて差押えをし、制限国税については交付要求をすること。
    • ロ 差押えを解除すると徴収上不利になる場合
       差押えを解除することが徴収上不利となる場合には、差押えを継続し、換価の制限が解除された後に換価を実施すること。
       ただし、換価の制限が解除されるまでに長期間を要し、差押財産の価額が相当に減少する場合(通則法第105条第1項ただし書に該当する場合を除く。)等において、差押財産を直ちに換価することが、換価の制限の解除後に換価することに比して徴収上有利であると認められるときは、制限国税に対応する差押えを解除し、非制限国税について差押財産の換価を実施しても差し支えない。この場合において、非制限国税を徴収してもなお残余金を生ずると認められるときは、制限国税について交付要求をすること。

      (注) 差押財産が可分物の場合には、16(超過差押えの有無についての確認)による確認及びその処理をしなければならないことに留意する。

(超過差押えの有無についての確認)

16 差押財産等の処分予定価額が、差押えに係る滞納国税又は特定参加差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の額を著しく超えるか否かについて確認し、著しく超えると認められるときは、おおむね次により処理する(徴基通第48条関係2、3、第89条の3関係6から8まで参照)。

  • (1) 他に換価が容易で、かつ、滞納国税に見合う適当な財産があるときは、その財産を差し押さえて換価をすることとし、既に差し押さえた財産の差押解除又は換価執行決定の取消しをすること。
  • (2) 他に適当な財産がない場合において、差押財産が不可分物であるときは、その財産を換価すること。
  • (3) 差押財産等が可分物であるときは、差押え又は特定参加差押えに係る滞納国税の徴収に必要な範囲の財産について換価を実施するものとし、その他の財産の差押解除又は換価執行の取消しをすること。

(追加差押えの必要性についての確認)

17 差押財産等の処分予定価額が、徴収しようとする滞納国税の額に不足するか否かについて確認し、不足すると認められるときは、おおむね次により処理する。
 なお、追加して差し押さえることができる財産があるかどうかの調査に当たっては、単に滞納者宅、営業所等だけの調査にとどめることなく、公簿上の財産の有無等についても広く調査し、その調査事績を「滞納処分票」等に記録しておくことに留意する。

  • (1) 他に追加して差し押さえることができる財産があるときは、その財産を差し押さえ、又は差押換えをして換価を実施すること。

    (注) 差押財産等の処分予定価額が、徴収しようとする滞納国税の額に不足することが明らかに認められるにもかかわらず追加して差し押さえることのできる財産の有無を調査しないで換価を実施したために、滞納者が任意に他の財産を処分し、そのことにより徴収不足を生ずることがないよう留意する。

  • (2) 差押財産等が担保権付財産であって、その差押財産等の売却見込代金から優先私債権を控除して滞納国税に充当すべき額が著しく少ないときは、その財産の差押換え又は追加差押えについて検討し、所要の処理をした上で換価を実施すること。

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