第3節 建物の評価に当たっての留意事項

1 増築部分の評価

建物の増築部分について、当該増築部分が差し押さえた建物の構成部分となるか、独立の建物であるかは、増築部分が差し押さえた建物に付合(民法第242条)又は付加(民法第370条)しているか否かによるため、当該増築部分が差し押さえた建物の構成部分と認められるときは、増築部分の価格を加算して評価するものとする(昭和43.6.13最高判参照)。ただし、増築部分が独立の建物(区分所有建物として登記されている場合等。区分所有法第1条)と認められるときは、当該増築部分に対し差押えの効力が及ばないため、当該増築部分を別途差押えの上、差し押さえた建物と併せて評価することに留意する。

2 建物に附帯する門、塀等の参酌

建物に附帯する門、塀等については、建物の一部として評価するが、特にそれ自体が相当の財産価値を有すると認められる場合には、門、塀等のみを独立して評価し、建物の価格に加算する。

3 破損減耗等の調整

原価法により評価する場合において、当該建物が過度の使用、管理状況不良、未使用のままの放置等の事情により、通常経過年数に伴う減価償却の程度を超えて著しく破損減耗し、又は陳腐化(建物の構造、様式その他が時代遅れとなって、著しく価値が減少している場合をいう。)しているなどの事情があるものについては、その現況に応じ相当と認める価格を減価修正する。ただし、実際耐用年数及び償却率等においてその減額を実質上行っているときには、この減価修正は行わない。

4 未納の電気料金、水道料金、ガス料金等の控除

電気料金、水道料金、ガス料金等が未納となっている場合で、これらの未納料金を公売財産の買受人が負担することが確実であると認められるときは、これらの料金相当額を、公売特殊性減価後に控除する。

5 賃借人の付加した造作等の調整

建物の賃借人が付加した造作で造作買取請求の目的となるもの(借地借家法第33条参照)については、本節1《増築部分の評価》と同様に評価し、造作部分の価額を控除する。また、賃借人が当該建物につき有益費(必要経費を含む。)を支出しており、それに基づき当該建物の価格が増加しているとき等の場合には、その有益費の償還請求(民法第608条)をすることができることから、その有益費相当額を控除することに留意する。

(注) 造作については、「建物に付加したる畳・建具等の造作すなわち建物の使用上の便宜を増すために建物に施設し(ただし、建物の構成部分に属しないこと。)、その結果、建物の客観的価値を増加させているものにして、建物から分離することが経済上不利になるものをいう。」としている裁判例(昭和28.3.5岐阜地判参照)がある。

6 共有持分

建物の共有持分は、分割の可能性や難易度、用途、残余部分の買収の可能性、残余持分権者への権利の売却の可能性等の要因が存在するため、共有となっている土地の一部の持分を評価する場合は、適切に市場性減価による調整を行う。

7 利用価値の調整

公売財産が一般の建物と比較して、通風、間取り、採光、立地条件、敷地面積と建物面積との関係及び方位等につき著しく異なると認められるときは、所要の調整を加えるものとする。

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