第1節 総則

1 土地の類型

(1) 宅地

宅地とは、居住、商業活動、工業生産等の用に供される建物等の敷地の用に供されることが合理的と判断される土地をいう。具体的には、更地、建付地、底地に分類されるが、その他に底地の評価と密接な関連を有するものとして、借地権及び区分地上権がある。

イ 更地

更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。したがって、地上権又は賃貸借契約のある場合であっても、地上権又は賃借権についての登記がなく、かつ、1土地の上に建物等がないとき又は2現に材料置場等として使用されていないときの宅地については、更地として取り扱う。

ロ 建付地

建付地とは、建物等の用に供されている敷地で、建物等及びその敷地が同一の所有者に属し、かつ、当該所有者により使用され、その敷地の使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。

ハ 底地

底地とは、宅地について借地権の付着している場合の当該宅地をいう。
 なお、使用貸借のように、法律上の対抗要件を具備していない借地権が付着している場合における当該建物の敷地についても、底地として取り扱う。

ニ 借地権

借地権とは、法律上の借地権(借地借家法第2条第1項、仮登記担保法第10条、民法第388条、第605条、徴収法第127条等)のほか、全ての宅地の使用権(建築材料置場、展覧会の仮設会場等のための一時使用権で、当該宅地の買受人が立退料等を負担する必要がないと認められるものを除く。)をいう。ただし、使用権がない場合であっても、現に建物等があり、立退等のために買受人がその費用の負担を要すると認められるときは、借地権に準じて取り扱う。

ホ 区分地上権

区分地上権とは、工作物を所有するため、地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権をいう。

(2) 農地

農地とは、農業生産活動のうち、耕作又は養畜のための採草若しくは家畜の放牧の用に供されることが合理的と判断される土地をいう。

(3) 林地

林地とは、林業生産活動のうち、木竹又は特用林産物の生育に供されることが合理的と判断される土地をいう。

(4) 見込地

見込地とは、ある類型の土地から他の類型の土地へと転換しつつある土地(例えば、農地から宅地へ転換しつつある土地)をいう。

2 土地の評価の原則

(1) 評価の単位

土地は1平方メートルをもって評価単位とする。ただし、農地又は山林等については、その所在する地域の取引慣行に基づき、適宜の評価単位(1a、1ha等)として差し支えない。

(2) 土地の評価方法

土地の評価は、原則として取引事例比較法により行うが、収益還元法 又は原価法等の他の評価方法が適用できる場合は、必要に応じてこれらの評価方法により算出された価格も比較検討し、適正な評価額を求めることとする。
 なお、適当な取引事例を収集できない場合は、公売財産の属する近隣地域又は類似地域にある標準地の公示価格又は基準地の標準価格から合理的に算出して得た価格により評価するものとする。
 また、上記により評価を行うことが困難な場合には、公売財産の属する地域の土地相場(指値)又は財産評価基本通達の定めにより求めた価格を参考として評価して差し支えない。

(3) 共有持分

土地の共有持分は、分割の可能性や用途、買受人が他の共有持分を取得できる可能性及び取得した共有持分の売却の可能性等の要因が存在するため、共有となっている土地の一部の持分を評価する場合は、適切に市場性減価による調整を行う。

(4) 土壌汚染地又は土壌汚染が疑われる土地

公売財産が土壌汚染地である場合、また、土壌汚染地であることが疑われる場合は、価格形成に重大な影響を与えるため、状況に応じて適切に市場性減価による調整を行う。

3 取引事例の収集に当たっての留意事項

(1) 取引事例の収集

土地の価格は、位置、面積、形状等が類似している場合であっても、更地の場合と底地の場合とにより、また、借地権の付着している土地にあってはその権利の内容によりそれぞれ異なるため、取引事例の収集に当たっては、公売財産と具体的条件が同一の取引事例を求めることが望ましい。しかし、実際には、具体的条件が同一である取引事例の収集は困難であることが多いことから、その場合には、公売財産と位置、面積、形状等の類似する土地の取引事例を収集する。

(2) 建物と土地が一括して売却された取引事例の活用

建物と土地が一括して売却された取引事例があり、その建物が新しく、しかもその建物が土地の最有効使用の状態にあるときには、その取引事例価格から建物自体の価格を控除することによって更地の取引事例として活用することができる(この方法を「配分法」という。)。
 また、建物がその土地の最有効使用の状態にないときは、相当額が当該土地から建付減価されているものが比較的多い。このため、建付減価が取引価格に影響していると認められる場合には、その建付減価について取引当事者の申立て、精通者の意見を聴取した上で減価の程度を補正することによって、更地の取引事例として活用することができる。

(3) 同一地域にある取引事例の選択

土地の取引事例の収集に当たっては、都道府県が定める都市計画による次の区域区分と同一区域内にあるものを求めることとする。
 なお、例えば、住居地域であっても近い将来に開発が進み商業地域になることが見込まれる場合において、取引事例が住宅地として売買されているときは、所要の調整を行う必要が生じることから、資料の選択には十分留意する。

イ 市街化区域

市街化区域とは、既に市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいい(都市計画法第7条第2項)、下記(イ)から(ヲ)の用途地域が定められている(都市計画法第8条)。

  • (イ) 第一種低層住居専用地域(低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ロ) 第二種低層住居専用地域(主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ハ) 第一種中高層住居専用地域(中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ニ) 第二種中高層住居専用地域(主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ホ) 第一種住居地域(住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ヘ) 第二種住居地域(主として住居の環境を保護するため定める地域)
  • (ト) 準住居地域(道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域)
  • (チ) 近隣商業地域(近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するために定める地域)
  • (リ) 商業地域(主として商業その他の業務の利便を増進するために定める地域)
  • (ヌ) 準工業地域(主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するために定める地域)
  • (ル) 工業地域(主として工業の利便を増進するために定める地域)
  • (ヲ) 工業専用地域(工業の利便を増進するために定める地域)

ロ 市街化調整区域

市街化調整区域とは、都市計画区域のうち、市街化を抑制すべきとされている区域をいう(都市計画法第7条第3項)。

ハ 区域区分の定めのない都市計画区域

区域区分の定めのない都市計画区域とは、市街化区域・市街化調整区域の定めのない都市計画区域をいう(この地域を通称「非線引都市計画区域」という。)。

ニ 都市計画区域外

都市計画区域外であっても、準都市計画区域(都市計画法第5条の2第1項)が定められる場合があることに留意する。

4 比較表による調整

土地の売買価格は、取引事情(第2章第2節1(2)参照)により相当の開差が生じる場合が多いから、収集した取引事例につき、その取引に伴う事情補正及び時点修正を行うほか、「比較表」(様式308020-009-4から308020-009-20まで参照)により地域要因及び個別的要因の比較を行って調整する(第2章第2節1《取引事例比較法の適用方法》参照)。
 なお、対象取引事例価格に移転登記料又は売買手数料等が含まれている場合には、これらを控除したものを当該価格とすることに留意する。

(注) 取引事例比較法による評価は、対象取引事例価格につき事情補正及び時点修正を行った後、1事例地と事例地の属する地域にある標準的な土地(通常は地価公示法による標準地又は基準地をいう。以下この注書において同じ。)を比較し(標準化補正)、2事例地の属する地域の標準的な土地と公売財産の属する近隣地域にある標準的な土地を比較し(地域要因の比較)、更に3公売財産と公売財産の属する近隣地域にある標準的な土地とを比較して(個別的要因の比較)行うことに留意する。

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