第4節 見積価額の決定

1 見積価額の決定時期

見積価額の決定は、原則として、公売の実施決議(換価事務提要29参照)前に行うものとする。ただし、価格変動の特に激しい財産である場合、鑑定人による鑑定評価書が未受領の場合等やむを得ない事情がある場合は、公売の実施決議後にその決定を行っても差し支えない。

2 公売の特殊性による減価

(1) 公売特殊性減価の必要性

公売には、通常の売買と異なることによる特有の不利な要因として、次に掲げるような特殊性があることから、見積価額の決定に当たっては、基準価額のおおむね30%程度の範囲内で的確かつ確実に減価を行う(徴基通第98条関係3(2)参照)。

  • イ 公売財産は、滞納処分のために強制的に売却されるため、いわば因縁付財産であり、買受希望者にとって心理的な抵抗感があること。
  • ロ 公売財産の買受人は、税務署長に対して瑕疵担保責任(民法第570条)を追及することができないこと。
  • ハ 原則として買受け後の解約、返品、取替えをすることができず、また、その財産の品質、機能等について買受け後の保証がないこと。
  • 二 税務署長は公売した不動産について引渡義務を負わないこと。
  • ホ 公売手続に違法があった場合は一方的に売却決定が取り消されること。
  • へ 公売の日時及び場所等の条件が一方的に決定されること。
  • ト 所有者の協力が得にくいことなどにより、公売財産に関する情報が限定されていること。
  • チ 公売の開始から買受代金の納付に至るまでの買受手続が通常の売買に比べて煩雑であり、また、買受代金は、その全額を短期間に納付する必要があること。

(2) 公売特殊性減価適用上の留意事項

公売財産の見積価額は、基準価額から、上記の公売の特殊性を的確に減価して決定するが、公売財産の種類、数量、性状等は財産によって異なるものであるから、公売特殊性減価は、過去に実施した公売事例等を参考として、具体的事情に適合した妥当な範囲で減価することに留意する。

(3) 一括換価する場合の留意事項

一括換価する場合において、全ての財産を一体とした基準価額と各財産に対応する基準価額を求めたとき(本章第3節1(2)参照)は、各財産に対応する基準価額から公売の特殊性を減価して各財産の見積価額を求めた上で、その見積価額を合計することにより、全ての財産を一体とした見積価額を決定するものとする。

3 財産上の負担の調整

公売財産に、買受人に対抗することができる財産上の負担があるときは、その負担に係る金額を、公売特殊性減価後に控除する(徴基通第98条関係3参照)。
 なお、買受人に承継される主な負担には、次に掲げるものがある。

  • (1) 区分所有建物に係る未納管理費、修繕積立金、組合費等(区分所有法第7条第1項、第8条)
  • (2) 農地に係る土地改良区の未納賦課金(土地改良法第42条第1項)
  • (3) 土地区画整理事業施行区域内の宅地に係る清算金及び賦課金で今後支払うこととなるもの(土地区画整理法第40条、第110条から第112条まで)

4 見積価額評定調書等の作成

(1) 見積価額評定調書の作成

見積価額の決定に当たっては、その評定根拠及び適正性を明らかにするため、公売を実施する全ての財産について、売却区分番号を設定の上、見積価額評定調書を作成する。
 なお、一括換価する場合の見積価額評定調書には、全ての財産を一体とした見積価額と各財産の見積価額(本節2(3)参照)を記載するとともに、各財産の所有者が異なる場合には、財産の表示欄に各財産の所有者を表示することに留意する。

(注) 複数の財産を一括換価する場合は、当該複数の財産を一体として、一つの売却区分番号を設定する。

(2) 評価書等の作成

見積価額評定調書のみでは財産の評定根拠の明細を記載できない場合は、財産の種類に応じて、以下の評価書等の附属書類を作成する。

イ 動産

動産については、当該調書の内訳として、動産評価書を作成する。

ロ 不動産

不動産については、1公売財産周辺地の概要図(様式308020-009-2)、2土地・建物の見取図(様式308020-009-3)、3各評価方法による評価書(様式308020-009-5から308020-009-23)等とともに、不動産総合評価書(様式308020-009-24)を作成する。
 なお、鑑定人に依頼した鑑定評価額を試算価格とする場合は、不動産総合評価書のみ作成することとして差し支えない。

ハ 上記以外の財産

上記イ及びロ以外の財産については、動産評価書等の各項目を適宜補正の上、評価対象財産ごとの評価書を作成する。

公売財産評価事務提要主要項目別へ戻る