第3節 基準価額の算定

1 基準価額の算定方法

(1) 基準価額算定の基本的事項

基準価額は、本章第2節《試算価格の具体的な算定方法》で用いた各評価方法で得られた試算価格、精通者意見等による評価額等を比較、再検討の上、試算価格相互間の開差の縮小を図る調整を行うことにより算定する。この場合における試算価格の調整は、1評価手順の各段階を客観的に再検討し、2各評価方法及び採用資料の特徴に応じた検討を加えた上、3各試算価格のうちいずれかを選択又は、どれがどの程度重視されるべきかを判断して行う。
 なお、各試算価格間の調整において留意すべき事項は以下のとおりである。

イ 各試算価格の再検討

  • (イ) 資料の選択、検討及び活用の適否
  • (ロ) 価格形成要因の分析の適否
  • (ハ) 各種補正等に係る判断の適否
  • (二) 単価と総額との関連の適否

ロ 各試算価格の特徴に応じた検討

  • (イ) 評価対象財産と各評価方法との適合性
  • (ロ) 各評価方法の適用において採用した資料に応じた相対的信頼性

(注) 公売財産が課税財産である場合には、当該財産の消費税及び地方消費税相当額を加算して基準価額を求めることに留意する。

(2) 一括換価する場合の基準価額の算定

滞納者を異にする複数の不動産等を一括換価する場合の基準価額の算定に当たっては、原則として、一括換価する全ての財産を一体とした基準価額と各財産の基準価額を求める(鑑定人に評価を委託する場合は、同様の評価額の鑑定を依頼する。)。
 なお、次のいずれにも該当する場合は、全ての財産を一体とした基準価額のみを求めることとして差し支えない。

  • イ 一括換価する各財産の所有者が差押えの時点において同一であること。
  • ロ 担保権等の権利関係が公売公告時点において同一で、売却決定までの間に権利関係が変動しないことが明らかな財産であること。
  • ハ 担保権者等に対する配当に支障を来すおそれがないと認められること。

(注)

  • 1 全ての財産を一体とした基準価額と各財産の基準価額の合計額が一致していないときは、全ての財産を一体とした基準価額を各財産の基準価額によりあん分して、各財産に対応する基準価額を求めるものとする。
  • 2 あん分計算に当たり、1円未満の端数が生じる場合は、四捨五入により端数を処理するものとし、各財産を一体とした価額と各財産に対応する価額の合計に差が生じる場合は、各財産に対応する基準価額の多寡により調整する。

2 鑑定人等による評価額の活用

基準価額の算定に当たっては、不動産鑑定士による鑑定評価額や精通者の意見等を参考にすることができる(徴収法第98条第2項、徴基通第98条関係3(3)参照)。

(1) 評価の依頼

  • イ 鑑定人等に対する評価の依頼は、差押財産等の価額の多寡、財産評価の困難性、評価に係る事務効率等を考慮して、積極的に行うものとする。
  • ロ 不動産の評価依頼は、公募により国税局において登録している不動産鑑定士に対して行う。その他の財産については、財産の種類に応じて当該財産の評価又は売買事情に通じ、その地域又は分野の情勢に明るく、かつ、信望のある有識の専門家と認められる者に対して依頼するものとする。

(2) 評価依頼に当たっての留意事項

  • イ 評価依頼に当たっては、市場性減価を適切に反映させた基準価額を求めさせること(徴基通第98条関係5)。
     なお、公売特殊性減価は、徴収職員の判断により行うこと。
  • ロ 評価依頼は、原則として、一物件(一区分)につき一人の鑑定人等に対して行うものとし、複数の者に対して同一物件の評価依頼は行わないこと。
  • ハ 評価依頼は、評価依頼書(様式308020-12)により行うこと。
  • 二 評価依頼に当たっては、例えば、「借地借家法上の借地権はないが、土地利用権を考慮して評価依頼する。」等依頼内容を明らかにし、鑑定評価額につき無用の調整を行う必要が生じないよう配意すること。

(3) 鑑定評価額の活用

鑑定人等から鑑定評価書等を徴した場合で、その内容を妥当と認めるときは、その鑑定評価額を見積価額の評定における基準価額(又は試算価格)として取り扱って差し支えない。

(4) 精通者からの意見聴取

公売財産の評価に当たっては、必要に応じ評価に関する各種の事項について精通者から意見を聴取し、評価額に適切に反映させる。
 精通者とは、例えば、不動産については、信託銀行の貸付担当者等で評価に相当の技術を有する者や不動産の仲介を業とする者で組織する協会等の理事長、役員等の信用のある者をいい、不動産以外の財産については、当該財産の製造業者、販売業者、鑑定家、研究機関の職員等のうち適当と認められる者をいい、必要に応じて広く当該財産の売買の仲介を業としている者等その実情に詳しい者も含めて差し支えない。

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