第1節 評価の手順

1 公売財産の確認

公売財産の評価に当たっては、次に掲げる確認を行う。

(1) 公売財産の物的確認

公売財産を実地に確認して、その存否及びその内容を物的に照合する。
 例えば、土地については、所在、地番、地目、地積、形状、境界、定着物の有無等を、建物については、所在、地番、家屋番号、建築年月日、建築面積、延面積、構造、用途等を確認資料(本節2(2)イ参照)と、それぞれ実地に照合して確認する。この場合においては、確認資料と当該不動産の実態との異同について確認した事績を明らかにしておくことに留意する。
 なお、建物の確認調査により、その種類、構造又は床面積が建物登記簿と符合しない場合において、その不符合が当該建物の同一性を失わない程度のものであるときは、当該建物の現況により評価する(換価事務提要19参照)。

(2) 権利の態様の確認

物的に確認した公売財産については、当該財産の権利関係(例えば、借地権、借家権等の利用権、占有の状況、占有権原の有無及びその内容等)を不動産登記事項証明書等の公簿その他権利関係を示す証拠書類等により確認し、評価に影響を及ぼす権利の存否及びその内容を照合する。
 この権利の態様の確認に当たっては、不動産登記簿等の公簿に登記又は登録されている権利はもとより、当該公簿に表れていないものについても、現実の利用関係を調査することにより、その実態を把握する。

2 評価関係資料の収集・分析

(1) 評価関係資料の収集・分析

評価関係資料は、公売財産の評価額を客観的かつ合理的なものとするための重要な基礎となるものであるから、その収集及び整理は、後の評価作業への活用に支障のないよう、計画的かつ合理的に行う。
 また、収集、整理した評価関係資料の活用に当たっては、その資料が偏向的なものではなく、信頼できるものであるかどうかについて十分に検討及び分析し、国税局は、収集した評価に関する各種資料及び見積価額の決定経緯に関する資料を、必要に応じて管内税務署及び近隣の国税局へ情報提供するなど、情報の交換、共有に努める。
 なお、評価事務担当者は、一般市場における土地その他の財産の取引事例、需給動向等評価に必要な経済常識のかん養に努めるとともに、公売財産の多い地域における不動産の取引及び使用収益の慣行、土地利用に関する計画及び規制の状態等、評価関係資料について、平素から収集しておくよう配意する。

(2) 評価に当たり収集すべき資料

イ 確認資料

確認資料は、公売財産の物的確認及び権利の態様の確認に必要な資料であり、例えば、不動産に関する確認資料としては、不動産登記事項証明書、土地又は建物の図面(土地所在図、地積測量図、建物図面、建物各階平面図等)、写真、売買契約書、権利の設定に関する契約書等がある。
 なお、この確認資料の収集及び整理は、本節1《公売財産の確認》の前に行う必要がある。

ロ 事例資料

事例資料は、評価方法の適用に必要とされる現実の取引価格に関する資料であり、具体的には取引事例比較法の適用に必要な取引事例、収益還元法の適用に必要な収益事例、原価法の適用に必要な建設事例等がある。

ハ 要因資料

要因資料は、価格形成要因に照応する資料で、一般的要因に係る一般資料、地域要因に係る地域資料及び個別的要因に係る個別資料に分類される。例えば、不動産に関する地域資料については、不動産の取引及び使用収益の慣行、物価、賃金及び雇用の水準、土地利用に関する計画及び規制の状態に関する資料があり、個別資料には、間口、奥行、形状等、不動産の個別的特性に関する資料がある。

3 試算価格の算定

(1) 評価方法の種類

試算価格の算定に当たっての評価方法には、主に次に掲げる方法がある。

イ 取引事例比較法

取引事例比較法とは、多数の取引事例を収集の上、そのうち公売財産の評価と比較するのに適当と認める事例を選択し、当該事例に係る取引価格について、事情補正及び時点修正を行い、さらに、地域要因及び個別的要因を比較検討して試算価格を求める方法である。

ロ 収益還元法

収益還元法には、1公売財産に帰属する純収益を適正な還元利回りで還元する方法(直接還元法)、2連続する複数の期間に発生する純収益及び保有期間の満了時点における対象財産の価格(復帰価格)をその発生時期に応じて割引率を用いて現在価値を求めて、それぞれを合計する方法(DCF法)があり、これらの方法のいずれか又は併用により試算価格を求める。

ハ 原価法

原価法とは、見積価額の決定時点における公売財産の再調達原価を求め、この再調達原価から減価修正して、公売財産の試算価格を求める方法である。

(2) 評価方法の適用等

公売財産の評価に当たっては、その財産の種類等からみて適当と認められる評価方法を用いて評価し、基準価額の基礎となる試算価格を算定する(具体的な算定方法は、第2章第2節《試算価格の具体的な算定方法》参照)。この場合においては、次に掲げる事項に留意する。

  • イ 公売財産の価格形成要因による市場性を適切に反映させること。
  • ロ 可能な限り複数の評価方法により求めた試算価格との比較検討を行うとともに、広く精通者の意見を聴取すること。
  • ハ 財産評価基本通達の定めによる評価額、固定資産評価額、従来実施した公売による入札価額又は落札価額等も参考とすること。

(3) 各評価方法に適する財産

評価方法の選択に当たり、各評価方法に一般的に適する財産を例示すれば、次のとおりである。

イ 取引事例比較法に適する公売財産

土地、区分所有建物、借地権、有価証券、動産、電話加入権、自動車

ロ 収益還元法に適する公売財産

賃貸用不動産、特許権、実用新案権等のような無体財産権

ハ 原価法に適する公売財産

建物、船舶、機械設備、埋立地、造成地

4 試算価格等の調整及び基準価額の決定

算定した試算価格、精通者意見等による評価額等については、それぞれの算定過程を検証するとともに、各試算価格等を互いに比較検討して、そのいずれかを選択又は重視して試算価格を調整することにより、公売財産を直ちに売却する場合に想定される現在価値である基準価額を算出する(徴基通第98条関係2参照)。

5 見積価額の決定

見積価額は、基準価額から公売特殊性減価を的確に控除して決定する。この場合において、買受人に対抗することができる公売財産上の負担があるときは、その負担に係る金額を更に控除して決定する(徴基通第98条関係3(1)参照)。
 なお、見積価額の決定に当たっては、見積価額評定調書(様式308020-009)を作成し、税務署長等の決裁を受ける。

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