課法2-8
課料3-13
査調4-10
査察1-29
平成12年7月3日
改正 平成16年3月26日
改正 平成23年6月30日
改正 平成25年6月27日
改正 平成27年2月13日
改正 平成27年6月26日
改正 平成28年12月12日
改正 令和4年6月30日
改正 令和5年6月23日

国税局長 殿
沖縄国税事務所長 殿

国税庁長官

標題のことについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条第1項若しくは第2項又は第4項の規定の適用に関し留意すべき事項等を下記のとおり定めたから、今後処理するものからこれにより取り扱われたい。

(趣旨)

法人税の重加算税の賦課に関する取扱基準の整備等を図ったものである。

第1 賦課基準

(隠蔽又は仮装に該当する場合)

1 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。

(1) いわゆる二重帳簿を作成していること。

(2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。

1 帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること。

2 帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること。

3 帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。

(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類を改ざんし、又は虚偽の申請に基づき当該書類の交付を受けていること。

(4) 簿外資産(確定した決算の基礎となった帳簿の資産勘定に計上されていない資産をいう。)に係る利息収入、賃貸料収入等の果実を計上していないこと。

(5) 簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出していること。

(6) 同族会社であるにもかかわらず、その判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者又は単なる名義人に分割する等により非同族会社としていること。

(使途不明金及び使途秘匿金の取扱い)

2 使途不明の支出金に係る否認金につき、次のいずれかの事実がある場合には、当該事実は、不正事実に該当することに留意する。
 なお、当該事実により使途秘匿金課税を行う場合の当該使途秘匿金に係る税額に対しても重加算税を課すことに留意する。

(1) 帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん等があること。

(2) 取引の慣行、取引の形態等から勘案して通常その支出金の属する勘定科目として計上すべき勘定科目に計上されていないこと。

(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)

3 次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。

(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、翌連結事業年度。(2)において同じ。)の収益に計上されていることが確認されたとき。

(2) 経費(原価に算入される費用を含む。)の繰上計上をしている場合において、その経費がその翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。

(3) 棚卸資産の評価換えにより過少評価をしている場合。

(4) 確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。

(不正に繰戻し還付を受けた場合の取扱い)

4 法人が法人税法第80条又は第144条の13の規定により欠損金額につき繰戻し還付を受けた場合において、当該欠損金額の計算の基礎となった事実のうちに不正事実に該当するものがあるときは、重加算税を課すことになる。

(隠蔽仮装に基づく欠損金額の繰越しに係る重加算税の課税年度)

5 前事業年度以前の事業年度において、不正事実に基づき欠損金額を過大に申告し、その過大な欠損金額を基礎として欠損金額の繰越控除をしていた場合において、その繰越控除額を否認したときは、その繰越控除をした事業年度について重加算税を課すことになる。
 なお、欠損金額の生じた事業年度は正しい申告であったが、繰越欠損金額を控除した事業年度に不正事実に基づく過少な申告があり、その後の事業年度に繰り越す欠損金額が過大となっている場合に、当該その後の事業年度において過大な繰越欠損金額を基礎として繰越控除をしているときも同様とする。

(注) 繰越控除をした欠損金額のうちに所得税法等の一部を改正する法律(令和2年法律第8号)による改正前の法人税法第57条第6項の規定により欠損金額とみなされた連結欠損金個別帰属額がある場合において、その欠損金額とみなされた金額が不正事実に基づき過大に繰り越されているときについては、本文の取扱いを準用する。

(隠蔽仮装に基づく最後事業年度の欠損金相当額の損金算入に係る重加算税の課税年度)

6 法人税法施行令等の一部を改正する政令(令和2年政令第207号)による改正前の法人税法施行令第112条第20項の規定を適用するに当たり、同項に規定する被合併法人となる連結法人又は残余財産が確定した連結法人がそれぞれ同項に規定する合併の日の前日又は残余財産の確定の日の属する事業年度において欠損金額を不正事実に基づき過大に申告し、その過大な欠損金額を同項に規定する連結子法人である内国法人の最後事業年度の損金の額に算入していた場合において、その損金算入額を否認したときは、その損金算入をした最後事業年度(所得金額が生じるものに限る。)について重加算税を課すことになる。

第2 重加算税の取扱い

(通則法第68条第4項の規定の適用に当たっての留意事項)

 通則法第68条第4項の規定の適用に当たっては、次の点に留意する。

(1) 通則法第119条第4項の規定により無申告加算税又は重加算税の全額が切り捨てられた場合には、無申告加算税等(通則法第68条第4項第1号の無申告加算税等をいう。(2)及び(3)において同じ。)を課されたことがある場合に該当せず、通則法第119条第4項の規定により無申告加算税又は重加算税の全額が切り捨てられた、又は切り捨てられる場合には、特定無申告加算税等(通則法第68条第4項第2号の特定無申告加算税等をいう。以下(3)までにおいて同じ。)を課されたことがあり、又は特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合に該当しない。

(2) 被合併法人の各事業年度の法人税について、無申告加算税等を課されたことがある場合又は特定無申告加算税等を課されたことがあり、若しくは特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合には、これらの無申告加算税等又は特定無申告加算税等が合併法人の行為に基因すると認められるときに限り、当該合併法人について、無申告加算税等を課されたことがある場合又は特定無申告加算税等を課されたことがあり、若しくは特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合に該当するものとして取り扱う。
 また、連結納税の承認を取り消され、又は連結納税の適用の取りやめの承認を受ける前の各連結事業年度の法人税について、無申告加算税等を課されたことがある場合又は特定無申告加算税等を課されたことがあり、若しくは特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合には、連結親法人であった法人について、無申告加算税等を課されたことがある場合又は特定無申告加算税等を課されたことがあり、若しくは特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合に該当するものとして取り扱う。

(注) 無申告加算税等又は特定無申告加算税等を課された一の法人について、その後分割が行われた場合であっても、分割承継法人について、無申告加算税等を課されたことがある場合又は特定無申告加算税等を課されたことがある場合には該当せず、分割前の期間が含まれる分割法人の各事業年度の法人税について特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合であっても、分割承継法人について特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合には該当しない。

(3) 通則法第68条第4項第2号の「課税期間の初日の属する年」の前年中又は前々年中に開始した各課税期間(事業年度)が1年未満のものがある場合には、同項(同号に係る部分に限る。)の規定は、当該前年中に課税期間(事業年度)が開始した法人税のうちのいずれか及び当該前々年中に開始した課税期間(事業年度)の法人税のうちのいずれかについて特定無申告加算税等を課されたことがあり、又は特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合に該当するときに適用されるものであり、当該前年中及び当該前々年中に開始した各課税期間(事業年度)の法人税の全てについて特定無申告加算税等を課されたことがあり、又は特定無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認める場合に該当することは要しない。

第3 重加算税の計算

(重加対象税額の計算の基本原則)

1 重加算税の計算の基礎となる税額は、通則法第68条及び国税通則法施行令第28条の規定により、その基因となった更正、決定、修正申告又は期限後申告(以下「更正等」という。)があった後の税額から隠蔽又は仮装をされていない事実だけに基づいて計算した税額を控除して計算するのであるが、この場合、その隠蔽又は仮装をされていない事実だけに基づいて計算した税額の基礎となる所得金額は、その更正等のあった後の所得金額から不正事実に基づく所得金額(以下「重加対象所得」という。)を控除した金額を基に計算する。

(重加対象所得の計算)

2 第3の1の場合において、重加対象所得の計算については、次による。

(1) 不正事実に基づく費用の支出等を認容する場合には、当該支出等が不正事実に基づく益金等の額(益金の額又は損金不算入額として所得金額に加算するものをいう。以下同じ。)との間に関連性を有するものであるときに限り、当該支出等の金額は不正事実に基づく益金等の額の減算項目とする。

(2) 交際費等又は寄附金のうちに不正事実に基づく支出金から成るものとその他の支出金から成るものとがあり、かつ、その交際費等又は寄附金のうちに損金不算入額がある場合において、当該損金不算入額のうち重加算税の対象となる金額は、その損金不算入額から不正事実に基づく支出がないものとして計算した場合に計算される損金不算入額を控除した金額とする。

(3) 過大に繰越控除をした欠損金額のうちに、不正事実に基づく過大控除部分と不正事実以外の事実に基づく過大控除部分とがある場合には、過大に繰越控除をした欠損金額は、まず不正事実に基づく過大控除部分の欠損金額から成るものとする。

(不正に繰戻し還付を受けた場合の重加対象税額の計算)

3 第1の4に該当する場合において、当該欠損金額のうちに不正事実に基づく部分と不正事実以外の事実に基づく部分とがあるときは、重加算税の計算の基礎となる税額は、次の算式により計算した金額による。

算式の図

(重加算税を課す留保金額の計算等)

4 特定同族会社が重加対象所得から留保した部分の金額(以下「留保金額」という。)に対して課される法人税法第67条第1項の規定による法人税額については、重加算税を課すことになる。この場合、その課税の対象となる留保金額は、更正等の後の留保金額から重加算税を課さない部分の留保金額を控除して計算するものとし、その重加算税を課さない部分の留保金額の計算については、その計算上控除すべき同条第3項の法人税額及び地方法人税額並びに道府県民税及び市町村民税の額は、それぞれ次に掲げる金額による。

(1) 法人税額 その不正事実以外の事実に基づく所得金額について計算した金額

(2) 地方法人税額 その不正事実以外の事実に基づく所得金額を基礎として計算した金額

(3) 道府県民税及び市町村民税の額 その不正事実以外の事実に基づく所得金額を基礎として計算した金額

第4 通算法人等に係る取扱いの適用

 第1から第3までの取扱いは、通算法人(通算法人であった内国法人を含む。以下同じ。)の法人税に対する通則法第68条第1項若しくは第2項又は第4項の規定の適用に当たっても同様とするほか、次に掲げる取扱いは、それぞれ次に定めることに留意する。

(1) 第1の1の取扱い

 この取扱いにおける「不正事実」とは、当該通算法人の行為に係る不正事実をいい、他の通算法人の行為に係る不正事実はこれに該当しない。

(2) 第3の1の取扱い

 この取扱いにおける「不正事実に基づく所得金額」とは、当該通算法人の行為に係る不正事実に基づく所得金額をいう。