(別添)

移転価格事務運営要領

(調査の方針)

3-1 調査に当たっては、措置法通達66の4(3)−3(比較対象取引の選定に当たって検討すべき諸要素等)に掲げる諸要素等に基づいて国外関連取引の内容等を的確に把握し、形式的な検討に陥ることなく個々の取引実態に即した検討を行って移転価格税制上の問題の有無を的確に判断する。この場合においては、当該国外関連取引を行った法人が当該国外関連取引を行うこと以外に選ぶことのできる合理的な他の選択肢の条件と比べて当該国外関連取引の条件が当該法人の事業目的に照らして明らかに不利な条件になっていないか配意するとともに、例えば次の事項に配意して当該国外関連取引を検討する。

(1) 法人の国外関連取引に係る売上総利益率又は営業利益率等(以下「利益率等」という。)が、同様の市場における非関連者間取引のうち、規模、取引段階その他の内容が類似する取引に係る利益率等に比べて過少となっていないか。

(2) 法人の国外関連取引に係る利益率等が、当該国外関連取引に係る事業と同種で、規模、取引段階その他の内容が類似する事業を営む非関連者である他の法人の当該事業に係る利益率等に比べて過少となっていないか。

(3) 法人及び国外関連者が国外関連取引において果たす機能又は負担するリスク等を勘案した結果、当該法人の当該国外関連取引に係る利益が、当該国外関連者の当該国外関連取引に係る利益に比べて相対的に過少となっていないか。

(調査に当たり配意する事項)

3-2 国外関連取引の検討は、確定申告書及び調査等により収集した書類等を基に行う。
 独立企業間価格の算定を行うまでには、個々の取引実態に即した多面的な検討を行うこととし、例えば次の(1)から(3)までにより、移転価格税制上の問題の有無について検討し、効果的な調査展開を図る。

(1) 法人の国外関連取引に係る事業と同種で、規模、取引段階その他の内容がおおむね類似する複数の非関連者間取引(以下「比較対象取引の候補と考えられる取引」という。)に係る利益率等の範囲内に、国外関連取引に係る利益率等があるかどうかを検討する。

(2) 国外関連取引に係る棚卸資産等が一般的に需要の変化、製品のライフサイクル等により価格が相当程度変動することにより、各事業年度又は連結事業年度の情報のみで検討することが適切でないと認められる場合には、当該事業年度又は連結事業年度の前後の合理的な期間における当該国外関連取引又は比較対象取引の候補と考えられる取引の対価の額又は利益率等の平均値等を基礎として検討する。

(3) 国外関連取引に係る対価の額が当該国外関連取引に係る取引条件等の交渉において決定された過程等について、次の点も考慮の上、十分検討する。

イ 法人及びその国外関連者が国外関連取引に係るそれぞれの事業の業績を適切に評価するために、独立企業原則を考慮して当該国外関連取引に係る対価の額を決定する場合があること。

ロ 法人又は国外関連者が複数の者の共同出資により設立されたものである場合には、その出資者など国外関連取引の当事者以外の者が当該国外関連取引に係る取引条件等の交渉の当事者となる場合があること。また、当該交渉において独立企業原則を考慮した交渉が行われる場合があること。

(注) 国外関連取引に係る対価の額が厳しい価格交渉によって決定されたという事実、国外関連取引の当事者以外の者が当該国外関連取引に係る取引条件等の交渉の当事者となっている事実又は国外関連取引に係る契約の当事者に法人及び国外関連者以外の者が含まれているという事実のみでは、当該国外関連取引が非関連者間取引と同様の条件で行われた根拠とはならないことに留意する。

(別表17(4)の添付状況の検討)

3-3 国外関連取引を行う法人が、その確定申告書に「国外関連者に関する明細書」(法人税申告書別表17(4))を添付していない場合又は当該別表の記載内容が十分でない場合には、当該別表の提出を督促し、又はその記載の内容について補正を求めるとともに、当該国外関連取引の内容について一層的確な把握に努める。

(調査時に検討を行う書類)

3-4 調査においては、例えば次に掲げる書類(帳簿その他の資料を含む。)から国外関連取引の実態を的確に把握し、移転価格税制上の問題があるかどうかを判断する。

(1) 法人及び国外関連者ごとの資本関係及び事業内容を記載した書類

イ 法人及び関連会社間の資本及び取引関係を記載した書類

ロ 法人及び国外関連者の沿革及び主要株主の変遷を記載した書類

ハ 法人にあっては有価証券報告書又は計算書類その他事業内容を記載した書類、国外関連者にあってはそれらに相当する書類

ニ 法人及び国外関連者の主な取扱品目及びその取引金額並びに販売市場及びその規模を記載した書類

ホ 法人及び国外関連者の事業別の業績、事業の特色、各事業年度の特異事項等その事業の内容を記載した書類

(2) 措置法施行規則第22条の10第6項第1号において国外関連取引の内容を記載した書類として掲げる書類

(3) 同項第2号において独立企業間価格を算定するための書類として掲げる書類

(4) その他の書類

イ 法人及び国外関連者の経理処理基準の詳細を記載した書類

ロ 外国税務当局による国外関連者に対する移転価格に係る調査の内容を記載した書類

ハ 国外関連者が、ローカルファイルに相当する書類を作成している場合(法人が当該国外関連者との取引に係るローカルファイルに相当する書類に記載された事項についてローカルファイルを作成している場合を除く。)の当該書類

ニ その他必要と認められる書類

(注) 必要に応じて、事業概況報告事項及び国別報告事項を参照する。

(推定規定又は同業者に対する質問検査規定の適用に当たっての留意事項)

3-5 法人に対しローカルファイル、同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格(措置法第66条の4第8項本文の規定により当該独立企業間価格とみなされる金額を含む。)を算定するために重要と認められる書類(電磁的記録を含む。以下3-5において同じ。)若しくは同条第14項に規定する同時文書化免除国外関連取引に係る独立企業間価格(同条第8項本文の規定により当該独立企業間価格とみなされる金額を含む。)を算定するために重要と認められる書類(電磁的記録を含む。以下3-5において同じ。)又はこれらの写し(以下3-6までにおいて「移転価格文書」という。)の提示又は提出を求めた場合において、当該法人から当該職員が指定する日までに移転価格文書の提示又は提出がなかったときは、同条第12項及び第17項又は第14項及び第18項の規定を適用することができるのであるが、これらの規定の適用に当たっては、次の事項に配意する。

(1) 独立企業間価格(同条第8項本文の規定により独立企業間価格とみなされる金額を含む。以下3-5において同じ。)を算定するために、移転価格文書の提示又は提出を求める場合には、法人に対し、「期日までに移転価格文書の提示又は提出がないときは、措置法第66条の4第12項及び第17項又は第14項及び第18項の規定の適用要件を満たす」旨を説明するとともに、当該説明を行った事実及びその後の当該法人からの提示又は提出の状況を記録する。

(2) (1)の提示又は提出を求める場合には、法人に対し、ローカルファイルについては45日を超えない範囲内において、また、同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類及び同時文書化免除国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類については60日を超えない範囲内において期日を指定して当該提示又は提出を求める。

(注)1  当該期日は、当該法人の意見を聴取した上で当該提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して指定する。

2  法人に対し、移転価格文書の提示又は提出を求める場合には、ローカルファイル、同時文書化対象国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類及び同時文書化免除国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類を区分した上で、これらの書類の提示又は提出を求めることに留意する。

(3) 当該期日までに移転価格文書の提示又は提出がなかった場合には、法人に対し、「移転価格文書が期日までに提示又は提出されなかったため措置法第66条の4第12項及び第17項又は第14項及び第18項の規定の適用要件を満たす」旨を説明する。

(4) 当該期日までに移転価格文書の提示又は提出がなかったことにつき合理的な理由が認められる場合は、当該法人の意見を再聴取し、期日を指定する。
 なお、再聴取して指定した期日までに移転価格文書に該当するものとして提示又は提出された書類(電磁的記録を含む。以下同じ。)があり、当該書類を総合的に検討した結果、独立企業間価格の算定ができる場合には、同条第12項及び第17項又は第14項及び第18項の規定の適用をしないことに留意する。

(注) 法人が、指定された期日までに当該提示又は提出をできなかったことにつき合理的な理由が認められる場合には、例えば、当該法人が災害によりこれをできなかった場合が該当する。

(5) 法人から移転価格文書に該当するものとして提示又は提出された書類を総合的に検討して独立企業間価格の算定ができるかどうかを判断するのであるが、当該判断の結果、当該書類に基づき独立企業間価格を算定することができず、かつ、同条第12項及び第17項又は第14項及び第18項の規定の適用がある場合には、当該法人に対しその理由を説明する。

(注) 当該書類が不正確な情報等に基づき作成されたものである場合には、当該書類の提示又は提出については、移転価格文書の提示又は提出には該当しない。
 この場合には、当該法人に対し、正確な情報等に基づき作成した移転価格文書を速やかに提示又は提出するよう求めるものとする。

(6) 同条第17項又は第18項の規定を適用して把握した非関連者間取引を比較対象取引として選定した場合には、当該選定のために用いた条件、当該比較対象取引の内容、差異の調整方法等を法人に対し十分説明するのであるが、この場合には、国税通則法第126条(職員の守秘義務規定)の規定に留意するとともに、当該説明を行った事実を記録する。

(特定無形資産国外関連取引に係る価格調整措置の適用免除規定の検討に当たっての留意事項)

3-6 調査において措置法第66条の4第8項の規定が適用されるかどうかの検討に当たっては、同条第9項又は第10項の規定の適用があるかどうかを確認するため、法人に対し同条第9項又は第10項の規定の適用があることを明らかにする書類(電磁的記録を含む。以下3-6において同じ。)又はその写し(以下3-6において「適用免除書類」という。)の提示又は提出を求めることとし、当該適用免除書類の提示又は提出を求めるに当たっては、次の事項に配意する。
 なお、当該適用免除書類が移転価格文書に該当する場合には、3-5に定める所要の処理を併せて行うことに留意する。

(1) 法人に対し、「期日までに適用免除書類の提示又は提出がないときは、措置法第66条の4第9項又は第10項の規定の適用要件を満たさない」旨を説明するとともに、当該説明を行った事実及びその後の当該法人からの提示又は提出の状況を記録する。

(2) 法人に対し、適用免除書類のうちローカルファイルに該当するものについては45日を超えない範囲内において、ローカルファイルに該当しないものについては60日を超えない範囲内において期日を指定して当該提示又は提出を求める。

(注)1 当該期日は、当該法人の意見を聴取した上で当該提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して指定する。

2 当該適用免除書類は、同条第9項又は第10項それぞれの規定の適用を明らかにする書類ごとに区分した上で、提示又は提出を求めることに留意する。

(3) 当該期日までに適用免除書類の提示又は提出がなかった場合には、法人に対し、「適用免除書類が期日までに提示又は提出されなかったため措置法第66条の4第9項又は第10項の規定の適用要件を満たさない」旨を説明する。

(4) 当該期日までに適用免除書類の提示又は提出がなかったことにつき合理的な理由が認められる場合は、当該法人の意見を再聴取し、期日を指定する。

(注) 法人が、指定された期日までに当該提示又は提出をできなかったことにつき合理的な理由が認められる場合には、例えば、当該法人が災害によりこれをできなかった場合が該当する。

(5) 法人から適用免除書類に該当するものとして提示又は提出された書類を総合的に検討して同条第9項又は第10項の規定の適用要件を満たすかどうかを判断するのであるが、当該判断の結果、同条第9項又は第10項の規定の適用要件を満たさないと認められる場合には、当該法人に対しその理由を説明する。

(注) 当該書類が、特定無形資産国外関連取引(同条第8項に規定する特定無形資産国外関連取引をいう。4-15において同じ。)が行われた時における入手可能な情報等に照らして、不正確な情報等に基づき作成されたものである場合には、当該書類の提示又は提出については、適用免除書類の提示又は提出には該当しない。
 この場合には、当該法人に対し、正確な情報等に基づき作成した適用免除書類を速やかに提示又は提出するよう求めるものとする。

(金融取引)

3-7 法人と国外関連者との間で行われた金銭の貸借取引その他の金融取引(以下「金融取引」という。)について調査を行う場合には、次に掲げる事項に留意し、措置法通達66の4(3)−3に掲げる諸要素等に基づいて、当該金融取引の通貨、時期、期間その他の当該金融取引の内容等を的確に把握し、移転価格税制上の問題の有無を検討する。

(1) 法人と国外関連者との間で行われた金銭の貸借取引について調査を行う場合には、措置法通達66の4(8)−5(金銭の貸付け又は借入れの取扱い)の諸要因に配意すること。

(注)1 基本通達9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の適用がある金銭の貸付けについては、移転価格税制の適用上も適正な取引として取り扱う。

2 国外関連取引において返済期日が明らかでない場合には、当該金銭貸借の目的等に照らし、金銭貸借の期間を合理的に算定する。

(2) 法人と国外関連者との間で行われた債務保証等(一方の者による他方の者の債務の保証その他これに類する行為をいう。以下同じ。)について調査を行う場合には、当該債務保証等の対象である債務の性質及び範囲並びに当該債務保証等が当該法人又は当該国外関連者に与える影響に配意すること。

(注) 債務保証等が法人又は国外関連者に与える影響について検討する場合には、例えば、債務保証等を行った一方の者が、当該債務保証等の対象である債務の主たる債務者である他方の者がその債務を履行しない場合に当該他方の者に代わってその履行をする法的な責任を負っているかどうか、当該債務保証等により当該他方の者の信用力が増しているかどうかを検討する。

(3) 金融取引に関連して、法人及び国外関連者が属する企業グループのキャッシュ・フロー、支払能力及び為替リスクの管理並びに資金の調達及び運用その他の財務上の活動(これらの活動に付随して行われる利害関係者間の調整、代理その他の活動を含む。)を当該法人又は当該国外関連者が行っている場合の当該活動の取扱いについて検討を行うに当たっては、3−10及び3−11の取扱いも踏まえて行うこと。

(注) 当該活動を通じて移転される当該法人及び当該国外関連者の資金残高を含む当該活動に係る全体の状況に配意し、当該活動を通じて当該法人及び当該国外関連者が意図的に協調することにより生ずる当該企業グループ内の相互作用により当該法人及び当該国外関連者の支払うべき利息の減少又は受け取るべき利息の増加その他の便益(以下「相互作用による共通便益」という。)が生じているかどうかの検討も行うことに留意する。

(金融取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合の留意事項)

3-8 金融取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合には、3−7による検討を踏まえ、次に掲げる事項に留意し、4−1に基づき金融取引の対価の額が最も適切な方法(措置法第66条の4第2項に規定する「最も適切な方法」をいう。以下同じ。)により算定されているか検討する。

(1) 金融取引に係る比較対象取引を現実に行われる取引の中から見いだすことが困難な場合で、金融市場における利率その他の現実に行われる取引に依拠した客観的な指標(以下「市場金利等」という。)で当該金融取引と通貨、時期、期間、信用力その他の比較可能性に影響を与える要素が同様の状況の下にあるものにより当該金融取引に係る比較対象取引を想定することができるときは、当該市場金利等を用いて想定した取引を比較対象取引とすることができること。

(2) 取引の当事者に係る信用力の比較可能性を検討する場合には、当該当事者の信用格付その他の信用状態の評価の結果を表す指標(以下「信用格付等」という。)を用いることができること。

(注)1 例えば、金銭の貸借取引の借手が企業グループに属している事実のみを理由として、当該借手に当該事実がなかったとした場合の信用格付等と比較して高い信用格付等が与えられるときのように、取引の当事者が企業グループに属している事実のみを理由とした付随的な便益(以下「付随的便益」という。)が生じている場合があるが、当該付随的便益自体に対価が発生するものではないことに留意する。

2 信用格付等を基に取引の当事者に係る信用力の比較可能性を判断する場合には、法人又は国外関連者が企業グループに属していないとした場合の単独の信用格付等を基に判断するのではなく、付随的便益を加味した結果引き上げられた高い信用格付等を基に判断することに留意する。

(3) 例えば、金銭の貸借取引に係るリスクを管理するための能力を有していない、又は意思決定の機能を果たしていない、単に資金の提供を行うだけの貸手に対して借手が対価を支払う場合には、銀行間取引金利、金利スワップレート又は国債等により運用するとした場合に得られるであろう利率その他スプレッド(一方の者が他方の者の信用リスクを引き受ける場合に得るべき利益に相当する利率等(金利その他これに類する指標をいう。以下3−8において同じ。)をいい、当該一方の者が当該信用リスクを引き受ける場合の管理費用その他の費用に相当する部分及び当該信用リスクに相当する部分を含む。以下3−8において同じ。)が零の、又は概ね零に近い市場金利等(以下「リスクフリー利率」という。)を用いて想定した取引を比較対象取引とすることができること。

(4) リスクフリー利率にスプレッドを加算した利率等を用いて想定した取引を比較対象取引として用いることができること。

(5) 非関連者である銀行等に照会して取得した見積り上の利率又はスプレッドのように現実に行われる取引に依拠しない指標は、市場金利等には該当しないこと。

(注) 法人が現実に行われる取引に依拠しない指標を用いて想定した取引を比較対象取引として国外関連取引に係る対価の額を算定している場合であっても、そのことのみをもって当該国外関連取引について措置法第66条の4第1項の規定の適用がある場合に該当することにはならないことに留意する。

(6) 法人と国外関連者との間で行われた債務保証等については、例えば、次に掲げる事項を勘案して想定した取引を比較対象取引とすることができること。

イ 債務保証等の対象である債務の主たる債務者が、当該債務保証等が行われていないとした場合と当該債務保証等が行われた場合のそれぞれにおいて当該債務に係る債権者に対して支払うべき利息その他これに類する支払いに係る利率等の差

ロ 債務保証等の対象である債務の不履行が生ずる場合に当該債務保証等を行った者が負担するべき損失の額(当該債務の不履行が生ずる確率を勘案して算定される損失の額をいう。)の当該債務の額に対する割合

ハ 一方の者が金銭を支払い、これに対してあらかじめ定めた第三者の信用状態に係る事由(債務の不履行その他これに類する事由をいう。)が生じた場合に、他方の者が金銭を支払うことを約するデリバティブ取引に係るスプレッドのうち当該債務保証等の対象となる債務に係る信用リスクと同様の信用リスクに相当するもの

(7) 金融取引に関連する財務上の活動について独立企業間価格の検討を行う場合において、3−7(3)の検討により相互作用による共通便益が生じていると認められるときは、当該相互作用による共通便益の額が独立企業原則に即して当該法人及び当該国外関連者に適切に配分されているか検討する必要があること。

(注) 相互作用による共通便益の額が独立企業原則に即して法人及び国外関連者に適切に配分されているかどうかは、例えば、当該法人及び当該国外関連者それぞれの当該相互作用による共通便益の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて配分されているかどうかにより検討することができることに留意する。

(役務提供)

3-9 役務提供について調査を行う場合には、次の点に留意する。

(1) 役務提供を行う際に無形資産を使用しているにもかかわらず、当該役務提供の対価の額に無形資産の使用に係る部分が含まれていない場合があること。

(注) 無形資産が役務提供を行う際に使用されているかどうかについて調査を行う場合には、役務の提供と無形資産の使用は概念的には別のものであることに留意し、役務の提供者が当該役務提供時にどのような無形資産を用いているか、当該役務提供が役務の提供を受ける法人の活動、機能等にどのような影響を与えているか等について検討を行う。

(2) 役務提供が有形資産又は無形資産の譲渡等に併せて行われており、当該役務提供に係る対価の額がこれらの資産の譲渡等の価格に含まれている場合があること。

(企業グループ内における役務提供の取扱い)

3-10

(1) 次に掲げる経営、技術、財務又は営業上の活動その他の法人が行う活動が国外関連者に対する役務提供に該当するかどうかは、当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうかにより判断する。具体的には、法人が当該活動を行わなかったとした場合に、国外関連者が自ら当該活動と同様の活動を行う必要があると認められるかどうか又は非関連者が他の非関連者から法人が行う活動と内容、時期、期間その他の条件が同様である活動を受けた場合に対価を支払うかどうかにより判断する。

イ 企画又は調整

ロ 予算の管理又は財務上の助言

ハ 会計、監査、税務又は法務

ニ 債権又は債務の管理又は処理

ホ 情報通信システムの運用、保守又は管理

へ キャッシュ・フロー又は支払能力の管理

ト 資金の運用又は調達

チ 利子率又は外国為替レートに係るリスク管理

リ 製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援

ヌ 雇用、教育その他の従業員の管理に関する事務

ル 広告宣伝

(注) 「法人が行う活動」には、法人が国外関連者の要請に応じて随時活動を行い得るよう定常的に当該活動に必要な人員や設備等を利用可能な状態に維持している場合が含まれることに留意する。

(2) 法人が行う活動と非関連者が国外関連者に対して行う活動又は国外関連者が自らのために行う活動との間で、その内容において重複(一時的に生ずるもの及び事実判断の誤りに係るリスクを軽減させるために生ずるものを除く。)がある場合には、当該法人が行う活動は、国外関連者に対する役務提供に該当しない。

(3) 国外関連者の株主又は出資者としての地位を有する法人(以下(3)において「親会社」という。)が行う活動であって次に掲げるもの(当該活動の準備のために行われる活動を含む。)は、国外関連者に対する役務提供に該当しない。

イ 親会社が発行している株式の金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項(定義)に規定する金融商品取引所への上場

ロ 親会社の株主総会の開催、株式の発行その他の親会社に係る組織上の活動であって親会社がその遵守すべき法令に基づいて行うもの

ハ 親会社による金融商品取引法第24条第1項(有価証券報告書の提出)に規定する有価証券報告書の作成(親会社が有価証券報告書を作成するために親会社としての地位に基づいて行う国外関連者の会計帳簿の監査を含む。)又は親会社による連結財務諸表(措置法第66条の4の4第4項第1号に規定する連結財務諸表をいう。以下同じ。)の作成その他の親会社がその遵守すべき法令に基づいて行う書類の作成

ニ 親会社が国外関連者に係る株式又は出資の持分を取得するために行う資金調達

ホ 親会社が当該親会社の株主その他の投資家に向けて行う広報

ヘ 親会社による国別報告事項に係る記録の作成その他の親会社がその遵守すべき租税に関する法令に基づいて行う活動

ト 親会社が会社法(平成17年法律第86号)第348条第3項第4号(業務の執行)に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備その他のコーポレート・ガバナンスに関する活動

チ その他親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主又は出資者としての活動

(注)1 例えば、親会社が国外関連者に対して行う特定の業務に係る企画、緊急時の管理若しくは技術的助言又は日々の経営に関する助言は、イからチまでに掲げる活動には該当しないことから、これらが(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合((2)に該当する場合を除く。2において同じ。)には、国外関連者に対する役務提供に該当する。

2 親会社が国外関連者に対する投資の保全を目的として行う活動についても、(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合には、国外関連者に対する役務提供に該当する。

(4) 国外関連者が行う活動が法人に対する役務提供に該当するかどうかについては、(1)及び(2)と同様の方法により判断する。また、法人の株主又は出資者としての地位を有する国外関連者が行う活動が当該法人に対する役務提供に該当するかどうかについては、(3)と同様の方法により判断する。

(5) 法人が国外関連者に対し支払うべき役務提供に係る対価の額の妥当性を検討するため、当該法人に対し、当該役務提供の内容等が記載された書類の提示又は提出を求めることとする。この場合において、当該役務提供の実態が確認できないときは、措置法第66条の4第3項の規定の適用について検討することに留意する。

(注) 「役務提供の内容等が記載された書類」には、例えば、帳簿や役務提供を行う際に作成した契約書が該当する。

(企業グループ内における役務提供に係る独立企業間価格の検討)

3-11

(1) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供が次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その対価の額を独立企業間価格として取り扱う。

イ 当該役務提供が支援的な性質のものであり、当該法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと。

ロ 当該役務提供において、当該法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと。

ハ 当該役務提供において、当該役務提供を行う当該法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受け若しくは管理又は創出を行っていないこと。

ニ 当該役務提供の内容が次に掲げる業務のいずれにも該当しないこと。

(イ) 研究開発

(ロ) 製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング

(ハ) 金融、保険又は再保険

(ニ) 天然資源の採掘、探査又は加工

ホ 当該役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと。

へ 当該役務提供を含む当該法人及び国外関連者が属する企業グループ内で行われた全ての役務提供(イからホまでに掲げる要件を満たしたものに限る。)をその内容に応じて区分をし、当該区分ごとに、役務提供に係る総原価の額を従事者の従事割合、資産の使用割合その他の合理的な方法により当該役務提供を受けた者に配分した金額に、当該金額に100分の5を乗じた額を加算した金額をもって当該役務提供の対価の額としていること。
 なお、役務提供に係る総原価の額には、原則として、当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれることに留意する(以下3-11において同じ。)。

(注) 法人が国外関連者に対して行った役務提供が、当該法人が自己のために行う業務と一体として行われた場合には、ヘの定めの適用に当たり当該業務を当該役務提供に含めた上で役務提供の対価の額を算定する必要があることに留意する。国外関連者が法人に対して役務提供を行った場合についても、同様とする。

ト 当該役務提供に当たり、当該法人が次に掲げる書類を作成し、又は当該法人と同一の企業グループに属する者から取得し、保存していること。

(イ) 当該役務提供を行った者及び当該役務提供を受けた者の名称及び所在地を記載した書類

(ロ) 当該役務提供がイからヘまでに掲げる要件の全てを満たしていることを確認できる書類

(ハ) ヘに定めるそれぞれの役務提供の内容を説明した書類

(ニ) 当該法人が実際に当該役務提供を行ったこと又は当該役務提供を受けたことを確認できる書類

(ホ) ヘに定める総原価の額の配分に当たって用いた方法の内容及び当該方法を用いることが合理的であると判断した理由を説明した書類

(ヘ) 当該役務提供に係る契約書又は契約の内容を記載した書類

(ト) 当該役務提供において当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額又は当該国外関連者に支払う対価の額の明細及び計算過程を記載した書類

(2) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供((1)の定めにより、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うものを除く。)のうち、当該法人又は国外関連者の本来の業務に付随して行われたものについて調査を行う場合には、必要に応じ、当該役務提供に係る総原価の額を独立企業間価格とする原価基準法に準ずる方法と同等の方法又は取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法の適用について検討する。
 この場合において、「本来の業務に付随して行われたもの」とは、例えば、海外子会社から製品を輸入している法人が当該海外子会社の製造設備に対して行う技術指導のように役務提供を主たる事業としていない法人又は国外関連者が、本来の業務に付随して又はこれに関連して行った役務提供をいう。

(注) 「本来の業務に付随して行われたもの」に該当するかどうかは、原則として、役務提供の目的等により判断するのであるが、次に掲げる場合には、本文の取扱いは適用しない。

1 当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の当該役務提供を行った事業年度の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合

2 当該法人又は国外関連者が当該役務提供を行う際に無形資産を使用した場合

3 その他当該役務提供の総原価の額を当該役務提供の対価の額とすることが相当ではないと認められる場合

(3) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供((1)の定めにより、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うもの及び(2)に定める本来の業務に付随して行われたものを除く。)について調査を行う場合において、当該役務提供が次に掲げる要件の全てを満たしているときは、必要に応じ、(2)に定める方法の適用について検討する。

イ 当該役務提供が(1)イからホまでに掲げる要件の全てを満たしていること。

ロ 当該役務提供が当該法人又は国外関連者の事業活動の重要な部分に関連していないこと。

ハ 当該役務提供に係る総原価の額が、当該役務提供に係る従事者の従事割合、資産の使用割合その他の合理的な方法により当該役務提供を受けた者に配分されていること。

(注) 次に掲げる場合には、本文の取扱いは適用しない。

1 当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の当該役務提供を行った事業年度の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合

2 その他当該役務提供の総原価の額を当該役務提供の対価の額とすることが相当ではないと認められる場合

(調査において検討すべき無形資産)

3-12 調査において無形資産が法人又は国外関連者の所得にどの程度寄与しているかを検討するに当たっては、例えば、次に掲げる重要な価値を有し所得の源泉となるものを総合的に勘案することに留意する。

イ 技術革新を要因として形成される特許権、営業秘密等

ロ 従業員等が経営、営業、生産、研究開発、販売促進等の企業活動における経験等を通じて形成したノウハウ等

ハ 生産工程、交渉手順及び開発、販売、資金調達等に係る取引網等

 なお、法人又は国外関連者の有する無形資産が所得の源泉となっているかどうかの検討に当たり、例えば、国外関連取引の事業と同種の事業を営み、市場、事業規模等が類似する法人のうち、所得の源泉となる無形資産を有しない法人を把握できる場合には、当該法人又は国外関連者の国外関連取引に係る利益率等の水準と当該無形資産を有しない法人の利益率等の水準との比較を行うとともに、当該法人又は国外関連者の無形資産の形成に係る活動、機能等を十分に分析することに留意する。

(注) 役務提供を行う際に無形資産が使用されている場合の役務提供と無形資産の関係については、3-9(1)(注)に留意する。

(無形資産の形成、維持又は発展への貢献)

3-13 無形資産の使用許諾取引等について調査を行う場合には、無形資産の法的な所有関係のみならず、無形資産を形成、維持又は発展(以下「形成等」という。)させるための活動において法人又は国外関連者の行った貢献の程度も勘案する必要があることに留意する。
 なお、無形資産の形成等への貢献の程度を判断するに当たっては、当該無形資産の形成等のための意思決定、役務の提供、費用の負担及びリスクの管理において法人又は国外関連者が果たした機能等を総合的に勘案する。この場合、所得の源泉となる見通しが高い無形資産の形成等において法人又は国外関連者が単にその費用を負担しているというだけでは、貢献の程度は低いものであることに留意する。

(無形資産の使用許諾取引)

3-14 法人又は国外関連者のいずれか一方が保有する無形資産を他方が使用している場合で、当事者間でその使用に関する取決めがないときは、譲渡があったと認められる場合を除き、当該無形資産の使用許諾取引があるものとして当該取引に係る独立企業間価格の算定を行うことに留意する。
 なお、その使用許諾取引の開始時期については、非関連者間取引における例を考慮するなどにより、当該無形資産の提供を受けた日、使用を開始した日又はその使用により収益を計上することとなった日のいずれかより、適切に判断する。

(費用分担契約)

3-15 費用分担契約とは、契約の当事者が、それぞれの行う事業において生ずる収益の増加、費用の減少その他の便益を得ることを目的として、無形資産又は有形資産の開発、生産又は取得及び役務の開発、提供又は受領を共同で行うこと(以下「共同活動」という。)を約し、当該共同活動への貢献(当該共同活動に係るリスクの引受け及び費用の負担を含む。以下同じ。)を分担して行うことを定める契約をいう。

(注)1 例えば、新製品の製造技術の開発に当たり、契約の当事者のそれぞれが、当該製造技術の持分を取得するとともに当該持分に基づいて製造する当該新製品の販売によって生ずる収益を得ることを目的として、当該製造技術を共同で開発することを約し、開発計画の策定又は進捗管理、開発業務の遂行、ノウハウ等の無形資産の提供その他の当該共同開発への貢献を分担して行うことを定める契約は費用分担契約に該当する。

2 個々の契約が費用分担契約に該当するか否かを判断するに当たっては、当該個々の契約に係る契約書において「費用分担契約」の用語が記載されているか否かを問わない。

(費用分担契約の取扱い)

3-16 

(1) 費用分担契約の当事者である法人及び国外関連者(以下「参加者」という。)が、当該費用分担契約に基づき共同活動を行う場合において、当該共同活動により当該参加者それぞれの事業において生ずると予測される収益の増加、費用の減少その他の便益(以下「予測便益」という。)に応じて、当該共同活動への貢献を分担して行うことは国外関連取引に該当する。この場合において、当該費用分担契約が次に掲げる事項の全てを満たすときは、当該費用分担契約は独立企業原則に即したものとして取り扱い、当該国外関連取引について措置法第66条の4第1項の規定の適用がないことに留意する。

イ 当該参加者の予測便益の額の合計額のうちに占める当該参加者それぞれの予測便益の額の割合(以下「予測便益割合」という。)が適正に見積もられていること。

ロ 当該参加者それぞれの当該共同活動への貢献の価値の額(以下「貢献価値額」という。)が、当該貢献が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合に当該貢献につき支払われるべき対価の額として最も適切な方法により算定される金額と一致していること。

ハ 当該参加者の貢献価値額の合計額のうちに占める当該参加者それぞれの貢献価値額の割合(以下「貢献価値割合」という。)が予測便益割合に一致していること。

(注)1 貢献価値割合を予測便益割合と一致させるために参加者の間で支払われる金額(以下「調整的支払額」という。)については、当該調整的支払額を支払う者の貢献価値額を増加させ、当該調整的支払額を受け取る者の貢献価値額を減少させるものとして取り扱うことに留意する。

2 調整的支払額の支払いがあった場合には、当該調整的支払額がイを満たす予測便益割合とロを満たす貢献価値額を基礎として適正に算出されているか確認するとともに、3−21も参照の上検討することに留意する。

(2) 法人の貢献価値割合が当該法人の予測便益割合と比較して過大であると認められる場合には、当該法人が費用分担契約に基づき国外関連者との間で行った国外関連取引につき、措置法第66条の4第1項の規定の適用があることに留意する。

(3) 貢献価値割合の算定は、(1)ロに基づき計算した貢献価値額を基礎として算定するのであるが、参加者が費用分担契約に基づいて分担する共同活動への貢献において負担する費用の額と当該参加者の貢献価値額が大きく異ならない場合には、当該費用の額を当該参加者の貢献価値額として取り扱うこととして差し支えない。例えば、当該貢献が3−11(1)に該当する役務提供である場合はこれに該当する。

(注) 法人が分担した費用については、法人税に関する法令の規定に基づいて処理するのであるから、例えば、費用分担契約に基づいて分担する共同活動への貢献において負担する費用のうちに措置法第61条の4第4項(交際費等の損金不算入)に規定する交際費等がある場合には、適正な予測便益割合に基づき法人が分担した交際費等の額は、措置法通達61の4(1)−23(1)(交際費等の支出の方法)の定めに準じて取り扱うこととなり、当該分担した交際費等の額を基に同条第1項の規定に基づく損金不算入額の計算を行うこととなることに留意する。

(費用分担契約に関する留意事項)

3-17 費用分担契約に基づいて行われた国外関連取引について調査を行う場合には、措置法通達66の4(3)−3に掲げる諸要素等に基づいて当該国外関連取引の内容等を的確に把握し、例えば次に掲げる点に留意の上、移転価格税制上の問題の有無を検討する。

(1) 費用分担契約に係る共同活動の範囲、参加者が分担する共同活動への貢献その他の当該費用分担契約に係る契約書に定める内容と当該参加者の実際に遂行した業務その他の当該費用分担契約に係る事実が一致しているか。

(2) 全ての参加者が、例えば費用分担契約に基づいて行われた共同活動を通じて開発された無形資産の持分から生ずる収益を享受することが合理的に見込まれるなど、予測便益を有しているか。

(注) 参加者のうち予測便益を有していない者が、当該費用分担契約における共同活動への貢献を分担している場合には、当該貢献に対して独立企業原則に基づいた対価が支払われているか検討する必要があることに留意する。

(3) 予測便益割合が次のイからハまで等に照らして、適正に算定されているか。

イ 予測便益を直接的に見積もることが困難である場合において、予測便益の算定に当たり、参加者それぞれが享受する共同活動から生ずる成果から得る便益の程度を推測するに足りる合理的な基準(売上高、売上総利益、営業利益、製造又は販売の数量等)が用いられているか。

ロ 予測便益割合は、その算定の基礎となった基準の変動に応じて見直されているか。

ハ 予測便益割合と実現便益割合(共同活動から生じた成果によって参加者において増加した収益又は減少した費用(以下「実現便益」という。)の額の合計額のうちに占める参加者それぞれの実現便益の額の割合をいう。)とが著しく乖離している場合に、参加者それぞれの予測便益の見積りが適正であったかどうかについての検討が行われているか。

(注) 共同活動から生じた成果が特定無形資産(措置法第66条の4第8項に規定する特定無形資産をいう。以下同じ。)に該当するときは、同項の規定を踏まえ検討する。

(4) 貢献価値割合が次のイ及びロ等に照らして、適正に算定されているか。

イ 参加者それぞれの貢献価値額の算定において、役務の提供、研究開発及び有形資産又は無形資産の提供等、当該参加者それぞれが費用分担契約に係る共同活動への貢献として果たしたあらゆる機能等が適切に特定されているか。

ロ 参加者それぞれの貢献価値割合は、費用分担契約に基づく共同活動に係る参加者それぞれの果たしたあらゆる機能等を総合的に勘案して適正に算定された貢献価値額を基に算定されているか。

(5) 参加者それぞれの貢献価値割合は、当該参加者それぞれの予測便益割合と一致しているか。一致していない場合、調整的支払額が授受されているか。
 ただし、一致していない要因が経済状況の変化等特別な理由に基づくものである場合には、検討した事業年度の前後の事業年度を含めるなど合理的期間を基に調整的支払額が授受されるべきか検討することが適切である場合があることに留意すること。

(6) 費用分担契約について参加者の新規加入若しくは脱退があった場合又は費用分担契約の終了があった場合において、それまでの当該費用分担契約による共同活動を通じて形成された無形資産等があるときは、その加入若しくは脱退又は終了が生じた時点において当該無形資産等の価値を評価し、その加入又は脱退にあっては、これらにより生じた当該無形資産等に対する持分の変更に応じて、終了にあっては、その終了の時におけるそれぞれの持分に応じて、適正な対価の授受が行われているか。

(費用分担契約における既存の無形資産の使用)

3-18 参加者が、費用分担契約における共同活動において当該参加者の保有する既存の無形資産(当該費用分担契約を通じて取得・開発された無形資産以外の無形資産をいう。以下同じ。)を使用している場合には、当該既存の無形資産を保有する参加者において、当該既存の無形資産の当該共同活動における使用による貢献を考慮して当該参加者の貢献価値額の計算が行われているか、又は当該貢献価値額に等しい当該既存の無形資産に係る独立企業間の使用料に相当する金額が収受されているかどうかを検討する必要があることに留意する。

(注) 法人が費用分担契約に基づいて行われる共同活動において自ら開発行為等を行っている場合や国外関連者の実現便益がその予測便益を著しく上回っているような場合には、当該法人の保有する既存の無形資産が当該共同活動に使用されているかどうかを検討し、その使用があると認められた場合においては、本文の検討を行うとともに、当該既存の無形資産が特定無形資産に該当するときは措置法第66条の4第8項の規定の適用を検討することに留意する。

(費用分担契約に係る検討を行う書類)

3-19 調査においては、3−4に掲げる書類から国外関連取引の実態を的確に把握するのであるが、費用分担契約に基づいて行われた国外関連取引について調査を行う場合には、当該費用分担契約に係る契約書(当該費用分担契約に基づいて行われた共同活動の範囲・内容を記載した附属書類を含む。)のほか、主として次に掲げる書類(帳簿その他の資料を含む。)の作成又は提示を求め、移転価格税制上の問題の有無を検討する。

(1) 費用分担契約の締結に当たって作成された書類

イ 参加者の名称、所在地、資本関係及び事業内容等を記載した書類

ロ 参加者が契約締結に至るまでの交渉・協議の経緯を記載した書類

ハ 共同活動を行う期間を記載した書類

ニ 共同活動の範囲、内容及び進捗管理方法を記載した書類

ホ 参加者それぞれの共同活動への貢献の形態及び貢献価値額の算定方法並びに貢献価値割合の算定に関する細目を記載した書類(貢献価値割合として当該共同活動に要する費用の割合を用いることができる場合には、当該費用の割合の算定に関する細目及び当該費用の割合を用いることとした理由を記載した書類)

ヘ 共同活動において使用される無形資産又は有形資産の形成等に関する参加者それぞれの役割及び管理方法を記載した書類

ト 予測便益割合の算定方法及びそれを用いることとした理由を記載した書類

チ 共同活動から生ずる成果物の用途を記載した書類

リ 予測便益割合と実現便益割合とが乖離した場合における貢献価値額の調整に関する細目を記載した書類

ヌ 契約条件の変更及び費用分担契約の改定又は終了に関する細目

(2) 費用分担契約締結後の期間において作成された書類

イ 参加者の貢献価値額の合計額及びその内訳並びに参加者それぞれの貢献価値額及びその計算過程を記載した書類

ロ 予測便益割合と実現便益割合とが乖離している場合における乖離の細目を記載した書類

ハ 参加者の新規加入若しくは脱退又は費用分担契約の終了があった場合における参加者の異動状況の細目及び事情を記載した書類(当該参加者の共同活動を通じてそれまでに形成された無形資産等があるときは、当該無形資産等の価値の算定に関する細目及び無形資産等に対する持分の細目を記載した書類を含む。)

ニ 共同活動を通じて形成された無形資産等に対する参加者それぞれの持分の異動状況(当該共同活動を通じて形成された無形資産等の価値の算定方法を含む。)を記載した書類

ホ 契約条件の変更及び費用分担契約の改定又は終了の結果を記載した書類

(3) その他の書類

イ 既存の無形資産を共同活動に使用した場合における当該既存の無形資産の内容及び使用料に相当する金額の算定に関する細目を記載した書類

ロ 共同活動に関係する者又は当該共同活動から生ずる成果を利用することが予定されている者で、費用分担契約に参加しない者の名称、所在地等を記載した書類

(国外関連者に対する寄附金)

3-20 調査において、次に掲げるような事実が認められた場合には、措置法第66条の4第3項の規定の適用があることに留意する。

イ 法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付け、役務の提供その他の取引(以下「資産の販売等」という。)を行い、かつ、当該資産の販売等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき

ロ 法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払を受ける場合において、当該法人が当該国外関連者から支払を受けるべき金額のうち当該国外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認められる金額があるとき

ハ 法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払を行う場合において、当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額があるとき

(注) 法人が国外関連者に対して財政上の支援等を行う目的で国外関連取引に係る取引価格の設定、変更等を行っている場合において、当該支援等に基本通達9-4-2の相当な理由があるときは、措置法第66条の4第3項の規定の適用がないことに留意する。

(価格調整金等がある場合の留意事項)

3-21 法人が価格調整金等の名目で、既に行われた国外関連取引に係る対価の額を事後に変更している場合には、当該変更が合理的な理由に基づく取引価格の修正に該当するものかどうかを検討する。
 当該変更が国外関連者に対する金銭の支払又は費用等の計上(以下「支払等」という。)により行われている場合には、当該支払等に係る理由、事前の取決めの内容、算定の方法及び計算根拠、当該支払等を決定した日、当該支払等をした日等を総合的に勘案して検討し、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められるときは、取引価格の修正が行われたものとして取り扱う。
 なお、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められない場合には、当該支払等が措置法第66条の4第3項の規定の適用を受けるものであるか等について検討する。

(外国税務当局が算定した対価の額)

3-22 独立企業間価格は我が国の法令に基づき計算されるのであるから、外国税務当局が移転価格税制に相当する制度に基づき国外関連者に対する課税を行うため算定した国外関連取引の対価の額は、必ずしも独立企業間価格とはならないことに留意する(相互協議において合意された場合を除く。)。

(事前確認の申出との関係)

3-23

(1) 法人が事前確認を受けようとする事業年度(以下「確認対象事業年度」という。)の前の各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度を含む。以下3−23において同じ。)について調査が行われている間に、当該法人が事前確認の申出を行ったとしても、当該調査は中断されない。

(2) 法人が事前確認の申出を行ったとしても、確認対象事業年度の前の各事業年度に係る調査の開始は妨げられない。

(3) 事前確認に係る手続が行われている間は、確認対象事業年度に係る申告の内容(当該事前確認を受けようとする国外関連取引に係る独立企業間価格の算定方法等に限る。)については調査を行わない。

(4) 調査に当たっては、法人から事前確認審査のために収受した資料(事実に関するものを除く。)は使用しない。ただし、当該資料を使用することについて当該法人の同意があるときは、この限りではない。

(移転価格課税と所得の内外区分)

3-24 調査に当たり、移転価格税制とともに法第69条第1項(外国税額の控除)の規定を適用するときは、移転価格税制の適用により増加する所得について同条第4項から第8項までの規定の適用により所得の内外区分を判定した上で、同条第1項に規定する控除限度額の計算を行うことに留意する。

(過少資本税制との関係)

3-25 調査に当たり、移転価格税制とともに措置法第66条の5(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)の規定を適用する場合には、同条第1項に規定する「負債の利子等」の額の算定において、独立企業間価格を超える部分の「負債の利子等」の額を含めないことに留意する。

(過大支払利子税制との関係)

3-26 調査に当たり、移転価格税制とともに措置法第66条の5の2(対象純支払利子等に係る課税の特例)の規定を適用する場合には、次に掲げることに留意する。

(1) 同条第1項に規定する「対象支払利子等の額」の算定において、独立企業間価格を超える部分の「支払利子等の額」(同条第2項第1号に規定する「支払利子等の額」をいう。以下同じ。)を含めないこと。

(2) 同条第1項に規定する「控除対象受取利子等合計額」の算定において、独立企業間価格に満たない部分の「受取利子等の額」(同条第2項第6号に規定する「受取利子等の額」をいう。)を含めること及び独立企業間価格を超える部分の支払利子等の額を含めないこと。

(3) 同条第1項に規定する「調整所得金額」の算定において、国外関連取引が独立企業間価格で行われたものとみなして計算した場合に算出される所得の金額を基礎とすること。

(4) 措置法施行令第39条の13の2第29項(対象純支払利子等に係る課税の特例)に規定する「調整損失金額」の算定において、国外関連取引が独立企業間価格で行われたものとみなして計算した場合に算出される損失の金額を基礎とすること。

(源泉所得税との関係)

3-27 調査の結果、法人が国外関連者に対して支払った利子又は使用料について、法人税の課税上独立企業間価格との差額が生ずる場合であっても、源泉所得税の対象となる利子又は使用料の額には影響しないことに留意する。また、租税条約のうちには当該差額について租税条約上の軽減税率が適用されない定めがあるものがあることに留意する。

(消費税との関係)

3-28 移転価格税制は法人税法その他法人税に関する法令の適用を定めたものであり、調査に当たり同税制が適用された場合であっても、消費税の計算には影響しないことに留意する。


移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)

(別添)

第1章 定義及び基本方針

第2章 国別報告事項、事業概況報告事項及びローカルファイル

第3章 調査

第4章 独立企業間価格の算定等における留意点

第5章 国外移転所得金額等の取扱い

第6章 事前確認

第7章 平成29年1月31日付官協8-1ほか7課共同「日台民間租税取決め第24条(相互協議手続)の取扱い等について」(事務運営指針)(以下「日台相互協議指針」という。)に定める相互協議が行われる場合の取扱い

第8章 平成17年4月28日付査調7−4ほか3課共同「連結法人に係る移転価格事務運営要領の制定について」(事務運営指針)(以下「連結指針」という。)の廃止に伴う経過的取扱い