(別紙)
平成23年2月17日

国税庁課税部長
西村 善嗣 殿

社団法人 日本損害保険協会
理事 村田 勝彦

T 照会の趣旨

 定期金給付契約に関する権利の評価方法(相続税法24、25)については、課税の適正化を推進する観点から、平成22年度税制改正において見直されました。
 この平成22年度税制改正において、定期金給付契約でその契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額については、これまでの割合・倍数による評価から、

  • イ 解約返戻金の金額、
  • ロ 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には当該一時金の金額(以下「一時金の金額」といいます。)、
  • ハ 予定利率を基に複利年金現価率等で計算した金額

のうちいずれか多い金額とされました(相続税法241)。
 また、定期金給付契約(生命保険契約を除きます。)でその契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生していないものに関する権利の価額については、これまでの割合による評価から、

  • イ 解約返戻金を支払う旨の定めのないものは予定利率を基に複利年金終価率等で計算した金額に100分の90を乗じて得た金額、
  • ロ 解約返戻金を支払う旨の定めのあるものは解約返戻金の金額

とされました(相続税法25)。
 ところで、年金払積立傷害保険(以下「年金保険」といいます。)の概要は下記Uのとおりですが、改正後の相続税法第24条«定期金に関する権利の評価»及び第25条«定期金給付事由が発生していない定期金に関する権利の評価»の取扱いについて明確化しておく必要があると考えており、保険契約者(=保険料負担者)A、被保険者B、給付金受取人Bの場合の贈与税等の課税関係は、次のとおり解して差し支えないか、ここに照会いたします。

  1. 1 給付金支給開始日前に保険契約者が死亡した場合に年金保険契約を承継する保険契約者の相続人の課税関係
     年金保険契約に関する権利を承継するAの相続人へ相続税が課税されます。この場合の年金保険契約に関する権利の評価額は、相続税法第25条の規定により計算した金額となります。
  2. 2 給付金支給開始日に給付金受給権を取得する給付金受取人の課税関係
     給付金受給権を取得するBに贈与税が課税されます(相続税法61)。この場合の給付金受給権の評価額は、確定型の場合は給付金支払期間の年数を有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間の年数」として相続税法第24条第1項第1号(有期定期金)の規定、保証期間付有期型の場合は原則として保証期間に非保証期間を含めた給付金支払期間の年数を有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間の年数」として相続税法第24条第3項の規定により、計算した金額となります。

U 照会に係る取引等の事実関係(年金保険の概要)

  1. 1 年金保険は、保険期間の初日から満期までの全保険期間を通して傷害保険としての給付(死亡保険金又は後遺障害保険金(以下「保険金」といいます。)の支払)が行われ、保険料払込終了後の一定時点(以下「給付金支給開始日」といいます。)から、給付金受取人に対して、一定期間、毎年、年金払方式により給付金が支払われます。
     ただし、保険期間中に、全損事由等(1保険金の全額を支払う傷害が発生した場合、又は2被保険者が傷害事故以外の事由により死亡した場合)が生じた場合には、以後の給付金の支払は停止します。
  2. 2 年金保険は、給付金の支払方法によって、「確定型」と「保証期間付有期型」とに分かれますが、いずれも給付金支給開始日から、一定期間(給付金支払期間)において、被保険者が生存(被保険者に後遺障害保険金の全額が支払われる後遺障害が生じた場合を除きます。以下「生存等」といいます。)している限り、給付金が支払われ、その間に、被保険者が死亡(被保険者に後遺障害保険金の全額が支払われる後遺障害が生じた場合を含みます。)した場合には、以後の給付金の支払は停止し、傷害による死亡(事故死)の場合は死亡保険金、病気による死亡の場合は返戻金(未払年金の現価相当)が支払われます。
     また、年金保険の解約又は解除の場合にも、返戻金(未払年金の現価相当)が支払われます。
     なお、保証期間付有期型の非保証期間にあっては、返戻金の支払はありません。
    • (確定型)
       傷害保険金額
      確定型保険の図
      (注)最終の保険料払込日から給付金支払開始までに一定の期間があるものがあります。
    • (保証期間付有期型)
       傷害保険金額
      保証期間付有期型保険の図
    • (注1)最終の保険料払込日から給付金支払開始までに一定の期間があるものがあります。
    • (注2)保証期間満了時の年齢は75歳が限度となります。
  3. 3 保険契約の当事者は、保険契約者、被保険者、給付金受取人(保険契約者又は被保険者のいずれかに限ります。)及び死亡保険金受取人です。
     なお、保険契約者と給付金受取人とが異なる場合には、給付金受取人は、給付金支給開始日に年金保険契約上の一切の権利義務を保険契約者から承継します。

V 照会者の求める見解となることの理由

  1. 1 給付金支給開始日前に保険契約者が死亡した場合に年金保険契約を承継する保険契約者の相続人の課税関係
     給付金支給開始日前に保険契約者Aが死亡したときには、保険契約者の法定相続人が保険契約上の権利を承継(相続)することとなり、年金保険契約に関する権利は本来の相続財産となるものと考えます。この場合の年金保険契約に関する権利は、定期金給付契約でその契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生していないものに関する権利であるため、その評価額は相続税法第25条の規定により計算した金額となるものと考えます。
  2. 2 給付金支給開始日に給付金受給権を取得する給付金受取人の課税関係
     相続税法第6条第1項は、定期金給付契約(生命保険契約を除きます。)の定期金給付事由が発生した場合において、当該契約に係る保険料の負担者と定期金受取人が異なる場合には、定期金給付事由が発生した時において、定期金受取人は定期金受給権を保険料の負担者から贈与により取得したものとみなしています。
     この場合の定期金受給権の評価については、相続税法第24条の規定によることとなりますが、年金保険の給付金受給権については、給付金受取人に対して、被保険者の生存等を条件として、一定期間給付金を支払うものであるため、同条第1項各号に規定する定期金給付契約に関する権利と異なり、また、保険事故発生時の保険金額に相当する後遺障害保険金を支払った場合には、被保険者が生存するにもかかわらず、給付金の支払を停止するものであるため、同条第3項及び第4項に規定する定期金給付契約に関する権利とも異なり、直ちに、同条第1項各号、第3項及び第4項に定めるいずれの権利にも該当しないものと考えます。
     しかしながら、年金保険が失効(被保険者が病死)、解約又は解除の場合に給付金受取人に対して支払われることとなる返戻金の額は、失効、解約又は解除の時から、確定型の場合は給付金支払期間、保証期間付有期型の場合は保証期間(以下、給付金支払期間と保証期間を合わせて「給付金支払期間等」といいます。)満了の日までの間に支払われる給付金の総額の現在価値に見合うものであることからすると、給付金受取人は、給付金支給開始日に給付金支払期間等に応じた有期定期金を取得したものと同視できるため、その金額を踏まえた評価とすることが相当と考えます。
     したがって、確定型の年金保険の給付金受給権の評価額については、給付金支払期間の年数を有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間の年数」として相続税法第24条第1項第1号(有期定期金)の規定により計算した金額とすることが相当と考えます。
     また、保証期間付有期型の年金保険の給付金受給権の評価額については、1保証期間の年数を有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間の年数」として相続税法第24条第1項第1号(有期定期金)の規定により計算した金額と、2保証期間に非保証期間を含めた給付金支払期間の年数を有期定期金の「給付を受けるべき残りの期間の年数」として同条第3項の規定により計算した金額のいずれか多い金額とすることが相当と考えます。この場合、保証期間満了時の年齢は75歳が限度となり、給付金支給開始日の年齢は60歳又は65歳となるため、相続税法第24条第1項第3号(終身定期金)に規定する余命年数が保証期間の年数(15年又は10年)よりも多くなることから、2で計算した金額が1で計算した金額よりも多い金額となりますので、実務上は、2の相続税法第24条第3項の規定により計算した金額とすることが相当と考えます。
     なお、保証期間付有期型の1及び2の具体的な計算は次のとおりとなるものと考えます。
    1. 1 相続税法第24条第1項第1号(有期定期金)の規定により計算した金額
      一時金の金額がないため、次のAとBのうちいずれか多い金額となります。
      A=解約返戻金の金額
      B=給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額
      ×保証期間の年数に応ずる予定利率による複利年金現価率
    2. 2 相続税法第24条第3項の規定により計算した金額
      一時金の金額がないため、次の「AとCのうちいずれか多い金額」と「AとDのうちいずれか多い金額」のうちいずれか少ない金額となります。
      A=解約返戻金の金額
      C=給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額
      ×給付金支払期間(保証期間+非保証期間)の年数に応ずる予定利率による複利年金現価率
      D=給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額
      ×余命年数に応ずる予定利率による複利年金現価率