(別紙)

平成30年12月3日

 国税庁 課税部
 審理室長 山上 淳一 殿

経済産業省 産業技術環境局
計量行政室長 阿部 一貴

I 照会の趣旨

 計量法では、社会・経済活動において取引又は証明に使用する計量器で、その精度を公的に担保することが必要なもの等を特定計量器として定めており、適正な計量の確保の観点から、指定製造事業者が製造するものを除き、経済産業大臣(以下「経産大臣」といいます。)、都道府県知事、日本電気計器検定所(以下「日電検」といいます。)又は経産大臣が指定した者(以下「指定検定機関」といいます。)が行う検定に合格したものとして検定証印が付されている特定計量器以外の特定計量器については、取引又は証明における計量に使用してはならないこととされています。
 今般、平成28年11月に計量行政審議会で取りまとめられた答申「今後の計量行政の在り方−次なる10年に向けて−」(平成28年11月)を踏まえて、指定検定機関の指定要件の見直しに関する計量法関係法令の改正が行われました。
 従来の指定検定機関が、その指定を受ける要件として、器差検定、構造検定、型式承認の試験及び指定製造事業者の品質管理の調査などの業務を全国規模で実施できることが求められていましたが、今般の改正により、その要件が見直され、器差検定と構造検定の一部のみを実施する検定機関(以下「器差検定を中心とした指定検定機関」といいます。)の指定や、地域ブロック単位に限定した業務の実施が可能とされています。
 この場合、器差検定を中心とした指定検定機関が行う特定計量器の検定に係る手数料については、消費税が非課税となる行政手数料に該当するものと解して差し支えないか伺います。

II 照会に係る取引等の事実関係

1 検定の実施機関(指定検定機関)について

 指定検定機関とは、特定計量器の検定を実施する者(検定の実施主体)として、経産大臣から検定に関する事務(指定検定機関の指定に係るものを除きます。)を委任されている国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」といいます。)、都道府県知事及び日電検といった公的機関と並ぶものであり、経産大臣が指定する民間の検定機関のことをいいます。
 計量法(平成4年法律第51号)第106条《指定検定機関》の規定に基づく同法第16条第1項第2号イ《使用の制限》の指定は、計量法施行令(平成5年政令第329号)第26条《指定検定機関の指定の区分》で定める区分ごとに、指定定期検査機関、指定検定機関、指定計量証明検査機関及び特定計量証明認定機関の指定等に関する省令(平成5年通商産業省令第72号。以下「機関等省令」といいます。)で定めるところにより、検定を行おうとする者の申請により行うこととされており、現在、この指定を受けている指定検定機関は、一般財団法人日本品質保証機構(昭和32年10月28日に財団法人日本機械金属検査協会という名称で設立された法人をいう。)のみとなっています。
 また、当該指定には、計量法第27条《欠格条項》から第33条《事業計画等》まで及び第35条《解任命令》から第38条《指定の取消し等》までの規定が準用されることから、例えば、同法第28条《指定の基準》の規定に基づき、指定機関への無秩序な民間事業者(検定機関)の参入を制限する観点から、行政の裁量により、経産大臣はその申請のあった者の指定を行わないことがあるほか、同法第36条《役員及び職員の地位》の規定に基づき、検査業務に従事する指定検定機関の役員又は職員は、いわゆるみなし公務員となることが求められます。
 今般、平成28年11月の計量行政審議会答申を踏まえて、適正な計量の実施を確保するため、制度の信頼性は確保した上で検定実施者の拡大を図ることを目的とし、器差検定を中心とした検定を実施する者を認めるべく、指定検定機関の指定要件の見直しが行われました。
 具体的には、機関等省令第9条《指定の申請》の改正により、経産大臣は、検定を行おうとする者の能力又は申請により、当該者が行うことができる検定の種類を、器差検定と構造検定の一部のものに限ることとする指定が可能とされるとともに、その業務の範囲についても、関東・甲信越ブロックなど全国を6つのブロックに区分した地域ブロックに限定して指定することが可能とされています。
 以上のことから、従来の指定検定機関は、器差検定、構造検定、型式承認の試験及び指定製造事業者の品質管理の調査などの業務を全国規模で実施できることが、その指定を受ける際の要件となっていましたが、新たに経産大臣が指定する器差検定を中心とする指定検定機関については、これらの指定に関する要件が緩和されることとなりました。
 なお、器差検定を中心とする指定検定機関の指定についても、従来の指定検定機関に対する指定と同様、計量法第106条の規定に基づき、検定を行おうとする者の申請により経産大臣が行うことに変更点はありません。

2 特定計量器の検定業務について

(1) 特定計量器について

 計量器とは、長さ・質量・時間等の「計量」の対象となる量(「物象の状態の量」)を計るための器具、機械又は装置のことをいいます。また、これらのうち、取引若しくは証明における計量に使用され、又は主として一般消費者の生活の用に供される計量器(例えば、体温計や血圧計など)について、適正な計量の実施を確保するためにその構造(計量器の基本的な構造や性能を示す基準)又は器差(計量器の精度、許容される誤差)に係る基準を定める必要がある一定の計量器を「特定計量器」といいます。
 特定計量器には、電気・ガス・水道メーター、非自動はかり、体温計、タクシーメーター、燃料油メーター等が指定されており、それぞれに技術基準が規定されています。

(2) 特定計量器の使用について

 計量法は、特定計量器の使用者がこれを取引(有償、無償を問わず、物又は役務の給付を目的とする業務上の行為をいいます。)又は証明(公に又は業務上他人に一定の事実が真実である旨を表明することをいいます。)に用いる場合、国や自治体等が精度を確認した計量器を使用すること等を義務づけることで、正確な計量を確保することとしています。
 計量法第16条《使用の制限》は、経産大臣、都道府県知事、日電検又は指定検定機関が行う検定を受け、これに合格したものとして同法第72条第1項《検定証印》の検定証印が付されている特定計量器及び指定製造事業者が製造し、基準適合証印が付された特定計量器以外のものは、取引又は証明における法定計量単位による計量に使用してはならないとしています。また、同法第172条《罰則》の規定により、この使用制限に違反した場合には、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が課せられます。

(3) 特定計量器の検定について

 特定計量器の検定は、計量法第70条《検定の申請》の規定に基づき、特定計量器について同法第16条の検定を受けようとする者の申請に基づき行われるものであり、当該検定とは、特定計量器の構造と器差について、特定計量器検定検査規則(平成5年通商産業省令第70号)で定める技術基準への適合性を、国、都道府県などが確認する計量法上の検査のことをいいます。
 具体的な検定の方法は、特定計量器検定検査規則及び同規則において引用される日本工業規格(JIS)によることとされており、これに合格した計量器には、「検定証印」というマークが付されます。
 なお、検定に有効期限が定められている計量器もあります。

(4) 特定計量器の検定に係る手数料について

 産総研又は日電検による特定計量器の検定を受けようとする者は、計量法第158条《手数料》の規定に基づき、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならないとされています。
 他方、指定検定機関が特定計量器の検定を受けようとする者から徴収する特定計量器の検定に係る手数料(以下「検定手数料」といいます。)については、前述のようなその徴収の根拠となる法令上の規定はありませんが、当該検定手数料は指定検定機関が定める検定業務に関する規程の記載事項とされて経産大臣の認可が必要とされていることから、指定検定機関は、当該認可を受けた検定手数料について、その検定を受けようとする者から徴収しています。
 なお、経産大臣は、指定検定機関の検定手数料の額について、前述の実費を勘案して定める計量法関係手数料令(平成5年政令第340号)の考え方を踏まえた審査を行うこととしており、その積算根拠が不明瞭なものや極端な額のものについては、審査に合格しない場合があります。

III 上記IIの事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由

1 検定に係る手数料に関する消費税の非課税規定等

 国、地方公共団体、消費税法別表第三に掲げる法人(以下「別表第三法人」といいます。)その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者が、法令に基づき行う検査、検定、試験、審査、証明及び講習に係る役務の提供で、その手数料その他の料金の徴収が法令に基づく一定のもの及び当該役務の提供に類するものとして政令で定める一定のものについては、消費税が非課税とされています(消費税法第6条第1項、別表第一第五号イ及びロ)。
 また、これを受けて、消費税法施行令第12条第2項第2号《国、地方公共団体等の役務の提供》では、国、地方公共団体、別表第三法人その他法令に基づき国又は地方公共団体の委託又は指定を受けた者が法令に基づき行う登録、認定、確認、指定、検査、検定、試験、審査及び講習(以下「検定等」といいます。)のうち、法令において、資産の輸出その他の行為を行う場合にその使用する資産について当該検定等に係る役務の提供を受けることが要件とされているものについては、消費税が非課税となる旨を定めています(消費税法施行令第12条第2項第2号イ(2))。
 なお、「料金の徴収が法令に基づくもの」とは、「手数料を徴収することができる」又は「手数料を支払わなければならない」等の規定をいい、「別途手数料に関する事項を定める」又は「手数料の額は〇〇〇円とする」との規定は含まれないと解されています(消費税法基本通達6−5−2)。

2 照会者の求める見解となることの理由

 上記II2(4)のとおり、指定検定機関が特定計量器の検定を受けようとする者から徴収する検定手数料については、その徴収の根拠となる法令上の規定がないことから、上記1のとおり、照会の検定手数料について、これが非課税となる場合の要件としては次のような点について検討する必要があると考えますので、当該要件の該当性について、以下検討します。

  • @ 検定を行う者が、国、地方公共団体、別表第三法人その他法令に基づき国若しくは地方公共団体の委託若しくは指定を受けた者であること
  • A 当該事務が、法令に基づき行う検定等に係る役務の提供で、法令において、資産の輸出その他の行為を行う場合にその使用する資産について当該検定等に係る役務の提供を受けることが要件とされているものであること

(1) 検定を行う者が国等に該当するか

 上記U1のとおり、指定検定機関は、特定計量器の検定を実施する者(検定の実施主体)として、産総研、都道府県及び日電検といった公的機関と並ぶものであり、計量法第106条の規定に基づき経産大臣が指定するものです。
 また、今般の改正による指定検定機関の指定要件の見直しは、あくまで経産大臣が検定機関を指定する際の要件緩和に止まるものであり、当該改正により新たに指定されることとなる「器差検定を中心とした指定検定機関」についても、経産大臣がその指定を受けようとする者の申請により、計量法第106条の規定に基づき、所定の審査を実施した上で指定するものです。
 したがって、器差検定を中心とした指定検定機関は、法令に基づき国の指定を受ける者に該当するものと認められ、上記@の要件を満たすものと考えます。

(2) 法令に基づき行う検定等に係る役務の提供に該当し、法令において、一定の行為を行う場合にその使用する資産について当該検定等に係る役務の提供を受けることが要件とされているものに該当するか

 特定計量器の検定は、上記II2(3)のとおり、計量法及び特定計量器検定検査規則の定めるところにより実施されるものであり、法令に基づき行われるものです。
 また、上記II2(2)のとおり、指定製造事業者が製造し、基準適合証印が付されているものを除き、指定検定機関等が行う検定を受け、これに合格したものでない特定計量器については、計量法第16条の規定に基づき、取引又は証明における計量に使用してはならないこととされており、例えば、食料品(肉等)の量り売りにおいて使用する計量器は、当該検定を受ける必要があるものと認められることから、特定計量器の検定は、上記Aの要件を満たすものと考えます。

(3) まとめ

 以上のことからすると、照会の器差検定を中心とした指定検定機関が行う特定計量器の検定に係る手数料は、消費税法第6条第1項及び消費税法別表第一第5号ロ並びに消費税法施行令第12条第2項第2号イ(2)の規定に基づき、消費税が非課税となるものと考えます。