(別紙)

文部科学省 科学技術・学術政策局
経済産業省 産業技術環境局

 標記について、以下のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

照会内容

 大学、大学共同利用機関又は高等専門学校(以下「大学等」といいます。)に配置されているリサーチ・アドミニストレーター(以下「URA」といいます。)とは、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第63号)第10条第1項第5号に記載されている「研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務に関し、専門的な知識及び能力」を有する人材として、その有する専門的な知識をもって研究開発プロジェクトの企画・マネジメントや関連する研究資金の調達・管理、研究成果の活用推進等を担う者をいいます。
 このURAは、近年、教育研究の機能強化に資する研究マネジメント人材として、その重要性が高まっています。

 ところで、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(以下「試験研究費税額控除制度」といいます。)では、試験研究費の額のうち、大学等と共同して行う試験研究において当該大学等との契約又は協定に基づいて法人が負担する費用の額のうち所定の要件を満たすもの(特別試験研究費の額)がある場合には、その特別試験研究費の額は特別控除の対象とされています(措置法42の4⑦、⑧十、68の9⑦、⑧八、措置令27の4⑱二、⑲二、39の39⑰、⑱、措置規20㉗一、22の23㉗一)。この試験研究費税額控除制度の対象となる試験研究費には、試験研究を行うために要する人件費が含まれますが、この人件費については「専門的知識をもつて当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。」と規定されています(措法42の4⑧一、68の9⑧一、措令27の4③、39の39③)。また、ここにいう「専門的知識をもつて当該試験研究の業務に専ら従事する者」には、次の者が該当すると考えられます(平成15年12月25日付課法2-27「試験研究費税額控除制度における人件費に係る「専ら」要件の税務上の取扱いについて」(通知))。

(1)試験研究を専属業務とする者(試験研究部門に属している者や研究者としての肩書を有する者等)

(2)研究プロジェクトの全期間中従事する者

(3)次の各事項の全てを満たす者

イ 試験研究のために組織されたプロジェクトチームに参加する者が、研究プロジェクトの全期間にわたり研究プロジェクトの業務に従事するわけではないが、研究プロジェクト計画における設計、試作、開発、評価、分析、データ収集等の業務(フェーズ)のうち、その者が専門的知識をもって担当する業務(以下「担当業務」という。)に、当該担当業務が行われる期間、専属的に従事する場合であること。

ロ 担当業務が試験研究のプロセスの中で欠かせないものであり、かつ、当該者の専門的知識が当該担当業務に不可欠であること。

ハ その従事する実態が、おおむね研究プロジェクト計画に沿って行われるものであり、従事期間がトータルとして相当期間(おおむね1ヶ月(実働20日程度)以上)あること。この際、連続した期間従事する場合のみでなく、担当業務の特殊性等から、当該者の担当業務が期間内に間隔を置きながら行われる場合についても、当該担当業務が行われる時期において当該者が専属的に従事しているときは、該当するものとし、それらの期間をトータルするものとする。

ニ 当該者の担当業務への従事状況が明確に区分され、当該担当業務に係る人件費が適正に計算されていること。

 この点、URAは、その有する専門的な知識をもって研究開発プロジェクトに従事していますが、一の研究開発プロジェクトのみならず並行して複数の研究開発プロジェクトに従事するケースがあること、従事する業務内容が多岐に及ぶことなどから、「当該試験研究の業務に専ら従事する者」とまでは認められず、URAの人件費については試験研究費税額控除制度の対象となる特別試験研究費の額には該当しないのではないか、という疑義が生じます。

 しかしながら、法人と大学等とが共同して行う試験研究(以下「共同研究」といいます。)における下記の研究開発プロジェクトの企画・マネジメント等の業務は、共同研究を実施する過程に組み込まれており、URAを配置しない場合には各研究者等が行わなければならないものですので、共同研究を行うに当たり欠かせない業務です。また、これらの業務は、その性質上、その実施には専門的な知識及び能力が不可欠となります。URAは、共同研究をより円滑に実施すること及びその研究成果の充実・向上といった共同研究に係る効果の一層の増大を図ることを目的に、URAを配置しない場合には各研究担当者が専属的に従事する業務である下記業務を代替する者として配置されますので、その業務が行われる期間、URAはその業務に専属的に従事することになります。
 これらのことから、URAは、下記の業務に専門的知識をもって専属的に従事することとなり(上記イ該当)、これらの業務は、共同研究に欠かせないもので、かつ、URAの専門的知識が不可欠なものですので(上記ロ該当)、URAが下記の業務に相当期間従事する場合には、並行して別の研究開発プロジェクトの業務に従事する場合であっても、「専門的知識をもって試験研究の業務に専ら従事する者」に該当することとなります。
 したがって、当該試験研究において、当該法人が負担する費用の額のうち下記の研究開発業務に係るURAの人件費として業務日誌等により区分して明らかにした金額のうち所定の要件を満たすものについては、試験研究費税額控除制度の対象となる特別試験研究費の額に含まれるものと考えられます。

 なお、例えば、URAが下記の研究開発業務に従事する場合であっても、試験研究に関する専門的な知識及び能力を有しない者でも行い得る業務、試験研究の成果に係る知財管理業務及び情報発信業務等に係る人件費は、試験研究費税額控除制度の対象となる特別試験研究費の額には含まれないと考えられます。

○ 研究プロジェクトの計画策定に要する調査、研究拠点の形成、研究支援体制構築に関する立案・支援及び関係部局との調整、各種研究資源や研究者の確保及び調整、先行・競合技術に関する調査等

○ 研究プロジェクトに係る予算計画の作成・管理等及び進捗状況の把握、調整、管理等

○ 研究プロジェクトの内容・成果等に係る各種報告書・資料等の作成、評価及び発表等

○ 研究プロジェクトに係る企業、産学官連携コンソーシアム、地域産業界等との連携に関する調整・支援等

○ 研究プロジェクトにおける知的財産に関する戦略の立案、ルールの策定及び管理等並びに発明に係る研究者からの相談・ヒアリング・支援等

○ 研究プロジェクトの実施に要する安全管理業務及び各種倫理・コンプライアンス関連業務等

○ その他研究プロジェクトの運営及び管理に係る業務のうち、URAが専門的知識をもって従事する業務