1 事前照会の趣旨

(1) RCCについて

株式会社整理回収機構(以下「RCC」といいます。)は、特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法(平成8年法律第93号)及び預金保険法(昭和46年法律第34号)に基づき、平成11年4月に、預金保険機構が全額出資して発足した株式会社です。
 RCCは、預金保険機構の委託等により金融債権者等から買い取った債権の回収(債権回収業務)を行う公的な性格を有する回収専門機関ですが、一方で、平成13年6月に閣議決定された「骨太の方針」、平成14年10月に金融庁から発表された「金融再生プログラム」、金融機能再生緊急措置法(平成10年法律第132号)第54条等により、法律又は政府の政策に沿って企業再生(企業再生業務)に取り組むことも公的に要請されています。

(2) RCC企業再生スキーム(準則)について

RCCが取り組む企業再生は、対象となる企業再生、その手続、再生計画の要件及び依拠すべき基準等を定めた準則である「RCC企業再生スキーム」(平成16年2月16日に公表)に従って行っています。
 RCCが取り組む企業再生には、1RCCが預金保険機構の委託等により買い取った債権について、自らが主要債権者として債務処理を行うものと2主要債権者である金融機関等から再生計画の検証、金融債権者等間の合意形成のための調整等を委託されて調整業務等を行うものとがありますが、「RCC企業再生スキーム」は、1及び2のいずれにも適用されます(以下では、「RCC企業再生スキーム」のうち、1に適用される各条項を総称して「RCC企業再生スキームT」と、2に適用される各条項を総称して「RCC企業再生スキームU」といいます。)。

(3) 照会の要旨

RCCが上記(2)2の金融債権者等間調整を行うためには、貸付債権信託を用いた企業再生スキーム(以下「貸付債権信託スキーム」といいます。)を活用します。具体的には、1金融機関等が有する貸付債権の一部について、当該金融機関等を委託者兼受益者、RCCを受託者として、貸付債権を信託財産とする貸付債権信託を設定し、2RCCは、金融債権者等間の調整業務等を経て再生計画(債権者間合意)が成立した後、3信託財産である貸付債権を金融機関等に交付して信託を終了させます(別添1参照)。
 この照会では、RCCが貸付債権信託スキームを活用して金融債権者等間調整を行い、債務処理の対象となる貸付債権等の債権者である金融機関等が、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画により無償若しくは低利による貸付け又は債務免除等(債務の免除又は債務の株式化で債務の消滅益が生じるものをいい、以下、これらを併せて「無利息貸付等」といいます。)を行う場合の債務者及び債権者における税務上の取扱いについて、それぞれ下記4のとおり解して差し支えないか、伺います。
 なお、上記(2)1の企業再生について、RCCが預金保険機構等の委託等により買い取った債権について、自らが主要債権者として債務免除等を行った場合の債務者及び債権者における税務上の取扱いについては、平成16年3月24日付の文書回答、平成17年8月26日付の文書回答及び平成23年9月29日付の文書回答で回答をいただいていますので今回の照会の対象とはしていません(過去の文書照会の状況については、別添3をご参照ください。)。

2 RCCが受託する再生計画の検証、金融債権者等間の調整業務の概要

主要債権者の一人である金融機関等からRCCに対して、再生計画の検証、金融債権者等間の合意形成のための調整等の委託があった場合、RCCは、これを受託し、調整業務等を行っているところですが、RCCが当該調整業務等を受託した場合における企業再生には、「RCC企業再生スキームU」を適用しています。そして、当該調整業務等を行うために上記1(3)の「貸付債権信託スキーム」を活用しているところです。

(1) 企業再生に「貸付債権信託スキーム」を活用する背景

従前、RCCが政府の要請に基づく企業再生業務の一環として金融債権者等間の調整業務等を行う場合において、債務者がいわゆる企業再生税制の適用を受けようとするときは、貸付債権信託を活用して金融債権者等間の調整を行った後に、RCC自らが債務免除等を行うためのスキーム(文末の「○参考」に掲げる「RCC金外信スキーム」)を併用してきましたが、近年、地域金融機関を中心に、企業再生の対象範囲が中小・零細企業まで拡大しており、このような状況下にあって、「RCC金外信スキーム」の複雑な手続をより簡便にした「貸付債権信託スキーム」のニーズが高まっています。

(2) 「貸付債権信託スキーム」を活用した企業再生の具体的手法

貸付債権信託とは、一般に、委託者が受託者に貸付債権を信託し、受託者は、当該貸付債権(信託財産)の管理・回収を行い、信託期間終了後に、受託者は、貸付債権(信託財産)を現状有姿にて受益者である委託者に交付するというものです。
 RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生には「RCC企業再生スキームU」が適用されますが、その具体的手法は次のとおりです。

1 債務処理の対象となる貸付債権の債権者である金融機関(委託者兼受益者)が貸付債権の一部をRCC(受託者)に信託します。なお、貸付債権の一部を信託するのは、債権者及び債務者以外の者が債権者間調整を行うと、弁護士法に抵触する懸念があるため、RCCが便宜的に債権者としての地位を取得する必要があるためです。

2 RCCは、債権者として金融債権者等間調整を行った上で、「RCC企業再生スキームU」に従った再生計画の策定の支援、策定された再生計画の検証などを行います。

3 策定された再生計画について金融債権者等間の合意が成立した後に、RCCは、金融機関等に貸付債権(信託財産)を現状有姿にて交付し、信託を終了させます。

4 貸付債権の交付を受けた金融機関等は、策定された再生計画に基づいて当該貸付債権について債務免除等を行います。
 なお、RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生は、2以上の金融機関等が債務免除等をすることが前提となります(「RCC企業再生スキームU」第9項)。

3 「RCC企業再生スキームU」の概要

今般、RCCは、「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生を図る債務者において、下記4(1)及び(2)の企業再生税制が円滑に適用されることを目的として平成29年6月26日に、「RCC企業再生スキームU」を修正して公表したところです(別添4-1参照)。修正後の「RCC企業再生スキームU」の概要は次のとおりです。

(注)上記1(2)のとおり、「RCC企業再生スキームU」とは、「RCC企業再生スキーム」の各条項のうち、RCCが調整業務等を行う案件に適用される各条項の総称です。具体的には、当該案件に「RCC企業再生スキーム」を適用する場合には、「はじめに」から第12項までの各規定について、必要な読み替えを行った上で、適用することとしています。以下で掲げる各条項は、この読替え後のものを表しています。

(1) 「RCC企業再生スキームU」の制定経緯

「RCC企業再生スキームU」は、企業の私的整理に関する基本的考え方を整理し、私的整理の進め方、対象となる企業、再生計画案の内容等について定めたものであり、制定来、RCCのホームページにて公表されています(「はじめに」)。

(2) 「RCC企業再生スキームU」の性格

「RCC企業再生スキームU」は、預金保険法上の協定銀行であるRCCが策定したものであり、公正性、客観性、関係者間の透明性、衡平性を確保するために定められています(第2項(2))。

(3) 再生計画の策定手続等

RCCは、主要債権者の一人である金融機関等から金融債権者等間の合意形成のための調整を委託された場合、対象債務者の適格性、主要債権者の同意見込等を審査の上相当と判断した場合には手続を開始することとなります(第3項、第5項)。
 また、対象債務者となる企業の適格性や再生計画案の内容等については、債権者集会及びRCCの企業再生検討委員会で検討されることになりますが(第4項、第6項)、第2回債権者集会に先立ち、対象債務者は、RCCの支援を得て、再生計画全般の相当性と実効可能性を対象債権者に書面にて報告し、再生計画は、対象債権者全員の同意により成立します(第7項、第8項)。
 再生計画成立後、対象債務者は、再生計画の定めに従って、その成立後に定期的に開催される債権者集会などにおいて、再生計画の実行状況等を対象債権者に報告しなければならないこととされています(第8項(8))。

(4) 資産評定に関する事項

対象債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」といいます。)については、公正な価額により行うと定められています(第7項(3))。また、この公正な価額については、「再生計画における『資産・負債の評定基準』」(別添4-2)を定めているとともに、この基準により作成される実態貸借対照表を含むその再生計画は対象債権者全員が関わることを前提として成立すること(第8項(5))及び公正な価額による資産評定であることについて外部の専門知識を有する者からなるRCCの企業再生検討委員会が審議を行うこと(第4項(2))を定めています。

(5) 再生計画案の内容

「RCC企業再生スキームU」に従って策定される再生計画案には、財務状況(資産・負債・損益)の将来の見通しが定められます(第7項(1))。そして、債務免除等を含む財務状況の将来の見通しは、上記(4)の「再生計画における『資産・負債の評定基準』」に基づく公正な価額により行われる資産評定による価額を基礎として作成された実態貸借対照表に基づくものとなっています(第7項(1)、(3))。また、「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う場合には、2以上の金融機関等が債務免除等をすることが再生計画に定められます(第9項(3))。

(6) 策定された再生計画の確認をする手続に関する事項

対象債務者が下記4の(1)及び(2)の企業再生税制の適用を受けるために、対象債務者からRCCに要請があった場合には、企業再生検討委員会委員(再生支援をするかどうかの決定の決議について特別の利害関係を有する委員を除きます。)の互選により選任された、債務処理に関する専門的な知識と経験を有する者3人(債務者の借入金等の額が10億円未満の場合には2人。以下、互選により選任されたこれらの委員を「確認者」といいます。)は、当該対象債務者に係る再生支援をするかどうかの決定を行う段階において、当該再生計画が、次に掲げる要件の全てを満たしているかどうかについて確認を行い、対象債務者に対して所定の様式(別添4-3)により確認書を交付することとしています(第9項)。

 「RCC企業再生スキームU」に定められた一連の手続に従って策定された再生計画であること。

 「再生計画における『資産・負債の評定基準』」(別添4の別紙5)に基づく資産評定が行われ、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表が作成されていること。また、当該資産評定は公正な価額により行われていること。

 ロの貸借対照表における資産及び負債の価額、当該再生計画における損益の見込み等に基づいて、2以上の金融機関等が対象債務者に対する債務免除等をする金額が定められていること。

4 具体的な照会内容

(1)債務者における税務上の取扱いについて(民事再生等の場合の資産の評価益又は評価損の益金又は損金算入(法人税法253、334))

イ 制度の概要
 民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(一定の要件を満たすものに限ります。)が生じた場合において、法人がその有する資産の価額につき、法人税法施行令第24条の2第3項第2号又は第68条の2第2項第2号に規定する資産評定を行っているときは、その資産の評価益の額又は評価損の額は、その事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています(法法253、334)。
 この「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(一定の要件を満たすもの)」とは、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実で、一定の要件(その債務処理に関する計画が法人税法施行令第24条の2第1項第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件に該当すること)を満たすものとされています(法令24の21、68の21)。

ロ 照会者の見解
 RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生について、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画が対象債権者全員の同意により成立した場合において、当該再生計画が法人税法施行令第24条の2第1項第1号から第4号に掲げる要件を満たすときには、当該再生計画の成立は、「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(一定の要件を満たすもの)」に該当すると考えます。また、当該再生計画に係る対象債務者が当該再生計画に基づいて行う資産評定は、「RCC企業再生スキームU」に従って行われるから、同条第3項第2号又は法人税法施行令第68条の2第2項第2号に規定する資産評定が行われていることとなりますので、当該資産評定による価額を基礎として作成される貸借対照表に計上されている資産の価額と当該再生計画の成立直前の帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定により当該再生計画の成立の日の属する事業年度の益金又は損金の額に算入されると解して差し支えないでしょうか。

(2)債務者における税務上の取扱いについて(民事再生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入(法人税法592))

イ 制度の概要
 上記(1)の「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(一定の要件を満たすものに限ります。)」が生じた場合において、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けるときには、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して損金の額に算入することとなります(法法592三)。

ロ 照会者の見解
 本件照会の場合には、上記(1)ロのとおり、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けることになると考えられますので、同法第59条第2項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して損金の額に算入できると解して差し支えないでしょうか。

(3)債権者における税務上の取扱いについて(子会社等を再建する場合の債権放棄等(法人税基本通達9−4−2))

イ 法人税基本通達9−4−2の概要
 債権者である企業が取引先等を整理又は再建するために債権放棄等をした場合の税務上の取扱いについては、法人税基本通達9−4−1及び9−4−2において既に明確化されているところであり、同通達9−4−2には、合理的な再建計画に基づく債権放棄等による損失であれば、税務上、損金算入される旨定められています。

ロ 照会者の見解
 RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生において、債権者(金融機関等)が、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画により無利息貸付等を行った場合の当該無利息貸付等は、対象債務者の倒産を防止するためにやむを得ず行われるものであり、また、当該再生計画は合理的なものと考えられます。したがって、当該無利息貸付等は、原則として、法人税基本通達9−4−2にいう「合理的な再建計画」に基づく経済的利益の供与であり、その無利息貸付等による損失は、税務上、損金算入することができると解して差し支えないでしょうか。
 なお、「RCC企業再生スキームU」に基づく再生計画に係る照会は、平成16年3月24日付の文書回答において、寄附金の額に該当しない旨の回答をいただいていますが、回答後、「RCC企業再生スキームU」の改定を複数回行っており(手続の変更や明確化を図るもので、本質的な内容の変更ではなかったため、改定の都度、文書照会はしていません。)、前回照会から相当の期間が経過していますので、改めて確認させていただくものです。

5 理由(照会者の求める見解となる理由)

(1)債務者における税務上の取扱いについて(上記4(1)について)

イ 「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」が生じていること
 「RCC企業再生スキームU」に従って策定される再生計画は、上記3(3)のとおり、債権者集会、RCCの企業再生検討委員会での審議、対象債権者による再生計画の合意という手続を経て成立し、その成立後は実行状況等のモニタリングを行います。このような手続は、民事再生法における再生計画案の作成、決議、認可などの一連の手続に準じて成立するものと考えられますので、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画が成立した場合には、「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」が生じているものと考えられます。

ロ 一定の要件(「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画が法人税法施行令第24条の2第1項第1号から第4号までに掲げる要件に該当すること)を満たすものであること

(イ) 法人税法施行令第24条の2第1項第1号に掲げる要件に該当すること
 同号は、1再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること、2当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること、3当該準則に、(@)公正な価額による旨の定めがある資産評定に関する事項、(A)再生計画が当該準則に従って策定されたものであること及び下記(ロ)に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項及び(B)(A)の「確認をする者」に関する事項が定められていることを要件としています。なお、「確認をする者」とは、再生計画に係る当事者以外の者、すなわち、再生計画に係る債務者である内国法人、その役員及び株主等並びに債権者以外の者で、当該再生計画に係る債務処理について利害関係を有しないもののうち、債務処理に関する専門的な知識を有すると認められる者が3人以上(債務の額が10億円未満の場合は2人以上)選任される場合の当該者に限るとされています(法令24の21一ロ、法規8の61一)。
 この点、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画又は「RCC企業再生スキームU」は、次のとおり、1から3の全ての要件を満たすものと考えられますので、当該再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項第1号に掲げる要件に該当するものと考えられます。

1 再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること
 上記3(1)のとおり、「RCC企業再生スキームU」は、企業の私的整理に関する基本的考え方を整理し、私的整理の進め方、対象となる企業、再生計画案の内容等債務処理を行うための手続について定めたものであり、RCCのホームページにて公表されています。したがって、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画は1の要件を満たすと考えられます。

2 当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること
 上記3(2)のとおり、「RCC企業再生スキームU」は、預金保険法上の協定銀行であるRCCが策定したもので、公正性、客観性、関係者間の透明性、衡平性を確保するために定められたものです。したがって、「RCC企業再生スキームU」は2の要件を満たすと考えられます。

3 当該準則に、上記(@)から(B)までの事項が定められていること
 (@)の事項については、上記3(4)のとおり、「RCC企業再生スキームU」において、資産評定は公正な価額により行うと定められています。
 (A)の事項については、上記3(6)のとおり、「RCC企業再生スキームU」において、確認者は、再生計画が「RCC企業再生スキームU」に定められた手続に従って策定されたものであること及び下記(ロ)に掲げる要件に該当するものであることの確認を行った上で、債務者に確認書を交付することが定められています。
 (B)の事項については、上記3(6)のとおり、「RCC企業再生スキームU」において、上記(A)の確認及び債務者への確認書の交付を、企業再生検討委員会委員の互選により選任された委員が行うことが定められています。また、「確認をする者」については、上記3(6)のとおり、確認者である委員には、債務処理に関する専門的な知識と経験を有する3人(債務の額が10億円未満の場合は2人)が選任され、かつ、再生支援の決定決議に利害関係を有する委員を除くとされています。したがって、「RCC企業再生スキームU」は3の要件を満たすと考えられます。

(ロ) 法人税法施行令第24条の2第1項第2号及び3号に掲げる要件に該当すること
 同項第2号は「債務者の有する資産及び負債につき債務処理の手続に係る準則に規定する事項に従って資産評定が行われ、当該資産評定による価額を基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていること」を、同項第3号は「当該貸借対照表における資産及び負債の価額、当該計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務免除等をする金額が定められていること」を要件としています。
 この点、「RCC企業再生スキームU」に従って策定される再生計画には、上記3(5)のとおり、公正な価額により行われる資産評定による価額を基礎として作成される実態貸借対照表に基づく財務状況(資産・負債・損益)の将来見通しが定められ、この将来見通しには債務免除等が含まれるとされています。また、企業再生検討委員会委員の互選により選任された委員は、上記3(6)ロ及びハのとおり、「再生計画における『資産・負債の評定基準』」に基づく資産評定が行われ、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表が作成されていること及び当該貸借対照表における資産及び負債の価額、当該再生計画における損益の見込み等に基づいて、債務免除等をする金額が定められていること」を確認することとされています。
 したがって、「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項第2号及び第3号に掲げる要件に該当するものと考えられます。

(ハ) 法人税法施行令第24条の2第1項第4号に掲げる要件に該当すること
 同号は「2以上の金融機関等が債務免除等をすることが定められていること」を要件としています。
 この点、上記3(5)及び(6)のとおり、RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生においては、「RCC企業再生スキームU」に従って策定される再生計画には、2以上の金融機関等が債務免除等をすることが定められ、企業再生検討委員会委員の互選により選任された委員がこれを確認することとされています。したがって、当該再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項第4号に掲げる要件に該当するものと考えられます。

ハ 法人税法施行令第24条の2第3項第2号又は第68条の2第2項第2号に規定する資産評定を行っていること
 「RCC企業再生スキームU」に従って策定される再生計画に係る債務者は、上記ロ(イ)3及び(ロ)で検討したとおり、公正な価額による旨の定めのある資産評定に関する事項が定められた同スキームに基づき資産評定を行うこととされています。したがって、この要件を満たすものと考えられます。

(2) 債務者における税務上の取扱いについて(上記4(2)について)

本件照会の場合には、上記(1)のとおり、「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実(一定の要件に該当するもの)」が生じており、また、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けることになると考えられますので、法人税法第59条第2項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して損金の額に算入できると考えられます。

(3) 債権者における税務上の取扱いについて(上記4(3)について)

RCCが「貸付債権信託スキーム」を活用して金融債権者等間調整を行う企業再生において、債権者(金融機関等)が「RCC企業再生スキームU」に従って策定された再生計画により無利息貸付等を行う場合には、次のイ及びロのとおり、損失負担の必要性があり、かつ、合理的な再生計画に基づいて行われるものと考えられますので、当該無利息貸付等による損失の額は、税務上損金算入されるものと考えられます。

イ 損失負担の必要性

(イ) 対象債務者は事業関連性のある「子会社等」に該当するか
 再生計画に基づき無利息貸付等を行う者は、再生計画の対象となる債務者の債権者である金融機関等のうち再生計画に基づく対象債務者の事業の再生のために協力を求める必要があると認められるもので再生計画に合意した者です(「RCC企業再生スキームU」第1項(1)(2)参照)。
 したがって、無利息貸付等を受ける対象債務者は、当該無利息貸付等を行う者と「資金関係等において事業関連性を有する者」に該当し、「子会社等」に該当します。

(ロ) 子会社等は経営危機に陥っているか
 再生計画に基づき無利息貸付等を受ける対象債務者は、過大な債務を負っている債務者であって、過大な債務を主因として自力のみによる経営の再建が困難な状況にあることが要件とされています(「RCC企業再生スキームU」第3項(1)参照)。したがって、対象債務者は、無利息貸付等の金融支援を受けることなく自力での経営の再建が困難な状況にありますので、経営危機に陥っていると考えます。

(ハ) 債権放棄を行う者にとって損失負担を行う相当な理由はあるか
 債権者は、当該債務者について清算型の回収を行う場合よりもより多額の回収が見込まれるときに無利息貸付等を行うことが定められていますので(「RCC企業再生スキームU」第3項(3)(4)参照)、経済的利益の供与を行う債権者にとっても経済合理性があり、損失負担を行う相当な理由があると考えられます。

イ 再生計画の合理性

(イ) 損失負担額(支援額)の合理性
 再生計画は、利害の対立する複数の債権者が自己の債権の回収の極大化を図る手段として合意、実行するものであり、過剰支援が発生する余地はもとより少なく、さらには、「RCC企業再生スキームU」に従って行われる企業再生は、必要に応じて監査法人等専門家によるデューデリジェンスを実施し、財務状況を適切に把握した上で行われるものであり(「RCC企業再生スキームU」第5項(2)参照)、その妥当性については、弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士等の外部の専門家からなる企業再生検討委員会によって審議され(「RCC企業再生スキームU」第5項(2)参照)、また、対象債務者自身が再生のために自助努力することが前提とされています(「RCC企業再生スキームU」第1項(3)参照)。更に、金融債権者は、対象債務者が事業再生することにより得られる事業収益から最大限の回収を図ることを意図して再生計画に合意するものであることから(「RCC企業再生スキームU」第1項(1)(2)参照)、損失負担額の合理性は十分に担保されているものと考えます。

(ロ) 再建管理等の有無
 主要債権者の一人である金融機関等は再生計画の進捗状況について定期的なモニタリングを行い、モニタリングの結果を受け、対象債務者が弁済を履行できないなど再生計画に定められた事項を履行できない場合には、主要債権者である金融債権者を中心に対象債権者及び対象債務者は、再生計画の見通し又は法的再生の申立について、協議を行い、適切な措置を講じることとしていますので(「RCC企業再生スキームU」第8項(8)参照)、適切な再建管理等が行われるものと考えます。

(ハ) 支援者の範囲の相当性
 再生計画の対象債権者は、再生計画の成立時に権利の変更が予定される債権者とされており、主要債権者である金融機関債権者が含まれます(「RCC企業再生スキームU」第1項(1)、第8項(2)参照)。また、再生計画の成立には、利害の対立する対象債権者全員の合意が必要となりますので(「RCC企業再生スキームU」第8項(5)(7)参照)、支援者の範囲には相当性があると考えます。

(ニ) 負担割合(支援割合)の合理性
 負担割合(支援割合)は、債権者平等の原則により債権残高に応じて負担割合を決定することとされています(「RCC企業再生スキームU」第7項(7)参照)。なお、事案の内容に応じて合理的な調整を行う場合はありますが、その場合であっても、その負担割合は、関与度合い等を考慮した調整を行い、この調整内容について対象債権者全員の合意を得る必要がありますので(「RCC企業再生スキームU」第8項(1)(2)(3)参照)、負担割合(支援割合)の合理性が担保されているものと考えます。

○ 参考

RCCが政府の要請に基づく企業再生の一環として金融債権者等間の調整業務等を行う場合において、債務者が企業再生税制(法法253、334、592)の適用を受けようとするときは、「RCC企業再生スキームU」に従って、次の1から3までの貸付債権信託を活用して金融債権者等間の調整を行った後に、RCC自らが債務免除等を行うために1から6の手順を踏んだスキーム(このスキームを「RCC金外信スキーム(リファイナンス方式)」という。)を併用してきました。

[貸付債権信託(別添1の1から3参照)]

1 金融機関等が有する貸付債権の一部について、当該金融機関等を委託者兼受託者、RCCを受託者として、貸付債権を信託財産とする貸付債権信託を設定する。

2 RCCは、金融債権者等間の調整業務等を経て再生計画(債権者間合意)が成立する。

3 再生計画成立後、信託財産である貸付債権を金融機関等に交付して信託を終了させる。

[RCC金外信スキーム(リファイナンス方式)(別添2の1から6参照)]

1 再生計画の合意後に投資家を募集して、当該投資家を委託者兼受益者、RCCを受託者とする金銭信託以外の金銭の信託を設定する。

2 RCCは、受託した金銭を原資として主要金融機関から貸付債権等を購入・管理する。

3 RCCは、再生計画の実行に必要な債務免除等を行う。

4 主要金融機関は、債務免除等後の残債権額相当額を再生対象債務者に融資(リファイナンス)する。

5 再生対象債務者は、当該融資金を原資としてRCCに債務免除等後の残債権額を一括弁済する。

6 RCCは、再生対象債務者から受けた弁済金を投資家に交付して信託を終了させる。