別紙

平成28年5月26日

T 本照会の背景

株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に規定されている産業復興機構は、政府の「二重債務問題への対応方針」(平成23年6月17日 二重債務問題に関する関係閣僚会合)や、東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)に基づく「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日決定、平成23年8月11日改定)を踏まえ、被災事業者が復興に向けて再スタートを切るにあたり、既往債務が負担になって新規資金調達が困難となる等の問題(いわゆる二重債務問題)に対応するために、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県にそれぞれ設立された投資事業有限責任組合であり、一定の案件について、被災事業者に対する債権を金融機関等から買い取り、組合財産として管理しています。

平成24年度税制改正において、産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人について、債務処理に関する計画が策定された場合には、法人税法第59条第2項の規定により期限切れ欠損金を損金の額に算入することができる特例措置が東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「震災特例法」と言います。)に規定されました。また、平成25年度税制改正において、この特例措置が改組され、一定の法人について再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じた場合には、民事再生等一定の事実が生じた場合の資産の評価益又は評価損の額の益金又は損金算入制度(法法253、334)及び民事再生等一定の事実が生じたことにより債務免除等を受けた場合の期限切れ欠損金の損金算入制度(法法592)の適用を受けることができる特例とされました(震災特例法171)。

これらの特例は、債務処理に関する計画が、一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていることを要件としています。中小企業庁としては、上記の税制改正に対応すべく、債務処理に関する計画の策定手順を定めた既存の「中小企業再生支援スキーム」について所要の改定を行い、平成28年5月25日に公表したところです。

つきましては、改定後の「中小企業再生支援スキーム」(以下「本スキーム」といいます。)に従って策定された再生計画に基づき、産業復興機構の組合財産である債権の債務者が、産業復興機構から債務免除を受けた場合の税務上の取扱いについて、Wの「照会の内容」の1及び2に掲げる見解のとおりで差し支えないか、ご照会申し上げます。

U 産業復興機構による再生支援の概要

産業復興機構は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が約8割を出資(残りの約2割は地域金融機関等が出資)する投資事業有限責任組合であり、東日本大震災により被害を受けた事業者で被災地域においてその事業の再生を図ろうとするものに対し、短期的な投資回収による安易な利益の獲得を目指すことなく継続的な経営又は技術等に関する支援を行うことにより、事業者の再生を進め、投下資本を回収することを事業目的としています。

また、産業復興機構は、被災地域の中小企業再生支援協議会(注1)を拡充する形で設立された産業復興相談センター(以下「相談センター」といいます。)(注2)が、被災事業者の状況に応じて産業復興機構による債権買取りが妥当と判断した案件について、相談センターからの債権買取要請に基づき、被災事業者に対して金融機関等が有する債権を適正な時価で買い取っています(注3)。

買い取りした債権については、一定期間元利金の返済を凍結等(注4)することで、被災事業者の財務基盤を安定化させるとともに、資本不足に陥っている財務状況を改善させ、金融機関等からの新規融資(ニューマネーの調達)を可能とすることで、早期の事業再開を支援します。

その後、産業復興機構は、新規融資を行った金融機関等(以下「メイン金融機関等」といいます。)や相談センターと連携しながら、被災事業者の業況をモニタリングします。被災事業者の業績が回復し再生の見通しがつくと判断される時点で、産業復興機構は、被災事業者と協議を行い、債権の一部回収(メイン金融機関等による被災事業者へのリファイナンスを原資とした投下資金の回収)と残債権の放棄により、産業復興機構の関与を終了させること(以下「エグジット」といいます。)を検討します。エグジットが適当と判断されれば、被災事業者は、改めて詳細な再生計画を策定するため、中小企業再生支援協議会に対し、再生計画策定等に係る支援の相談を行います。

被災事業者は、中小企業再生支援協議会の支援を受け、詳細な事業デューデリジェンス、財務デューデリジェンス等に基づいて実現可能性の高い抜本的な再生計画を改めて策定します。そして、当該再生計画に従って、産業復興機構が買取った債権についての債務免除が実行されます。エグジットに際しての債務免除額は、産業復興機構への出資の約8割を有する独立行政法人中小企業基盤整備機構が、国の監督の下、産業復興機構に対してガバナンスを効かせるほか、残りの2割を出資する地域金融機関等も投下資金を回収することを産業復興機構に求める仕組みの下に決定されます。

なお、中小企業再生支援協議会の支援を受けて策定する「再生計画」は、本スキームに従い、次の手順で策定されます。

(注1) 中小企業再生支援協議会は、産業競争力強化法に基づき、中小企業の事業再生支援を目的に47都道府県に設置され、各地で中小企業からの相談を受け付け、助言や再生計画の策定支援を行うなど、中小企業の再生支援を行っています。

(注2) 産業復興相談センターは、東日本大震災の被災地域にある中小企業再生支援協議会を拡充する形で設置され、東日本大震災の影響を受けたことにより再生可能性があるものの過大な債務を負っている事業者であって、被災地域においてその事業の再生を図ろうとするものに対し、金融機関等が有する債権の買取りを行う産業復興機構への債権買取要請などの業務を通じて、その事業の再生を行っています。産業復興相談センターは、中小企業庁が策定した「中小企業再生支援協議会事業(産業復興相談センター)実施基本要領」に基づき、事業計画の策定支援等を行います。

(注3) 産業復興機構では、機構の出資者との間で締結した投資事業有限責任組合契約に基づいて、債権の買い取りを実施します。買取りの際には、被災事業者は、相談センターの支援を受けて債権買取価格算定の前提となる事業計画を策定します。この事業計画は、その時点における被災事業者の状況を可能な限り踏まえたものですが、東日本大震災という未曾有の被害により詳細な事業再生の見通しが立てにくい状況にあること、また早期に事業再開を図るべく迅速な対応が求められること等を勘案し、詳細な事業デューデリジェンスや財務デューデリジェンス等を省略したものとなっています。

(注4) 元利金の返済凍結に加えて、買い取った債権を資本性借入金として被災事業者の資本とみなすことができる条件(長期間償還不要な状態、配当可能利益に応じた金利設定、法的破綻時の劣後性)とします。

V 再生計画の策定手順と再生計画に基づく債務処理の概要

1 対象債務者

本照会において、本スキームに従い策定される再生計画の対象となる債務者は、東日本大震災によって被害を受けたことにより過大な債務を負っており、産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人であって、次の全ての要件を備える中小企業者等です(本スキーム1、12.)。

(1) 過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており、自力による再生が困難であること

(2) 再生の対象となる事業に収益性や将来性があるなど事業価値があり、関係者の支援により再生の可能性があること

(3) 法的整理を申し立てることにより債務者の信用力が低下し事業価値が著しく毀損するなど、再生に支障が生じるおそれがあること

(4) 法的整理の手続きによるよりも多い回収を得られる見込みがあるなど、債権者にとっても経済合理性があること

2 対象債権者

本照会において、本スキームに従い策定される再生計画の対象となる債権者は、再生計画が成立した場合に権利を変更されることが予定されている金融機関等です(本スキーム柱書き)。

なお、産業復興機構による再生支援が行われる場合における具体的な対象債権者とは、対象債務者に対する債権を買い取った産業復興機構及び東日本大震災発生日以降に対象債務者に新規融資を行ったメイン金融機関等です。

3 「再生計画」の策定手順と再生計画に基づく債務処理の概要

(1) 再生計画策定等に係る支援の相談を受けた中小企業再生支援協議会の統括責任者が、相談で把握した対象債務者の状況を基に、中小企業再生支援協議会が再生計画の策定を支援することが適当であると判断した場合には、対象債務者及び中小企業再生支援協議会は、主要債権者(産業復興機構及び対象債務者に対する債権額が上位のシェアを占める金融機関債権者)に対し、対象債務者の財務及び事業の状況並びに再生可能性を説明し、主要債権者の意向を確認します(本スキーム2.(1))。

(2) 対象債務者が中小企業再生支援協議会の支援のもと「再生計画」を策定することについて主要債権者の同意が得られた場合には、中小企業再生支援協議会の統括責任者は、「再生計画」の策定を支援することを決定します(本スキーム2.(2)、(3))。

中小企業再生支援協議会の統括責任者は、対象債務者及び対象債権者との間に利害関係を有しない中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士等の専門家等から構成される個別支援チームを中小企業再生支援協議会の下部組織として編成し、「再生計画」の策定を支援します(本スキーム2.(4)、(5))。

(3) 対象債務者は、個別支援チームの支援のもと、具体的かつ実現可能な「再生計画案」を作成します(本スキーム3.(1)、(2))。

「再生計画案」においては、対象債務者の財務及び事業の状況並びに経営改善施策、対象債権者に対する金融支援要請内容について明記し、当該計画案には、その支援額、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲、支援割合を明示する文書を添付します(本スキーム3.(3))。また、「再生計画案」は、対象債務者の自助努力が十分に反映されたものであるとともに、企業の概況、財務状況の推移、公正な価額による資産評定に基づき作成される実態貸借対照表、債務弁済計画、債務免除等をする金額の算出根拠のほか、産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人に対して、産業復興機構の組合財産である債権につき、産業復興機構に係る投資事業有限責任組合契約等を締結している金融機関等が債務免除等をすること等の内容を含むこととされています(本スキーム6.(1)、12(1))。ただし、対象債務者が東日本大震災によって被害を受けていることから、経営者責任及び株主責任等については、東日本大震災により被害を受けた実情に即した内容とされています。

加えて、「再生計画案」は、破産的清算や会社更生法や民事再生法などの再建手続によるよりも多い回収を得られる見込みが確実であるなど、対象債権者にとって経済的な合理性が期待できる内容とする必要があります(本スキーム6.(7))。

また、「再生計画案」における権利関係の調整は、対象債権者間で平等であることを旨とし、対象債権者間の負担割合については、当該企業に対する関与度合、取引状況等を考慮し、実質的に衡平性が確保されなくてはならないこととされています(本スキーム6.(6))。なお、産業復興機構による再生支援において、対象債権者のうち(震災後に)新規融資を行ったメイン金融機関等は、基本的には債務免除を行わず、再生計画の実行に向けたリファイナンス資金の供給を行うことを予定していることから、同じく対象債権者である産業復興機構のみが債務免除を行うこととの関係で、表面的には負担割合が異なることが想定されます。しかし、産業復興機構もその事業目的に従って投下資本分の回収を図ることを前提としており、公正・中立な第三者機関である中小企業再生支援協議会が策定支援した再生計画案について、産業復興機構を含む全ての対象債権者の同意により再生計画が成立することからすれば、実質的な衡平性は確保されます(本スキーム12.(1))。

(4) 中小企業再生支援協議会の要請に基づき設置される再生計画検討委員会の委員は、各人が独立して公正かつ公平な立場で、対象債務者の資産負債や損益の状況及び「再生計画案」の正確性、相当性、実行可能性などを調査し、調査報告書を提出します(本スキーム7.(3))。当該調査報告書には、「再生計画案」の内容及びその合理性、「再生計画案」の実行可能性、私的整理を行うことの経済合理性、金融支援の必要性についての調査結果を含めることとされています(本スキーム7.(3)、12)。

(5) 検討委員会の委員は、(4)の調査の結果、次の1から6の要件を全て満たしていると認められる場合には、対象債務者に対してその旨の確認書を交付することとされています(本スキーム12)。

1 本スキームに定められた手続きに従って策定された「再生計画」であること。

2 公正な価額により行われた資産評定に基づいて実態貸借対照表が作成されていること。

32の実態貸借対照表、再生計画における損益の見込み等に基づいて債務免除等をする金額が決定されていること。

4 対象債務者に対して、産業復興機構の組合財産である債権につき、産業復興機構に係る投資事業有限責任組合契約等を締結している金融機関等(法人税法施行令第24条の2第1項第4号イからヘまでに掲げる者をいう。)が債務免除等をすること。

5 検討委員会の委員は、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則(以下「震災特例法施行規則」といいます。)第6条の2第1項第2号の要件を満たしていること。

6 対象債務者が、東日本大震災によって被害を受けたことにより過大な債務を負っている法人であって、産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人であること。

(6) 検討委員会の委員は、対象債権者全員に対し、「再生計画案」の調査結果を報告し対象債権者全員が「再生計画案」に同意する旨の書面を提出した時に「再生計画」は成立します。これにより、対象債務者は、「再生計画」を実行する義務を負い、対象債権者は、成立した「再生計画」の定めに従ってその債権について、「再生計画」の定めに従って債権放棄を行います(本スキーム8.(1)、(4))。

W 照会の内容

1 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入(震災特例法171、法人税法253、334

(1) 制度の概要

東日本大震災によって被害を受けたことにより過大な債務を負っている法人のうち株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法第59条第1項に規定する産業復興機構の組合財産である債権の債務者である法人について、再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じた場合において、法人がその有する資産の価額につき、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行令(以下「震災特例法施行令」といいます。)第17条第1項第1号イに規定する事項に従って行う同項第2号の資産評定を行っているときは、その資産(一定の資産を除く。)の評価益の額又は評価損の額は、その事実が生じた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています(震災特例法171、法人税法253、334)。

この場合の「再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実」とは、再生計画認可の決定があったことに準ずる事実で、その債務処理に関する計画が震災特例法施行令第17条第1項第1号から第4号までの全てに該当するものに限るとされています(震災特例法令171)。

(2) 照会者の見解

本スキームに従って中小企業再生支援協議会が再生計画の策定支援を行い、対象債権者の全員の同意により再生計画が成立した場合には、当該再生計画は、震災特例法施行令第17条第1項第1号から第4号に掲げる要件を満たすものと考えられますので、当該再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」に該当すると考えます。

また、当該再生計画において、対象債務者の有する資産の価額につき、所定の資産評定が行われることから、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益の額又は評価損の額)は、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》又は第33条第4項《資産の評価損の損金不算入等》により益金の額又は損金の額に算入することとなります。

2 再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入(震災特例法171、法人税法592

(1) 制度の概要

上記1(1)の「再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実」がある場合において、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けるときには、同じく震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第59条第2項第3号の規定により、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することとなります。

(2) 照会者の見解

上記1(2)のとおり、本件照会の場合には、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受けることとなると考えられますので、同じく震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第59条第2項の規定の適用を受けるに当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することとなります。

X 理由(照会者の求める見解となる理由)

1 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入

本スキームに従って中小企業再生支援協議会が再生計画の策定支援を行い、対象債権者の全員の同意により再生計画が成立した場合には、次の(1)から(3)のとおり、震災特例法施行令第17条第1項に規定する「震災特例法第17条第1項各号に掲げる法人について再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」が生じており、その再生計画は所定の要件(同項第1号から第4号までに掲げる要件)の全てを満たすものであり、かつ、震災特例法施行令第17条第1項第1号イに規定する事項に従って行う同項第二号の資産評定を行うこととされていることから、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第25条第3項に規定する資産の評価益の計上要件を満たしているものと考えます。

また、再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実が生じた場合の資産の評価損の計上要件は、資産の評価益の計上要件と同一であることから、本件照会の場合は、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第33条第4項に規定する資産の評価損の計上要件も満たしていると考えます。

(1) 再生計画認可の決定に準ずる事実に該当すること

本スキームに従って中小企業再生支援協議会が支援して策定された再生計画は、次の過程を経て成立します。

まず、対象債務者及び中小企業再生支援協議会が、対象債務者が中小企業再生支援協議会の支援の下、再生計画を策定することについて、主要債権者に協力を要請し、その意向を確認します。その際、主要債権者から中小企業再生支援協議会の支援の下、再生計画を策定することについて同意が得られた場合には、中小企業再生支援協議会の統括責任者は中小企業再生支援協議会が再生計画の策定を支援することを決定します(本スキーム2.)。

次に、対象債務者が中小企業再生支援協議会(個別支援チーム)の支援を受けて再生計画案を策定し(本スキーム3.)、その後、主要債権者と中小企業再生支援協議会の統括責任者が再生計画案に対する対象債権者の同意見込み及び再生計画案の実行可能性について検討し、相当であると判断した場合には、私的整理の手続が開始されます(本スキーム4.)。

対象債務者である企業の資産負債等の状況や再生計画案の内容等については、まず検討委員会の委員が調査、検討を行い(本スキーム7.)、第2回債権者会議に先立って、再生計画案全般の正確性、相当性及び実行可能性などを記載した調査結果を対象債権者に書面にて報告します。また、第2回債権者会議ではその報告を受け、再生計画案に係る意見交換を行い、対象債権者全員の同意により再生計画が成立します(本スキーム8.)。

このように本スキームに従って中小企業再生支援協議会が支援して策定された再生計画は、対象債務者等による手続開始の申立てに始まり、債権者集会、再生計画の合意など民事再生法の規定による再生計画策定の一連の手続に準じて成立するものであることから、再生計画認可の決定に準ずる事実に該当するものと考えます。

(2) 再生計画が所定の要件に該当すること

震災特例法施行令第17条第1項括弧書では、「その債務処理に関する計画が次の各号に掲げる要件に該当するものに限る。」と規定されており、中小企業再生支援協議会が関与して策定される再生計画は、次のとおり、各要件を満たすものと考えます。

イ 震災特例法施行令第17条第1項第1号の要件に該当すること

同号の要件は、1再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること、2当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること、及び3当該準則に次の(@)から(B)に掲げる事項が定められていること((@)公正な価額による債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)に関する事項、(A)再生計画が準則に従って策定されたものであること及び同項第2号(以下ロ)及び第3号(以下ハ)の要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項、(B)(A)の確認を税務上の要件を満たす者が行うことに関する事項)であり、これらの要件を満たすことについては次のとおりです。

1 再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること

本スキームは、中小企業再生支援協議会の支援の下、再生計画の策定が適正かつ円滑に行われるよう、債務処理を行うための手続を行うための準則として、中小企業庁が既存の「中小企業再生支援スキーム」を改訂し、平成28年5月25日に同庁のホームページで一般に公表したものであることから、「一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則」に該当すると考えます。

また、中小企業再生支援協議会が債務免除等を含む再生計画の策定を支援する場合は、当該再生計画は本スキームに従って策定されますので、この要件を満たすと考えます。

2 当該準則が公正かつ適正なものと認められるものであること

本スキームは、当該スキームに従って策定された再生計画案が対象債務者の自助努力が十分に反映されたものであるとともに、当該計画案における権利関係の調整が対象債権者間で平等であることを旨とし(本スキーム6.(1)、(6))、対象債務者及び対象債権者との間に利害関係を有さず、かつ、債務処理に関する専門的な知識と経験を有する検討委員会の委員が、公正かつ公平な立場で再生計画案の正確性、相当性などについて調査・報告を行った上(本スキーム7. (2)、(3)、12)、対象債権者全員が再生計画について同意した場合に成立する(本スキーム8.(4))ことを定めていることから、この要件を満たすと考えます。

3 当該準則に次の(@)から(B)に掲げる事項が定められていること

@) 公正な価額による債務者の有する資産及び負債の価額の評定に関する事項

本スキーム6.(1)には、対象債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」といいます。)は、公正な価額により行うと定められていることから、この要件を満たすと考えます。

なお、この「公正な価額」については、本スキーム7.(3)に別紙として「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」(以下「評価基準」といいます。)を定めています。

A) 再生計画が準則に従って策定されたものであること及び以下ロ及びハに該当することにつき確認をする手続に関する事項

本スキーム7.(4)及び12において、再生計画案が本スキームに従って策定されたものであること並びに以下のロ及びハに掲げる要件に該当することにつき確認をする手続を定めていることから、この要件を満たすと考えます。

B) (A)の確認を税務上の要件を満たす者が行うことに関する事項

本スキーム7及び12において、検討委員会の委員が上記(A)の確認を行うことが定められており、また、検討委員会は対象債務者及び対象債権者との間に利害関係を有さず、かつ、債務処理に関する専門的な知識経験を有する3名以上(一定の場合は2名以上)の委員で構成されることとされており、震災特例法施行規則第6条の2第1項第2号の規定に適合することから、この要件を満たすと考えます。

ロ 震災特例法施行令第17条第1項第2号の要件に該当すること

同号では、再生計画において、債務者の有する資産及び負債について準則に定められた公正な価額による資産評定に関する事項に従って資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていることが求められています。

本スキームでは、再生計画案において、本スキームに定められた「評価基準」に従って対象債務者の有する資産及び負債の資産評定が行われ、それを基礎とした当該対象債務者の実態貸借対照表を作成することを予定しており、これらにつき、検討委員会の委員が確認をすることが定められていることから(本スキーム6.(1)、7.(4)2、12)、この要件を満たすと考えます。

ハ 震災特例法施行令第17条第1項第3号の要件に該当すること

同号では、上記ロの貸借対照表における資産及び負債の価額、再生計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務免除等をする金額が定められていることが求められています。

本スキームでは、再生計画案には、公正な価額による資産評定に基づいた実態貸借対照表、財務状況の今後の見通し、債務免除額の算出根拠などを含むものとされ(本スキーム6.(1))、かつ、債務免除額が上記ロの実態貸借対照表や再生計画における損益の見込み等に基づいて決定されていることにつき、検討委員会の委員が確認をすることが定められていることから(本スキーム7.(4)4、12)、この要件を満たすと考えます。

ニ 震災特例法施行令第17条第1項第4号ロの要件に該当すること

同号では、再生計画において、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法第59条第1項に規定する産業復興機構の組合財産である債権につき当該産業復興機構に係る投資事業有限責任組合契約等を締結している金融機関等(法人税法施行令第24条の2第1項第4号イからへまでに掲げる者)が債務免除等を行うことが求められています。

本照会は、産業復興機構が債務免除を行う再生計画を前提としており、また、当該産業復興機構に係る投資事業有限責任組合契約等を締結している金融機関等が法人税法施行令第24条の2第1項第4号イからへまでに掲げる者に該当することは、再生計画に添付する産業復興機構に係る投資事業有限責任組合契約等により明らかにされることから、この要件を満たすと考えます(本スキーム12.(1))。

(3) 一定の資産評定(震災特例法施行令第17条第1項第2号)を行っていること

再生計画の策定において、上記(2)イ3@)及びロのとおり、公正な価額による旨の定めのある債務者の有する資産及び負債の価額の評定(資産評定)に関する事項が定められた本スキームに基づき資産評定が行われていることから、この要件を満たすと考えます。

2 再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入

上記1のとおり、再生計画により対象債務者が債務免除等を受けた場合は、震災特例法施行令第17条第1項に規定する再生計画認可の決定があったことに準ずる一定の事実に該当すると考えており、本件照会の場合には、震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定による評価益又は評価損の益金算入又は損金算入が認められると考えます。

また、上記1の適用を受ける場合は、同じく震災特例法第17条第1項の規定による読替え後の法人税法第59条第2項の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して同項の損金算入額を計算することができると考えます。