(別紙1)

平成25年6月14日

 国税庁 課税部 審理室長
 住倉 毅宏 殿

株式会社地域経済活性化支援機構
代表取締役社長 瀬谷 俊雄

 株式会社企業再生支援機構(以下「旧機構」といいます。)は、地域経済の再建を図る観点から、地域経済において重要な役割を果たしていながら過大な債務を負っている個々の中小企業等の事業者に対する事業再生を支援することを目的としていました。
 現在も経営不振の個々の中小企業等を支援する必要性が高いことに変わりはありませんが、厳しい経済環境の中で、地域経済の活性化を図り、持続可能な経済成長を実現していくためには、個々の事業者の事業再生支援にとどまらず、地域の再生現場の強化や地域経済の活性化に資する支援を推進していくことが、喫緊の政策課題となっております。
 このため、事業再生の支援のための機能に加え、地域経済の活性化に資するための機能を備えた組織とする必要があることなどから、旧機構を地域経済の活性化を図ることを目的とする株式会社地域経済活性化支援機構(以下「新機構」といいます。)に改組する「株式会社企業再生支援機構法の一部を改正する法律」(平成25年法律第2号。以下「改正法」といいます。)が平成25年1月31日に国会に提出され、平成25年2月26日に国会で成立いたしました(この改正法による改正前の株式会社企業再生支援機構法を以下「旧機構法」、改正後の株式会社地域経済活性化支援機構法を以下「新機構法」といいます。)。

1 前回照会について

 旧機構が関与して策定された事業再生計画に基づき債権放棄等が行われた場合の債務者又は債権者における税務上の取扱い及び代表者等の個人から私財提供等が行われた場合の当該個人の所得税の取扱いについて、平成21年11月4日付で国税庁に照会(以下「平成21年照会」といいます。)を行い、同月6日付でそれぞれ次に掲げるとおり解して差し支えない旨の文書回答をいただいております。

(1) 支援対象者の税務上の取扱い

イ 資産の評価益又は評価損の益金算入又は損金算入(法人税法25、33)
 旧機構の関与の下、「企業再生支援機構の実務運用標準」(以下「旧実務運用標準」といいます。)に従って事業再生計画が策定され、これが成立した場合においては、法人税法施行令第24条の2第1項各号《再生計画認可の決定に準ずる事実等》に掲げる要件を満たすことから、当該事業再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定に準ずる事実」に該当する。
 したがって、当該事業再生計画において債務者の有する資産につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》又は第33条第4項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

ロ その他これに準ずる一定の事実がある場合の欠損金の損金算入(法人税法59)
 上記イにより、法人税法第25条第3項又は第33条第4項の規定の適用を受ける場合には、同法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、いわゆる期限切れ欠損金(注1)を青色欠損金等(注2)に優先して同項の損金算入額を計算することができる。

(注)

  • 1 期限切れ欠損金とは、法人税法第59条第2項の規定の適用対象となる欠損金額をいう。
  • 2 青色欠損金等とは、法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定及び第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》の規定の適用対象となる欠損金額をいう。

(2) 債権者の税務上の取扱い
 旧機構の関与の下、旧実務運用標準に従って支援対象者及び支援者となる者の合意により策定された事業再生計画については、法人税基本通達9−4−2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)にいう合理的な再建計画に該当する。

(3) 支援対象者の代表者等に係る税務上の取扱い
 上記(1)及び(2)において、旧機構が関与して策定された合理的な事業再生計画に基づき債権放棄等が行われる際の支援対象者の代表者等に係る税務上の取扱いは、次のとおりとなる。

 [保証債務の特例]
 合理的な事業再生計画が策定される際には、当該事業再生計画において支援対象者の代表者等の個人に私財提供を求めることがある。
 この場合、旧機構が関与して策定された合理的な事業再生計画に基づき、再生支援が行われることを前提とすれば、支援対象者の代表者等が保証債務の履行により取得した求償権を書面によって放棄した場合であっても、当該支援対象者が求償権の放棄を受けた後においてもなお債務超過の状況にあるときは、原則として求償権の行使は不能であり、代表者等の課税関係においては所得税法第64条第2項《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》の規定による保証債務の特例の適用がある。

 [担保権の消滅等]
 合理的な事業再生計画に基づき、旧機構法上の金融機関等及び債権を買い取った旧機構が主たる債務者である当該支援対象者から残債務を回収できる見込みである場合には、原則として、担保権の消滅や個人保証の解除による代表者等に対する利益供与はないことから、所得税法第36条《収入金額》に規定する収入の実現はなく、原則として代表者等に所得税の課税関係は生じない。また、このように代表者等に対する利益供与がないことからすれば、原則として旧機構法上の金融機関等、債権を買い取った旧機構及び当該支援対象者において寄附金課税(法人税法37)の対象となることはない。

2 改正法等の内容

(1) 改正法は、以下を主要な内容としています。

1株式会社企業再生支援機構を地域経済の活性化を図ることを目的とする組織として改組することから、その商号を「株式会社地域経済活性化支援機構」に変更すること。

2新機構による再生支援決定の期限を平成30年3月31日まで5年間延長すること。

3新機構の業務として、金融機関等に対し、地域経済の活性化に資する事業活動等に関する専門家を派遣すること、地域経済活性化に資する資金供給を行うファンドを民間事業者と共同して組成すること等を追加すること。

 改正法は、平成25年3月6日に公布、3月18日に施行され、また、政令・主務省令・支援基準についても改正されています。なお、この改正に伴い、旧実務運用標準の改定を行い「地域経済活性化支援機構の実務運用標準」(以下「実務運用標準」といいます。)として公表したところです。
 この実務運用標準は、新機構が、資産評価税制(法人税法第25条第3項又は第33条第4項)の適用を受けようとする再生支援対象事業者に係る再生支援に取り組む場合における事業再生の手続や依拠すべき基準等の準則を定めたものです。
 この改正法の内容を受けた新機構法のうち、本件照会に関するものは、以下のとおりです。

イ 委員会の決定事項(新機構法16条関係)
 旧機構法では、再生支援に係る各種決定について、企業再生支援委員会に決定権限を与えていたところですが、中小企業者にとって使い勝手の向上を図る観点から、対象事業者の規模・属性、支援形態等に応じた扱いとし得るよう、新機構法においては、再生支援に係る各種決定の意思決定機関を地域経済活性化支援委員会(以下「委員会」といいます。)とし、その決定事項を以下の1及び2に限定しております。

1新機構法第25条第1項第1号《再生支援決定》の規定により認定を受けた事業者(以下「認定事業者」といいます。)を支援対象とする場合

2業務執行の公正・中立性及び適正性を確保する観点から、取締役会が委員会に権限を委任した場合

 これを受け、「資産評価税制(法人税法第25条第3項又は第33条第4項)の適用を受けようとする事業者に係る再生支援決定等」については、取締役会決議により委員会に委任されているところです。

ロ 主務大臣の関与(新機構法25条、28条関係)
 旧機構法では、支援決定(25条)及び買取決定(28条)について、その適正性を確保するため主務大臣に対する事前通知、意見を述べる機会の付与の手続を定めていたところですが、支援決定及び買取決定の適正性の確保を図りつつも中小企業者にとって使い勝手の向上を図る観点から、再生支援対象事業者の規模・属性、支援形態等に応じて主務大臣の事前関与の有無及びその程度を柔軟にできるよう、新機構法では、こうした事前通知等の手続を廃止し、主務大臣へ事後報告することとしております。

ハ 買取申込み等の求め方の変更(新機構法26条関係)
 再生支援決定を行ったときは、新機構は、新機構法第26条第1項《買取申込み等の求め》に規定する関係金融機関等(以下「関係金融機関等」といいます。)に対し、その関係金融機関等が再生支援対象事業者に対して有する全ての債権につき、同項に規定する買取申込み等(以下「買取申込み等」といいます。)をするように求めることとなります。
 旧機構法の下では、旧機構は、この求める方法として、債権の買取りの申込み又は事業再生計画に従って債権の管理若しくは処分をすることの同意の両方の選択肢を示して回答をするように求める必要がありました。
 新機構法では、再生支援対象事業者の事業再生の方向性を踏まえつつ、個別事案の内容に即したより効率的な再生支援を行うことが可能となる枠組みとするため、この求める方法として、1債権の買取りの申込みをする旨の回答をするように求める方法、2事業再生計画に従って債権の管理若しくは処分をすることの同意をする旨の回答をするように求める方法又は3上記1の申込み若しくは上記2の同意のいずれかをする旨の回答をするように求める方法のいずれかにより行うことができるようになりました。

ニ 支援期間の延長(新機構法33条関係)
 旧機構法では、事業再生の支援期間について、短期集中的に支援を行い、窮境にある事業者の早期再生が図られるように「3年以内」とされていたところですが、中小企業の事業再生支援の実務者からの意見を踏まえ、新機構法では、「5年以内で、かつ、できる限り短い期間」に延長されました。

ホ 公表内容(新機構法34条関係)
 旧機構法では、国民に対する説明義務を果たす観点から、再生支援対象事業者の名称などを公表する規定が置かれておりましたが、こうした名称の公表規定により、風評被害に繋がるとの懸念から、特に中小企業者が旧機構に対する再生支援の申込みを躊躇するという事態が生じていました。
 このため、新機構法では、主務省令で定めるところにより、再生支援決定等の概要を示すために必要なものを公表することとし、認定事業者に係るものを除き、名称の公表は義務付けないこととされました。

(2) 上記(1)の改正に伴い、法人税法施行規則第8条の6第1項第2号《資産の評価益の益金算入に関する書類等》の規定が改正され、法人税法施行令第24条の2第1項第1号ロに規定する確認をする者(以下「確認者」といいます。)に該当するための要件について、新機構が再生支援をする場合は次に掲げる要件を満たす場合に限ることとされました。

イ 委員会が再生支援決定を行うものであること

ロ 関係金融機関等に対する買取申込み等の求めが、1新機構法第26条第1項第1号に掲げる申込みをする旨の回答をするように求める方法又は2当該申込み若しくは同項第2号に掲げる同意のいずれかをする旨の回答をするように求める方法のいずれかにより行われるものであること

3 今回の照会事項

 上記2に記載のとおり、旧機構法等の一部が改正されていますが、新機構が別に定めて公表した実務運用標準にしたがい、委員会が再生支援決定を行った事業再生計画により債権放棄等が行われた場合(新機構が関係金融機関等に対し、1新機構法第26条第1項第1号に掲げる申込みをする旨の回答をするように求める方法又は2当該申込み若しくは同項第2号に掲げる同意のいずれかをする旨の回答をするように求める方法のいずれかにより買取申込み等の求めを行う場合に限ります。)においても、引き続き平成21年照会に対する回答のとおりと解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

4 理由(照会者の求める見解となる理由)

(1) 委員会の決定
 上記2(1)イのとおり、委員会の決定権限が、認定事業者についての再生支援に係る各種決定及び取締役会から委任された再生支援に係る各種決定に限られることとなりましたが、本件照会は、委員会が再生支援決定を行った事業再生計画を前提とするものであることから、この改正の影響を受けるものではありません。

(2) 主務大臣の関与
 上記2(1)ロのとおり、再生支援決定や買取決定を行う際の主務大臣の関与方法が事前通知から事後報告に改められたのは、再生支援対象事業者の規模・属性、支援形態等に応じて主務大臣の事前関与の有無及びその程度を柔軟に行うためのものであり、主務大臣による事後チェックは行われることから、この改正によって、委員会により再生支援決定が行われた事業再生計画の適正性が直ちに損なわれるものではありません。

(3) 買取申込み等の求め方の変更(確認者の要件について)
 再生計画認可の決定があったことに準ずる事実による資産の評価益又は評価損の計上要件の1つとして、確認者が「一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則」に定められている必要があります。この確認者については、法人税法施行規則第8条の6第1項に税務上の要件が掲げられており、上記2(1)イ及びハの改正に伴い、同項第2号が改正され、1委員会により再生支援決定が行われ、2関係金融機関等に対する買取申込み等の求めが新機構法第26条第1項第1号に掲げる申込みをする旨の回答をするように求める方法又は当該申込み若しくは同項第2号に掲げる同意のいずれかをする旨の回答をするように求める方法のいずれかにより行われる再生支援をする場合の新機構がこの確認者に該当することとされています。
 この点、実務運用標準14.において、新機構が上記1及び2の要件を満たす再生支援を行う場合に、事業再生計画が実務運用標準に従って策定されたものであること等を確認する手続が定められており、この場合の新機構は法人税法施行規則第8条の6第1項第2号イ及びロに掲げる要件を満たすことから、確認者の要件を満たします。

(4) 支援期間の延長
 上記2(1)ニのとおり、再生支援期間が延長されたのは、中小企業の事業再生の実情が考慮されたものであり、委員会により再生支援決定が行われた事業再生計画の適正性が損なわれるものではありません。

(5) 公表内容の変更(再建管理の要件について)
 上記2(1)ホのとおり、名称の公表が風評被害に繋がるとの中小企業の懸念を踏まえ、新機構が再生支援決定等を行った場合、認定事業者に係るものを除き、名称の公表は義務付けられず、再生支援決定等の概要を公表することとされましたが、改組後の新機構においても、支援者及び支援対象者間で合意された事業再生計画の進捗状況は、新機構その他の支援者の監視下に置かれることに変わりありません。また、実務運用標準12.において、事業再生計画の具体的な実施状況については、支援対象者に対し必要なモニタリングを行うこととしているため、改組後においても、新機構による再建管理は適切に行われるものと考えられます。
 したがって、委員会により再生支援決定が行われた事業再生計画の適正性が損なわれるものではありません。