別紙

平成21・06・26経局第1号
平成21年06月30日

国税庁 課税部 審理室長
大久保 修身 殿

経済産業省 経済産業政策局
産業再生課長 飯田 祐二

1 前回照会について

 平成19年に産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律において規定した特定認証紛争解決手続に関しては、当該特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等から債権放棄等が行われた場合における次の(1)から(3)までに掲げる事項について平成20年3月25日で国税庁に照会を行い、同月28日付でそれぞれ次に掲げるとおり解して差し支えない旨の文書回答をいただいております。

  • (1) 特定認証紛争解決手続に従って事業再生計画が策定され、紛争の当事者となる債権者全員の同意によって事業再生計画が成立した場合において、法人税法施行令第24条の2第1項《再生計画認可の決定に準ずる事実等》各号に掲げる要件を満たすときには、当該事業再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定に準ずる事実」に該当する。
     したがって、当該事業再生計画において債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益及び評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》の規定による益金算入及び第33条第3項(現行第4項)《資産の評価損の損金不算入等》の規定による損金算入の規定を適用することができる。

    注) 平成21年度の税制改正により、上記規定の適用対象となる資産の範囲が整備されており、この改正の結果、改正前の法人税法第33条第3項は同条第4項となっています。

  • (2) 上記(1)により法人税法第25条第3項又は第33条第3項(現行第4項)の規定の適用を受ける場合には、当該適用を受ける事業年度において、青色欠損金等以外の欠損金(以下「期限切れ欠損金」という。注1)を青色欠損金等(注2)に優先して控除することができる法人税法第59条第2項第3号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に掲げる場合に該当するものとして、同項の規定により期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して計算した金額を、損金算入することができる。
    • 注1) 青色欠損金等以外の欠損金とは、法人税法第59条第2項の規定の適用対象となる欠損金額をいいます。
    • 注2) 青色欠損金等とは、法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定及び法人税法第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》の規定の適用対象となる欠損金額をいいます。
  • (3) 特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により債権者が債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。以下同じ。)を行う場合には、原則として、法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の取扱いにより、その債権放棄等による損失を損金算入することができる。

2 今回の照会事項

  • (1) 照会の経緯
     当該特定認証紛争解決手続においては、「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令」(平成19年経済産業省令第53号。以下「省令」といいます。)に基づき、その事業再生計画は「債務者の有する資産及び負債につき、経済産業大臣が定める基準による資産評定が公正な価額によって行われ、当該資産評定による価額を基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成される」こととなります(省令141一)。
     この経済産業大臣が定める資産評定に関する基準として「産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」(平成19年経済産業省告示第209号。以下「旧評定基準」といいます。)を定めていました。
     前回の照会は、特定認証紛争解決事業者が関与して策定される事業再生計画が、この旧評定基準により債務者の有する資産及び負債について資産評定(以下「資産評定」といいます。)を行うことを含む当該特定認証紛争解決事業者の準則に従って策定されることを前提に照会し、上記1の回答を受けたところです。
     このたび、法的手続や他の私的整理手続における資産評定基準との整合性の観点からの見直しを行った結果として、旧評定基準を廃止し、新たに、「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」(平成20年経済産業省告示第257号。以下「新評定基準」といいます。)を定めたところです。

    注) 我が国における産業活動の革新等を図るための産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律(平成21年法律第29号)の施行(平成21年6月22日)に伴い、「産業活力再生特別措置法」の法律名が「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」に改正され、それに伴い「産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令」が「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令」に、「産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」が「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」に、それぞれその名称が改正されていますので、上記においては改正後の名称で記載しています。

  • (2) 照会事項
     上記のとおり「経済産業大臣が定める基準」(省令141一)が新評定基準となることから、新評定基準の制定以降に特定認証紛争解決事業者が関与して策定される事業再生計画は、新評定基準に基づいた資産評定を行うこととなりますが、当該事業再生計画により2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等から債権放棄等が行われた場合には、引き続き上記1の(1)から(3)までのとおりと解して差し支えないかご照会申し上げます。

3 新評定基準について

  • (1) 制定に当たっての基本的な考え方
     新評定基準については、2(1)のとおり、法的手続や他の私的整理手続における資産評定基準との整合性の観点からの見直しを行った結果として定められたものです。
     この見直しは、経済産業省において開催した研究会等を通じて得た有識者意見を反映させたものであり、資産評定が公正な価額によって行われるための基準(省令141一)である点において、旧評定基準となんら変わるところはありません。
  • (2) 新評定基準の概要
    新評定基準においては、この新評定基準全般に係る事項として「目的」、「評定の原則」及び「用語の定義」を新設するとともに、個別項目についても旧評定基準がやや不明確であった部分を明らかにするほか評定に当たっての留意事項を定めるなどしており、新評定基準は旧評定基準をさらに発展させた「資産評定が公正な価額によって行われるための基準」(省令141一)とすることを目的として定めたものです。
     新評定基準の概要は以下のとおりです。
    • イ 全般に係る事項
      • 1 「一 目的」
         債務者の資産評定は、事業再生における最初の基本的な作業であるが、これが当該特定認証紛争解決手続において、公正かつ適正な債務処理を行うための手続の一環として、公正な価額による債務者の有する資産及び負債の価額の評定を行うために用いられる旨記載している。
      • 2 「二 評定の原則」
         資産評定基準にすべての項目を網羅することは実質的に不可能なため、新評定基準に規定のない資産項目について、指針とすべき原則を明らかにしている。
         また、評定基準日の設定や、事情変更、時点修正に関する考え方について明記している。
      • 3 「三 用語の定義」
         新評定基準にて用いる用語のうち、基本的な用語についての定義を集約して記載している。
    • ロ 個別項目に係る事項(旧評定基準との相違点)
      • 1 「四 売上債権」
         旧評定基準においては、各債権金額から取立不能見込額又は貸倒見積額を控除した額を時価とする記載であったものを、新評定基準においては、金融商品会計基準に準じて、原則として各債権金額から貸倒見積額を控除した金額をもって本評定における時価としている。ただし、本評定は決算のためではなく、債務者の資産等からの回収可能な価額を算出することにあるから評定基準日時点における売上債権のうち、評定をする時点までに既に回収している売上債権については回収実績によることができる旨追加的に規定している。
      • 2 「五 棚卸資産」
         旧評定基準においては、品質低下、陳腐化資産について、予定処分価額にて調整した時価とする記載であったものを、新評定基準においては、一定の回転期間を超える場合、規則的に帳簿価額を切り下げる方法を追加するなど、棚卸資産の評価に関する会計基準の考え方も採用できるよう明らかにしている。
      • 3 「十 事業用不動産」
         旧評定基準においては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価等を時価とする記載であったものを、新評定基準においては、不動産鑑定士による不動産鑑定評価等を基本としつつ、これら鑑定評価額にも、価格の種類として正常価格や特定価格といった価格概念の違いがあることや、前提条件として鑑定評価の条件が付されることがあるが、これらが債務者の作成する事業再生計画と整合している必要があるため、この点につき記載を追加している。
      • 4 「十四 無形固定資産」
         旧評定基準においては、有償取得のれんに関する記載はなかったものを、新評定基準においては、有償取得のれんが無形固定資産に含まれることを明らかにした上で、評定基準日において個別に明確に算定可能なものに限定しており、再生計画の成立を前提とした事業全体の価値に基づくのれんは評定の対象外となる。
         「二十六 のれん」でも、再生計画の成立を前提とした事業全体の価値に基づいたのれんは計上されず、一方、個別に明確に算定可能なものは計上できる旨明記している。
      • 5 「十九 繰延税金資産及び負債」
         旧評定基準においては、繰延税金資産及び繰延税金負債における具体的な評定の基準に関する記載はなかったものを、新評定基準においては、繰延税金資産及び繰延税金負債について原則として繰延税金資産及び負債に関する一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して評定し、また、その評定の際には、繰延税金資産の回収可能性を特に慎重に判断することなどを明らかにしている。

注) その他の内容(旧評定基準との相違点)については、添付の新旧対照表(PDF/53KB)をご参照ください。

当初回答(平成20年3月28日付)へのリンク

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