(別紙)

平成20・03・24経局第2号
平成20年3月25日

国税庁課税部長
     荒井 英夫 殿

経済産業省大臣官房審議官(経済産業政策担当) 瀬戸 比呂志

 今後、私的整理の円滑化については、株式会社産業再生機構が担ってきた債権者調整機能を民間事業者間の取組として定着させ、私的整理の円滑化を促進するため、平成19年に産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第三十六号)において、事業再生の円滑化のための措置を新たに規定したところです。
 具体的には、過大な債務を負っている事業者であって、その債権者の全部又は一部の協力を得ながら事業の再生を図ろうとする事業者のうち、再生可能と判断されるものにつき、特定認証紛争解決手続に沿って事業再生計画を実行する事業者に対して、私的整理の円滑化のための措置を講じております。
 この特定認証紛争解決手続は、債権者の協力を得て事業再生を図ろうとする事業者が、特定認証紛争解決事業者に対して特定認証紛争解決手続の申込みを行い、特定認証紛争解決事業者が当該特定認証紛争解決手続を利用することが相当であるものと判断したものについて、特定認証紛争解決事業者の関与のもと、紛争の当事者となる債権者の債権回収等の一時停止、事業再生計画の内容に係る債権者会議での協議等を経た上、債権者全員の合意により事業再生計画の成立を図り、その後の再建管理を行う一連の手続であります。
 また、この特定認証紛争解決手続は、産業活力再生特別措置法(以下「産活法」という。)に規定される調停手続の特例等によって私的整理と法的整理の連続性を確保しつつ、債権者と債務者の合意に基づき債権者の協力を得ながら、債務者が事業再生を図るための措置を規定したものであり、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等が債権者として関わることを前提としているものであります。
 つきましては、上記特定認証紛争解決手続に従って策定される事業再生計画により2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等から債務免除を受ける場合においては、税務上、次の点につきそれぞれ次のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

1  特定認証紛争解決手続に従って事業再生計画が策定され、紛争の当事者となる債権者全員の同意によって事業再生計画が成立した場合において、法人税法施行令第24条の2第1項《再生計画認可の決定に準ずる事実等》各号に掲げる要件を満たすときには、当該事業再生計画の成立は、同項に規定する「再生計画認可の決定に準ずる事実」に該当する。
 従って、当該事業再生計画において債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益及び評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》の規定による益金算入及び第33条第3項《資産の評価損の損金不算入等》の規定による損金算入の規定を適用することができる。

(注) 次に掲げる資産は、それぞれ次に掲げる制度の適用対象資産から除かれていますので、これらの資産に係る評価益又は評価損は本件照会の対象外となります。

1 法人税法第25条第3項の制度・・・法人税法施行令第24条の2第4項各号に掲げる資産

2 法人税法第33条第3項の制度・・・同項の預金等及び1の資産

2  上記1により法人税法第25条第3項又は第33条第3項の規定の適用を受ける場合には、当該適用を受ける事業年度において、青色欠損金等以外の欠損金(以下「期限切れ欠損金」という。注1)を青色欠損金等(注2)に優先して控除することができる法人税法第59条第2項第3号《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》に掲げる場合に該当するものとして、同項の規定により期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して計算した金額を、損金算入することができる。

注1) 青色欠損金等以外の欠損金とは、法人税法第59条第2項の規定の適用対象となる欠損金額をいいます。

注2) 青色欠損金等とは、法人税法第57条第1項《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》の規定及び法人税法第58条第1項《青色申告書を提出しなかった事業年度の災害による損失金の繰越し》の規定の適用対象となる欠損金額をいいます。

3  特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により債権者が債権放棄等(債権放棄、無償又は低利による貸付け等をいう。以下同じ。)を行う場合には、原則として、法人税基本通達9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の取扱いにより、その債権放棄等による損失を損金算入することができる。

なお、上記1から3までの事項に対する照会者としての見解は、次葉に記載しております。


(次葉)

[債務者に係る税務上の取扱い]

1. 法人税法第25条第3項及び第33条第3項の適用について

 本件照会の場合は、次の(1)から(3)までのとおり、法人税法施行令第24条の2第1項に規定する「内国法人について民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったことに準ずる事実」が生じており、その事業再生計画は同項第1号から第3号まで及び第4号又は第5号に掲げる要件を満たすものであり、かつ、同条第3項第2号に規定する一定の資産評定を行うこととされていることから、資産の評価益の計上要件を満たしているものと認識しております(法253、法令24の213)。
 また、民事再生法の規定による再生計画認可の決定があったことに準ずる事実による資産の評価損の計上要件は、資産の評価益の計上要件と同一であり、本件照会の場合は資産の評価損の計上要件も満たしているものと認識しておりますが(法333、法令68の212)、以下において、これらの要件に沿って照会者としての見解を説明いたします。

(1) 民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実に該当すること

 特定認証紛争解決手続に従って策定される事業再生計画は、次の過程を経て成立します。
 債務者(注1)が特定認証紛争解決事業者に対して、通常複数の債権者を紛争の当事者とする特定認証紛争解決手続の実施を依頼し(注2)、特定認証紛争解決事業者は紛争の当事者となる債権者の同意見込み、事業再生計画の実行可能性等について検討した上で(注3)、相当と判断した場合に特定認証紛争解決手続が開始されます(注4)。
 なお、特定認証紛争解決事業者とは、法務大臣の認証を受けた認証紛争解決事業者のうち一定の要件を満たすものとして、産活法第48条第1項の規定により、経済産業大臣の認定を受けた者をいいます(注5)。
 また、債務者となる企業の適格性や債務者が作成する事業再生計画の内容等については、債権者会議において、手続実施者(同会議により選任された「手続実施者」をいう。以下同じ。)が事業再生計画全般に対し、公正かつ妥当で経済的合理性を有するものであるかどうかにつき意見を述べることとされており(注6)、この意見を踏まえた協議の上、事業再生計画は、債権者全員の書面による合意の意思表示をもって決議して成立することとなります(注7)。
 このように特定認証紛争解決手続に基づく事業再生計画の成立は、債務者による特定認証紛争解決手続の申込みに始まり、債権者会議での協議等を経た上、最終的に事業再生計画への合意を得るという民事再生法の規定による再生計画策定の一連の手続に準じて成立するものであることから、民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実に該当するものと考えられます。

注1) 産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令(平成十九年経済産業省令第五十三号。以下「省令」という。)第7条に規定する債務者をいう。以下同じ。

注2) 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号。以下「ADR法」という。)第6条第8号参照。

注3) 産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第二項の規定に基づき認証紛争解決事業者が手続実施者に確認を求める事項(平成二十年経済産業省告示第二十九号。以下「告示」という。)第2条第2項第2号のハ及びニを参照。

注4) 告示第2条参照。

注5) 産活法第2条第18項参照。

注6) 省令第10条参照。

注7) 省令第11条参照。

(2) 事業再生計画が所定の要件(法令24の21かっこ書)に該当すること

 法人税法施行令第24条の2第1項のかっこ書では、「その債務処理に関する計画が、第一号から第三号まで及び第四号又は第五号に掲げる要件に該当するものに限る。」と規定されており、本件照会における事業再生計画は、次のとおり、各要件を満たすものと考えられます。

イ 法人税法施行令第24条の2第1項第1号の要件に該当すること

 同号の要件は、(イ)事業再生計画が一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に従って策定されていること、(ロ)その準則が公正かつ適正なものであること、(ハ)その準則が特定の者が専ら利用するものでないこと、及びその準則に一定の事項((ニ)公正な価額による資産評定に関する事項、(ホ)事業再生計画が当該準則に従って策定されること、(ヘ)同項第2号及び第3号の要件に該当することの確認手続に関する事項並びに(ト)当該(ホ)及び(ヘ)の確認をする者)が定められていることであり、これらの要件を満たしていることにつき順を追って説明します。

(イ) 公表された債務処理を行うための手続についての準則であること

 特定認証紛争解決手続は、企業の私的整理に関する基本的考え方を整理し、私的整理の進め方、対象となる企業、事業再生計画の内容等について定めたものであり、ADR法、産活法、省令、資産評定基準(注1)及び告示に規定されており、一般に公表された債務処理を行うための手続についての準則に該当するものです(注2)。

注1) 産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準(平成十九年経済産業省告示第二百九号)をいう。以下同じ。

注2) 経済産業大臣の認定を受けた個々の特定認証紛争解決事業者の特定認証紛争解決手続に係る実施方法等についても、当該特定認証紛争解決事業者において公表される。

(ロ) 公正かつ適正な準則であること

 特定認証紛争解決手続に従って策定される事業再生計画は、債務者の自助努力が十分に反映されたものであり(注1)、事業再生計画における権利関係の調整は債権者間で平等であることを旨とし(注2)、債務者及び債権者との間に利害関係を有しない手続実施者(注3)が事業再生計画が公正かつ妥当で経済的合理性を有するかについて意見を述べ(注4)、この意見を踏まえた協議の上、事業再生計画は、債権者全員の書面による合意の意思表示をもって決議して成立することとされていることから(注5)、公正かつ適正なものと考えられます。
 したがって、この公正かつ適正な事業再生計画を策定するための特定認証紛争解決手続は、公正かつ適正なものと考えられます。

注1) 告示第2条第2項第2号ロ参照。

注2) 省令第13条第3項参照。

注3) ADR法第6条第3号参照。

注4) 省令第10条参照。

注5) 省令第11条参照。

(ハ) 特定の者が専ら利用するものでないこと

 特定認証紛争解決手続に従って策定される事業再生計画は、複数の金融機関等が関わることを前提とするものであり(注)、特定の者が専ら利用するためのものではないことから、当該手続は特定の者が専ら利用するものでないと考えられます。

 (注) 告示第2条第3項参照。

(ニ) 準則に公正な価額による資産評定に関する事項が定められていること

 債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」という。)については資産評定基準に基づき公正な価額によって行うと定めております(注1)。
 また、この「公正な価額」については、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等からの債務免除を伴う事業再生計画を策定する場合において、

  •  資産評定基準を定めていること(注2)。
  •  当該資産評定基準により作成される貸借対照表を含むその事業再生計画は複数の金融機関等が関わることを前提として成立すること(注3)。
  •  当該事業再生計画が公正な価額による資産評定によっていることについて、債務者及び債権者との間に利害関係を有しない手続実施者が行う確認作業を踏まえて、最終的に特定認証紛争解決事業者が確認を行うことを定めていること(注4)。

からすれば、「公正な価額」となるべきことを担保するための定めもあると解されることから、公正な価額による旨の定めがある資産評定に関する事項が準則に定められていることという要件を満たしていると考えられます。

注1) 省令第14条第1項第1号参照。

注2) 省令第14条参照。

注3) 省令第11条及び告示第2条第3項参照。

注4) 省令第14条第2項及びADR法第6条第3号参照。

(ホ) 準則に事業再生計画が当該準則に従って策定されることが定められていること

(ヘ) 準則に事業再生計画が同項第二号及び第三号の要件に該当することを確認する手続に関する事項が定められていること

 特定認証紛争解決手続には、特定認証紛争解決事業者が当該手続に従って策定された事業再生計画であることと、下記ロ及びハに掲げる要件を満たしていることを後述の手続実施者の確認作業の結果により確認すること(注)を定めており、当該計画が準則に従って策定されたものであること並びに下記ロ及びハに掲げる要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項が定められていると考えられます。

(注) 省令第9条第3項、第14条第2項及び告示第2条参照。

(ト) 準則に(ホ)及び(へ)の確認をする者を定めていること

 弁護士及び公認会計士を含む3人以上の手続実施者が債権者会議において選任され、各人が公正かつ公平な立場で(注1)、事業再生計画が特定認証紛争解決手続に従って策定されたものであること並びに下記ロ及びハに掲げる要件を満たしていることの確認等の職務を遂行するため調査を行い手続実施者全員の連名による書面で特定認証紛争解決事業者に報告を行い、当該特定認証紛争解決事業者の確認を受けることとされています(注2)。
 この手続実施者は、債務者及び債権者との間に利害関係を有しない者であり(注3)、かつ、株式会社産業再生機構において事業再生に携わった経験を有する者である等、債務処理に関する専門的な知識経験を有する者でなければならず(注4)、「利害関係を有しないもののうち、債務処理に関する専門的な知識経験を有するもの(当該者が三人以上選任される場合の当該者に限る。)」(法規8の5@一)に該当し、準則に(ホ)及び(ヘ)の確認をする者に関する事項が定められていると考えられます。

注1) ADR法第6条第3号及び第4号参照。

注2) 省令第14条第2項、告示第2条及び第3条、告示様式第2参照。

注3) ADR法第6条第3号。

注4) 省令第4条参照。

ロ 法人税法施行令第24条の2第1項第2号の要件に該当すること

 この要件では、民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実があった場合に策定された事業再生計画において、準則に定められた公正な価額による資産評定に関する事項に従って資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されているかどうかが求められています。
 この点、本件の事業再生計画の策定において、特定認証紛争解決事業者は、資産評定基準に基づいて資産評定が行われていること、その資産評定に基づいて公正な価額による貸借対照表が作成されていることを確認することが定められており(注)、この要件を満たすと考えられます。
(注) 省令第14条第1項第1号、第2項参照。

ハ 法人税法施行令第24条の2第1項第3号の要件に該当すること

 この要件では、当該事業再生計画が、上記ロの貸借対照表における資産及び負債の価額、当該事業再生計画における損益の見込み等に基づいて債務の免除をする金額が定められているかどうかが求められています。
 この点、本件の事業再生計画では、特定認証紛争解決事業者は、資産評定に基づいた貸借対照表や事業再生計画における損益の見込み等に基づいて債権放棄額が決定されていることの確認をすることが定められており(注)、この要件を満たすと考えられます。
(注) 省令第14条第1項第1号、第2項参照。

ニ 法人税法施行令第24条の2第1項第4号又は第5号の要件に該当すること

 この要件では、当該事業再生計画において、2以上の金融機関等又は政府関係金融機関等が債務の免除を行うものであるかどうかが求められています。
 この点、本件照会は、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等が債務免除を行う事業再生計画を前提としていますので、この要件を満たすと考えられます。

(3) 一定の資産評定(法令24の23二)を行っていること

 本件の事業再生計画の成立は、(1)のとおり民事再生法の規定による再生計画認可の決定に準ずる事実に該当し、かつ、当該事業再生計画の策定において、(2)イの(ニ)及び(2)ロのとおり公正な価額による旨の定めがある資産評定に関する事項が定められた準則に基づき資産評定を行うこととされているところです。

2. 法人税法第59条第2項の適用について

 特定認証紛争解決手続に従って策定される事業再生計画は、債権者会議での協議等を経た上、複数の債権者全員の書面による合意をもって成立するものです。
 したがって、債務者が当該事業再生計画により債務免除等を受ける場合には、法人税基本通達12-3-1(再生手続開始の決定に準ずる事実等)(3)にいう「債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる」ものであり、その決定についてし意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理と認められることから、法人税法第59条第2項の民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったことに準ずる事実に該当すると考えております(法令117@四)。
 また、上記1のとおり本件照会の場合は、法人税法第25条第3項及び第33条第3項の規定による益金算入及び損金算入の規定を適用できると考えておりますので、同法第59条第2項の規定の適用に当たっては、同項第3号に掲げる場合に該当し、同項の規定により期限切れ欠損金を青色欠損金等に優先して計算した金額を損金算入することができると考えております。

[債権者に係る税務上の取扱い]

3. 法人税基本通達9-4-2の適用について

 本件照会の場合に債権者が行う債権放棄等は、次のとおり、損失負担の必要性があり、かつ、合理的な再建計画に基づき行われるものと認識しております。
 したがって、特定認証紛争解決手続に従って策定された事業再生計画により債権者が行う債権放棄等は、原則として、法人税基本通達9-4-2にいう「合理的な再建計画に基づく債権放棄等」であり、その債権放棄等による損失は、税務上損金算入することができると考えておりますが、以下において、照会者としての見解を説明します。

(1) 損失負担の必要性

イ 債務者は事業関連性のある子会社等に該当するか

 特定認証紛争解決手続において、事業再生計画の成立により債権放棄等の権利変更を求められるのは、紛争の当事者たる債権者であります(注)。
 したがって、支援を受ける債務者となるのは、債権者と取引関係、資金関係等事業関連性を有している企業であり、債権者にとって事業関連性のある子会社等に該当します。
(注) 省令第7条及び第13条第1項第7号参照。

ロ 子会社等は経営危機に陥っているか

 特定認証紛争解決手続により再生が図られる企業は、過剰債務を主因として経営困難な状況にあり、自力による再生が困難な企業であり(注)、経営危機に陥っていると考えられます。
(注) 告示第2条第2項第1号イ参照。

ハ 支援者にとって損失負担を行う相当な理由はあるか

 特定認証紛争解決手続に基づき事業の再生を行う場合は、事業再生計画による債権額の回収の見込みが破産手続によるものよりも多くなければならないとされていることから(注)、事業再生計画による債権放棄等は債権者にとって経済的合理性のあるものであり、損失負担を行う相当な理由があると考えられます。
(注) 省令第13条第4項参照。

(2) 再建計画等の合理性

イ 損失負担額(支援額)の合理性

 特定認証紛争解決手続では、債権者会議において経営の困難になった原因を解明し、企業を再建するために必要な支援額を算定し、この支援額に基づき策定された事業再生計画を債権者会議で協議し、これを成立させることとなります。
 この事業再生計画は、債務者自身が再建のための自助努力をすることを前提として支援額を算定しており(注1)、また、公正かつ妥当で経済的合理性を有するものであるかどうかについて事業再生計画の内容を協議するための債権者会議において債務者及び債権者との間に利害関係を有しない第三者である手続実施者が意見を述べる手続も導入しているところであり(注2)、これらの手続を踏まえ債権者全員の合意により決定した支援額(損失負担額)は(注3)、合理性があるものに該当すると考えられます。

注1) 告示第2条第2項第2号ロ参照。

注2) 省令第10条参照。

注3) 省令第11条参照。

ロ 再建管理の有無

 特定認証紛争解決手続においては、事業再生計画の成立に関しての公表のみならず、成立後債務者は債権者及び特定認証紛争解決事業者に対して、事業再生計画の実施状況を定期的に報告しなければならないこととしております(注1)。
 また、債務者が債務を弁済できないときには、(債務者は)破産手続等の法的倒産処理手続開始の申立を義務としており(注2)、支援者全員による監視体制下に置かれており、当該事業再生計画に対する支援者の再建管理は行われていることとなると考えられます。

注1) 告示第2条第4項各号参照。

注2) 告示第2条第5項各号参照。

ハ 支援者の範囲の相当性

 特定認証紛争解決手続は、複数の金融機関等が債権者として関わることを前提としている手続であります(注1)。
 具体的には、まず、債務者が特定認証紛争解決事業者に特定認証紛争解決手続による債権者調整の申込を行い(注2)、申込を受けた特定認証紛争解決事業者は債権者の特定認証紛争解決手続に対する同意見込み、事業再生計画の実行可能性について検討した上で、相当と判断した場合に特定認証紛争解決手続は開始となります(注3)。
 また、債権者の範囲は特定認証紛争解決手続における紛争の当事者であり、これら債権者の全員の合意をもって事業再生計画は成立することから(注4)、当該事業再生計画における支援者の範囲は相当と考えられます。

注1) 告示第2条第3項参照。

注2) ADR法第6条第8号参照。

注3) 告示第2条第2項参照。

注4) 省令第11条参照。

ニ 負担割合(支援割合)の合理性

 特定認証紛争解決手続において事業再生計画における権利関係の調整は、債権者間で平等であることが原則でありますが、衡平性を害しない場合には、債権者間の負担割合について異なることも妨げておりません(注1)。
 そのため、負担割合に関しては個別の事案により異なりますが、いずれの事案においても債権者の全員の合意をもって事業再生計画は成立することから(注2)、実質的に衡平性が確保されており、負担割合は合理的に決定されていると考えられます。

注1) 省令第13条第3項参照。

注2) 省令第11条参照。

 平成20年11月20日に、上記の(次葉)において引用されている「産業活力再生特別措置法第四十八条第一項の規定に基づく認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」(平成19年経済産業省告示第209号)」が廃止され、「事業再生に係る認証紛争解決事業者の認定等に関する省令第十四条第一項第一号の資産評定に関する基準」(平成20年経済産業省告示第257号)が新たに定められるという関係法令の改正が行われました。
 これに伴い、この関係法令の改正後においても本件の回答内容に変わりがないことについての確認的な照会が平成21年6月30日付で経済産業省から行われ、これに対して平成21年7月9日で文書回答を行っています。
 ※ 平成21年7月9日付回答へのリンク