別紙

経済産業省

平成17・06・21中庁第2号
平成17年6月23日

国税庁課税部長 竹田 正樹 殿

中小企業庁経営支援部長 野口 泰彦

 産業活力再生特別措置法に基づき各都道府県の商工会議所又は中小企業支援センター等に設置された中小企業再生支援協議会(以下「協議会」という。)は、各地で中小企業からの相談を受け付け、助言や再生計画の策定支援を行うなど、中小企業の再生支援を行っているところです。協議会が支援を行い策定される再生計画については、それらの再生計画のうちモデルケースを用いて、それを前提として債権放棄等が行われた場合の債権者側の法人税基本通達9−4−2に定める税務上の取扱い及び債務者側の同通達12−3−1(3)に定める税務上の取扱いについて、平成15年7月28日付けで照会を行い、同月31日付で中小企業庁の考え方で差し支えない旨の文書回答をいただいております。
 この度、平成17年度の税制改正において、一定の要件を満たす私的整理に係る再生計画により債務免除を受ける場合には、債務者の有する一定の資産についての評価損及び評価益の計上とともに、青色欠損金等以外の欠損金を優先して控除する税制措置が新たに講じられています。
 中小企業庁においては、協議会が新たに講じられた税制措置の下においても円滑に中小企業の再生支援を行い得るように、別添(PDFファイル/132KB)「中小企業再生支援協議会の支援による再生計画の策定手順(再生計画検討委員会が再生計画案の調査・報告を行う場合)」(以下「本策定手順」という。)を作成し、平成17年6月21日に公表したところであります。
 つきましては、本策定手順に従って策定される再生計画により債務者が2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等から債務免除を受ける場合においては、次の点につきそれぞれ次のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。

1 本策定手順に従って再生計画が策定され、対象債権者全員の同意によって再生計画が成立した場合においては、当該再生計画は、法人税法施行令第24条の2第1項第2号《再生計画認可の決定に準ずる事実等》のイからハまで及びニ又はホに掲げる要件を満たすことから、当該再生計画の成立は、同号に規定する「再生計画認可等に準ずる事実」に該当する(次葉参照)。
 また、当該再生計画における資産評定は、本策定手順に従って行われることから、債務者の有する資産の価額につき、同条第3項第2号に規定する資産評定が行われていることとなり、当該資産評定による価額を基礎とした貸借対照表に計上されている資産の価額と帳簿価額との差額(評価益又は評価損)は、法人税法第25条第3項《資産の評価益の益金不算入等》及び第33条第3項《資産の評価損の損金不算入等》の規定を適用することができる。

2 上記1により法人税法第25条第3項又は第33条第3項の規定の適用を受ける場合には、同法第59条第2項《会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入》の規定により損金の額に算入する金額は、同項第3号に掲げる場合に該当するものとして計算することができる。

なお、本策定手順に従って策定される再生計画は、その債務処理について利害関係を有しない者(債務処理に関する専門的な知識経験を有すると認められる3人以上の者)が関与した上で、利害の対立する複数の対象債権者全員の同意により成立するものであり、支援額の合理性、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等のいずれも有すると考えられます。
 したがって、このことを前提とすれば、本策定手順に従って策定された再生計画により債権者が債権放棄等を行う場合には、原則として、法人税基本通達9−4−2にいう「合理的な再建計画に基づく債権放棄等」であり、その債権放棄等による損失は、税務上損金算入されると考えられますが、念のため併せてご照会申し上げます。


(次葉)

1 民事再生法の規定による再生計画認可の決定等に準ずる事実に該当すること

 本策定手順に従って策定される再生計画は、次の過程を経て成立します。
 まず、対象債務者及び協議会が、対象債務者が協議会の支援のもと再生計画を策定することについて、主要債権者に協力を要請し、その意向を確認します。その後、主要債権者と協議会の支援業務責任者が、作成された再生計画案に対する対象債権者の同意見込み及び再生計画案の実行可能性について検討し、相当であると判断した場合には、私的整理の手続が開始されます。
 対象債務者である企業の適格性や再生計画案の内容等については、債権者会議及び協議会の再生計画検討委員会(以下「検討委員会」という。)で検討されることになりますが、第2回債権者会議に先立ち、検討委員会の委員は、再生計画全般の相当性と実行可能性を対象債権者に書面にて報告します。また、再生計画は、対象債権者全員の同意により成立します。
 このように本策定手順に基づく再生計画の成立は、債務者等による手続開始の申立て、債権者集会、再生計画の合意など民事再生法の規定による再生計画策定の一連の手続に準じて成立するものであることから、民事再生法の規定による再生計画認可の決定等に準ずる事実に該当するものと考えられます。

2 再生計画が所定の要件(法令24の21二括弧書)に該当すること

(1) 「債務処理を行うための手続についての準則」の要件(次の1から3までの要件のすべてを満たすもの)

1 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ柱書の要件
 本策定手順は、協議会の支援の下、再生計画の策定が適正かつ円滑に行われるよう、中小企業庁が作成し、平成17年6月21日に公表したものであり、協議会が関与する中小企業の私的整理のうち、債務免除を含む再生計画で、複数の金融機関等が主要債権者(対象債務者に対する債権額が上位のシェアを占める金融機関債権者)又は対象債権者(再生計画が成立した場合に権利を変更されることが予定されている債権者であって、主要債権者を含む。)として関わるものを前提にしています。
 また、当該再生計画案は債務者の自助努力が十分に反映されたものであり(本策定手順6.(1))、再生計画案における権利関係の調整は債権者間で平等であることを旨とし(本策定手順6.(6))、債務者及び対象債権者との間に利害関係を有しない協議会の検討委員会の委員が、公正かつ公平な立場で再生計画案の正確性、相当性などについて調査報告を行い(本策定手順7.(3))、対象債権者全員が再生計画案について同意した場合に成立する(本策定手順8.(4))こととされています。
 したがって、本策定手順に従って策定された再生計画は、一般に公表された債務処理を行うための手続で、公正かつ適正なものと認められるものに従って策定されていることとの要件を満たすと考えられます。
 また、本策定手順は、複数の金融機関等が関わることを前提とするものであり、特定の者が専ら利用するためのものではないとの要件を満たすと考えられます。

2 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ(1)の要件
 本策定手順6.(1)に債務者の有する資産及び負債の価額の評定(以下「資産評定」という。)は、公正な価額により行うと定めています。
  また、この「公正な価額」については、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等からの債務免除を伴う再生計画を策定する場合において、1本策定手順7.(3)1に別紙として「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」を定めているとともに、2この基準により作成される実態貸借対照表を含むその再生計画は複数の金融機関等が関わることを前提として対象債権者全員の同意により成立すること(本策定手順8.(4))及び3公正な価額による資産評定であることについて第三者である検討委員会の委員が確認を行うこと(本策定手順7.(4))を定めていることからすれば、「公正な価額」となるべきことを担保するための定めもあると解されることから、資産評定に関する事項が準則たる本策定手順に定められており、かつ、公正な価額による旨の定めがあること、という要件を満たすと考えられます

3 法人税法施行令第24条の2第1項第2号イ(2)の要件
 本策定手順7.(4)に、検討委員会の委員は、本策定手順に定められた手続に従って策定された再生計画であること並びに下記(2)及び(3)に記載する事項を確認することを定めており、当該計画が当該準則に従って策定されたものであること並びに下記(2)及び(3)に掲げる要件に該当することにつき確認をする手続に関する事項が定められていることとの要件を満たすものと考えられます。
 また、本策定手順7.(2)及び(3)に、公認会計士及び弁護士を含む3人以上の検討委員会の委員は、債務者及び対象債権者との間に利害関係を有しない者であって、対象債権者の承諾を得た上で協議会の会長により委嘱され、各人が独立して公正かつ公平な立場で調査・報告を行うこと及び当該委員による調査・報告及び確認に関する決議は、委員の全会一致により決することが定められています。
 この検討委員会の委員は、当該再生計画に係る債務処理について利害関係を有しないものであり、かつ、債務処理に関する専門的な知識経験を有する者と認められることから、当該確認をする者に関する事項が定められていることとの要件を満たすと考えられます。

(2) 法人税法施行令第24条の2第1項第2号ロの要件
 本策定手順7.(4)2及び3に、検討委員会の委員は、「実態貸借対照表作成に当たっての評価基準」に基づいて資産評定が行われていること、その資産評定に基づいて実態貸借対照表が作成されていること(ただし、資産評定は公正な価額により行う。) の確認をすることが定められています。したがって、その確認を受けた再生計画は、準則に定められた資産評定の規定に従って資産評定が行われ、それを基礎とした当該債務者の貸借対照表が作成されていることとの要件を満たすと考えられます。

(3) 法人税法施行令第24条の2第1項第2号ハの要件
 本策定手順7.(4)4に、検討委員会の委員は、資産評定に基づいた実態貸借対照表や再生計画における損益の見込み等に基づいて債務免除額が決定されていることの確認をすることが定められています。したがって、その確認を受けた再生計画は、上記(2)の貸借対照表における資産及び負債の価額、当該計画における損益の見込み等に基づいて債務者に対して債務の免除をする金額が定められていることとの要件を満たすと考えられます。

(参考)法人税法施行令第24条の2第1項第2号ニ又はホの要件
本照会は、2以上の金融機関等又は1以上の政府関係金融機関等が債務免除を行う再生計画を前提としていますので、法人税法施行令第24条の2第1項第2号ニ又はホの要件を満たすと考えられます。

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