別添1

1 収受金

 指定住宅紛争処理機関が品確法に基づいて同法にかかる業務を行うにあたり受ける収受金は、申請手数料・鑑定等負担金・助成金の3種類です(「住宅紛争処理機関の紛争処理の業務に関するキャッシュフロー」図参照)。しかして、これらの収受金には対価性・報酬性が全くありません。

(一) 申請手数料

(1) 法第69条により、住宅紛争処理の申請者が、申請時に「実費を超 えない範囲内」で納めることと定められているものです。指定住宅紛争処理機関たる弁護士会の意思により徴収するものではなく、法律の定めによるものです。
 その額は1万円ですが、この額も弁護士会が自主的に定めるものではなく、省令により定められるものです(省104条2)。そして、その支払方法は、住宅紛争処理支援センター(現在は、財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターがこれに指定されている。)が指定する口座に振り込むこととされており、弁護士会が直接受領するものではありません(省104条1)。

(2) このように申請手数料は、かかる手数料を申請者から受領することとするそのこと自体も、その額も、その納付方法も全て法令の定めるところに従うものであり、指定住宅紛争処理機関たる弁護士会の意思はどこにも入っておりません。法文上は「手数料」ですが、その額から言って実際にかかる手数料にも満たないことは明らかであり、品確法があえてこれを定めた理由は「濫訴の防止」にあります。
 因みに、この手数料は、民法第632条に定める「報酬」としての性格は些かもありませんから、弁護士会が紛争処理の申請を受けることが民法上の「請負」の要件を欠くことは明白です。

(二) 鑑定等負担金

 省令第105条により、「指定住宅紛争処理機関は、当事者の申立てに係る鑑定、証人の出頭その他の住宅紛争処理の手続に要する費用で、指定住宅紛争処理機関の長が相当と認めるものを、当事者に負担させることができる。」と定められているところのものです(等しく「負担金」と言っても、法第82条により支援センターが指定住宅性能評価機関から徴収する負担金とは異なります。)。
 これも、まさに実費そのものであり、対価性・報酬性は一切ありません。

(三) 助成金

 法第79条第1項第1号により、指定住宅紛争処理機関が「紛争処理の業務の実施に要する費用」として助成されるものです。

(1) 助成の対象は、人件費、事務所・会議室使用料、紛争処理委員謝金、鑑定・現地調査費、設備費等ですが、そのいずれも、現に「実質的に紛争処理の業務」のために必要とされるものに限定されていることは言うまでもありません(省110条1)。

(2) 手続的には、法定の様式による助成金使途計画書・助成金使途報 告書の提出が求められており(省111条12、113条1)、これらについては全て支援センターのチェックを受け承認を受けることとなっています(省111条3、112条2)。

2 経理

(一) 事業計画書・収支予算書、事業報告書・収支決算書の作成(法72条)、区分経理が命じられています(法73条)。

(二) そして、特に留意いただくべきは、指定住宅紛争処理機関は、各事業年度ごとに、上記申請手数料・鑑定等負担金・助成金を合計した額から当該年度の紛争処理の業務に要したことが明らかな費用を控除した残額については、これを支援センターに返還しなければならないと定められていることです(省113条2)。
 先にも述べましたが、指定住宅紛争処理機関の収支については、全て支援センターのチェックを受け承認を受けなければなりません。このため、指定住宅紛争処理機関は、各年度ごとに詳細な資料の提出をもとめられます。支援センターでは、常設の住宅紛争処理支援業務運営協議会において経理の適否をチェックします。
 指定住宅紛争処理機関は、法律上も事実上も一円たりとも収益・余剰金を得ない仕組みとなっているのです。