(別紙)

1 本件信託の概要
 A地区第一種市街地再開発事業においては、オフィス棟、及び住宅・商業棟を建築中ですが、地権者のうちオフィス棟の一部に係る共有持分を権利変換後の資産(従前資産に対応する権利床と優先分譲床からなります。)として取得する110名は、当該共有持分に係る権利(敷地の共有持分の所有権並びに施設建築物の共有持分を取得する権利)を信託財産として、当該地権者がその持分に応じて出資する株式会社Bに対し、当該地権者を委託者兼受益者として信託しております(別添1「概念図」及び別添2「信託契約の内容」参照)。
 これにより、当該事業により施設建築物が完成したときには、信託の受託者である株式会社Bが共有持分に係る権利を有する各地権者に代わって施設建築物を取得し、一体的に管理・運用(賃貸)することになります。
 なお、受託者である株式会社Bは、本件以外の信託を引き受けることはなく、また、信託報酬も受けないため、営業としてこの信託を引き受けるものではありません。すなわち、本件は、いわゆる民事信託方式を採用しているものですが、この信託の目的や民事信託方式を採用する理由は、下記「1 信託の目的及び民事信託方式を採用する理由」のとおりです。

2 照会事項
 ところで、信託に係る税務上の取扱いについては、所得税法第13条、法人税法第12条、消費税法第14条などの規定により、信託財産に帰せられる収入及び支出については、受益者が特定している場合は、その受益者がその信託財産を有するものとみなして所得税法等の規定を適用することとされています。
 さらに、信託業務を営む銀行(以下「信託銀行」といいます。)により商品化されている土地信託については、昭和61年7月9日付「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「土地信託通達」といいます。)により、一定の要件の下で、信託財産に帰せられる収入の所得区分、租税特別措置法の適用及び信託受益権の譲渡等に関する取扱いが明確にされていますが、その対象となる土地信託は下記「2 土地信託通達における『土地信託』の要件」のとおり5つの要件を満たすものに限られています。
本再開発事業において採用している民事信託方式による信託は、土地信託通達に定められた「受託者を信託銀行とする信託であること(下記2の5)」の要件を満たさないため、同通達にいう「土地信託」には該当しないこととなります。
 しかし、それ以外の1から4の要件を満たしているものであることなど、下記「3 土地信託通達に準じて取り扱われる理由」のとおり、「土地信託」と同様に信託財産である土地建物等を受益者である地権者が直接所有している実態にあるものと考えられることから、土地信託通達の取扱いに準じて取り扱われるものと考えてよろしいか、ご照会申し上げます。

1 信託の目的及び民事信託方式を採用する理由

 この信託は、多数の地権者の共有となる土地建物について、1多数の地権者の個別事情(相続、破産等)が生じた場合にも、安定した施設運営を行うこと、2地権者個々の共有財産を共同して信託することで所有権が一本化され、担保性の向上により資金調達を可能とすることを目的として、受託者名で当該信託財産の管理・運用(賃貸)を一体的に行うためのものです。
 しかし、このような信託は地権者数が多いため信託銀行を受託者とする営業信託にはなじまない等の理由により、受託者を地権者が出資する法人とし、営業信託によらない民事信託方式を採用することとしたものです。

2 土地信託通達における「土地信託」の要件

1 土地等又は土地等及びその上にある建物等を信託財産とし、その管理、運用又は処分を主たる目的とする信託であること。

2 委託者を受益者とする信託であること。

3 信託受益権が、次のいずれかの場合を除き、その信託期間を通じて分割されないものであること。

1 2以上の者が共同して信託を設定するため、信託設定時においてその委託者の数に相当する口数の範囲で分割が行なわれる場合

2 受益者について相続が開始したことにより相続人の数に相当する口数の範囲で分割が 行なわれる場合

4 信託受益権の内容が、収益受益権と元本受益権に区分されることのないこと。

5 受託者を信託銀行とする信託であること。

3 土地信託通達に準じて取り扱われる理由

(1) 本件信託は、受託者が信託銀行となる営業信託ではないため信託業法や普通銀行等の貯蓄銀行業務又は信託業務の兼営等に関する法律の適用はないものの、次のことから、商品化されている土地信託の場合と同様に、委託者(=受益者)のために、信託目的に従って適切に管理・運用されるものです。

1 受託者は、委託者(=受益者)である共有者全員の意思が反映されるよう、委託者がその共有持分に応じて出資している法人であり、特定の受益者の利益のために管理・運用されるものではないこと

2 信託期間満了時には、信託された不動産が、現状有姿のまま、受益者に交付されること

3 信託法第35条の規定により信託報酬を授受しないこととしているため、受託者に利益が留保されることがなく、これにより、信託財産に帰属する収益は、各地権者が信託財産について有していた共有持分に応じて受益者となった各地権者に分配されること

(2) 土地信託通達にいう「土地信託」の要件のうち「受託者が信託銀行であること」の要件を除き、他の要件(上記2の1から4の要件)は満たすものです。