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平成20年度査察(マルサ)の概要

平成21年6月
国税庁

脱税はいわば社会公共の敵というべきものであり、大口・悪質な脱税者の刑事責任を追及することなどを目的として、厳正な査察調査を実施しています。
 平成20年度(平成20年4月〜平成21年3月)においては、従来からの所得税・法人税事案に加え、社会・経済状況の変化を踏まえつつ、国際取引事案、無申告事案をはじめとする社会的に意義のある波及効果の高い事案の摘発に取り組んできました。
 今般、平成20年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

【主要ポイント】

  • ○ 平成20年度に査察に着手した件数は211件です。
  • ○ 平成20年度以前に着手した査察事案について、平成20年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は208件、そのうち検察庁に告発した件数は153件であり、その結果、告発率は73.6%となっています。
年度
項目
平成
16
17 18 19 20
着手件数
210

217

231

220

211
処理件数(A) 213 214 221 218 208
告発件数(B) 152 150 166 158 153
告発率(B/A)
71.4

70.1

75.1

72.5

73.6
着手・処理・告発件数、告発率の状況グラフ

2 脱税額の状況

【主要ポイント】

  • ○ 平成20年度に処理した事件に係る脱税額は、総額で351億円、そのうち告発分は249億円です。
  • ○ 告発した事件1件当たりの脱税額は、平均で1億6,300万円となっています。
年度
項目
平成
16
17 18 19 20
脱税額 総額 百万円
28,224
百万円
27,416
百万円
30,398
百万円
35,340
百万円
35,070
同上1件当たり 133 128 138 162 169
告発分 24,680 22,960 27,755 30,888 24,942
同上1件当たり 162 153 167 195 163

(注)脱税額には、加算税額を含む。

脱税額、1件当たりの脱税額のグラフ

(参考1)大口事案の推移

年度
項目
平成
16

17

18

19

20
告発件数
152

150

166

158

153
うち脱税額が3億円以上 17 16 17 20 14
うち脱税額が5億円以上 6 5 8 7 7

(注)脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事件の推移

【主要ポイント】

  • ○ 平成20年度の税目別の告発事件数及び脱税額は、近年に見られた鉱物・金属資源の価格高騰や都市部の不動産取引の活発化等を背景として、平成19年度まで減少傾向にあった法人税事件が大幅に増加しました。一方、消費税事件については、不正還付の未然防止に取り組んでいることもあり、平成19年度に比べ減少しましたが、依然として悪質な事案がみられます。

(参考2)税目別の件数

年度

区分
平成16 17 18 19 20
件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
43

28

47

31

59

35

57

36

40

26
法人税 98 65 86 57 78 47 62 39 97 63
相続税 5 3 4 3 5 3 4 3 4 3
消費税 6 4 10 7 23 14 30 19 12 8
源泉所得税 3 2 1 1 5 3
合計 152 100 150 100 166 100 158 100 153 100
税目別の件数のグラフ

(参考3)税目別の脱税額

年度

区分
平成16 17 18 19 20
脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円
5,456

22
百万円
6,156

27
百万円
10,842

39
百万円
9,353

30
百万円
3,983

16
法人税 15,490 63 10,196 44 11,849 43 8,054 26 18,628 75
相続税 2,735 11 5,004 22 2,849 10 8,217 27 1,054 4
消費税 999 4 1,120 5 2,088 7 4,369 14 1,277 5
源泉所得税 484 2 127 1 895 3
合計 24,680 100 22,960 100 27,755 100 30,888 100 24,942 100

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

税目別の脱税額のグラフ

4 国際取引事案等への取組状況

【主要ポイント】

  • ○ 近年、国際取引事案、無申告事案、金融・証券関連事案など、最近の社会・経済状況を反映した事案について適切に処理を進めています。

(参考4)国際取引事案

年度 平成18 19 20
告発件数 19 34 24
〔事例1〕
 A社は、海外の仕入先と通謀の上、仕入代金を水増しして送金し、水増し分の金額については、代表者が海外へ行った際に現金で回収していました。
〔事例2〕
 B社は、海外の自社工場において製造過程で発生した鉄くず等の副産物の売上代金を除外するとともに、その代金を海外の金融機関の預金口座で管理するほか、海外の不動産の取得費用などに充てていました。

(参考5)無申告事案

年度 平成18 19 20
告発件数 18 13 18

(注) 告発対象期(年分)のすべてが無申告の事案について1件としてカウントしている。

〔事例1〕
 Cは、インターネットにより、パチンコ攻略法の情報提供を行い多額の利益を得ていましたが、事業実態のない会社名義を利用して、その会社の所得であるように装い、自らが得ていた所得を一切申告していませんでした。
〔事例2〕
 Dは、国内に居住しているにもかかわらず、海外に移住したかのように装い、国内での株式取引により得た所得を一切申告していませんでした。
〔事例3〕
 E社は、都市部の地価上昇を契機として、土地・建物の売買を行っていましたが、売買取引に事業実態のない法人の名義を利用して、第三者が行った取引であるように装い、所得を申告していませんでした。

(参考6)金融・証券関連事案

年度 平成18 19 20
告発件数 13 29 15
〔事例1〕
 Fは、株式取引により多額の利益を得ていたにもかかわらず、自らが経営する小売店の所得のみを申告し、株式取引については、一切申告していませんでした。
〔事例2〕
 Gは、勤務していた会社の親会社から付与されたストックオプションの権利を行使し株式を取得したことにより、多額の利益(給与所得)を得ていたにもかかわらず、利益の一部しか申告をしていませんでした。

5 告発の多かった業種・取引と脱税の手段・方法等

【主要ポイント】

  • ○ 平成20年度においては、鉱物・金属材料卸、不動産業、人材派遣業、商品・株式取引が上位を占めています。鉱物・金属材料卸では、鉄くず関連の所得税・法人税事案が大宗を占めるとともに、商品・株式取引では、平成19年度に多かったFX取引が減少しました。

(参考7)告発の多かった業種・取引(5者以上)

平成18 19 20
業種 者数 業種 者数 業種 者数
人材派遣業 13 商品・株式取引 21 鉱物・金属材料卸 14
キャバレー・飲食店 12 鉱物・金属材料卸 15 不動産業 14
建設業 12 人材派遣業 14 人材派遣業 11
商品・株式取引 9 不動産業 10 商品・株式取引 11
鉱物・金属材料卸 8 機械器具製造 7 パチンコ 8
パチンコ 6 運送 7 建設業 6
建設業 5 電気機械器具製造 6
キャバレー・飲食店 5 コンサルタント 5

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(参考8)脱税の手段・方法等

 告発の多かった業種・取引で見られた脱税の手口としては、鉱物・金属材料卸では売上除外、不動産業では無申告、人材派遣業では従業員から徴した寮費等の雑収入除外により所得税や法人税を免れたものが多く見られ、さらに、人材派遣業では本来課税仕入に該当しない人件費を課税仕入となる外注費に科目仮装する消費税の脱税も多く見られました。
 このほか、昨年に引き続き、架空原価や架空経費の計上及び実際の収支に基づかないいい加減な所得金額での申告による脱税が見られました。

6 不正資金の留保状況及び隠匿場所

【主要ポイント】

  • ○ 脱税によって得た利益の多くは、国内で、現金、預貯金又は有価証券として所有・管理されていましたが、近年、海外の預金や有価証券等による留保が増加傾向にあります。
  • ○ 脱税により取得した簿外資産の特異な隠匿場所としては、畑の土中や居宅エレベータの床下にある機械装置内などがありました。
  1. (1) 脱税によって得た利益の多くは、現金、預貯金又は有価証券として所有・管理されていたほか、高級外車、金地金、不動産、ブランド品の購入に充てられているものも見受けられました。また、海外の預金や有価証券等で留保されているケースも見受けられました。
  2. (2) 脱税により取得した簿外資産等の隠匿場所は様々でしたが、
    • ○ 所有する畑の土中(現金)
    • ○ 居宅のロッカー内(金地金)及び親族居宅の金庫内(現金、金地金)
    • ○ 居宅エレベータの床下にある機械装置内(現金)
    • ○ 居宅の米櫃及びポット内、風呂場の天井裏(現金)

    に隠していたケースなどがありました。

7 査察事件の一審判決の状況

【主要ポイント】

  • ○ 平成20年度中に一審判決が言い渡された件数は154件であり、すべてについて有罪判決が出され、実刑判決が9人に出されました。

項目


年度

[1]
判決
件数
[2]
有罪
件数


有罪率
([2]/[1])


実刑判決
人数
[3]
1件当たり
犯則税額
[4]
1人当たり
懲役月数
[5]
1人 (社)当
たり罰金額
平成
18

160

160

100.0

14
百万円
107

16.4
百万円
27
19 189 189 100.0 22 127 16.1 31
20 154 154 100.0 9 79 16.1 22

(注) 実刑判決人数及び[3]〜[5]は、他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。