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平成19年10月
国税庁

平成18年度原告訴訟の状況

発生 163件(前年度186件)

終結 158件(前年度194件)…勝訴率96.2%

年度末係属 60件(前年度55件)

1. 原告訴訟の重要性

 滞納残高は、8年連続で減少してきているが、なお、高水準にある。国税庁は、引き続き滞納者の個々の実情に即した厳正・的確な滞納整理を実施しており、長期滞納事案や財産を隠蔽するなどの悪質滞納事案などについては、法律知識や訴訟的手法(詐害行為取消訴訟、不動産等の名義変更訴訟)を活用した滞納整理を積極的に実施するなど、厳正に対処することとしている。また、差し押さえた債権の回収を図るため、債権取立のための民事訴訟を積極的に提起している。
 このように原告訴訟を、滞納整理の重要な手法として積極的に活用している。

2. 原告訴訟提起状況

 原告訴訟事件の発生状況は、平成13年度までは年間100件前後で推移していたが、滞納整理の重要な手法として積極的に活用することとしているため、平成14年度以降増加傾向となり、近年、200件前後で推移している。また、平成18年度に終結した原告訴訟事件158件のうち152件(約96%)について勝訴判決を受け、給付を受けた金銭を租税債権に充てている。

3. 原告訴訟事件の類型について

 差押債権取立訴訟を中心として、名義変更訴訟及び詐害行為取消訴訟等を提起している。

4. 徴収関係訴訟事件の状況について

徴収関係(原告)訴訟事件の類型別発生件数のグラフ
徴収関係訴訟事件の発生件数の推移のグラフ
訴訟提起依頼件数等の状況のグラフ
原告事件勝訴率の推移のグラフ

5. 原告訴訟事例

事例1 金融業者が、譲渡禁止特約の付された建設工事請負代金債権を調査もせず漫然と譲り受けた場合には、譲渡によって当該債権を取得しえないとされた供託金還付請求権取立権確認請求訴訟(東京地裁平成18年11月13日判決(確定))

税務署長は、平成16年11月、建設業を営む滞納会社の法人税及び消費税等合計337万円余りの徴収のため、滞納会社がA市に対して有する舗装工事代金261万円を差し押さえた。その工事代金は金融業者2社に譲渡されていた。A市は、譲渡禁止特約があることから、真の債権者を確知できないとして、平成16年12月、違約金等と相殺後の計195万円余りを供託した。税務署長は供託金還付請求権を差し押さえた上、本件供託金の取立権確認請求訴訟を提起した。裁判所は、譲受人は、東京都及び近畿財務局に貸金業登録のある金融業者であるにもかかわらず、本件工事請負代金債権に譲渡禁止特約が付されていることを確認せずに漫然と譲り受けたもので、譲受債権に譲渡禁止特約が付されていることについて悪意又は重過失があるとして、国の請求を認めた。税務署長は、勝訴判決により供託金195万円余を取り立て、滞納税額に充てた。
参考条文 国税徴収法第62条(債権差押えの手続及び効力発生時期)、同法第67条(差し押さえた債権の取立て)、民法第466条(債権の譲渡性)

事例2 滞納税額を超える債権全額の差押えの有効性が争われた差押債権取立請求訴訟(名古屋地裁平成18年12月4日判決(確定))

食品加工業を営む滞納会社は、関連会社に対して事業資金を貸し付け、平成15年5月当時、貸付金残高は元本5400万円余り、未収利息は2000万円余りに上っていた。税務署長は、平成15年5月、消費税及び源泉所得税合計744万円余りを徴収するため貸付金を差し押さえ、その後2回にわたり、後に発生した消費税又は源泉所得税合計500万円余りを徴収するため、その貸付金を差し押さえ、交付要求をした。その貸付金を金融機関に譲渡したとして、滞納会社から関連会社に対して差押前に配達証明郵便で債権譲渡通知書が送付されていたが、その通知には確定日付はなかった。税務署長は関連会社に支払を求めたが、一部弁済したのみでその後の支払に応じなかったことから取立訴訟を提起した。
 関連会社等は、1配達証明郵便で送付した場合も確定日付のある通知であると類推適用すべきである、2滞納国税を超える差押え及び取立ては、権利の濫用にあたり差押え自体を否定すべきであると主張していたが、裁判所は、配達証明郵便は確定日付ある通知とはいえないこと、国税徴収法は債権全額の差押えを原則としていることから、滞納国税を超える債権の差押えは権利の濫用に当たらず、また、差押えに係る取立権の効力により取り立てるのであるから当然全額を取り立てることができるとして、国の請求を認容した。
参考条文 国税徴収法第63条(差し押さえる債権の範囲)、民法第467条(指名の債権譲渡の対抗要件)、民法施行法第5条(確定日付のある証書)

事例3 グレーゾーン金利に係る不当利得返還請求権を差し押さえ、取立訴訟を提起する事例

滞納者は建築業を営んでいたが営業不振であった。運転資金を調達するため金融業者から数十回にわたり借入れと返済を繰り返していたが、事業を廃止せざるを得なくなった。滞納者は、銀行及び当該金融業者からの借入金を返済するため所有する不動産をすべて売却し、その代金を返済に充てた。現在では借家に居住し、病気のため働けない状況である。
 徴収職員は、所得税等を徴収するため、滞納者及び当該金融業者を調査したところ、利息制限法所定の上限利息は15%から20%であるにもかかわらず、2倍以上の利率で貸し付けられ、利息は天引きされていたことが判明したため、利息の引き直し計算をしたところ、滞納国税の額を超える過払いがあることが判明した。税務署長は、過払い金の返還請求権の差押えの可否について慎重に検討した結果、その不当利得返還請求権を差し押さえ、さらに法務局との協議の上、取立訴訟を提起することとした。
参考条文 国税徴収法第67条(差し押さえた債権の取立て)、利息制限法

事例4 唯一の財産を売却し、その代金を一般債権者である親会社に弁済した行為について、売却によって生じた消費税を被保全債権とする場合の詐害性の有無が争われた詐害行為取消訴訟(福岡高裁平成18年9月14日判決(確定))

土地建物の賃貸業等を目的として設立された滞納会社は、平成14年6月、唯一の事業用資産である土地建物につき、信託銀行との間で、不動産信託契約を締結した上、同月、第三者に代金41億円で信託受益権を譲渡し、自己の口座に36億6千万円余りの入金を受けた。そして、同日、当該土地建物の担保権者に対して担保権付債務の弁済及び諸費用として27億円余りを支払い、残る9億6千万円を滞納会社のすべての株式を保有する親会社Aに対する債務の支払に充てた。一方、滞納会社は、本件信託受益権の譲渡により消費税等の本税1億3773万円余りの納税義務を負うこととなったものの、本件信託受益権の譲渡後に休業状態となり、本税ほか延滞税は滞納となった。なお、親会社Aの代表者は滞納会社の代表者でもあった。
 国は、滞納会社が親会社Aに対してした9億6千万円の債務の弁済を詐害行為として取消しを求めたところ、裁判所は、一般債権である親会社Aに対する債務を完済することにより国税債権の回収が全く不可能になってしまったのであるから、親会社Aへの弁済が詐害性を有することは明らかであるとして、国の請求を認めた。
参考条文 国税通則法第42条(債権者代位権及び詐害行為取消権)、民法第424条(詐害行為取消権)

6. 訴訟類型説明集

供託金還付請求権取立権確認訴訟(事例1に関して)
 滞納者が債権譲渡禁止特約が付されている債権を第三者に譲渡した場合において、第三債務者が真の債権者が不明であるとして供託する事例が多く発生している。当該第三者が譲渡禁止特約があることを知って譲り受けた場合には当該債権譲渡は無効となる。
 税務署長が国税を徴収するため債権を差し押さえ、債権譲渡と競合したために第三債務者が供託した場合には、国(税務署長)は、滞納者が有する供託金還付請求権を差し押さえ、供託金還付請求権取立権確認訴訟を提起している。この種の訴訟では、債権譲渡禁止特約があることを譲受人(ほとんどの事例で譲受人は金融業者である。)が知っていたか否かが争点となっている。
 期首係属7件+新規発生33件→終結件数26件(全勝25件、取下1件)

差押債権取立訴訟(事例2及び3に関して)
 滞納者が有する売掛金、貸付金、不当利得返還請求権、ゴルフ会員権等を税務署長が国税を徴収するために差し押さえ、弁済期が到来しているにもかかわらず第三債務者が税務署長に対して弁済をしない場合に、当該債権の取立てをすべく民事訴訟(支払督促を含む。)を提起するものである。
 この種の訴訟は、事案により、債権発生、出来高、弁済・相殺による消滅、第三者に帰属している、同時履行の抗弁、取立てできる金額は滞納国税の額に限定されるかなど、いろいろな争点がある。なお、国税徴収法の規定により、債権については全額差押え、全額取立てが原則であり、滞納国税を超えて取り立てた部分については、他に配当すべき債権者がないときは滞納者に交付することとなる。
 期首係属19件+新規発生32件→終結37件(全勝22件、一部敗訴1件、全敗4件、取下4件、その他6件)

詐害行為取消訴訟(事例4に関して)
 滞納者の一般財産の保全を図るため、債権者たる国が、滞納者と第三者との間における債権者(国)を害する法律行為(詐害行為)の効力を否定して、滞納者から離脱した財産をその第三者から取り戻して滞納者に復帰させるために行う民事訴訟である。
 期首係属4件+新規発生3件→終結7件(全勝5件、一部敗訴1件、取下1件)