ここから本文です。

ホーム活動報告・発表・統計審議会・研究会等>第4回 国税審査分科会 議事録(2)

第4回 国税審査分科会 議事録(2)

 それからもう一件続けて事例の紹介をさせていただきます。事例の2、居住用財産の買換えの場合の課税の特例ということでございまして、これも資料1の参考資料を併せてご覧いただければと存じます。これは事例としては比較的よくある事実認定に関する事案でございまして、審判所の仕事はもう9割以上事実認定の争いという点に尽きるわけでございますが、本件につきましては請求人からもよくお話をお聞きし、事実関係をまた調べ直し、かつ審判所としても独自に職権調査を行って総合的に判断したものでございます。
 まず最初に参考資料をご覧いただきますと、居住用財産の買換えの場合の課税の特例についてですが、居住用財産の買換えの場合の課税の特例とは、所有期間及び居住期間がともに10年を超える居住用の家屋又はその敷地を売却し、その年の翌年の12月31日までに居住用の家屋を購入して居住するなどの一定の条件を満たしている場合に、譲渡所得の課税を繰り延べるというものです。(1)のところですけれども、仮に2億円で自宅を売却し、3億円の居宅を購入した場合には売却価額が購入価額以下であるので、譲渡はなかったとされまして、譲渡所得の課税が発生いたしません。逆に2億円で自宅を売却し、1億円の居宅を購入した場合には、その差額1億円について、それから必要経費はもちろん差し引くことになるわけですけれども、課税されるということになるわけでございます。
 このような制度で、まさに居住しているかどうかというところが争いになったわけでございます。家屋の取得等の状況というところにありますように、この請求人の方はP市の家屋というところで生まれ育って、30歳で結婚されるまではここにおられて、それから結婚されて転居され、Q市の借家に住まわれたようです。それで、相続によってこのP市の家屋及び敷地を平成元年の9月に取得されて、平成9年10月に住民票をP市へ異動され、そしてP市の建物を取り壊して更地にし、平成11年2月に土地を売却して、翌12年4月に、この方の場合1億数千万円ですけれども、1億数千万同額の家屋敷地を取得されて、その結果譲渡所得は発生しないという申告書を提出されました。
 事例の2の文章を見ていただきますと、概要としては今申し上げましたように、このP市の土地が居住用財産に該当するか否かということを争点とする事案でございまして、請求人の主張としては請求人が以前から長男ともども居住の用に供していた家屋の敷地であるので、特例の適用があると。他方原処分庁である税務署側の主張としては、請求人の生活の本拠は、1子供らが56年から平成9年までQ市の借家から通学している、2Q市の借家の電気及び水道は相当な使用があるが、P市の家屋の電気及び水道はほとんど使用されていない、3通勤届がQ市の借家からなされていることなどから、Q市の借家にあるので、P市の土地については居住用財産に当たらないとして処分をしたものでございます。
 審判所の判断ですけれども、「この居住の用に供している家屋とは」と書いてございますが、これは判例、先例がございまして、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の本拠としていた家屋をいい、これに当たるか否かは家屋の入居目的、居住期間及び配偶者等の日常の生活状況、家屋の構造等の諸事情を総合的に判断するべきであるとされています。実際に水道、電気の使用をP市で始めたのは平成7年とか9年ごろからですけれども、その後の状況を月平均で比較しますと、水道の使用状況では、P市においてはゼロであるのに対して、Q市では55m3ぐらい使っている。それから電気の使用料もP市においては7KWであるのに対して、Q市で500KWである。
 住民票はここに書いてあるようなことでございます。通勤届がQ市から出ているということで、それに加えて審判所といたしましても、近隣の方からお話をお伺いいたしまして、そのお話の内容でございますが、請求人の方はここで生まれて結婚するまでは住んでいたけれども、結婚してから後は住んでいなかった。ごくまれに電気がついて、来られていたことはあるかもしれないけれども、実際居住しているという様子はなかったというお話もちょうだいし、それらを含めて総合的に判断いたしまして、P市の家屋については生活の本拠として居住の用に供していたとは認められないと判断したものでございます。
 これは事実認定の争いに関するものでございまして、こういう事案が量としてはかなり多いわけでございます。これらの事案につきましては迅速な処理を行ってまいりたいと考えております。
 長くなりましたけれども、説明を終わりたいと思います。

分科会長
 どうもありがとうございました。それではただいま御説明いただきました事例の1と2につきまして、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。どうぞ。

井堀委員
 最初の事例はその後、どうなったんですか。それで納得されたんですか。

審判所次長
 先ほど御報告しました件につきましては、訴訟にはならずに確定はしておりますけれども、同様の案件がほかにございまして、訴訟になっているものがございます。それはまだ訴訟中だと聞いております。

分科会長
 ほかにございますでしょうか。
 最初の事例で、最後に船を売却するわけですが、そのときには利益が出るわけですね。

審判所次長
 商品を販売するときの条件で計算しますと、請求人から見ますと3,500万円の借金があるわけなんですけれども、それは利息をつけて全部返済を終わって、最後に残るのは全部トータルいたしますと、1,500万円投資しまして、1,550万円ぐらいだったと思いますので、売却した後50万円ぐらい利益にはなります。ただこれは売却価格が一応当初前提の必要最低限の保証価格に基づいて計算したものです。もっと高く売れることになることもあるかとは思いますけれども。そのときの条件に従えば利益が出るという計算にはなっています。

次長
 長期譲渡になることが節税策になっているんです。譲渡所得の所有期間5年超の場合は2分の1課税になるんです。
 本件では、それが節税効果になります。だからトータルで節税スキームになっているんです。

分科会長
 そうですよね。節税にならないとこのようなことは行わないですね。

次長
 行わないですね。節税するためです。給与所得からどれだけ税金を安くしていくか、本来なら給与所得があって源泉されるだけなんですけれども、それを幾ら減らしていくかということです。最後に長期譲渡で所得が出てくるんですけれども、2分の1課税ですから、税負担が少なくなります。

分科会長
 なるほど。だからそこでつじつまが合うということですね。

審判所次長
 今村上次長から話があったような形で、最後売却の段階で長期譲渡所得ということになりますので、そこでまた節税効果が生まれます。

分科会長
 ではよろしいでしょうか。
 それでは、次の「税務行政の動向」に入らせていただきたいと思います。この御説明については、三つ全部していただき、その後に御質問を受け付けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

審判所次長
 それでは最近の国税不服審判所の運営について、御説明申し上げます。資料は2をお開きいただきたいと思います。
 審判所の事務運営に関しましては、この2〜3年で、効率化、より迅速な処理ということで大きく変えてきておりまして、その背景といたしましては、先ほど御説明申し上げましたような審査請求の内容が複雑困難な事案が徐々に増えてきており、結果的に処理が長期化してしまいがちであったということが1点ございました。それから司法制度改革におきまして、裁判迅速化法が平成15年から施行されておりますけれども、2年以内に一審判決を言い渡すということになったことがあります。簡易迅速な審判所裁決といいながら、1年を超えるものが随分あったわけでございまして、この2年ぐらいいろいろな形で事務処理の見直しを行ってきております。裁決の適正さは何よりも第一でございますが、裁決の適正さを維持した上での迅速化を図ってまいった次第でございます。
 この資料は、一昨年のこの分科会で、御説明申し上げた資料ではありますけれども、再度御説明申し上げたいと思います。スローガンというものを平成15年から掲げまして、適正な裁決と迅速な審理を実現するため、堅実な審判所事務運営に機動性と効率性を加えようということで、従来の裁決を見ておりましても、請求人の方の主張をきちんと取り上げて、ほとんどの主張に漏れなくコメントをし、裁決書をつくっていました。内容的には自信はあったわけですけれども、何分にも少し時間がかかり過ぎていました。機動性とは受身、待ちの調査・審理ではなく、積極的、能動的な調査・審理を実現しよう、それから効率性とは内部事務の簡素合理化とメリハリのついた事務処理を実現しようということでありそれをスローガンとして掲げ、さらに具体的な目標としてそこに書いてあります二つの目標を掲げました。
 1点目は原則1年以内処理態勢の確立を図るということで、原則1年以内に処理するということを表記しております。ただしあくまでも審判所は納税者の正当な権利利益の救済機関でありますので、納税者の方から理にかなった主張が続く限り、途中で主張を打ち切ったりすることがあってはならないということは肝に銘じるようにしておりまして、それを踏まえて原則1年以内に処理するということを掲げております。
 それから幹のしっかりとした骨太な裁決を目指すということで、従来どちらかといいますと専門用語が多い裁決書がかなりあったものでございますから、簡潔明瞭論理明快な裁決を目指してまいりました。それでその次のページをお開きいただきますと、適正かつ迅速な裁決のための具体的施策としてここに書いてある五つのことをやっております。一番重要なのが一番上に書いてあります早期・的確な争点の整理を行うことで、これが終わればもう半分以上済んだと言えるわけですが、そこに至るまでが従来文書のやり取りを待った上で争点整理に入っていたものですから、時間がかかってしまったわけでございます。4ページまでめくっていただきますと、実際争点整理に当たってどんなものをつくっているかということですが、4、5、6ページですね、これは争点整理表というものでございまして、この事案は相続税の重加算税を課することができるかどうか争われた事案でございますが、どういうものかといいますと、1、争われている原処分としていついつの重加算税、各賦課決定処分、2に争いのない事実、これは請求人の方と原処分庁である税務署側と争いがない事実のことで、2(1)に亡くなった方の子供が5人いるということ、そのうちの一番下の弟さんのFという方が、お父さんから言われたようなんですが、実はお父さん名義の預金を御自身の名義あるいはキャッシュ化したということ、5ページの真ん中に(11)番とありますけれども、本件各決定処分において重加算税の対象とされた申告漏れの相続財産が書いてあります。3番目に争点として先ほどの弟さんFが行った本件相続財産の隠匿行為を、請求人らが行った行為と同一視し、請求人らに重加算税を賦課決定することができるかどうかというのが争われておりまして、その次のページをご覧いただきますと、それぞれに関する請求人の方、原処分庁からの主張がございまして、6ページの1番は原処分庁側は事実上の委任があった、請求人の方はFに委任したと解するのは相当ではない。それから2番目に請求人らから委任を受けたFが行った本件相続財産隠匿行為は、請求人らが行った行為と同視することができるかどうかということで、原処分庁は同視できる、それから請求人の方はご存じなかったようなんですけれども、本件相続財産の存在を了知していないのであるから、仮装したことには当たらず重加算税の賦課決定そのものは取り消すべきであるという形になっております。この争点整理表は、最終の形で裁決書に添付したものでございまして、固有名詞のところは伏せてありますけれども、こういうものを割合早い段階からすべての事案ではありませんけれども、請求人の方と原処分庁にお渡しをして、特に一番問題意識を持っているのが請求人の方ですので、必要があればここは意図が違うとかという意見を言っていただく、あるいは赤で訂正していただくとか、そういうような形でこの争点整理表というものを作業の道具としてかなり活用してきております。
 これがその争点整理表というものでございまして、特に弁護士さんが関与するような事案で争点が多岐にわたるような事案等で、争点を絞り込むのには非常に有効でございます。請求人本人が直接対応なさっている場合にも、法律的に整理するとこういう形になりますよということで御説明申し上げますので、大変御好評いただいている次第です。
 2ページまで戻っていただきます。今申し上げましたのが争点整理表の活用ということ、その次に早期積極的な面談ということで、これは従来比較的書類のやり取りが終わった後、争点整理を行ってさらに後に面談を行うというような形で事務処理をしていた面があるわけですが、なるべく早い段階から、一番問題意識を持っておられる特に請求人の方にはお会いし、それも繰り返し積極的にお会いしてお話をお聞きするというように、この2年ぐらい大きく事務運営を変えております。これも基本的には早期・的確な争点整理につながっていると考えられます。
 それからあと2番以下は説明を省略いたしますが、2番目の適時適切な職権調査の実施ということで、この職権調査も従来どちらかといいますと、あまり行ってこなかった面があるわけですが、特に争点に絡んだことで両方の方から主張があり証拠が出てくるわけですけれども、それを見ているだけでは分からないような場合には、調べることができるものについては自ら調べにいこうということで、これもかなり積極的に最近は実施するようになってきております。
 一昨年こういうことを御報告して、実際にやってきた結果がここに出ているかとは思うんですが、3ページに書いてありますのは、国税庁における実績評価の目標ということでございます。ここに書いてありますように審査請求に関しては業績目標の1−2−4で不服申立てに対して適正・迅速に対応しますということと、「審査請求」に書いてありますように、争点を主な審理事項とし、必要があれば自ら調査を行って、公平な第三者的立場で審理した上で、適正かつ迅速な処理を行うということを目標にしております。その次に平成16年度の業績指標の目標値が掲げてございますが、1年以内処理件数割合80%程度ということを、昨年の6月に決めて公表いたしております。
 ほんの4〜5年前までは、さっき申し上げましたように、1年以内処理件数割合も5割を切るような状況だったわけですが、下の参考資料の計表を見ていただきますと、年間の発生件数は3,000件前後で推移しておりまして、処理についても同じく3,000件から少しずつ増えてきていたというのが実情ですが、1年以内処理の件数はこの上の割合の基になっており、その割合は、48.9、54.6、56.9、65.5%となってきています。
 特に2年ぐらい前から先ほどの迅速な処理ということを進めてまいりました結果、未済事案のところを見ていただきますと、未済事案も全体的な件数が減ってきており、かつ御注目いただきたいのは、1年を超えた未済事案が従来は1,000件以上あったわけですけれども、14会計年度末、15年の3月末ですが、920件、30.6%、それから15会計年度末、16年の3月末ですが、15.3%ということで、かなり減ってきています。そのようなことも踏まえて16年度の目標値を80%程度に設定いたしました。
 17年3月が終わってまだ数字は集計中でございます。おおむね3,000件を超える処理ができましたが、1年以内処理についてはこの80%程度は何とかクリアして、82ぐらいになるんじゃないかなと見ております。ただ残念なところは、未済事件の1年超のものが、15会計年度末の419件よりは結果的に増えそうなので、さらにそこのところは課題になっています。いずれにしましても適正かつ迅速な裁決のためにこの課題を残しつつも、この16年度の目標値については今のところ達成できたかなというのが現状でございますので、御報告申し上げます。
 私のほうから以上でございます。

←前ページへ戻る

次ページへつづく→