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【第14回 酒類販売業等に関する懇談会】 議事録(2)

奥村座長
 それでは、御案内させていただきます。独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター院長の丸山勝也先生でございます。「アルコール関連問題の現状と課題」というテーマでお話を賜りますが、皆様方のお手元にも今、40ページ前後の貴重な資料を頂いております。資料のページ数から判断いたしまして、先生には45分ぐらいお話を頂きまして、その後私どもから15分程度お尋ねさせていただくということで進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

丸山院長
 初めまして。3月までは国立療養所久里浜病院という名称でございましたけれども、4月から独立行政法人に変わりまして、このような名称に変わっております。院長の丸山でございます。
 今日は「アルコール関連問題の現状と課題」ということでお話しさせていただきます。テーマは以下の4つに絞られておりましたので、それに沿って御説明させていただきたいと思います。
 最初は未成年の飲酒についてですが、先ほど御質問がございました、なぜ未成年がお酒を飲んではいけないかということでございますけれども、その医学的根拠が示されています。
 まず、法律の問題をお示ししますと、御覧のとおり、いろんな国によってお酒を飲んで良いという年齢というのがそれぞれ違っております。ここで見ていただくと、日本の場合は20歳ですね。それよりも遅いというのが右側のアメリカと韓国ということでございまして、それ以外の国では、比較的若いときにもう飲酒が許可されるというようなところでございます。
 これは、日本における中学生・高校生の飲酒頻度について、調査結果を示しております。中・高生は本来は飲んではいけないのですが、飲んだことがあるという割合が、中学生で約60%、高校生で約70%。そして特に問題なのは、週に1回以上という頻度で飲むような人が、中学生で5.2%、そして高校生ではその倍の10%という、かなりの高率を示しているということであります。
 そして、ただ今のは飲酒頻度の結果でございますけれども、次にクオンティティー・フリークエンシー(QF)スケールという頻度だけではなく、飲酒量をも含んだ尺度、つまり、2杯、あるいは3杯から5杯、6杯以上という杯数と頻度を掛けた尺度で見た結果でございます。そしてこの赤で示すところが、いわゆる問題飲酒というところになるわけですけども、これはQFスケールで言いますと4から6点という範疇に入ります。このグループがどのくらいいるのかというのを調べますと、中学生では2.9%、先ほどの飲酒頻度でみたときよりも落ちました。ところが逆に、高校生の場合は先ほどの頻度よりも、頻度に量を掛けた問題飲酒の方が14%ということで、さらに問題飲酒群のパーセンテージが増えるということでございます。
 成人の飲酒が認められているのになぜ未成年がいけないのかということに関して、法律のほかに何か根拠があるかということですが、その根拠は、アルコールの分解の違い、あるいはアルコールの体に対する影響、それから、アルコール依存という依存の作られやすさ、この辺のところに未成年と成人の違いがあるのだということを御説明いたします。
 さらに具体的に示すと、未成年と成人の違いがアルコール分解速度、あるいは体に対するアルコールの害、及び飲酒の開始年齢によるアルコール依存の進行あるいは死亡率の違いがあるということでございます。そしてさらに、ほかの薬物依存、いわゆるドラッグといった危険性があるというところをお示しいたします。
 最初に、もし大人より未成年の方がアルコールの分解が遅いと仮定すれば、心配な問題としては急性アルコール中毒、いわゆる意識がなくなり倒れて救急車で運ばれるという危険性がございます。それから、田嶼先生のお話にあった臓器障害の危険ですね。ここでは肝臓の病気として肝硬変を示しています。そしてさらに、アルコール依存症への進行といったものが問題になります。
 次にアルコールの代謝を実験的に示したデータを示します。これは未成年に当たるラット、つまり、生後1日から60日までのそれぞれのラットにかなりの量のアルコール、人に換算いたしますと7合ぐらいの量を飲ませ、その代謝の速度を比較したのがこの表でございます。御覧のとおり、生まれたばかりのときは非常にアルコールが消えていくのが遅い。すなわち代謝が遅い。そして、年齢が上がるとだんだん代謝が速くなる。すなわちアルコールの消失速度もだんだん速くなる。このように、生まれたてのラットでは十分なアルコールの代謝というのは行われていないという結果でございます。
 それでは、人ではどうなのか。残念ながら実験はできません。それで、あるアメリカの先生が、誤ってお酒を飲んでしまい病院で治療を受けた未成年の方のアルコール消失速度を調べました。そうしますと、ちょっと意外なことに、未成年者のアルコール消失速度は大人の2倍ほど早いという、さっきの実験動物と逆のデータが出ています。ただし、先ほど言いましたように、これは計画をして行った実験ではございません。ですので、これが本当にそのとおりなのかというところはまだ疑問の残るところであります。それで、一般的にはやはり、最初にラットの例で示した「未成年者は大人よりアルコールの分解速度は遅い」という考えの方が妥当ではないかということになっております。
 未成年者はなぜ急性アルコール中毒になりやすいのかといえば、未成年者はアルコールの分解速度が遅いということと、大脳がアルコールになれておらず、早く麻痺するということがございます。また、未成年者は、ゆっくり飲むなんていう安全な飲み方を全く知らないで飲んでいますから、いわゆる一気飲みなどもするわけですね。それが、未成年者の方が飲酒による危険性が高いという理由になります。特に危ない人について申しますと、先ほどもございましたとおり、体の大きさが小さい、あるいは飲むと顔が赤くなる人、それから女性、こういった方々は特に、未成年で飲酒すると危ないということでございます。大人でもこれは同じです。
 さて、性ホルモンについてでは、アルコールはどのような影響を与えるのかということです。
 このグラフではグリーンの棒グラフが男性ホルモン、赤い棒グラフが女性ホルモンでして、お酒を飲む前とお酒を飲んだ後における男性の性ホルモンの変化を見てみますと、男性ホルモンは少し減り、女性ホルモンは一時的に増えます。増える量の方が多いんですね。
 そして、それをまとめますと、男性の場合は、1回の飲酒で男性ホルモンが減ってしまって、女性ホルモンが増える。そして、いつも飲酒をしていれば、男性ホルモンはいつも下がり、女性ホルモンがいつも上がっているということですから、インポテンツとか女性化乳房などが起こります。
 では、女性ではどうなのか。女性が飲酒する場合、やはり、女性ホルモンは減ってきて、逆に女性なのに男性ホルモンが増えるという現象が起こります。
 すなわち、女性は1回の飲酒で、男性ホルモンが増えてしまい、女性ホルモンが減ります。そして、いつも飲酒をしていると、女性ホルモンはいつも低下してしまい、月経の不順とか不妊症、あるいは閉経が早くなるというようなことが起こるわけです。
 男性も女性も、思春期前から飲酒していると二次性徴の到来が遅れるという、こういったデータが示されております。
 次もまた実験の結果でございますけれども、今度はアルコールを成熟の雄ラットに飲ませ、なおかつもう一匹、子ネズミの雄ラットにもアルコールを飲ませる。そうしますと、子ネズミのみに、血中の男性ホルモンの低下、睾丸の縮小、他の生殖器のサイズが縮小するといった現象が起きてきます。このアルコールを与えた子ネズミが大人になり、その大人ネズミと正常な雌のネズミから生まれた子供を検討しますと、子ネズミの数は少ないし、子ネズミの雄の場合は血中の男性ホルモンが低い、または、精嚢が小さいとか、視床下部のβE値が低いとか、こういった結果が出てきます。女性でなくても、つまり男性の飲酒であっても、子供に対して影響が出てくるという結果でございます。
 次は、脳はどうなのかということです。
 これはアカゲザルを用いた実験でございます。前頭葉の前頭前野というところは、生まれて最初に発達するという領域です。この前頭前野は、正常な状態では、思春期の間にだんだんなくなってきて、50%程度の大きさになります。何を言っているかと申しますと、前頭前野が活性化されているということなんです。この大脳皮質の領域は成人では子供より狭くなってきています。前頭前野の活性化とは、すなわち、発育段階でシナプスの数をだんだん減らすことによって脳を効率化させているということなんです。そういったことから、このような発育の時期に、もし飲酒をすれば、何らかの形でその影響が出てくるんじゃないかということが予想されるわけです。
 これは実際に、21歳から24歳を二十代の前半とし、25歳から29歳を後半というように分けて、飲酒時あるいは非飲酒時の言語・非言語の記憶のテストをやってみた結果です。記憶の即時再生を飲まない時と飲んだ時で比較をしますと、二十代前半の人たちだけが記憶が低下し、20分後に記憶を再生させるいわゆる遅延再生のテストでも、同様の結果であり、二十代前半では強く飲酒の影響を受けているという結果でございました。
 そして次に、未成年者の大量飲酒が脳萎縮を起こすということを示しているデータですが、小さくて見えにくいんですけども、海馬という記憶の中枢と言われているところの大きさの比較をしているわけです。未成年のアルコール依存症と、コントロールで比較をすると、未成年者のアルコール依存症では、海馬領域の容積が減ってきてしまうという、そういう結果であります。
 それから次に、アルコールを飲んだときの性行動はどうなのかという、行動面での違いですけれども、未成年の方の場合は危険な性行動に走るということ。それから、性暴力のリスクを高めるというようなことが起きてまいります。
 これはアメリカの成績でございますけれども、最初のデートにおける飲酒時の性行動について調べてあります。飲酒により、特に男子が飲酒をしているときですけれども、性交の頻度が非常に高くなってきています。
 次に男子、女子でセックスの開始年齢が早い、あるいはパートナーが3人以上いた。あるいはコンドームを使用しなかったという項目について、そのパーセンテージを問題飲酒群と正常者と比較をしますと、明らかに問題飲酒群に多いわけですね。そのオッズ比すなわち危険率も、問題飲酒者の方がずっと高いという、そういう結果でございます。
 これは当院の精神科の部長である鈴木先生が行った、中学生を対象としたコホート研究でありますけれども、中学生の段階でまず質問紙を出しまして、そしてそれを1997年から2001年にかけて毎年調査をしている、その結果でございます。
 飲酒行動の変化についてですが、この5年間で飲酒の頻度はだんだんと上がってきている。そして、家族や親戚と飲む頻度というのはほとんど変わらないか、少し下がってきている。と同時に、友人と一緒に飲むという回数が増え、そして月に1回以上飲む頻度もどんどん上がってきているという結果です。そして、その中での飲酒問題がどのようになったかというと、1つは先ほどのQFスケールで問題があるというそういったグループが、やはりどんどん増えてきていますし、なおかつ、酔って吐いたという、これはアルコールで赤くなる、そういったタイプも少し含まれていると思いますけれども、こういった群もどんどん増える。いわゆる異常な飲み方をしている群が増えていると思います。それからブラックアウトというのは、酔ってしまって前日のことを覚えていないという、また専門家の間ではアルコール依存症の前段階の一部となるような、そういう状態を言いますけれども、この回数もこのように増えてきています。そして、飲酒が増えるということに関係している要因も見てみますと、初飲の年齢が早いほど、その危険率は上がってきている。それから、友人から飲酒を誘われる。これもやはり危険率が上がる。それから両親とのコミュニケーションが不足することが、もっとも危険度が高いという結果でございました。
 そして次に、飲酒開始年齢が早いか遅いかによって、アルコール依存症になりやすいかなりにくいかということでありますけれども、アルコール依存症の方が家族にいない方の場合と家族にアルコール依存症がいる場合を示していますが、いずれの場合も若い年齢でお酒を飲むと、高頻度にアルコール依存症になりやすいというデータでございます。
 それから次が、事故との関係ですけれども、若い時代にお酒を飲み始めた人というのは、飲酒中の不慮の事故に巻き込まれる頻度というのが非常に高いんだということです。それから、飲酒中の不慮の事故のリスクですが、20歳以上で飲酒を始めた方を1とすると、年齢が若い方の方がその数倍も事故に巻き込まれるリスクが高い、危険度が高いという、そういう結果でございます。
 以上のことから、飲酒開始年齢が早いということは、将来大量飲酒をする危険性が非常に高い。それから依存症にもなりやすい。それから、さらに飲酒に関係した事故に巻き込まれやすい。そして、それによる死亡率が高いということです。これを解釈するときにちょっと問題点がございまして、これらが早い時期から飲酒したことが原因になる、いわゆる結果なのか。あるいは、逆に早い時期から飲酒する人にはそのような傾向があるのか。この辺のところは、まだ結論が出ておりません。その結論を明らかにするためには、コホート、前向きの研究が必要になるでありましょう。
 次に、薬物との関係なんですけども、早くからお酒を飲み始めると将来シンナーとか覚せい剤に走る危険性が高くなりますかという質問を中高生にしました。
 これは質問の結果ではなく、シンナー、大麻、覚せい剤などの薬物を使ったことがある生徒の割合の結果ですが、高校の学年が上がるによって増えてきているという結果であります。
 そして、その中で、お酒を飲まない群、あるいはお酒を飲む群、そしてQFスケールの問題飲酒群での比較をしてみますと、明らかにこの問題飲酒群でシンナーを吸ったことがある、あるいは誘われたことがある、シンナーを吸う人を知っている、あるいは覚せい剤まで誘われたこともある、また覚せい剤を誘われたらやってみたいという生徒の割合が非常に高いという結果でありました。
 以上から、未成年がなぜ飲酒してはいけないのかという理由をまとめますと、まずは法律に禁止されているということ。そして学問的に言えば、先ほど説明いたしましたように急性アルコール中毒の危険性が高いし、なおかつ、脳とか肝臓などの臓器への障害が大きくなる。さらに性ホルモンに及ぼす影響もあります。それから、依存がより早く進行し、他の薬物の入口ともなるし、危険な行為にも走りやすくなる。こういったことが未成年者の飲酒がよくないという理由になるわけです。
 さて、2番目にアルコール依存症の現状はどうなのかということです。
 残念ながらこのアルコール依存症のデータというのは、推定の域をまだ超えておりません。このグラフでは、大量飲酒者を一応はアルコール依存症に近いというふうに考えています。この大量飲酒者というのはどういう人かといいますと、日本酒で毎日5合以上をほぼ毎日飲んでいるような方々を言いますけれども、このような方は平成11年の段階で227万人というのが推計されております。非常に不思議なんですけれども、この大量飲酒者の数というのはアルコール消費量と非常によく相関しているということです。このアルコール消費量、ここで示すものは、いろんな各アルコール濃度のアルコール飲料がございますけども、それを単に足したものであって、純アルコールに換算したものではないんですね。そこがちょっと不思議だということで、今お話しました。
 そして、女性のアルコール依存症者がどうなっているかということですが、久里浜病院では女性が特に増えているよというデータであります。久里浜病院では最近女性の男性に対する割合が17%程度に上がってきている。それまでは大体平均10%程度でした。
 そして、もう一つの特徴が60歳以上の方ですね。こういう方々も、どんどん増えてきている。これも久里浜病院で言うと、約20%近くにも増えてきていると。
 それから次は、治療を受けているアルコール依存症の患者さんはどうなのかということですけれども、それを見ますと、何と先ほど示した227万人に比べて、これはものすごく少ない。2万3,800人という数字でございます。
 アルコール依存症者の現状のまとめになりますけども、5合以上毎日飲んでいる方は227万人というふうに言われていましたけれども、実際に治療を受けているアルコール依存症者の方々はたったの2万数千人である。それ以外の人たちはどこに行っているんだろうかと。それが、先ほど田嶼先生がお示しになりましたアルコール関連疾患と呼ばれる病気になって治療を受けていることが考えられます。
 これはそこにかかわる医療費の問題を掲げております。これは1987年というかなり古いデータですけれども、総医療費が16兆のうちアルコールによって引き起こされる疾患に費やされる医療費は1兆1,000億、すなわち7%が飲酒に起因する医療費として使われていると。こういう問題がございます。
 一方、他の調査でございますけれども、入院されている方々に久里浜式アルコール症スクリーニングテストという質問紙がありますけれども、そちらのテストをやっていただいて、合計点数2点以上を重篤問題者と言うんですけれども、その割合を調査しましたところ、何と14.7%の方々が重篤問題者にあたり、すなわち過剰な飲酒によって症状の悪化を来しているという、そういう結果でございます。
 次に、妊産婦の飲酒になります。
 女性の飲酒を先ほど一部お示ししましたけれども、これを見ていただきたいと思います。
 男女別の年齢別飲酒状況をみております。男性の場合には各年代とも平均して大体70%前後の方が飲んでいるんですけれども、女性の方は若い方々は55%以上の方が飲んでいますが、歳をとると多少飲まなくなってきています。次に週に4日以上すなわちほぼ毎日飲んでいる方々は男性では年代が上がるにつれ増えますが、女性も同じような傾向がある。ここが問題ですね。すなわち飲酒者の全体では年代があがると、減ってきているにもかかわらず、毎日飲むような人は増えているのだという結果であります。
 次には、女性の年齢別の飲酒率が時代によってどう変わってきているかというのを示します。この三角は1968年です。それから四角いのは1987年です。この間約20年たっています。そして黒丸と黒の四角が1997年と2000年の結果です。時代を経るほど女性の飲酒をする方が増えているという、こういう結果でございます。
 次に、急性アルコール中毒。先ほど言いましたね、飲んで意識を失って倒れるという、そういう方々の数の推移を見ておりますけれども、最近女性も男性と同じような率ですごく増えてきているんですね。
 そして、平成14年の各年代別の急性アルコール中毒の搬送者でも女性は各年代で男性と同じように変化し、特に20歳、30歳代は男性と同様に高頻度になっています。
 次に、乳幼児の身体発育調査についてお話ししたいと思います。その中で妊婦がどの程度飲んでいるかという調査をしましたが、妊娠中に飲酒していた母親の割合は何と18.1%にも及ぶ非常に高率でありました。
 その中で、飲酒した妊婦の飲酒頻度ですが、10回未満の方が一番多いんですけども、週に3回以上飲まれている方も1.4%ほどいます。この辺のところがこれから述べる、フィータル・アルコール・シンドロームすなわち飲酒が乳幼児に影響を及ぼす可能性が考えられるわけであります。それから年齢別で飲酒はどうなのかということですけども、やはり高年齢になるほど、飲酒率が増えているという結果であります。
 それから、出生時の平均体重はどうなのかということです。特に見ていただきたいのは週3回以上という方々が、飲まない群に比べて、男子、女子の子供とも、明らかに体重が少ない子供が生まれています。
 次に、胎児性アルコール症候群(FAS)と、フィータル・アルコール・イフェクト(FAE)の認知度と学校教育についてお話いたします。
 すなわち、認知度が非常に低いという結果でございます。お酒を飲むと、ここに示す8つの病気やできごとと関係があるかどうかということについて質問をしているわけですけれども、このなかで質問5.として産まれてくる赤ちゃんの障害が関係あるかどうかということについての結果を次に示します。
 調査内容としては2つありまして、中学生、高校生のグループと佐賀県の一般成人を対象とした結果であります。そうしますと、中学生から高校3年生まで、いわゆるフィータル・アルコール・シンドロームに及ぶようなお酒の影響、そういったことを知っているという方が約30%弱ですね。特に男性の方は20%と低い。それから、一般住民であってさえも30%程度しか知らない。このような結果でございます。
 そして、中学生、高校生に対して、教育の面であなたは飲酒と健康について教わりましたかということを聞きましたところ、高学年はかなりのパーセンテージが「はい」と言っていますけども、低学年ではまだ40%程度である。
 こういったことから、アルコール教育の実施率を見てみますと、喫煙、薬物、性、エイズに比べましてアルコールの教育はまだまだ低いということでございます。
 それから、校内の研修実施率とか校外の研修実施率も、同じように、喫煙、薬物、性、エイズに比べると、アルコールは低いと、こういう問題があります。
 それで、アルコール防止教育の課題ですけれども、今お示ししましたように、低い認識あるいは教育実践、こういった実態が明らかになっております。喫煙、薬物、そういったものに比べて、アルコールの場合は実施頻度が最も低いし、専門家あるいは専門機関の支援を受けていないとか、教育方法・教育内容に多様性がないとか新しい方法が少ない、あるいは教育効果が評価されていないとか、研修がなされていないとか、あるいは教材が充実していないというようなこと。それから、学校の中でアルコール問題というものが認識されていないということでございます。
 次にフィータル・アルコール・シンドローム、フィータル・アルコール・イフェクトについてお話しいたします。
 胎児性アルコール症候群というのはもう皆さんご存じだと思いますけれども、妊娠中の母親が飲酒すると、その胎児の発育に影響を及ぼす。そしてその結果、顔に特徴のある形態が出てきますし、その他臓器の奇形、体の発育不良、知能障害というようなことが起きてきます。そして、米国では出生1,000に対して0.2から2.2、我が国ではそれが0.1程度というような報告がございます。
 アメリカの例ですけども、顔の表情といたしまして、眼裂が狭い、ちょっと頭が小さい、あごが小さい、それから人中というところがなくなっている、上唇が薄い、などが特徴とされています。ただ、日本人はそういった顔つきの方が多いですけどね。
 これは日本のデータです。1990年から1991年にかけて田中先生たちが調査を行った結果、FASが35例、FAEが29例ということでございました。そして、出生1,000に対して0.1から0.05という、そういう結論でございました。
 ここにその特徴が出ておりますけれども、FASはこのFAEに比べて明らかに出生時体重が低く出ております。それから、中枢神経の異常が100%、顔面の特徴100%、その他の異常は御覧のとおりです。もう一つ問題点が、妊娠中の母親の飲酒によるグループ分けをした結果に出ています。グループ1というのはアルコール依存症または妊娠の5年以上前から妊娠中も継続して大量飲酒をしているグループです。この群にFASが高率に見られます。また、グループ3は継続した妊娠中の飲酒を確認できなかった群ですが、わずかですがFASとかFAEが出てきています。
 これには母親の飲酒時状況が細かく示してありますけれども、この表にはアルコール依存症があるという、そういう方々の飲酒状況が示してあります。
 それから、これにはアルコール依存症でない方にデータが示してありますけれども、飲んだ量は御覧のとおりばらばらです。
 それから、もう一つの新しい所見なんですが、今お示しした症例の中で、5例の症例すなわち母親と出生児に対して、飲酒時に顔が赤くなる、ならないという体質に関係しているアルデヒド脱水素酵素の遺伝子形を調べたわけです。そうしますと、母親はお酒をいっぱい飲めるということですから、アルデヒドがよく代謝できる、すなわち顔が赤くならないようなタイプだったにもかかわらず、その子供の方は何と4例で顔が赤くなるタイプ、すなわちお酒に対して弱いという、そういう子供が多かったという、こういう結果であります。これはまだ症例数が少ないので確かなことはいえませんが、今後数をさらに増やしてみると、FASの発生要因にこのアルデヒド脱水素酵素の遺伝子形が出てくるのかもしれません。
 女性の飲酒に関するまとめですけれども、女性の飲酒率、それと飲酒量、さらに女性のアルコール依存症者数が増加しているということが推定されます。そして、妊婦の20%近くが飲酒している。その率は増加している可能性があります。そして、飲酒の胎児に対する障害については、学生及び一般人もその認識が低い。学校教育において、アルコールは薬物、エイズに対して軽んじられている。それから、我が国のFAS、FAEの出生率が1,000に対して0.05から0.1と推定されています。そして、FAS、FAEの特徴ですけれども、成長遅延は軽度ですけれども改善しにくいという、こういう特徴。それから日本人は、さっき言いましたように非常にFASの特徴に似ていまして、顔面の特徴が見過ごされやすいということですね。それから、中枢神経系の障害では、多動、言語発育の遅延した軽度の知能障害が多いというところが特徴であります。母親の場合は、アルコール依存症者、または依存症でなくても妊娠中に大量飲酒している者が多い。もっと問題なのは、飲酒量がかなり少ないケースにも起こり得るんだという、そういうことでございます。
 最後に家庭内暴力、ドメスティックバイオレンスについてお話します。
 この研究は防衛医大の吉野先生の研究によるものであります。吉野先生方はなぜこの研究をしたかというと、アルコール依存症の家族では、一般人口に比べて家庭内暴力が重篤であるということが予想されますけれども、具体的な実際の調査がなかったということから、男性アルコール依存症者の妻における家庭内暴力の被害の実態調査を行ったということです。質問紙表で行っております。これを一般の人口とアルコール依存症群の被害の比較。それから、アルコール依存症者の人が断酒をしたグループとそうじゃないグループとで、最近1年間の被害について比較をしています。
 まず奥さんが、治療が必要となる程度の暴行を何回も受けたというのが一般人口で1%、1、2回受けたというのが3%であったのに比べて、アルコール依存症の妻の場合は何回も受けたのが6.3%、1、2回が19.6%と明らかに多くなっています。そして、その相対危険率は8.1にもなっているということです。それから、性的行為を強要されたかということでございますけども、その相対危険率は、一般人口に比べてアルコール依存症度では10.4に増えています。それから、交友関係とか電話を細かく監視されているという、これもやはり多くなっておりまして、相対危険率は5.1ということでございます。
 さて、断酒をすることが有効であるかということですけれども、左側は夫が妻を攻撃する、右は妻が夫を攻撃するということでございますけれども、断酒群は青でございますけれども、非断酒群に比べて明らかにいずれのタイプもドメスティックバイオレンスの重篤度は低くなっているということで、断酒は効果があるという結果でございました。
 ドメスティックバイオレンスのまとめですけれども、アルコール依存症の家族におけるドメスティックバイオレンスの被害は、一般人口に比べて予想以上に重篤であります。約30%が身体的な暴力・暴行を受け、25%が性的強要、60%が心理的攻撃を繰り返して受けています。そして、その危険率は5から10%台にも及んでおります。断酒群では非断酒群に比べて、最近1年間の心理的攻撃とか身体暴行の頻度が有意に少なくなっています。すなわち、断酒によってドメスティックバイオレンス問題が改善する可能性が示唆されております。ただし、今後の前向きな研究が必要になります。それから、アルコール依存症の高い有病率を考えると、ドメスティックバイオレンス問題の予防対策にはアルコール関連問題対策が必須であると、こういうようなまとめでございました。

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