平成29年7月
国税庁

1 従来の取扱い

 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)24((私道の用に供されている宅地の評価))に定める「私道」については、道路としての利用状況や、所有者が自己の意思によって自由に使用、収益をすることに制約が存すること等の事実関係に照らして判断しているところです。
 また、上記事実関係に照らして判断した結果、「歩道状空地」の用に供されている宅地については、建物の敷地の一部として、評価通達24を適用せずに評価していた事例がありました。

2 最高裁判決を踏まえた「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱い

  1. (1) 最高裁判決の判示事項
     最高裁判所平成29年2月28日判決(以下「最高裁判決」といいます。)において、「私道の用に供されている宅地につき客観的交換価値が低下するものとして減額されるべき場合を、建築基準法等の法令によって建築制限や私道の変更等の制限などの制約が課されている場合に限定する理由はなく、そのような宅地の相続税に係る財産の評価における減額の要否及び程度は、私道としての利用に関する建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、当該宅地の位置関係、形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、当該宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その低下がどの程度かを考慮して決定する必要があるというべきである。
     これを本件についてみると、本件各歩道状空地は、車道に沿って幅員2mの歩道としてインターロッキング舗装が施されたもので、いずれも相応の面積がある上に、本件各共同住宅の居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されていることがうかがわれる。また、本件各歩道状空地は、いずれも本件各共同住宅を建築する際、都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道の用に供されるに至ったものであり、本件各共同住宅が存在する限りにおいて、上告人らが道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難い。そして、これらの事情に照らせば、本件各共同住宅の建築のための開発行為が被相続人による選択の結果であるとしても、このことから直ちに本件各歩道状空地について減額して評価をする必要がないということはできない。」と判示されました。
  2. (2) 「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱い
     上記(1)の最高裁判決の判示事項を踏まえ、1都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、2道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、3居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、評価通達24に基づき評価することとします。

3 相続税等の更正の請求

 上記2の取扱いは、過去に遡って適用されますので、これにより、過去の相続税又は贈与税(以下「相続税等」といいます。)の申告の内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができます。
 なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。