第1条 ガイダンスの目的

本ガイダンスの目的は、次のとおりである。

・ 二国間事前確認を望む納税者に、公平で一貫性のある方法で対応するための共通の取組方を確立すること

・ 円滑で時宜にかなった二国間事前確認の処理を可能にする、実用的な枠組みを提供すること

・ 環太平洋税務長官会議(PATA)加盟国における二国間事前確認の使用を奨励し、促進すること

第2条 背景及び適用範囲

1. 本ガイダンスは、PATA加盟国の権限ある当局が、二国間事前確認手続を処理する方法に関するものである。PATA加盟国は、二国間事前確認のような、関連企業間で国境を越える取引を行う納税者の確実性を向上させるため設計されたプログラムの推進に努めている。また、PATA加盟国は、納税者が、二国間事前確認及びその基礎となる国内事前確認を効率的で費用効果のある方法で利用できるように努める。

2. 納税者からの二国間事前確認の申請の受理及び審査並びに解決のための協議及び執行は、権限ある当局が、相互に受入れ可能で、かつ、一貫性が確保されるよう、所得に対する租税に関する二国間条約(以下「条約」という。)の関連する規定に従って行われる。関係条約の一覧について付録A参照。権限ある当局は、二国間事前確認の申請の受理後、納税者の文書資料を受領次第、それぞれの事案に係る事実、状況及び複雑性に留意の上、適時に二国間事前確認を終結するように努める。ただし、PATA加盟国は、特定の取引形態又は組織上の構造を対象とする二国間事前確認の申請を拒否することができる。

3. 二国間事前確認を解決するための権限は、適用する条約に規定されている相互協議条項及び各国政府が権限ある当局に対して付与している行政上の権限によって、権限ある当局に付与されていると理解されている。権限ある当局は、適用する条約並びに各国の国内法、規則及び手続に規定されている権限に基づき、二国間事前確認を開始し、納税者等の情報を交換することができる。二国間事前確認は、適用する条約の関連者/特殊関連企業条項、相互協議条項及び情報交換条項に従って解決される。また、納税者は、多国間事前確認を利用することができる。ただし、多国間事前確認についても、関係する二国間条約を通じて解決及び実施がなされる。

4. 本ガイダンスは、事前確認又はこれに類する価格に係る合意若しくは取決めに関する、PATA加盟国の国内法、政策又は手続上のいかなる規則及び手続も修正するものではない。本ガイダンスと事前確認に係るPATA加盟国の国内法、政策又は手続との間に矛盾が存在する場合、権限ある当局は、その矛盾を解消するよう努めなければならない。

5. 本ガイダンスに規定する用語、手続又は取決めは、付録Aに掲げるPATA加盟国間の関係条約の規定に代わるものではない。本ガイダンスと条約との間に矛盾が存在する場合は、現行の、又は将来締結する、関係条約その他二国間事前確認に係る合意に関する二国間の取決めの規定が優先するものとする。

6. 経済協力開発機構(OECD)による「多国籍企業と税務当局のための移転価格算定に関する指針」(1995年)及び同別添「相互協議手続における事前確認手続の取扱いに関する指針」(1999年)における原則は、時として改定されており、二国間事前確認事案を解決するための指針として用いられる。本ガイダンス付録B「用語の定義」参照。

7. PATA加盟国は、権限ある当局として委任された者が、二国間事前確認事案を直接担当できない場合が頻繁にあることを理解している。したがって、権限ある当局に属する他の者(以下「アナリスト」という。)に対し、権限ある当局に代わって特定の機能を遂行させることが必要となることがありうる。

8. 権限ある当局は、納税者に対し、本ガイダンス第7条に従い、二国間事前確認手続において提出されたすべての情報が厳格な守秘義務の対象とされることを保証しなければならない。

第3条 事前相談手続

1. 権限ある当局は、納税者が二国間事前確認を行う上での要件、利点及び費用についての検討を可能にする事前相談手続の利用を奨励する。事前相談手続には、次の事項が含まれる。

・ 納税者と権限ある当局との非公式の面談

・ 必要かつ適切である場合、申請に係る対象取引について議論するための両国の権限ある当局間の面談

・ 両国の権限ある当局が必要かつ適切であると認めた場合、すべての利害関係者(権限ある当局及び納税者)が参加する面談

・ 二国間事前確認を行うことの妥当性を検討するため、納税者が提供した事前の情報及び分析に係る権限ある当局による審査

2. 事前相談手続は、納税者の身元を保護するため、匿名で行うことができる。

第4条 二国間事前確認の申請及び受理

1. PATA加盟国の二国に対し二国間事前確認を申請する納税者は、居住地国の権限ある当局に対して正式に申請する必要がある。

2. PATA加盟国は、二国間事前確認の申請について行政上又は法律上の期限を設けていることがあり、その期限後に行った二国間事前確認の申請は、特定の年分について受理されないことがある。したがって、納税者は、二国間事前確認の対象とする期間に関して、できる限り早期に二国間事前確認を申請することが奨励される。本ガイダンス付録Cは、納税者の二国間事前確認の申請書に記載されるべき情報の類型を示している。二国間事前確認を迅速に解決するため、権限ある当局は、納税者に対して、二国間事前確認の申請書及びすべての参考資料を両国の権限ある当局に迅速、かつ、同時に提出するよう奨励する。

3. 納税者が行政上又は法律上の期限を逸した場合であっても、当該期間を「ロールバック」によって対象とすることが可能である。ロールバックとは、対象期間以前の期間において独立企業間価格を算出する移転価格算定方法の効力に影響を及ぼしうる重要な事実の変更がない場合に、当該年分に二国間事前確認を適用することをいう。納税者がロールバックを希望する場合は、その旨及びロールバック対象期間について二国間事前確認の申請と併せて申請しなければならない。PATA加盟国は、二国間事前確認のロールバックを受理する義務を有しない。

4. 納税者から二国間事前確認の申請を収受した場合、PATA加盟国は、収受した日から30日以内に、二国間事前確認の申請を収受した旨納税者に通知しなければならない。加えて、当該PATA加盟国の権限ある当局は、二国間事前確認の申請を収受した日から30日以内に、相手国の権限ある当局に対し当該申請について通知する。権限ある当局間及び納税者との通信は、書面で行うこととし、それぞれ国の関係する関連企業、移転価格問題及び当該二国間事前確認の申請について責任を有する権限ある当局若しくは納税者の担当者を明示するものとする。

5. 関係条約に従い、及び当該条約の規定に基づき、権限ある当局は、納税者に対し、二国間事前確認の解決までのあらゆる時点で当該納税者から提供されるすべての情報及び分析は、適時に両国の権限ある当局に同時に提供されなければならない旨知らせるものとする。納税者の二国間事前確認の申請に関して、PATA加盟国が取得、準備又は作成したいかなる情報も、相手国の権限ある当局と交換することができる。

6. PATA加盟国は、次に掲げるすべての事項が完了した時点で、納税者の二国間事前確認の申請を受理する。

a) 必要な場合、国内上の事前相談手続に従い、検討のための議論又は面談が開始されたこと

b) 権限ある当局が定めた、事前の情報及び説明に係るすべての要件に納税者が満足したこと

c) 両国の権限ある当局が、二国間事前確認が妥当である旨決定したこと

d) 納税者が、PATA加盟国が課す手数料を国内手続に従って納付し、又は納付について同意したこと

7. 権限ある当局は、納税者及び相手国の権限ある当局に対して、二国間事前確認の申請を受理し、又は拒絶する決定について書面で通知しなければならない。この通知は、通常二国間事前確認の申請を収受した日から90日以内に行うものとする。二国間事前確認の申請が、二国間事前確認に関する国内法、政策又は手続に基づいて二国間事前確認を検討することを妨げるような事実や状況を引き起こす等正当な理由がある場合、権限ある当局は、二国間事前確認の申請を拒絶することができる。

8. 前項に定める期限が達成されない場合、権限ある当局は、納税者にその旨を通知し、達成可能な時期を示さなければならない。権限ある当局が二国間事前確認の申請を受理する旨決定するために追加の情報又は説明を納税者に要求する場合、この90日の期限は、権限ある当局がその追加情報を受領した日から起算するものとする。

9. 権限ある当局は、二国間事前確認の申請を拒絶する前に相互に協議しなければならない。権限ある当局が二国間事前確認の申請を受理できない旨決定した場合、権限ある当局は、その決定理由を納税者に通知しなければならない。

10. 効率的な税務運営及び二重課税の回避のため、権限ある当局は、当初一国のみの事前確認を申請した納税者に対して二国間事前確認を奨励する。ただし、相手国の権限ある当局が二国間事前確認の申請を拒絶した場合、権限ある当局が二国間事前確認を合意できなかった場合、その他二国間事前確認が不可能又は実践的でない場合、納税者は、PATA加盟国との間で一国のみの事前確認を締結することを選択できる。

11. 納税者がPATA加盟国と一国のみの事前確認を締結した場合で、後に二重課税が生じたときには、納税者及びその関連企業は、相互協議手続を利用することができる。二重課税を解決するために必要な場合、権限ある当局は、一国のみの事前確認の諸条件を解除することができる。

第5条 二国間事前確認の審査及び協議

1. 両国の権限ある当局は、二国間事前確認の申請の受理に同意した後、それぞれの国内手続に基づいて、互いに独立に、かつ、同時に納税者の申請を審査する。

2. 審査段階の最初に、権限ある当局は、相手国の権限ある当局及び納税者と協議の上、二国間事前確認を適時に処理するための行動計画を設定する。この検討には、次の事項が含まれる。

a) それぞれの権限ある当局によって実施されるべき、分析及び払われるべき注意について、計画に従って行われる範囲

b) 独立した専門家の必要性

c) 解決されるべき重要な問題

d) 納税者が提出すべき追加的な情報及び分析の性質及び範囲

e) ポジションペーパーの同時交換、及び二国間事前確認の諸条件を協議する会合についての目標期日

3. 権限ある当局の主たる責任の一つは、PATA加盟国間の定期的な連絡及び調整を確実にすることである。権限ある当局は、二国間事前確認に係る審査及び協議を迅速に行うために非公式な作業を行う。コミュニケーションを強化するために、アナリストは、相手国の権限ある当局のカウンターパートとの間で、二国間事前確認手続を通じて個別の問題を議論し、又は明確にするために連絡を行うよう奨励される。アナリスト間のこれらの協議は適切に文書化されるものとする。

4. 二国間事前確認で必要とされる資料提出義務は、調査において必要とされる資料提出義務よりも重いものであってはならない。調整を容易にするために、権限ある当局は、納税者にすべての関連情報及び分析を両国の税務当局に同時に提出させることを保証しなければならない。情報交換が必要な場合、権限ある当局は、情報交換を迅速に行う。権限ある当局は、納税者が提供するすべての情報を交換する必要はないが、納税者が提供する資料及び情報が完全で十分に詳細であることを補強するための適切な仕組みを整備する。

5. 審査段階を通じて、権限ある当局は互いに、少なくとも90日ごとに進捗状況を通知しなければならない。定期的な報告は、電話、簡潔なメモ、書簡、電話会議、直接会合その他権限ある当局が認める連絡手段によって行われる。これらの連絡の目的は、適時の処理促進のために、両国の権限ある当局が事案の進捗状況を確実に把握することである。

6. 権限ある当局は、必要に応じて、二国間事前確認手続において利害関係者間の会合を開催することができる。例えば、納税者の二国間事前確認の申請に係る事実確認のための合同協議に価値がある可能性がある。二国間事前確認の申請の審査を進めるため、このような合同会合には、地方の課税当局の職員が参加する場合、及び関係する権限ある当局の裁量によって納税者若しくはその代理人が参加する場合がある。

7. 二国間事前確認の申請の審査及び権限ある当局によるポジションペーパーの作成は、優先事項として行われるべきである。PATA加盟国は、二国間事前確認の申請に必要なすべての書類を収受した日から12か月以内にポジションペーパーを交換するよう努めなければならない。権限ある当局のポジションペーパーに記載される情報の種類については、本ガイダンス付録Dに示されている。ポジションペーパーは、できる限り同時に交換されなければならない。権限ある当局間で交換されるポジションペーパー及び書簡は、納税者に対して提供されるべきではない。

8. 権限ある当局は、二国間事前確認に関する協議が、書簡、ファクシミリ、電子メール、電話及び直接会合等の手段によって実施されるものと考える。権限ある当局は、採用する連絡手段を事案ごとに決定すべきである。しかしながら、権限ある当局は、直接会合が二国間事前確認事案を解決する最も有益な手段であると認識しており、実現可能で現実的である限り、アナリストが参加する直接会合を実施すべきである。

9. 直接会合が必要な場合、すべての関係する情報は、少なくとも直接会合の4週間前までに交換されることが望ましい。これにより、権限ある当局が会合前にその情報を検討する十分な時間を有するため、より効率的で生産的な会合となるだろう。

10. 二国間事前確認事案を適時に解決するため、当該事案を解決する権限を有する権限ある当局職員が協議に参加すべきである。

11. 権限ある当局は、直接会合の促進のため、事案によっては通訳が必要であると考える。

12. 権限ある当局は、納税者からの二国間事前確認の申請を収受した日から2年以内に二国間事前確認事案を解決及び終結することに努めなければならないと理解されている。しかし、権限ある当局が、この期限を達成することができない場合もありうる。このことは、例えば、納税者が補足的な情報を適時に提出しない場合、又は特定の事案が非常に複雑な場合に生じうる。このような状況においては、権限ある当局は、期限を合理的な期間延長することに同意することができる。期限を超過し、又は超過する見込みの場合、双方の権限ある当局の上級担当者は、遅延理由の判断のために事案の審査を行い、当該事案を効率的に終結させるための取組に同意するものとする。

13. 権限ある当局は、二国間事前確認事案に係る協議が政府間の手続であることを認識している。納税者は、権限ある当局間の協議に参加し、又は協議を傍聴することについて、法律上その他の権利を有していないが、権限ある当局は、二国間事前確認手続の利害関係者であることを認識している。したがって、例外的な事案では、納税者によるプレゼンテーションが事案の解決に有益であることがある。このプレゼンテーションは、権限ある当局間の合意に基づいて行われ、かつ、事実に係る情報の提供に限られる。

14. 関係する権限ある当局が、移転価格算定方法、重要な前提条件その他諸条件について合意に達した場合、この合意は、二国間事前確認の基礎となるべきである。

15. 権限ある当局は、次の事項を記載した書簡の交換によって二国間事前確認を行う。

a) 二国間事前確認の対象となる関連企業の名称及び所在地

b) 対象取引についての説明

c) 移転価格算定方法及び合意された税務上の取扱い(第二次調整又は補償調整等)に係る説明

d) 二国間事前確認の対象期間

e) 二国間事前確認の基礎となる重要な前提条件に係る説明

f) 基礎となる国内事前確認が修正、取消し又は無効となる前に協議する旨の合意

g) 二国間事前確認の再協議が必要とされない程度の事実に係る状況の変化に対応するための合意した手続

h) 二国間事前確認及び基礎となる国内事前確認が有効であるために、関連企業が満たすべき諸条件並びにその諸条件を関連企業が満たすことを保証する手続(年次又は定期報告書、帳簿保存、重要な前提条件の変更通知等)

16. 権限ある当局は、納税者に対して、解決のための条件をできる限り早期に連絡するものとする。この連絡は、権限ある当局が相互に合意した場合、二国間事前確認に係る書簡の交換前に行うことができる。

17. 納税者が解決のための諸条件に満足しない場合、納税者は、二国間事前確認手続を取り下げることができる。

18. PATA加盟国は、権限ある当局間の二国間事前確認に係る書簡を交換するまでは、納税者との国内事前確認を執行してはならない。

19. 二国間事前確認に係る書簡を交換した場合、PATA加盟国は、納税者に確認させ、又は納税者と合意することにより、その管轄内でこれを実施するものとする。この確認又は合意を国内事前確認という。PATA加盟国によって実行される国内事前確認の形式は一様ではないが、関連企業による適用の一貫性を確保するため、移転価格算定方法及び重要な前提条件は、二国間事前確認で示された内容と同一であることが重要である。国内事前確認の写しは、PATA加盟国の権限ある当局の求めに応じ提供されるべきである。

第6条 二国間事前確認の適用

1. 二国間事前確認に係る期間は、通常3年から5年とし、事案ごとに決定される。二国間事前確認の解決に2年以上要する場合、権限ある当局及び関連企業は、期間延長に相互に合意することができる。

2. 国内事前確認に係る諸条件を確実に遵守するために、PATA加盟国は、納税者に対して年次又は定期報告書を要求することができる。納税者は、この報告書を準備及び提出するときは、国内上の手続及び要件に従う。

3. それぞれの権限ある当局は、納税者から受領したすべての報告書は、要請に応じて、相手国の権限ある当局に提供されることを保証する。

4. PATA加盟国は、国内上の手続に従って国内事前確認を取り消し、又は無効とする権利を有する。納税者が報告書の提出等の国内事前確認の諸条件を遵守しない場合、又は国内事前確認に関して故意による義務の不履行若しくは懈怠又は重大な過失がある場合には、国内事前確認が取消し又は無効となる場合がある。この場合、権限ある当局は、国内事前確認の取消し又は無効についての意向を相手国の権限ある当局に対して、できる限り早期に通知しなければならない。

5. 国内事前確認が取消し又は無効となった場合、PATA加盟国は、当該取消し又は無効となった年分について、国内事前確認が行われなかった場合に有するすべての権利を有するものとする。

6. PATA加盟国が、国内事前確認に係る納税者の遵守に異議を有する場合、権限ある当局は、書面により速やかに相手国の権限ある当局に対し通知する。権限ある当局は、課税提案等の国内におけるあらゆる行為が行われる前に問題を解決するよう努める。

7. 二国間事前確認及び基礎となる国内事前確認は、権限ある当局間の相互協議により、関連企業との協議及び修正に係る関連企業の同意を得た後はいつでも修正することができる。

第7条 納税者情報の使用に関する制限

1. PATA加盟国は、二国間事前確認手続において得た情報が誤って用いられた場合、問題が生じることを認識している。

2. PATA加盟国が二国間事前確認締結に関して取得又は準備した、関連企業又は相手国の権限ある当局により提供された情報を含むすべての情報は、適用される国内法及び条約に規定されている納税者情報に係る守秘義務の対象となる。

3. 機密情報(商業上の秘密等)のうち、公開することにより納税者の競争上の地位を害するものを二国間事前確認手続において検討する必要がある場合には、守秘義務をより確実なものとするため、権限ある当局は、第7条第2項の規定に従い、情報の秘密性を守るためのあらゆる手段を講じることを保証する。

第8条 国内手続

PATA加盟国は、二国間事前確認のための手続を公表するものとする。

第9条 言語

本ガイダンスは、英語、仏語及び日本語により公表され、いずれも同等に取り扱われる。

第10条 連絡

本ガイダンスに基づく通信又は情報交換は、付録Eに規定する所在地に対して行われる。

第11条 改定

本ガイダンスは、PATA加盟国の協議により、いつでも改定できる。

付録A

条約

本ガイダンスの第2条第2項に規定する条約とは、PATA加盟国間により締結された、次に掲げる租税条約をいう

・ 所得及び資本に対する租税に関するカナダとアメリカ合衆国との間の条約(当初1980年9月26日にワシントンで署名、1983年6月14日、1984年3月28日、1995年3月17日及び1997年7月29日に署名された議定書により改正)

・ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のためのカナダとオーストラリアとの間の条約(当初1980年5月21日にオーストラリア、キャンベラで署名、2002年1月23日に署名された議定書により改正)

・ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府との間の条約(当初1986年5月7日に東京で署名、1999年2月19日に署名された議定書により改正)

・ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のためのオーストラリア政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(当初1982年8月6日にオーストラリア、シドニーで署名、2001年9月27日に署名された議定書により改正)

・ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約(1971年3月8日に東京で署名)及び所得に対する租税に関する二重課税の回避と脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(2003年11月6日にワシントンで署名)

・ 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリア連邦との間の協定(当初1969年3月20日オーストラリア、キャンベラで署名、1969年3月20日に署名された議定書により改正)

本付録の情報は、2004年2月6日に最終更新された。

付録B

用語の定義

「*」印を付した定義は、OECD租税委員会報告書「多国籍企業と税務当局のための移転価格算定に関する指針」(1995年)による。

独立企業原則*

OECD加盟国が合意した、税務上移転価格を決定するために使用すべき国際的な基準。「所得と資本に関するOECDモデル租税条約」(以下「OECDモデル租税条約」という。)第9条では次のとおり定められている。

商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。

関連企業*

事業を行う二つの企業は、一方の者が他方の企業とOECDモデル租税条約第9条第1項(a)及び(b)の条件を満たしている場合、関連企業とされる。

a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は

b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合

二国間事前確認

二国間事前確認とは、適用される条約上の目的のために、特定の諸条件の下で、関連企業間の国境を越える取引に適用される適正な移転価格算定方法を事前に設定することについての二国の権限ある当局間の取決め、合意又はこれらに類する約定をいう。

重要な前提条件

重要な前提条件とは、納税者が申請した移転価格算定方法にとって、納税者、第三者、産業又は事業上若しくは経済上の条件の観点から重要な事実の継続的存在をいう。重要な前提条件を満たさない場合、重要な前提条件が納税者の支配下にあるか否かにかかわらず、二国間事前確認に関する再協議又は取消しが生じることがある。納税者の支配下にある重要な前提条件は、例えば、事業活動を遂行するための特別の方法又は特定の法人若しくは事業の構造を含む。納税者の支配下にない重要な前提条件は、例えば、予想される事業活動量の範囲である。

国内事前確認

国内事前確認とは、適用する国内法及び租税条約上の目的のため、特定の諸条件の下で、関連企業間の国境を越える取引に適用される適正な移転価格算定方法移転価格算定方法を事前に設定することについてのPATA加盟国及び納税者との間の取決め、合意又はこれらに類する約定をいう。国内事前確認は、権限ある当局間の二国間事前確認協議に基づく。

一国のみの事前確認

一国のみの事前確認とは、国内法上の目的のため、特定の諸条件の下で、関連企業間の国境を越える取引に適用される適正な移転価格算定方法を事前に設定することについてのPATA加盟国及び納税者との間の取決め、合意又はこれらに類する約定をいう。一国のみの事前確認は、権限ある当局間の協議に基づくものではない。

付録C

二国間事前確認の申請

納税者の二国間事前確認の申請には、次に掲げる項目を含めることが望ましい。しかし、PATA加盟国は、すべての必要な情報がすべて提供されるよう納税者に国内手続を参照させるものとする。

a) 関連企業の名称、所在地、事業内容及び納税者番号

b) 二国間事前確認に係る申請における対象期間及び前年へのロールバックの検討

c) 双方のPATA加盟国における課税に関する法律に基づいて、対象期間が課税可能かどうかについての納税者の申立て、及び対象期間の更正期限

d) 他国で開始された関係する相互協議手続に関する情報

e) 申請された対象取引についての説明

f) 申請された、対象取引に係る移転価格算定方法及び当該移転価格算定方法により適正な独立企業間価格が算定されることについての説明

g) 納税者側の連絡責任者

h) 納税者の代理人への委任

i) 信頼できる経済上のデータ及び報告、説明並び納税者の文書及び記録(比較対象取引に関する詳細、比較可能性を向上させるための必要な調整等)

付録D

ポジションペーパー

PATA加盟国のポジションペーパーには、次に掲げる項目を記載することが望ましい。

a) 関連企業の名称、所在地、事業内容、納税者番号及び関連企業と判断した理由

b) 申請された対象取引についての説明

c) PATA加盟国における納税者の、関係する機能、資産及びリスクについての確認

d) 対象取引について最も適正と考えられる移転価格算定方法及び当該移転価格算定方法により独立企業原則に一致した結果となる旨の詳細な説明

e) 信頼できる経済データ又は経済報告、説明並び納税者の文書又は記録(比較対象取引に関する詳細、比較可能性を向上させるための必要な調整等)

f) 適用される条約に基づき文書の機密性を保持する義務の告示

付属E

連絡先

本ガイドラインに基づく連絡及び情報交換は、次の所在地になされるものとする。

Mr. Paul Duffus
First Assistant Commissioner
International Strategy and Operations
Competent Authority
Australian Taxation Office
PO Box 900, Civic Square
Canberra ACT 2608
Australia

Mr. Jim Gauvreau
Director
Competent Authority Services Division
International Tax Directorate
Canada Customs and Revenue Agency
5th Floor, Canada Building
344 Slater St.
Ottawa, Ontario
Canada, K1A OL5

Mr. Takeo Shikado
Deputy Commissioner
National Tax Agency
Ministry of Finance
1-1 Kasumigaseki 3-chome
Chiyoda-ku, Tokyo 100-8978, Japan

Mr. Robert H. Green
Director, International
Internal Revenue Service
Department of the Treasury
1111 Constitution Avenue N.W.
Washington, D.C. 20224
U.S.A.

本付録の情報は、2004年2月6日に最終更新された。