平成29年11月
東京国税局

相続税について、平成28事務年度(平成28年7月から平成29年6月までの間)に実施した実地調査の状況をまとめましたのでお知らせします。

1 実地調査件数及び申告漏れ等の非違件数

相続税の実地調査は、平成26年に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報等から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案等について実施しました。
 実地調査の件数は3,227件(平成27事務年度3,194件)、このうち申告漏れ等の非違があった件数は2,468件(平成27事務年度2,401件)で、非違割合は76.5%(平成27事務年度75.2%)となっています。

2 申告漏れ課税価格

申告漏れ課税価格は957億円(平成27事務年度745億円)で、実地調査1件当たりでは2,964万円(平成27事務年度2,331万円)となっています。

3 申告漏れ相続財産の金額の内訳

申告漏れ相続財産の金額の内訳は、有価証券261億円(平成27事務年度105億円)が最も多く、続いて現金・預貯金等231億円(平成27事務年度229億円)、土地110億円(平成27事務年度97億円)の順となっています。

4 追徴税額

追徴税額(加算税を含む。)は284億円(平成27事務年度175億円)で、実地調査1件当たりでは880万円(平成27事務年度549万円)となっています。

5 重加算税の賦課件数

重加算税の賦課件数は233件(平成27事務年度224件)、賦課割合は9.4%(平成27事務年度9.3%)となっています。


(別表) 相続税の調査事績

事務年度等 平成27事務年度 平成28事務年度  
項目 対前事務年度比
丸1実地調査件数
3,194 3,227 101.0
丸2申告漏れ等の非違件数
2,401 2,468 102.8
丸3非違割合(丸2/丸1)ポイント
75.2 76.5 1.3
丸4重加算税賦課件数
224 233 104.0
丸5重加算税賦課割合(丸4/丸2)ポイント
9.3 9.4 0.1
丸6申告漏れ課税価格(※)億円億円
745 957 128.5
丸7丸6のうち重加算税賦課対象億円億円
109 152 139.0
丸8追徴税額本税億円億円
153 244 159.8
丸9加算税億円億円
23 40 176.3
丸10合計億円億円
175 284 161.9
丸11実地調査1件当たり申告漏れ課税価格(※)(丸6/丸1)万円万円
2,331 2,964 127.1
丸12追徴税額(丸10/丸1)万円万円
549 880 160.2

(※) 「申告漏れ課税価格」は、申告漏れ相続財産額(相続時精算課税適用財産を含む。)から、被相続人の債務・葬式費用の額(調査による増減分)を控除し、相続開始前3年以内の被相続人から法定相続人等への生前贈与財産額(調査による増減分)を加えたものである。このため、付表1「申告漏れ相続財産の金額の推移」の金額と一致しない。

(付表1) 申告漏れ相続財産の金額の推移

平成24事務年度から平成28事務年度の相続税の申告漏れ相続財産内訳ごとの金額の推移を表したグラフ

(付表2) 申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移

平成24事務年度から平成28事務年度の相続税の申告漏れ相続財産内訳ごとの金額の構成比の推移を表したグラフ

(付表3-1) 海外資産関連事案に係る調査事績

納税者の資産運用の国際化に対応し、相続税の適正な課税を実現するため、相続税調査の実施に当たっては、租税条約等に基づく情報交換制度を効果的に活用するなど、海外資産の把握に努めています。資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案など、海外資産関連事案については、本事務年度においても積極的に調査を実施します。

事務年度等 平成27事務年度 平成28事務年度  
項目 対前事務年度比
丸1 海外資産関連事案に係る実地調査件数      
361 385 106.6
丸2 海外資産に係る申告漏れ等の非違件数 262 283 108.0
52 62 119.2
丸3 海外資産に係る重加算税賦課件数 15 25 166.7
5 3 60.0
丸4 海外資産に係る申告漏れ課税価格 109 億円 142 億円 131.0
23 32 142.0
丸5 丸4のうち重加算税賦課対象 18 億円 10 億円 54.6
3 4 148.1
丸6 非違1件当たりの申告漏れ課税価格(丸4丸2 4,141 万円 5,021 万円 121.3
4,392 5,230 119.1

(注1) 海外資産関連事案とは、丸1相続又は遺贈により取得した財産のうちに海外資産が存するもの、丸2相続人、受遺者又は被相続人が日本国外の居住者であるもの、丸3海外資産等に関する資料情報があるもの、丸4外資系金融機関との取引のあるもの等のいずれかに該当する事案をいう。

(注2) 左肩数は、国内資産に係る非違も含めた計数を示す。

平成24事務年度から平成28事務年度の海外資産関連事案に係る調査事績の推移を表したグラフ

(付表3-2) 海外資産関連事案に係る財産別非違件数の推移

平成24事務年度から平成28事務年度の海外資産関連事案に係る調査事績の財産別の非違件数を表したグラフ

(付表3-3) 海外資産関連事案に係る地域別非違件数の推移

平成24事務年度から平成28事務年度の海外資産関連事案に係る調査事績の地域別の非違件数を表したグラフ

(注) 「海外資産関連事案に係る財産別非違件数の推移」及び「海外資産関連事案に係る地域別非違件数の推移」は延べ件数であり、「丸2海外資産に係る申告漏れ等の非違件数」とは一致しない。

(付表4) 無申告事案に係る調査事績

無申告事案は、申告納税制度の下で自発的に適正な申告・納税を行っている納税者の税に対する公平感を著しく損なうものであることから、資料情報の更なる収集・活用など無申告事案の把握のための取組を積極的に行い、的確な課税処理に努めています。

事務年度等 平成27事務年度 平成28事務年度  
項目 対前事務年度比
丸1実地調査件数
178 201 112.9
丸2申告漏れ等の非違件数
122 129 105.7
丸3非違の割合(丸2/丸1ポイント
68.5 64.2 マイナス4.4
丸4申告漏れ課税価格億円億円
151 169 111.8
丸5追徴税額本税億円億円
8 18 232.2
丸6加算税億円億円
2 4 213.1
丸7合計億円億円
10 22 228.7
丸8実地調査1件当たり申告漏れ課税価格(丸4/丸1)万円万円
8,480 8,395 99.0
丸9追徴税額(丸7/丸1)万円万円
537 1,087 202.5

国税庁においては、実地による税務調査を適切に実施する一方で、納税者の自発的な納税義務の履行支援等を目的とした実地調査以外の多様な手法を効果的・効率的に活用し、適正申告の確保に努めています。
 その一環として、税務署が保有する情報から相続税の無申告が想定される相続人等に対し、無申告理由のお尋ね等による書面照会を行うなど、自発的な期限後申告書の提出を促す取組も実施しております。

(付表5) 贈与税に係る調査事績

国税庁では、相続税の補完税である贈与税の適正な課税を実現するため、積極的に資料情報を収集するとともに、相続税調査時等、あらゆる機会を通じて財産移転の把握に努めており、無申告事案を中心に、本事務年度も積極的に贈与税の調査を実施します。
 また、納税者の自発的な納税義務の履行支援等を目的とした実地調査以外の多様な手法を効果的・効率的に活用し、適正申告の確保に努めています。

事務年度等 平成27事務年度 平成28事務年度  
項目 対前事務年度比
丸1実地調査件数
629 673 107.0
丸2申告漏れ等の非違件数
545 580 106.4
丸3申告漏れ課税価格百万円百万円
3,964 3,627 91.5
丸4追徴税額百万円百万円
1,429 1,301 91.0
丸5実地調査1件当たり申告漏れ課税価格(丸3/丸1)万円万円
630 539 85.5
丸6追徴税額(丸4/丸1)万円万円
227 193 85.1

1.調査事績に占める無申告事案の状況(平成28事務年度)

○ 国税庁では、あらゆる機会を通じて把握した生前の資産保有・移動状況に関する情報を蓄積・活用するなどして、贈与税の無申告事案の積極的な調査に努めています。

平成28事務年度の贈与税の申告漏れの非違件数を表したグラフ:平成28事務年度の贈与税の申告漏れの課税価格を表したグラフ

2.調査事績に係る財産別非違件数(平成28事務年度)

平成28事務年度の贈与税の調査事績に係る申告漏れの各財産の課税価格を表したグラフ

(注) 各財産の件数は非違件数(延件数)、( )内の数値は構成比。