1 照会の趣旨

当協会は、老人福祉法第30条に規定する「有料老人ホーム協会」であり、同法第29条に規定する有料老人ホームを会員(以下「本件会員」といいます。)として、入居者の保護及び有料老人ホーム事業の質の向上等を目的とした活動を行っています。

本件会員は、入居者(以下「本件入居者」といいます。)との間で締結する有料老人ホームの入居に係る契約(以下「本件契約」といいます。)に基づき、本件入居者から入居一時金(以下「本件入居一時金」といいます。)を受領しますが、本件入居一時金の受領事実を証明するために、本件入居者に「預り証」(PDF/13KB)(別添参照)を交付しています。

この「預り証」は、印紙税法上、「金銭又は有価証券の受取書で売上代金に係るもの以外のもの」(第17号の2文書)に該当すると解してよろしいでしょうか。

2 照会に係る取引等の事実関係

(1) 本件契約における本件入居一時金についての定め

本件契約において、本件入居一時金は、有料老人ホームの目的施設(居室及び共用施設)を終身にわたって利用するための家賃相当額に充当すること、老人福祉法第29条第6項において受領が禁止されている権利金又は対価性のない金品に該当しないことが定められています。

(2) 老人福祉法の規定

有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除くほか、権利金その他の金品を受領してはならないとされています(老人福祉法296)。

また、有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたって受領すべき家賃その他厚生労働省令で定めるもの(※)の全部又は一部を前払金として一括して受領するものは、当該前払金の算定の基礎を書面で明示し、かつ、当該前払金について返還債務を負うこととなる場合に備えて厚生労働省令で定めるところにより必要な保全措置を講じなければならないとされ(老人福祉法297)、当該前払金を受領する場合においては、有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならないとされています(老人福祉法298)。

※ 「厚生労働省令で定めるもの」については、老人福祉法施行規則第20条の9において、入居一時金、介護一時金、協力金、管理費、入会金その他いかなる名称であるかを問わず、有料老人ホームの設置者が、家賃又は施設の利用料並びに介護、食事の提供及びその他の日常生活上必要な便宜の供与の対価として収受する全ての費用(敷金(家賃の6月分に相当する額を上限とする。)として収受するものを除く。)と規定されています。

なお、厚生労働省が定める有料老人ホーム設置運営標準指導指針においては、前払い方式(終身にわたって受領すべき家賃又はサービス費用の全部又は一部を前払金として一括受領する方式)によって入居者が支払を行う場合の基準等が定められており、終身にわたる契約における前払金の算定根拠については、想定居住期間を設定した上で、次の方法により算定することを基本とするとされています。

(1ヶ月分の家賃又はサービス費用)×(想定居住期間(月数))+(想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額)

※ 「想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額」は非返還対象です。

(3) 照会における前提事項

本照会において本件会員が本件入居者から受領する本件入居一時金は、老人福祉法第29条第7項に規定する「前払金」に該当し、本件入居一時金には、上記(2)の「想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額」が含まれていないことを照会の前提とします。

3 2の事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由

(1) 印紙税法の規定

イ 金銭又は有価証券の受取書の意義

印紙税法別表第一《課税物件表》には、第17号文書として「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」及び「金銭又は有価証券の受取書で売上代金に係るもの以外のもの」が掲げられており、ここでいう「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者がその受領事実を証明するために交付する単なる証拠証書をいいます(印基通別表第一第17号文書1)。

ロ 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書

売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書とは、資産を譲渡し若しくは使用させること(当該資産に係る権利を設定することを含む。)又は役務を提供することによる対価(手付けを含み、金融商品取引法第2条第1項に規定する有価証券その他これに準ずるもので政令で定めるものの譲渡の対価、保険料その他政令で定めるものを除く。)として受け取る金銭又は有価証券の受取書をいうとされています(印法別表第一第17号文書定義)。

ここでいう「対価」とは、ある給付に対する反対給付の価格をいい、反対給付に該当しないもの、例えば、借入金、担保物(担保有価証券、保証金、証拠金等)、寄託物(寄託有価証券、預貯金等)、割戻金、配当金、保険金、損害賠償金(遅延利息及び違約金を含む。)、各種補償金、出資金、租税等の納付受託金、賞金、各種返還金等は、売上代金に該当しないとされています(印基通別表第一第17号文書15)。

(2) 照会事項に対する見解

上記(1)イのとおり、「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券の引渡しを受けた者がその受領事実を証明するために交付する単なる証拠証書をいうとされているところ、「預り証」は、その記載内容及び本件入居一時金の受領事実を証明するために本件会員が本件入居者に交付するものであり、第17号文書に該当します。

また、本件入居一時金が、売上代金に該当するかどうかは、上記(1)ロより、本件入居一時金が、資産を譲渡し若しくは使用させること又は役務を提供することによる対価であるかどうかで判断すべきであるところ、本件入居一時金は、老人福祉法上、一定期間を経過するまでは、返還義務を負っていることから、返還義務が消滅した時点においては「売上代金」に該当しますが、本件入居一時金を受領した時点においては、返還義務を負った「預り金」としての金銭の受領であり「売上代金」に該当しません。

したがって、本件入居一時金の受領事実を証明する文書である「預り証」は、金銭又は有価証券の受取書で売上代金に係るもの以外のもの(第17号の2文書)に該当すると考えます。

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