1 事前照会の趣旨

私は、不動産賃貸業を営んでおり、その所得については不動産所得として申告を行っています。
 私は、当該事業に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)について平成○年から簡易課税制度を選択し、申告及び納税を行っていましたが、関与税理士から、オフィスビルを取得する日の属する課税期間の初日の前日までに簡易課税制度選択不適用届出書を提出すればオフィスビルの取得に係る消費税等相当額のうち一定の金額の還付を受けることができる旨の説明がなかったため、当該届出書を提出せず、当該還付を受けることができませんでした。関与税理士に私が被った損害に対する賠償を請求したところ、簡易課税制度を適用しないとした場合の消費税等の還付相当額と実際に納付した消費税等の額との合計額を基に算定した一定の金額(以下「本件金額」といいます。)を同人から受領することになりました。
 この場合、本件金額は、所得税法上、非課税所得には該当せず、私の不動産所得の金額の計算上、本件金額を受領することが確定した日の属する年分の不動産所得に係る総収入金額に含めるべきものと解してよろしいか照会いたします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

本件に係る事実関係は、次のとおりです。

  1. (1) 私は、不動産賃貸業を営んでおり、平成○年から平成23年までの課税期間分の消費税等の申告においては簡易課税制度(消費税法第37条)を選択していました。
  2. (2) 平成24年に新たにオフィスビルの取得を予定していたため、その旨を関与税理士に説明し、税の取扱いについて相談していました。平成23年中に簡易課税制度選択不適用届出書を提出すればオフィスビルの取得に係る消費税等相当額のうち一定の金額の還付を受けることができたにもかかわらず、関与税理士は私に対しその説明を行わなかったことから、私は、平成24年1月1日から平成24年12月31日までの課税期間分の消費税等の申告において簡易課税制度の適用を受けたまま申告及び納税を行いました。
  3. (3) その後、関与税理士に対し民法第709条《不法行為による損害賠償》に基づき私が被った損害に対する賠償を請求したところ、平成30年○月○日に、関与税理士との間で、本件金額を損害賠償として支払う旨の合意書を締結し、関与税理士から同年中に本件金額を受領いたしました。
  4. (4) 私は、消費税等の経理方式として税抜経理方式を適用しており、本件金額相当額については、所得税法施行令第182条の2《資産に係る控除対象外消費税額等の必要経費算入》の規定に基づき、平成24年分のほか、平成25年分から平成29年分までの各年分に繰り延べて、その全額を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入しています。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

  1. (1) 非課税規定の範囲
     不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金は非課税とされておりますが(所法9@十七、所令30二)、その損害賠償金のうち、その損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、損害賠償金から当該金額を控除した金額に相当する部分が非課税とされます(所令30柱書)。
  2. (2) 本件金額の性質
     一般に、税理士が作成した確定申告書に誤りがあり修正申告により税金を納めることとなったとしても、本税については本来納めるべき税額を納めたに過ぎないことから損害が生じていることにはなりませんが、本件では、簡易課税制度を選択するか否かは納税者の選択によるところ、関与税理士の説明不足により簡易課税制度の適用を受けたまま申告及び納税を行った結果、私が支払ったオフィスビルの取得に係る消費税等相当額のうち一定の金額について、原則的な制度(消費税法第30条)を適用すれば還付を受けられたであろう金額につき還付を受けられなくなったため、経済的に損失が生じたといえ、本件金額は、当該損失を補てんするものであることから、所得税法施行令第30条第2号に規定する「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に該当すると考えられます。
     しかしながら、税込経理方式又は税抜経理方式の別はあるものの、消費税等の額はその性質上、所得税の課税所得金額の計算に含めるものとされており、その事業者が負担した消費税等の額については必要経費に算入されている(本件については、上記2(4)のとおり、本件金額相当額は、平成24年分から平成29年分までの不動産所得の金額の計算上その全額が必要経費に算入されている。)ことからすれば、本件金額は、当該必要経費に算入されている金額をその範囲内で補てんするものであり、所得税法上非課税とされる損害賠償金から除かれることになるものと考えられます。
     したがって、本件金額は、私の平成30年分の不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入することとなります。

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