上記の課税関係における考え方は、会社法第197条第3項の規定に基づき買取りがされた場合においても異なるものではないと理解しております。
- A 所得区分について
- 所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合は、所得税法第25条第1項第4号及び措置法第37条の10第3項第4号に規定する「法人の自己の株式の取得」に該当するため、上記1(3)イ(イ)に記載のとおり取り扱われることとなるものと解することが相当であると考えます。
- B 収入すべき時期について
- 株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期は、措置法第37条の10第3項第4号に規定する法人の自己の株式の取得によるものについては、その法人の取得の日によるとされている(措置法関係通達37の10−1(6)ホ)ことから、上記競売及び市場売却と同様、株式会社による自社の株式の買取りの日とするのが相当であると考えます。
一方、配当所得の収入金額の収入すべき時期については、剰余金の配当等については、当該剰余金等の配当等について定めたその効力を生じる日とし、所得税法第25条の規定により配当等とみなされる金額のうち同条第1項第4号に掲げる自己の株式の取得によるものについては、その法人の取得の日とされています(所得税基本通達36-4)。
また、居住者に対し国内において配当等の支払をする者は、その支払の際、その配当等について所得税を徴収し、その徴収した日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないとされていますが(所得税法181)、配当等について支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして源泉徴収をしなければならないこととされています(所得税法181)。この場合の「支払の確定した日」とは、配当所得の収入金額の収入すべき時期を定めた所得税基本通達36-4によることとされている(所得税基本通達181−5)ことから、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合には、その買い取られた日から1年を経過しても支払われていないときは、その1年を経過した日に支払があったものとして源泉徴収を要することとなります。
以上のことからしますと、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合の配当所得の収入すべき時期については、その株式会社の買取りの日とするのが相当であり、このことは、配当の支払がされなくても、その支払の確定した日から1年を経過した日に源泉徴収が行われることとも整合性がとれるものと考えます。
- C 上場株式等を譲渡した場合の各特例の適用について
- 措置法第37条の11の2は、居住者等が行った上場株式等の譲渡における譲渡所得の取得費の金額に係る特例であるところ、上記のとおり、当該買取りは、所在不明株主に帰属する株式の譲渡であることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち措置法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、同法第37条の11の2の適用があるものと考えます。
一方、措置法第37条の12の2第2項は、上場株式等に係る譲渡損失の金額について、上場株式等の譲渡のうち同法第37条の10第3項各号に規定する事由による上場株式等の譲渡をその対象と規定していることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち同項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、同法第37条の12の2の適用があるものと考えます。また、平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条第2項は、措置法第37条の12の2第2項各号に掲げる上場株式等の譲渡をその適用のあるものとしていることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち同法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条第2項の適用があるものと考えます。