別紙

1 事前照会の趣旨
会社法第197条《株式の競売》第1項に規定する株式の株主(以下「所在不明株主」といいます。)が所有する当該株式が同条第2項に基づき市場売却された場合における個人である当該株主の課税関係については、東京国税局審理課長による平成21年2月20日付の文書回答(以下「文書回答先例」といいます。)において明らかにされているところですが、上場会社である株式会社が所在不明株主の株式を会社法第197条第1項ないし第3項に基づき競売等や自社の株式の買取りを行った場合における個人及び法人である所在不明株主の課税関係、支払調書の取扱い及び当該株式会社の課税関係について、次のとおり解して差し支えないか、ご照会申し上げます。
  1. (1) 会社法第197条第1項に基づく競売の場合

    個人である所在不明株主の株式の競売による所得の区分、収入すべき時期及び上場株式等を譲渡した場合の各特例(租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第37条の11の2《平成十三年九月三十日以前に取得した上場株式等の取得費の特例》、措置法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除》及び平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条《上場株式等を譲渡した場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する経過措置》第2項、以下同じ。)の適用については、次のとおり、文書回答先例と同様の取扱いとなります。

    • イ 個人である所在不明株主の株式の競売による所得は、株式等に係る譲渡所得等となります。
    • ロ 個人である所在不明株主の株式の競売による株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期は、株式の引渡しがあった日である競売の日となります。
    • ハ 個人である所在不明株主の上場株式の競売による株式等に係る譲渡所得には、措置法第37条の11の2の適用があります。
       また、個人である所在不明株主の上場株式の競売が、金融商品取引業者に対する上場株式の譲渡等により行われたものである場合には、その競売による上場株式等に係る譲渡所得等には、措置法第37条の12の2及び平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条第2項の各特例の適用があります。

    一方、法人である所在不明株主の株式の競売に係る譲渡利益額又は譲渡損失額については、当該株式が競売された日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとなります。

  2. (2) 会社法第197条第2項に基づく市場売却の場合

    法人である所在不明株主の株式の市場売却に係る譲渡利益額又は譲渡損失額については、当該株主の株式が市場売却された日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとなります。

  3. (3) 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
    イ 個人である所在不明株主の場合
    1. (イ) 株式会社による自社の株式の買取りによる所得区分については、交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該株式会社の法人税法第2条第16号に規定する資本金等の額又は同条第17号の2に規定する連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となった当該株式会社の株式に対応する部分の金額を超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、所得税法第25条第1項第4号の規定により同法第24条第1項に規定する配当所得とみなされ、その余の交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額は、措置法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされます。
    2. (ロ) 株式会社による自社の株式の買取りによる株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期及びみなし配当所得の収入金額の収入すべき時期は、株式の買取りがあった日である当該株式会社による自社の株式の取得の日となります。また、上場株式等を譲渡した場合の各特例の適用があります。
    ロ 法人である所在不明株主の場合
    1. (イ) 株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該株式会社の資本金等の額又は連結個別資本金等の額のうちその交付の基因となった当該株式会社の株式に対応する部分の金額を超える部分の金額に係る金銭その他の資産は、法人税法第23条第1項第1号に掲げる配当とみなされます。
    2. (ロ) 株式会社による自社の株式の買取りによる当該株式の譲渡に係る利益又は損失の額の計上時期及びみなし配当の収益の計上時期は、株式の買取りがあった日である当該株式会社による自社の株式の取得の日となります。
    ハ 所得税の源泉徴収の取扱い
    株式会社が所在不明株主に対しその買取りに係る代金を支払う際に、所得税法第25条第1項第4号の規定により同法第24条に規定する配当所得とみなされる金額について所得税を徴収し、その徴収した日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付することとなります。
    また、その支払の確定した日である株式の買取りの日から1年を経過した日までにその支払がない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして、上記の配当について所得税の源泉徴収を行うこととなります。
    なお、上記の源泉徴収税率については、上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例(措置法第9条の3《上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例》、平成20年改正法附則第33条《上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例に関する経過措置》第2項・第3項及び平成21年改正後の平成20年改正法附則第33条第2項、以下同じ。)の適用があります。
  4. (4) 支払調書の取扱い
    1. イ 会社法第197条第1項又は第2項に基づく競売又は市場売却の場合
      株式会社は、所在不明株主について、その各人別の株式等の譲渡の対価の額が100万円を超える場合に当該対価の支払を受けた日の属する年の翌年1月31日までに「名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書」及び「名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書合計表」を提出する必要があります。
      なお、上記調書を提出した後、株式を所有していた所在不明株主に当該株式の譲渡代金を支払うときなどに、当該調書に記載したその者の住所や氏名等について異なることが判明した場合は、その異なる事項を訂正した調書及び合計表を再提出する必要があります。
    2. ロ 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
      株式会社は、所在不明株主について、上記(3)に記載の配当所得に係る部分についてその株式の買取りの日から1月以内に「配当等とみなす金額に関する支払調書」及び「配当等とみなす金額に関する支払調書合計表」を、各人別のその余の部分(措置法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分)の金額が30万円を超える場合に同日の属する年の翌年1月31日までに「交付金銭等の支払調書」及び「交付金銭等の支払調書合計表」を、それぞれ提出する必要があります。
      なお、上記各支払調書を提出した後、株式を所有していた所在不明株主に当該株式の譲渡代金を支払うときなどに、当該各支払調書に記載したその者の住所や氏名等について異なることが判明した場合は、その異なる事項を訂正した調書及び合計表を再提出する必要があります。
  5. (5) 株式会社の課税関係
    1. イ 会社法第197条第1項又は第2項に基づく競売又は市場売却の場合
      株式会社が会社法第197条第1項又は第2項の規定に基づき競売又は市場売却を行い、その競売等の代金の受入れの際には、その代金を預り金(負債)に計上し、その後、所在不明株主に対して当該代金を交付した場合には当該預り金を減少させ、一方、債権等の消滅時効によって当該代金が当該株式会社に帰属した場合には、当該帰属した日の属する事業年度の雑収入に計上することとなります。
    2. ロ 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
      株式会社が会社法第197条第3項の規定に基づき自社の株式の買取りを行った時点で、当該株式会社の資本金等の額及び利益積立金額の減少させる処理を行うと同時に買取代金を未払金に計上し、その後、所在不明株主に対して当該代金を交付した場合には当該未払金を減少させ、一方、債権等の消滅時効によって当該代金が当該株式会社に帰属した場合には、当該帰属した日の属する事業年度の雑収入に計上することとなります。
2 事前照会に係る取引等の事実関係
当社は、株式会社の株主名簿管理人としての業務を行っており、当社が当該業務を取り扱う上場会社である株式会社において、所在不明株主の株式につき会社法第197条に基づく売却等や自社による買取りを行います。
なお、上記の売却等による所在不明株主の株式の代金は、それぞれの株式会社において預かり、所在不明株主からの請求に応じて支払うこととなります。
3 事前照会者の求める見解となることの理由
  1. (1) 上記1(1)ないし(3)について
    イ 個人である所在不明株主の場合
    1. (イ) 会社法第197条第1項に基づく競売の場合
        個人である所在不明株主の株式が会社法第197条第2項の規定に基づき市場売却された場合の当該個人の課税関係については、既に、文書回答先例におきまして、所得税法上の収入金額の収入すべき時期は当該株主としての権利が当該所在不明株主から第三者に移転した時であり、所得区分や上場株式等を譲渡した場合の各特例の適用は、その市場売却による売却代金の支払を請求し得る権利を所在不明株主が取得し、その売却代金が当該株主に帰属するものとして判断すべきことが明らかにされていますが、これらの課税関係における考え方は、会社法第197条第1項の規定に基づき競売された場合においても異なるものではないものと理解しております。
    2. (ロ) 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
        上記の課税関係における考え方は、会社法第197条第3項の規定に基づき買取りがされた場合においても異なるものではないと理解しております。
      A 所得区分について
      所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合は、所得税法第25条第1項第4号及び措置法第37条の10第3項第4号に規定する「法人の自己の株式の取得」に該当するため、上記1(3)イ(イ)に記載のとおり取り扱われることとなるものと解することが相当であると考えます。
      B 収入すべき時期について
      株式等に係る譲渡所得等の総収入金額の収入すべき時期は、措置法第37条の10第3項第4号に規定する法人の自己の株式の取得によるものについては、その法人の取得の日によるとされている(措置法関係通達37の10−1(6)ホ)ことから、上記競売及び市場売却と同様、株式会社による自社の株式の買取りの日とするのが相当であると考えます。
      一方、配当所得の収入金額の収入すべき時期については、剰余金の配当等については、当該剰余金等の配当等について定めたその効力を生じる日とし、所得税法第25条の規定により配当等とみなされる金額のうち同条第1項第4号に掲げる自己の株式の取得によるものについては、その法人の取得の日とされています(所得税基本通達36-4)。
      また、居住者に対し国内において配当等の支払をする者は、その支払の際、その配当等について所得税を徴収し、その徴収した日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないとされていますが(所得税法1811)、配当等について支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして源泉徴収をしなければならないこととされています(所得税法1812)。この場合の「支払の確定した日」とは、配当所得の収入金額の収入すべき時期を定めた所得税基本通達36-4によることとされている(所得税基本通達181−5)ことから、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合には、その買い取られた日から1年を経過しても支払われていないときは、その1年を経過した日に支払があったものとして源泉徴収を要することとなります。
      以上のことからしますと、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合の配当所得の収入すべき時期については、その株式会社の買取りの日とするのが相当であり、このことは、配当の支払がされなくても、その支払の確定した日から1年を経過した日に源泉徴収が行われることとも整合性がとれるものと考えます。
      C 上場株式等を譲渡した場合の各特例の適用について
      措置法第37条の11の2は、居住者等が行った上場株式等の譲渡における譲渡所得の取得費の金額に係る特例であるところ、上記のとおり、当該買取りは、所在不明株主に帰属する株式の譲渡であることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち措置法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、同法第37条の11の2の適用があるものと考えます。
      一方、措置法第37条の12の2第2項は、上場株式等に係る譲渡損失の金額について、上場株式等の譲渡のうち同法第37条の10第3項各号に規定する事由による上場株式等の譲渡をその対象と規定していることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち同項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、同法第37条の12の2の適用があるものと考えます。また、平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条第2項は、措置法第37条の12の2第2項各号に掲げる上場株式等の譲渡をその適用のあるものとしていることから、所在不明株主が、株式会社による自社の株式の買取りにより交付を受けた金額のうち同法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる部分は、平成21年改正後の平成20年改正法附則第43条第2項の適用があるものと考えます。
    ロ 法人である所在不明株主の場合
    1. (イ) 会社法第197条第1項に基づく競売の場合
        法人税法第61条の2第1項は、内国法人が有価証券の譲渡をした場合には、その譲渡に係る利益又は損失の額は、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する旨規定しています。
      株式の競売は会社法所定の手続に基づいて行われますが、会社法第197条第1項の規定により所在不明株主の株式が競売された場合には、株主の権利は金銭債権に代わり、株主の権利が法的に消滅することとなります。
      このため、株主の権利が法的に消滅した時点で有価証券の譲渡損益を計上することが法人税法第61条の2第1項の規定に照らして相当であることから、所在不明株主の株式が競売された日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入するのが相当であると考えます。
    2. (ロ) 会社法第197条第2項に基づく市場売却の場合
        会社法第197条第2項の規定により、所在不明株主の株式が競売に代えて市場売却された場合にあっても、上記(イ)の競売された場合とその前提とするところは同じであるため、事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する時期について、同様に解するのが相当であると考えます。
      したがって、所在不明株主の株式が市場売却された日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入するのが相当であると考えます。
    3. (ハ) 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
        会社法第197条第3項の規定により、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた場合にあっても、当該株式の買取りによる譲渡に係る利益又は損失の額については、上記(イ)及び(ロ)の場合とその前提とするところは同じであるため、事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する時期について、同様に解するのが相当であると考えます。
      したがって、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社により買取りがされた日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入するのが相当であると考えます。
      また、自己の株式又は出資の取得によるみなし配当(法人税法24)の収益計上時期については、法人税基本通達2-1-27(4)ホにおいて、その取得の日となることが明らかにされていることから、所在不明株主の株式が当該株式に係る株式会社による買取りに係るみなし配当の収益は、当該株式がその株式会社に買取りがされた日の属する事業年度の収益に算入するのが相当であると考えます。
    ハ 所得税の源泉徴収の取扱い
    所在不明株主の株式の買取価額のうち資本金等の額を超える部分についてはみなし配当に該当する(所得税法251四)ことから、当該株式に係る株式会社は、所在不明株主に対しその買取代金を支払う際に、その配当について所得税を徴収し、その徴収した日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないこととなりますが、所得税法第181条第2項(所在不明株主が法人の場合は同法第212条第4項)の規定により、所在不明株主に対し、支払の確定した日である当該株式会社による自社の株式の買取りの日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があったものとみなして、源泉徴収を行わなければならないと解することが相当であると考えます。
    なお、上記の源泉徴収税率については、所在不明株主に帰属する上場株式等の配当等に係るものであることから、上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例の適用があるものとなります。
  2. (2) 上記1(4)について
    1. イ 会社法第197条第1項又は第2項に基づく競売又は市場売却の場合
      株式会社が会社法第197条第1項及び第2項の規定により株式の競売又は市場売却を行った場合には、所在不明株主の株式を譲渡するものであり、その対価の支払を受けるのが当該株式会社であったとしても、上記(1)に記載のとおり、その対価は当該株式会社に帰属するものでなく、所在不明株主に帰属するものであることから、当該株式会社は、所得税法第228条第2項に規定する業務に関連して他人のために名義人として株式等の譲渡の対価の支払を受ける者に該当するものと解することが相当と考えます。
      したがって、株式会社は、所得税法第228条第2項の規定に基づき、「名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書」を提出する必要があるものと考えます。
      なお、上記の場合、当該株式会社は所得税法第224条の3第1項第3号に規定する「会社法第234条第1項又第235条第1項の規定その他政令で定める規定により1株又は1口に満たない端数に係る株式等の競売をした法人」には該当せず、また、株式等の譲渡を受けた法人等は居住者等に対し株式等の対価の支払をするものでないため、当該株式会社及び株式等の譲渡を受けた法人等は、「株式等の譲渡の対価の支払調書」を提出する必要はないものと考えます。
    2. ロ 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
      所得税法第25条第1項の規定により配当等とみなされる金額については、同法第225条第1項第2号の規定により「配当等とみなす金額に関する支払調書」を、所在不明株主に対する支払の確定した日である株式会社による自社の株式の買取りの日から1月以内に提出する必要があるものと考えます。
      また、措置法第37条の10第3項第4号の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされる金額については、所得税法第225条第1項第11号の規定により「交付金銭等の支払調書」を、所在不明株主に対する支払の確定した日である株式会社による自社の株式の買取りの日の属する年の翌年1月31日までに提出する必要があるものと考えます。
  3. (3) 上記1(5)について
    1. イ 会社法第197条第1項又は第2項に基づく競売又は市場売却の場合
      上記(1)に記載のとおり、株式会社が会社法第197条第1項又は第2項に基づく競売又は市場売却を行ったことによる所在不明株主の株式譲渡の対価は、当該株式会社に帰属するものではありませんので、上記1(5)イに記載のとおり取り扱われることとなるものと解することが相当であると考えます。
      また、このように株式譲渡の対価が当該株式会社に帰属するものでないとの前提に立てば、当該株式会社は株式譲渡の対価に相当する預り金(負債)を計上し、その後所在不明株主に対して預り金の払出しをした場合には貸借取引であるため損益に影響はありませんが、払出しをすることなく債権等の消滅時効の成立により預り金が消滅した場合には、その消滅時点において消滅した金額に相当する雑収入を計上することが相当であると考えます。
    2. ロ 会社法第197条第3項に基づく買取りの場合
      上記(1)に記載のとおり、株式会社が会社法第197条第3項の規定に基づき自社の株式の買取りを行った場合、その買取りの時に、株式会社は、自社の株式を取得し、所在不明株主は、株主としての地位を失う一方、その買取代金の支払を請求し得る権利(当該株式会社にとっては負債)を取得することとなり、その買取代金は当該株式会社に帰属するものではありませんので、上記1(5)ロに記載のとおり取り扱われることとなるものと解することが相当であると考えます。
      また、この場合における当該株式会社の負債の処理については、上記イと同様に取り扱うことが相当と考えます。