1 事前照会の趣旨

(1) 当組合は、技術研究組合法に基づき設立された技術研究組合です。技術研究組合は、産業活動において利用される技術の向上及び実用化を図るため、これに関する試験研究を協同して行うための組織とされており、当組合は、組合員(全て法人であり、以下「本件各組合員」といいます。)の技術水準向上を図るための事業等を行っています。
 この度、当組合は、これまでの研究開発の成果を自ら実用化するため、技術研究組合法第61条《組織変更》の規定に基づき、技術研究組合から株式会社へ組織変更(以下「本件組織変更」といいます。)を行う予定です。

(2) ところで、技術研究組合は、組合員の協力により試験研究を実施し、その成果を組合員に享受させることを主たる目的とするものであり、財貨を拠出してそれに対する金銭的な対価を得ることを目的とする営利法人とは根本的に異なるという考え等に基づき、いわゆる非出資制が採用されています。
 また、組織変更の際には、技術研究組合法第65条《組合員への株式の割当て》第1項の規定により、技術研究組合の組合員は、組織変更後の株式会社の株式の割当てを受けることとされていますが、上記のとおり、技術研究組合は非出資制が採用されているため、組合員の組合財産に対する持分が観念されず、組合は組合員の持分に応じた割当てをすることができません。そこで、同条第2項には、組織変更の際の株式の割当ては、技術研究組合の事業に対して組合員がした負担及び寄与の程度を勘案して定めることが規定されています。

(3) 以上のことから、本件組織変更に際し、本件各組合員は、本件組織変更までに当組合に対して納付した費用の額などに応じて組織変更後の株式会社の株式(以下「本件株式」といいます。)の割当てを受け、これを取得することが予定されていますが、本件株式の取得につき、本件各組合員は、法人税法施行令第119条《有価証券の取得価額》第1項第4号の規定により、本件株式の取得の時におけるその取得のために通常要する価額(時価)を本件株式の取得価額とし、同額を受贈益として益金の額に算入することとなると解して差し支えありませんか。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1) 本件各組合員は、当組合から、技術研究組合法第65条の規定に基づき本件株式の割当てを受け、これを取得します。なお、本件組織変更に際し、当組合は、同法第67条《組織変更における株式の発行》による有償での株式発行は行いません。

(2) 上記(1)の本件株式の割当ては、同法第65条第2項の規定に基づき、本件各組合員が組織変更までに納付した賦課金の累計額の比率など、当組合の事業に対してした負担及び寄与の程度に応じて組織変更計画に定められます。
 なお、本件各組合員に割り当てる株式の数に1株に満たない端数は生じません。
 また、当組合は、本件組織変更に際して本件各組合員に対して本件株式以外の資産の交付は行わず、本件各組合員は、本件株式の対価として新たな金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付は行いません。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

内国法人が有価証券の取得をした場合のその取得価額は、法人税法施行令第119条第1項において同項各号に掲げる有価証券の区分に応じたそれぞれに定める金額とされています。
 この点、本件株式は、本件各組合員が技術研究組合から株式会社への組織変更に際し、無償で交付を受けるものでありますが、組合員として交付を受けるものであり株主等として交付を受けるものではありません。そのため、本件株式は、同項第3号の株式等無償交付により取得をした株式や、同項第14号の組織変更に際して交付を受けた株式には該当せず、同項第4号の新たな払込み等をせずに取得をした有価証券に該当すると考えられます。
 したがって、同号の規定により、本件各組合員が取得する本件株式の取得価額は、その取得の時における当該株式の取得のために通常要する価額(時価)となり、同額を本件株式の受贈益として益金の額に算入することとなると考えます。