1 事前照会の趣旨

設計技術サービスの請負を業とする当社では、従前から提供してきたサービス以外に、新たにビッグデータ等を活用したいわゆるサービス開発として、異常検知サービス、姿勢認識サービス、図面認識サービス及び設計情報認識サービス(以下、これらのサービスをまとめて「本件各サービス」といいます。)の提供を開始することとしています。
 ところで、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(以下「試験研究費税額控除制度」といいます。)において、「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として政令で定めるもののために要する費用」は、試験研究費の額に含まれ、特別控除の対象となることとされており(措法42の411一)、「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究」に該当するか否かについては、「大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法によつて行われた情報の収集又はその方法によつて収集された情報の取得」がその要件の一つとされています(措令27の41一)。
 本件各サービスの開発に際しては、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み込んだソフトウエアにより、センサー、Webカメラ等を利用して様々な媒体から自動的にデータを収集するとともに収集した情報を分析可能な形態に整形していますが、それぞれ収集するデータの量には差異があることから、このようなデータの収集及び整形機能が、常に「大量の情報を収集する機能」に該当するか疑義が生じます。しかしながら、こうした手順で行うデータの収集は、「大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法によつて行われた情報の収集又はその方法によつて収集された情報の取得」に該当すると解して差し支えないでしょうか。
 なお、本件各サービスの開発は、いずれも租税特別措置法施行令第27条の4第2項第2号ないし第4号に掲げるものに該当することを、本照会の前提とします。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

本件各サービスの開発手順の概略は、以下のとおりです。

1 情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して必要な知識を有する情報解析専門家(それぞれの修士課程を修了又は修了と同程度の知識を有します。)で構成する当社の専門部署又は外部委託先(以下「専門部署等」といいます。)において、AIを組み込んだ専用のソフトウエアにより、数値データ、動画、図面、仕様書及びカタログ等様々な媒体から分析のために必要な一定の質と量のデータを自動的に収集するとともに収集した情報を分析可能となるよう整形します。

1 専門部署等は、上記1で整形したデータについて、情報の解析を行う専用のソフトウエアを用いて分析を行い、一定の法則が発見されるか研究します。

1 上記1の研究により一定の法則が発見された場合には、専門部署等において、その法則を利用するサービスの設計・開発を行います。その過程において、その発見された法則が予測と結果とが一致することの蓋然性が高いものであることその他妥当であると認められるものであること、また、顧客に提供する新たなサービスとして成立するものであると認められることについて、繰り返し確認を行います。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 試験研究費税額控除制度の対象となる「試験研究費」の範囲
 試験研究費とは、製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する費用又は対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として政令で定めるもののために要する費用とされています(措法42の41一)。
 そして、この「対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究として政令で定めるもの」とは、対価を得て提供する新たな役務の開発を目的として次に掲げるものの全てが行われる場合における次に掲げるものをいうこととされています(措令27の41、措規201)。

イ 大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法によって行われた情報の収集又はその方法によって収集された情報の取得

ロ 上記イの収集に係る情報又は上記イの取得に係る情報について、一定の法則を発見するために行われる分析として、情報の解析に必要な確率論及び統計学に関する知識並びに情報処理に関して必要な知識を有すると認められる者により情報の解析を行う専用のソフトウエアを用いて行われるもの

ハ 上記ロの分析により発見された法則を利用した当該役務の設計

ニ 上記ハの設計に係る上記ハに規定する法則が予測と結果とが一致することの蓋然性が高いものであることその他妥当であると認められるものであること及び当該法則を利用した当該役務が当該目的に照らして適当であると認められるものであることの確認 

(2) 「大量の情報を収集する機能」への該当性について
 上記(1)イのとおり、いわゆるサービス開発に係る試験研究費税額控除制度においては、サービス開発の標本となるビッグデータ等の情報について、「大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法」によって収集又はその方法によって収集した情報の取得をすることが要件とされています。
 ここにいう「大量の情報を収集する機能」には、その後に行われる分析がその収集したデータを用いて一定の法則を導き出すことからすると、その分析において信頼できる分析結果を導き出すのに必要かつ十分な質と量の情報を、専用のソフトウエアを利用して自動的に収集する機能を有していれば、妥当するものと解されます。したがって、本件各サービスの開発において採用されている、AIを組み込んだソフトウエアにより、センサー、Webカメラ等の制御装置等を駆使して、様々な媒体から本件各サービスの開発のための分析に必要かつ十分な一定の質と量のデータを自動的に収集するとともに収集したデータを分析用に整形する手順で行われたデータの収集は、租税特別措置法施行令第27条の4第2項第1号に掲げる「大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法によつて行われた情報の収集又はその方法によつて収集された情報の取得」に該当するものと解して差し支えないと考えます。

(3) 本件各サービスの開発に係る試験研究について
 以上の点に加えて、本件各サービスの開発がいずれも租税特別措置法施行令第27条の4第2項第2号ないし第4号に掲げるものに該当することを踏まえると、本件各サービスの開発は、いずれも対価を得て提供する新たなサービスの開発を目的とするものであり、また、上記2の事実関係から上記(1)イないしニに掲げる要件に全て該当すると考えられるため、その開発に係る試験研究は試験研究費税額控除制度の対象となる試験研究に該当すると考えます。

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