別紙1 事前照会の要旨

当社(3月決算)は、倉庫業を営む法人であり、A県B市に土地を取得し、その土地の上に自社倉庫(以下「本件倉庫」といい、本件倉庫の敷地の用に供される土地と併せて「本件倉庫等」といいます。)を建設しています(平成29年3月末完成予定)。
 当社は、本件倉庫における事業開始後、本件倉庫等の取得に要する経費の一部に充てるものとして、A県から補助金(以下「本件補助金」といいます。)の交付を、また、B市から助成金(以下「本件助成金」といい、本件補助金と併せて「本件補助金等」といいます。)の交付を受ける予定です。
 本件補助金等は、本件倉庫等を取得した事業年度後の事業年度において、その交付決定及び交付額の確定(以下「交付決定等」といいます。)がされるものであり、A県から交付される本件補助金は、交付決定等の通知を受けた後、5年間で分割交付され、B市から交付される本件助成金は、交付決定等の通知後、全額が一括で交付されます。そして、本件補助金等の返還に関しては、一般的な条件が付されているのみですので、当該通知により、返還を要しないことが確定するものと考えています。
 そこで、当社は、本件倉庫等について、法人税法第42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》の規定による国庫補助金等の圧縮記帳の適用を受けることを考えています。
 同条の規定による国庫補助金等の圧縮記帳は、その規定上、国庫補助金等の交付を受けた後に交付の目的に適合した固定資産(以下「目的資産」といいます。)を取得する場合が想定されていますが、法人税基本通達10−2−2《固定資産の取得等の後に国庫補助金等を受けた場合の圧縮記帳》においては、目的資産を先行取得した場合にも、国庫補助金等の交付を受けた事業年度において法人税法第42条第1項の規定を適用することができるとされていますので、当社のように、本件倉庫等を取得した事業年度後の事業年度において、本件補助金等の交付を受ける場合であっても、その交付を受けた事業年度において、同項の規定の適用を受けることができると考えますが、本件補助金等について、次の1及び2のとおり解して差し支えないでしょうか。

1 同項は、国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの(以下「国庫補助金等」といいます。)の交付を受けた場合に適用できるが、B市から交付を受ける本件助成金は、「助成金」の名称ではあるものの、同項に規定する国庫補助金等に該当する。

2 同項は、国庫補助金等の「交付を受けた事業年度」において適用できるが、本件補助金は、5年間で分割して支払を受けることとなるものの、その交付決定等の通知を受けた日の属する事業年度において、その全額が同項の規定による国庫補助金等の圧縮記帳の対象となる。

なお、本件補助金等は、「固定資産の取得又は改良に充てるため」の国庫補助金等に該当することを照会の前提とします。

別紙2 事前照会に係る取引の事実関係

1 本件補助金について

本件補助金は、「A県補助金等交付規則」のほか、「A県物流施設誘致促進補助金交付要綱」に基づき、交付申請等の手続が行われることとなります。
 本件補助金の概要は、以下のとおりです。

(1) 交付の目的

本件補助金は、県内への物流施設(倉庫業等を営む者が自ら使用するために建設する倉庫等をいう。以下において同じ。)の立地を促進し、産業の活性化と雇用機会の拡大を図り、もって県民生活の安定と向上に資するため、物流施設の建設等に要する経費の一部に相当する金銭を交付するものである。

(2) 本件補助金の使途

本件補助金の使途は、物流施設の取得整備及び当該物流施設に係る土地の取得である。

(3) 認定申請

本件補助金を受けようとする者は、あらかじめ物流施設の建設工事に着手する日の原則として30日前までに、補助金認定申請書を知事へ提出しなければならない。

(4) 認定通知

知事は上記(3)による補助金認定申請書の提出があったときは、その内容を審査の上、適当と認めるときは認定の決定を行い、申請者に認定通知書を送付するものとする。

(5) 交付の申請

本件補助金を受けようとする者は、本件補助金の交付の対象とした物流施設における操業又は事業開始後1年6ヶ月以内に、知事に対し補助金交付申請書を提出しなければならない。

(6) 交付決定等の通知等

知事は、補助金交付申請書の提出があったときは、その内容を審査し、適当と認めるときは、交付決定等を行い、申請者に対し補助金交付決定等通知書を送付するものとする。

(7) 本件補助金の交付方法

本件補助金の交付方法は、5年間での分割交付である。

2 本件助成金について

本件助成金は、「B市補助金等交付規則」のほか、「B市物流施設誘致促進助成金交付要綱」に基づき、交付申請等の手続が行われることとなります。
 本件助成金の概要は、以下のとおりです。

(1) 交付の目的

本件助成金は、市内への物流施設の誘致を促進し、産業の活性化と雇用機会の拡大を図り、もって地域住民の生活の安定と向上に資するため、物流施設の建設に要する経費の一部に相当する金銭を交付するものである。

(2) 本件助成金の使途

本件助成金の使途は、物流施設の取得整備である。

(3) 認定の申請

本件助成金の対象となる者は、物流施設の建設工事に着手する日の原則として30日前までに、認定申請書を市長に提出しなければならない。

(4) 認定の通知

市長は、上記(3)の認定申請書の提出を受け、内容を審査し適当と認めるときは、申請者に対し認定通知書を送付するものとする。

(5) 交付の申請

本件助成金の交付の対象となる者は、本件助成金の交付の対象とした物流施設における事業開始後1年6ヶ月以内に、市長に対し助成金交付申請書を提出しなければならない。

(6) 交付決定等の通知等

市長は、助成金交付申請書の提出があったときは、その内容を審査し、適当と認めるときは、交付決定等を行い、助成金交付決定等通知書により申請者に通知するものとする。

3 経理処理について

当社は、次の(1)から(4)までのとおり、本件補助金等の交付決定等の通知を受けた事業年度において本件補助金等の全額を収益の額に計上し、圧縮記帳を行う経理処理を予定しています。

(1) 本件倉庫完成時

(借)有形固定資産  ×××    (貸)未払金  ×××

(注) 本件倉庫の減価償却については、その記載を省略しています。

(2) 工事代金支払時

(借)未払金  ×××       (貸)預金  ×××

(3) 本件補助金等の交付決定等の通知時

(借)未収入金  ×××      (貸)特別利益(補助金収入)  ×××

(借)特別損失(圧縮損)  ×××  (貸)有形固定資産  ×××

(4) 本件補助金等の受領時

(借)預金  ×××        (貸)未収入金  ×××

(注) 本件補助金は、5年間で分割して支払を受けることから、その支払を受ける都度、この処理を行う予定です。

別紙3 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

1 本件助成金の国庫補助金等該当性

(1) 国庫補助金等とは、@)国の補助金又は給付金、A)地方公共団体の補助金又は給付金、B)法人税法施行令第79条《国庫補助金等の範囲》第1号ないし第7号に掲げられた助成金又は補助金に限定されておりますが(法法421、法令79)、A)の「補助金」及び「給付金」については、法令上は何ら定義されていませんので、その名称のみからすれば、本件助成金は国庫補助金等に該当しないのではないかとの疑問が生ずるところです。

(2) ところで、地方自治体の補助金に関する規定をみると、地方自治法第232条の2《寄附又は補助》において、都道府県及び市町村は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる旨規定されています。ここにいう「補助」とは、地方公共団体が特定の事業を推進・助成するために、相当の反対給付を受けることなく、その事業主体に対して金銭等を交付することをいい、その交付される金銭等が一般的に「補助金」と解されていますので、地方公共団体から交付される金銭等がこのような性格を持つものであれば、その名称を問わず、地方公共団体の補助金に該当すると考えます。

(3) したがって、本件助成金は、別紙2の2の(1)のとおり、B市が、市内への物流施設の誘致を促進し、産業の活性化と雇用機会の拡大を図り、もって地域住民の生活の安定と向上に資するため、物流施設の建設に要する経費の一部に相当する金銭を交付するものであり、地方公共団体が、特定の事業を推進・助成するために、相当の反対給付を受けることなく、交付対象者に対して金銭を交付するものであることから、上記(2)のとおり、地方公共団体の補助金となり、法人税法第42条第1項に規定する地方公共団体の補助金、すなわち、国庫補助金等に該当すると考えます。

2 本件補助金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入の時期

(1) 法人税法第42条の規定による国庫補助金等の圧縮記帳は、国庫補助金等の交付を受けた事業年度において固定資産を取得する場合に適用することができると規定されていますが、当社のように、国庫補助金等の交付の対象となる固定資産を先行取得し、取得した事業年度後の事業年度において国庫補助金等の交付を受けた場合であっても、その「交付を受けた事業年度」において当該固定資産につき法人税法第42条第1項の適用ができることが、法人税基本通達10−2−2で明らかにされています。

(2) このように、国庫補助金等の圧縮記帳は、国庫補助金等の「交付を受けた事業年度」において適用できることとなりますが、本件補助金は別紙2の1の(7)のとおり、5年間で分割して支払を受けることとなりますので、実際に支払を受けた金額を限度として圧縮記帳をし、支払を受けていない金額については圧縮記帳できないのではないかとの疑問が生ずるところです。

(3) ところで、本件補助金は、別紙2の1の(6)のとおり、知事がその交付決定について審査した結果において適当と認める場合には、交付決定等を行い、その補助金交付決定等通知書により当社に通知するものとされていますので、当社が本件補助金の交付決定等の通知を受けた時点で、その交付を受ける本件補助金の額について収入すべき権利が確定したものと認められ、当該通知を受けた日の属する事業年度において、本件補助金の全額を益金の額に算入することになると考えます。

(4) そして、法人税法第42条に規定する国庫補助金等の圧縮記帳は、交付を受けた国庫補助金等の額がそのまま課税の対象とされれば、その国庫補助金等によって取得等を予定された資産の取得資金が税の額だけ不足することになり、それだけ国庫補助金等の交付の目的が達成できないこととなるため、その調整のための課税の特例として設けられたものであると考えます。確定した補助金の全額を益金の額に算入する一方、当該補助金の金額を分割して支払を受ける場合に、実際に支払を受けていない部分について圧縮記帳が認められないことになると、当該支払を受けていない部分について課税所得が生ずることとなり、補助金がその交付の目的に適合する資産の取得のための資金として交付されたにもかかわらず、課税額に相当する額だけ減額され、補助金交付の目的に反することとなり、ひいては法人税法第42条の規定の趣旨・目的にも反する結果となってしまいます。

(5) 以上のことからすると、本件補助金については、その交付決定等の通知を受けた日の属する事業年度においてその全額を益金の額に算入することとなります。また、当社は本件補助金の交付決定等の通知を受けた事業年度前の事業年度において目的資産を先行取得していますので、本件補助金の交付を受けた日の属する事業年度において目的資産につき圧縮記帳をすることができることとなります(法基通10−2−2)。本件補助金は、5年間で分割して支払を受けるものであったとしても、その交付決定等の通知を受けた日の属する事業年度においてその全額が益金の額に算入されることからすれば、当該通知を受けた日の属する事業年度において、本件補助金の全額を対象として、本件倉庫等について圧縮記帳を行うことができると考えます。