T 事前照会の趣旨

当社(3月決算の法人)は、40年以上にわたり所有してきた国内に所在する3階建ての建物及びその敷地の用に供している土地(以下「本件土地」といいます。)を平成28年7月にA社に譲渡しました。A社は、その譲り受けた建物を取り壊し、その敷地(本件土地)の上に新たに9階建てのオフィスビル(以下「本件建物」といいます。)を建設することとしており、当社は、本件建物の完成後、本件建物の2階から4階までの3フロアの専有部分の区分所有権及び区分所有する各専有部分の床面積割合に応じた本件土地の敷地利用権(以下「本件敷地利用権」といいます。)を取得し、1年以内に事業の用に供する予定です。
 当社は、これらの資産の譲渡及び取得について、租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第65条の8《特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例》の規定の適用を受けることを考えています。同条の規定の適用に当たっては、取得する資産が同法第65条の7《特定の資産の買換えの場合の課税の特例》第1項各号の下欄に規定する買換資産であることが要件とされており、同項第9号の下欄に買換資産として掲げられる「土地等」は、事務所、事業所その他の政令で定める施設(以下「特定施設」といいます。)の敷地の用に供されるもの等で、その面積が300平方メートル以上のものに限るとされています。
 当社は、取得した本件建物の3フロアのうち、2フロアを自社の事務所として使用し、残りの1フロアをA社に賃貸し、A社はこれを更に事務所として第三者に転貸することを予定しております(以下、当社がA社に賃貸することを予定しているこの1フロアの専有部分を「賃貸用フロア」といいます。)。この場合、当社が取得する賃貸用フロアに対応する本件敷地利用権は、賃貸用フロアが自社で事務所として使用するものではなく、A社から賃借した第三者が事務所として使用するものであったとしても、「特定施設の敷地の用に供されるもの」に該当すると解して差し支えないか、照会いたします。
 また、「その面積が300平方メートル以上」の土地等に該当するかどうかは、当社が取得する2階から4階までの3フロアの各専有部分に対応する本件敷地利用権ごとの面積で判定するのではなく、その取得する本件敷地利用権の面積の合計により判定するものと解して差し支えないか、併せて照会いたします。

U 事前照会に係る取引の事実関係

1 A社との協定書の概要
 当社とA社との間において、平成28年5月に取り交わした「基本協定書」では、当社が所有する3階建ての建物及び本件土地をA社に譲渡し、A社は、当該譲り受けた建物を解体し、その敷地(本件土地)に新たに賃貸オフィスを主用途とした本件建物を建設した上で、本件建物の2階から4階までの3フロアの専有部分の区分所有権を当社に譲渡することを定めています。この協定に基づき当社がA社に譲渡する物件、及びその後に当社が取得する物件の概要は以下のとおりです。

 (1) 譲渡物件の概要

  •  イ 建物
    • 1 面積:地上3階建て 総床面積986.68m2
          (1階325.66m2、2階330.51m2、3階330.51m2
    • 2 取得日:昭和42年10月○日
    • 3 用途:事務所
  •  ロ 本件土地
    • 1 面積:830.38m2
    • 2 取得日:昭和49年3月○日
    • 3 用途:上記イの建物の敷地として使用
  •  ハ 譲渡日

     平成28年7月○日

  •  ニ 売買代金

     総額25億○○万円

 (2) 取得物件の概要

  •  イ 本件建物の2階から4階までの専有部分の区分所有権
    • 1 当社が取得する本件建物の2階から4階までの専有部分の合計面積:1,491.93m2
    • 2 当社の専有割合:1,491.93m2/3,978.48m2=37.5%
    • ※ 本件建物(地上9階建て)
       総床面積:5,234.13m2(1階614.46m2、2階から9階まで各572.22m2、屋上41.91m2
       専有部分の面積:3,978.48m2(2階から9階まで各497.31m2
    • 3 本件建物の完成予定:平成30年3月31日
  •  ロ 専有部分ごとの敷地利用権
    •  2階の専有部分に対応する敷地利用権:103.80m2(敷地利用権割合:1,000分の125)
    •  3階の専有部分に対応する敷地利用権:103.80m2(敷地利用権割合:1,000分の125)
    •  4階の専有部分に対応する敷地利用権:103.80m2(敷地利用権割合:1,000分の125)
    •                 合計:311.39m2
  •  ハ 取得日

      平成30年3月31日(本件建物の竣工日に引渡し。)

  •  ニ 売買予定代金

      総額20億○○万円(専有部分に係る区分所有権:11億○○万円 専有部分に対応する本件敷地利用権:9億○○万円)

2 取得後の用途等

 (1) 当社は、A社から取得した物件について、平成30年3月31日に引渡しを受けた後、1年以内に事業の用に供する見込みです。

 (2) 賃貸用フロアについては、当社とA社との間で締結する予定のマスターリース契約に基づき当社がA社に賃貸(法人税法第64条の2《リース取引に係る所得の金額の計算》第3項のリース取引には該当しません。)し、賃借人であるA社が同社所有の5フロアと併せてテナントの募集活動及び契約などのマネジメント業務を行います。
   なお、当該マスターリース契約において、A社所有のフロアの賃貸及び当社所有の賃貸用フロアの転貸は、いずれも事務所として使用することを前提として行う旨定める予定です。

V 事前照会者の求める見解の内容及びその理由

1 事前照会者の見解の内容
 措置法第65条の8第1項は、「法人が、……その有する資産で前条第1項の表の各号の上欄に掲げるもの……の譲渡をした場合において、当該譲渡をした日を含む事業年度……終了の日の翌日から1年を経過する日までの期間……内に当該各号の下欄に掲げる資産の取得をする見込みであり、かつ、当該取得の日から1年以内に当該取得をした資産を当該各号の下欄に規定する地域内にある当該法人の事業の用……に供する見込みであるとき」は、当該譲渡をした日を含む事業年度において譲渡益の80%相当額の範囲内で特別勘定を設ける方法により経理した場合に限り、その金額を損金の額に算入する旨規定しています。
 この措置法第65条の8の規定の適用に当たっては、取得する資産が同法第65条の7第1項各号の下欄に規定する買換資産であることが要件とされており、同項第9号の下欄に買換資産として掲げられる「土地等」は、特定施設の敷地の用に供されるもの等で、その面積が300平方メートル以上のものに限る(面積要件)とされています。
 この点、当社が取得する賃貸用フロアに対応する本件敷地利用権は、次の2の(1)のとおり、賃貸用フロアが自社で事務所として使用するものではなく、A社から賃借した第三者が事務所として使用するものであったとしても、「特定施設の敷地の用に供されるもの」に該当すると考えます。また、「その面積が300平方メートル以上」の土地等に該当するかどうかは、次の2の(2)のとおり、当社が取得する本件建物の各専有部分に対応する本件敷地利用権の面積の合計により判定することとなり、その面積の合計は、同(2)のとおり300平方メートルを超えますので、面積要件を満たすこととなります。

2 上記の見解となる理由

  • (1) 特定施設の敷地の用に供される土地等
    • イ 法令の解釈
       措置法第65条の7第1項の表の第9号の下欄では、買換資産に該当する「国内にある土地等」とは、特定施設の敷地の用に供されるもの等で、その面積が300平方メートル以上のものに限ると規定されています。そして、租税特別措置法施行令第39条の7《特定の資産の買換えの場合等の課税の特例》第7項において「特定施設」とは、「事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除く。)」とすると規定されています。
       このように、これらの規定において、「特定施設」に該当するものについて、その施設の所有や使用の主体等について何ら限定されていません。したがって、土地を取得した場合において、その土地が事務所の敷地の用に供されるものであれば、当該事務所を誰が所有し又は誰が使用するかにかかわらず、当該土地は、「特定施設の敷地の用に供される土地」に該当するものと解されます。
    • ロ 当てはめ
       上記イにUの事実関係を当てはめると、まず、当社が取得する本件建物の各専有部分に対応する本件敷地利用権は、本件土地の共有持分であり、税務上、土地の共有持分の取得であっても、土地の新たな取得があったものと認められ、その共有持分は、措置法第65条の7第1項の表の第9号の下欄にいう「土地等」に該当します。そして、
      1 本件建物は賃貸オフィスを主目的とした建物として建設され、
      2 当社が取得する2フロアの専有部分については当社が自社の事務所として使用することを予定し、
      3 賃貸用フロアについても、当社がA社と締結する予定のマスターリース契約において、A社は事務所として使用することを前提に賃貸ないし転貸する旨定める予定であること、
      から、当社が取得する本件建物の各専有部分に対応する本件敷地利用権は、特定施設の敷地の用に供される土地に該当すると解されます。
  • (2) 面積要件(300平方メートル以上の土地等)の判定
    • イ 法令等の解釈
       上記(1)のイのとおり、措置法第65条の7第1項の表の第9号の下欄では、買換資産に該当する「国内にある土地等」とは、特定施設の敷地の用に供されるもの等で、その面積が300平方メートル以上のものに限ると規定されています。
       そして、措置法通達65の7(1)−30の3《長期所有の土地等の買換えに係る面積の判定》の(2)は、法人が取得した土地等の面積が措置法第65条の7第1項の表の第9号の下欄に規定する300平方メートル以上であるかどうかの判定は、当該土地等が区分所有に係る特定施設の敷地の用に供されるものである場合には、当該土地等の総面積に当該特定施設の専有部分の総床面積のうちに当該法人の専有部分の床面積の占める割合を乗じて計算した面積をもって行うと定めています。
       ところで、措置法第65条の7第1項の表の第9号の適用上、特定施設に該当するかどうかは、その減価償却資産の用途により判定することとなると考えられますので、分譲マンションのような区分所有建物については、その機能を発揮する最低単位(取引単位)である独立部分(専有部分)ごとに判定することとなり、専有部分の取得に伴い取得する敷地利用権が面積要件を満たすかどうかについてもその専有部分ごとに判定することとなります。ただし、一の取引で複数の専有部分をまとめて取得し、それらが特定施設に該当する場合には、その複数の専有部分に係る敷地利用権の面積の合計により判定することが相当と考えられます。
    • ロ 当てはめ
       上記イにUの事実関係を当てはめると、当社は、一の取引で本件建物の各専有部分に対応する本件敷地利用権をまとめて取得することを予定しており、これらの敷地利用権は、上記(1)のロのとおり、全て特定施設の敷地の用に供される土地に該当しますので、その面積の合計により「その面積が300平方メートル以上」の土地等に該当するかどうかの判定を行うこととなります。具体的には、本件土地の総面積830.38m2に、本件建物の専有部分の総床面積のうちに当社の取得する専有部分の床面積の占める割合37.5%を乗じて算出した311.39m2が、当社が取得した土地の面積となり、300平方メートルを超えていますので面積要件を満たすこととなります。

○ 国税庁文書回答税目別検索