別紙

1 事実関係
団体信用生命保険(以下「主契約」という。)は、債権者である信用供与機関が債務者の死亡又は高度障害に際して支払われる保険金をもってその債務者に対する賦払債権の回収を行うのに対して、団体信用生命保険がん診断給付金特約(以下「特約」という。)は、債務者が特定の「がん」(上皮内がん、皮膚がんを除く。)と初めて診断されたときに支払われる給付金をもって賦払債権の回収を行うものであり、その内容は、おおむね次のとおりです。
  1. (1) 契約者及び給付金受取人
     主契約の契約者及び給付金受取人(賦払償還によって債務の弁済を受ける信用供与機関又は信用保証機関である銀行、不動産会社、信販会社など(以下「金融機関等」という。))
  2. (2) 被保険者
     主契約の被保険者(同一の信用供与機関に対して賦払償還債務を負う債務者の全部又は一部の集団で、契約者たる金融機関等と保険会社との協議をもって定めるもの)
  3. (3) 給付金
     被保険者の保険事故発生時における賦払償還債務残額の一定割合(10%〜100%)
     なお、割合については、契約締結時に契約者が設定する。
  4. (4) 保険事故
     被保険者が特定の「がん」と初めて診断されたときの1回限りの支払
     なお、対象となる「がん」(悪性新生物)は、昭和53年12月15日行政管理庁告示第73号に基づく厚生大臣官房統計情報部編「疾病、傷害および死因統計分類提要」(昭和54年版)に記載された分類項目中、次表の基本分類表番号に規定される内容のものである。
    分類項目 基本分類表番号
    口唇、口膣および咽頭の悪性新生物
    消化器および腹膜の悪性新生物
    呼吸器および胸膣内臓器の悪性新生物
    (170〜175)のうち
     ・骨および関節軟骨の悪性新生物
     ・結合組織およびその他軟部組織の悪性新生物
     ・皮膚の悪性黒色腫
     ・女性乳房の悪性新生物
     ・男性乳房の悪性新生物
    泌尿生殖器の悪性新生物
    その他および部位不明の悪性新生物
    リンパ組織および造血組織の悪性新生物
    140〜149
    150〜159
    160〜165

    170
    171
    172
    174
    175
    179〜189
    190〜199
    200〜208
  5. (5) 被保険期間
     主契約の被保険期間(賦払期間)と同じ。ただし、被保険者の一部に一定年齢(75歳等)に達した者が生じた場合又は被保険者の一部が脱退した場合には、それらの部分についてはその一定年齢に達した時又は脱退した時までとし、解約があった場合には解約の時をもって終了する。
     なお、給付金額が賦払償還債務残債の100%未満の場合には、引き続き主契約は継続する。
  6. (6) 特約保険料
     主契約の保険料と同時に払い込むものとし、給付金額(賦払償還債務残額の一定割合)に応じて年1回改算し、月払いとする。
     なお、料率は、被保険者の年齢に応じて逓増する。
  7. (7) 返戻金
     主契約と同じ(保険契約の解除、解約、被保険者の脱退等による返戻金はない。)。
  8. (8) 契約者配当金
     年1回契約応当日において有効な契約に対し、契約者配当金を支払う。
 
2 照会の趣旨
上記の団体信用生命保険がん診断給付金特約に係る課税上の取扱いは、下記のとおりでよろしいか、ご照会申し上げます。
  1. (1) 保険料の損金算入
     契約者たる金融機関等が保険会社に払い込む特約の保険料は、主契約の保険料と同時に払い込むものであり、主契約の保険料と同様に、いわゆる債権の保全費用又は販売費用(顧客の借入れについて保証する場合)の性格を有するものと認められ、かつ、返戻金のないいわゆる掛捨てであることから、単純な期間費用として損金算入が認められる。
  2. (2) 給付金を受け取った場合の金融機関等の処理
     債権者たる金融機関等が給付金受取人となっていることは、主契約と同様に、実質的には債務者たる顧客が受取人になっている給付金請求権上に質権を設定し、これに基づいて本来の債務の弁済を受けるものと解することもできるし、あるいは保険会社から契約に基づいて代位弁済を受けるものと解することもできることから、この場合の顧客に対する債務免除については、貸倒れの判定は要しない。
     したがって、債権者たる金融機関等が受け取った給付金は、益金とする必要はなく、ただ単に入金処理をすることとなる。
  3. (3) 保険事故が発生した場合の顧客の課税関係
     本特約は、保険事故が発生した場合、すなわち、特定の「がん」と初めて診断された場合に、保険会社から金融機関等にがん診断給付金が支払われ、同給付金をもって顧客の債務が返済されることに伴い、顧客には債務免除益が発生することになるものの、丸1同給付金をもって顧客の債務が弁済されることは、実質的には顧客が受取人になっている給付金請求権上に金融機関等が質権を設定し、これに基づいて本来の債務が弁済されたものと解することができること、また、丸2がん診断給付金は、所得税基本通達9−21により所得税法施行令第30条第1号に掲げる「身体の傷害に基因して支払われるもの」に該当するものと考えられることから、所得税の課税関係は生じない。
  4. (以上)
 

 

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