別紙

1 事前照会の趣旨

当社の取締役である甲は、裁判所から破産手続開始の決定を受けました。甲の破産財団には当社の株式も組み入れられていましたが、今般、当該株式について、発行会社である当社が買い取りを行いました。当社は自己株式の取得を行ったことになりますが、当該自己株式の取得(以下「本件自己株式の取得」といいます。)に当たり、甲に生じることとなる配当所得及び株式等に係る譲渡所得等については、所得税法第9条第1項第10号の規定が適用され非課税所得に該当するものとして取り扱ってよいか照会します。

2 事前照会に係る事実関係

当社の取締役である甲は、当社の株式を一部保有していましたが、所得税法第9条第1項第10号の「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難」な状態にあり、裁判所から破産手続開始の決定を受け、甲が保有していた当社の株式は破産財団に組み入れられました。当社は非上場会社であることから、当該株式について市場で売却することは困難であったため、発行会社である当社が時価で買い取りを行いました(本件自己株式の取得)。
なお、本件自己株式の取得は、金融商品取引所の開設する市場における購入による取得等(所法251四かっこ書、措法37の103四かっこ書)に該当しません。

3 事前照会者の求める見解となることの理由

本件自己株式の取得により甲が交付を受ける金銭等の額が当社の資本金等の額のうちその交付の基因となった株式等に対応する部分の金額を超える場合のその超える部分(みなし配当部分)の金額は、所得税法上配当とみなされ(所法251四)、その超える部分以外の部分(みなし譲渡部分)は、株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされます(措法37の103四)。
また、破産手続開始の決定により破産者は破産財団に属する財産に対する管理処分権を喪失しますが(破産法781)、これにより所有権まで喪失するものではなく、破産者は破産手続開始前より有しかつ破産財団に組み入れられた個々の財産につき依然として権利主体となりますので、破産手続による財産の換価処分の効果は全て破産者に帰属し、財産譲渡による所得は破産者に帰属すると考えられます。そして、本件自己株式の取得は破産者甲の私法上の譲渡によるものとされますので、本件自己株式の取得により生じたみなし配当部分及びみなし譲渡部分に係る所得はいずれも破産者である甲に帰属することとなります。
ところで、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における破産手続などの強制換価手続による資産の譲渡による所得は非課税とされていますが(所法91十、通法2十)、この「譲渡による所得」に配当所得や株式等に係る譲渡所得等は除かれていませんので、強制換価手続による資産の譲渡により生じる配当所得や株式等に係る譲渡所得等も含まれると解されます。
この点、甲は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な状態にありますので、破産手続による株式の譲渡(すなわち本件自己株式の取得)により生じる配当所得(みなし配当部分)及び株式等に係る譲渡所得等(みなし譲渡部分)はいずれも非課税所得に該当すると考えられます。