1 照会の趣旨

 当社は、当社と同じく建設業を営む法人とX共同企業体(以下「本件JV」といいます。)を構成し、Y市からY市○○○工事の請負をしました(以下、この工事を「本件工事」といいます。)。
 ところで、法人税法では、工事の請負をした場合において、この工事が一定の要件を満たす長期大規模工事に該当するときは、その長期大規模工事の請負に係る収益の額及び費用の額のうち、各事業年度の収益の額及び費用の額として工事進行基準の方法により計算した金額を、益金の額及び損金の額に算入することとされています(法法641)。
 この長期大規模工事の一定の要件の一つとして「その請負の対価の額が10億円以上であること。」が設けられていますが(法令1291)、本件JVによる工事の請負をした場合における「その請負の対価の額が10億円以上であること。」の判定については、発注者(Y市)とJVとの契約に基づく請負総額により判定するのではなく、各社(各構成員)の分配割合に基づき当該請負総額を按分して当社に分配される請負金額により判定すると解して差し支えないか照会申し上げます。
 なお、本件JVにおける分配割合は、各社(各構成員)の出資割合としています。

2 照会に係る取引等の事実関係

 本件工事の概要等は、次のとおりです。

  1. (1) 発注者 Y市
  2. (2) 請負者 本件JV
  3. (3) 上記(2)の構成 当社(出資割合 45%)
    株式会社A(出資割合 35%)
    株式会社B(出資割合 20%)
     なお、当社の決算期は、毎年3月から翌年2月まで(2月決算)の1年決算です。
  4. (4) 工事名 Y市○○○工事
  5. (5) 工期 平成21年10月○日から平成23年3月○日まで
     本件工事は、工期の初日から着手しています。
  6. (6) 請負総額 ○○○○○円(10億円超)
  7. (7) 代金の支払方法 平成21年10月 ○○○○円(着手金)
    平成22年7月 ○○○○円(中間金)
    平成23年5月 ○○○○円(残金)
  8. (8) 損益分配 X共同企業体に係る損益については、各構成員の出資割合に応じて分配されます。
  9. (9) 経理状況 当社の平成22年2月決算においては、本件工事は法人税法施行令第129条第6項に規定する「事業年度終了の時点でその工事の着手の日から6月を経過していないもの」に該当していましたので、仮に本件工事が長期大規模工事に該当していたとしても、工事進行基準の方法による収益の額及び費用の額をないものとすることができることから、決算期末までに発生した収入及び費用については、すべて仮受金及び仮払金処理をしています。

3 照会者の求める見解となることの理由

  1. (1) 長期大規模工事
     長期大規模工事とは、工事のうち、次の要件のすべてに該当するものをいいます(法641、令12912)。
    • イ その着手の日からその工事に係る契約において定められている目的物の引渡しの期日までの期間が1年以上であること
    • ロ その請負の対価の額が10億円以上であること
    • ハ その契約において、その請負の対価の額の2分の1以上がその目的物の引渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないものであること
       これらの要件は、比較的工事期間が短い工事や小規模な工事についてまで工事進行基準を適用すると事務負担が過重となること、対価の回収が長期にわたるものについては担税力にも配慮する必要があることから、設けられたものと考えられます。

     なお、この場合の長期大規模工事に該当するかどうかの判定は、当該工事に係る契約ごとに判定することを原則としています。ただし、当該契約に至った事情等からみて、複数の契約書により一の工事を請け負ったと認められる場合には、それらの契約全体で判定することとされています(法人税基本通達2−4−14)。

  2. (2) 本件JV
     本件JVは、当社及び他の2社が出資をして共同で本件工事を受注し施工することを約して成立した任意組合(民法上の組合)であり、各構成員は、建設工事の請負契約の履行及び下請契約その他の建設工事の実施に伴い本件JVが負担する債務の履行に関し、連帯して責任を負うこととなります。また、その損益分配は、各構成員の出資の割合に応じて分配することとなります。
     このような任意組合(民法上の組合)については、法人税法上、その共同事業に係る利益金額について、その共同事業の各構成員の出資割合に応じて分配されることとなり、各構成員に直接帰属することとされています(法人税基本通達14−1−1)。
     また、組合員である法人が組合事業に係る利益金額又は損失金額のうち分配割合に応じて受けるべき金額又は損失の負担すべき金額(以下「帰属損益額」といいます。)を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合、原則として、その組合事業の資産、負債、収益及び費用のすべてについて自己の分配割合により計算される額を自己の資産、負債、収益及び費用として認識することとされています(法人税基本通達14−1−2)。
  3. (3) 本件JV工事の場合の長期大規模工事の判定
     上記(1)のとおり、長期大規模工事の判定は当該工事に係る契約ごとに判定することとされており、本件工事は、本件JVとして一つの契約を締結したものですので、本件JVとの契約に基づく請負総額により長期大規模工事に該当するかどうかを判定することとなるとも考えられます。
     しかしながら、次の理由から、各構成員の分配割合に基づき当該請負総額を按分して当社に分配される請負金額により判定することが相当であると考えられます。
    • イ 上記(1)のとおり、「その請負の対価の額が10億円以上であること。」の要件は、小規模な工事についてまで工事進行基準を適用すると(納税者の)事務負担が過重となることを配慮して設けられたものであること。
    • ロ 本件JVは、各構成員の契約によって成立するものであり、当該共同事業体は法人格を有さず、それ自体は納税義務の主体とならないこと。
    • ハ 当組合事業から生ずる利益金額又は損失金額については、各構成員に直接帰属することとされており、また、帰属損益額を各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合、原則として、その組合事業の資産、負債、収益及び費用のすべてについて各構成員の分配割合により計算される額をそれぞれの資産、負債、収益及び費用として認識するものとされていること。