令和元年6月
大阪国税局

査察制度は、悪質な脱税者に対して刑事責任を追及し、その一罰百戒の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的としています。

国税査察官は、近年における経済取引の広域化、国際化及びICT化等による脱税の手段・方法の複雑・巧妙化など、経済社会情勢の変化に的確に対応し、悪質な脱税者に対して厳正な調査を実施しています。

1 査察調査の概要

【平成30年度の取組】

  • ○ 着手・処理・告発件数の状況
     平成30年度において、大阪国税局査察部が査察調査に着手した件数は40件。
     一方、平成30年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は40件、そのうち検察庁に告発した件数は29件。
  • ○ 消費税事案11件を告発
     平成30年度は、国民の関心が極めて高まっている消費税事案について、過去5年間で最も多い11件を告発し、国庫金の詐取ともいえる消費税受還付事案についても1件告発。
  • ○ 重点事案を重視、特に無申告ほ脱事案5件を告発(注)
     無申告ほ脱事案5件、国際事案2件、消費税受還付事案1件を告発。
     無申告ほ脱事案は、申告納税制度の根幹を揺るがすものであり、平成23年に創設された単純無申告ほ脱犯も含め、過去5年間で最も多い5件を告発。

    (注)

    1.  重点事案とは、無申告ほ脱事案、国際事案、消費税受還付事案及びその他社会的波及効果が高いと見込まれる事案をいいます。
  • ○ 脱税総額は22億円
     平成30年度に処理した査察事案に係る脱税額は総額で22億円。

【平成30年度中の判決状況】

  • ○ 31件の一審判決全てに有罪判決が言い渡され、2人に実刑判決
     平成30年度中の最も重い実刑判決は、査察事件単独に係るものでは懲役3年。

2 事案紹介

(1) 消費税事案

国民の関心が極めて高まっている消費税事案に積極的に取り組み、平成30年度は11件告発し、国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い消費税受還付事案についても1件を告発しました。

年度 平成        
26 27 28 29 30
告発件数 内1 内5 内6 内5 内1
3 6 7 6 11

(注)

  1.  告発件数欄の内書は、消費税受還付事案の件数である。

科目仮装を行い多額の消費税を免れていた事案を告発図

(2) 無申告ほ脱事案

申告納税制度の根幹を揺るがす無申告によるほ脱犯について積極的に取り組み、平成30年度は、過去5年間で最も多い5件を告発しました。
 平成23年に創設された単純無申告ほ脱犯を適用した事案について、本年度は4件を告発しました。

年度 平成        
26 27 28 29 30
  内1 内− 内1 内1 内4
告発件数
  1 1 3 1 5

 (注) 件数欄の内書は、単純無申告ほ脱事案の件数である。

(参考) 単純無申告ほ脱犯(故意の申告書不提出によるほ脱犯)の規定は、悪質性の高い無申告事案に厳正に対処するため、平成23年に創設されました。

(3) 国際事案

海外取引を利用した悪質・巧妙な事案や海外に不正資金を隠すなどの国際事案に積極的に取り組み、平成30年度は2件を告発しました。

年度 平成        
26 27 28 29 30
告発件数
2 7 9 5 2

輸出免税制度を悪用した消費税の不正受還付事案を告発図

(4) その他の社会的波及効果の高い事案

近年、市場が拡大する分野における脱税など、社会的波及効果が高いと見込まれる事案に対して積極的に取り組みました。

好況な不動産事業者の告発図

税の専門家である税理士を告発図

3 不正資金の留保状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていましたが、その他に、不動産の取得費用、ギャンブル等の遊興費などに充てられていた事例も見られました。
 また、不正資金の一部が、海外の預金口座で留保されていた事例がありました。
 脱税によって得た不正資金の隠匿場所は様々でしたが、

  • ○ 従業員の居宅に置かれたコンテナボックスの中(法人税法違反)
  • ○ 居宅階段下の収納庫に存在した金庫及びバッグ並びに洗濯室内の金庫の中(法人税法違反)
に現金を隠していた事例などがありました。

4 査察事件の一審判決の状況

平成30年度中に一審判決が言い渡された件数は31件であり、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が2人に出されました。なお、実刑判決のうち最も重いものは、懲役3年でした。

悪質な脱税者に実刑判決図

5 参考計表

(1) 着手・処理・告発件数、告発率の状況

年度 平成        
項目 26 27 28 29 30
着手件数
43 40 41 40 40
処理件数 (A) 43        
40 41 40 40
告発件数 (B) 26        
24 30 29 29
告発率 (B/A)
60.5 60 73.2 72.5 72.5

(2) 脱税額の状況

年度 平成        
項目 26 27 28 29 30


総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
3,536 3,400 4,991 2,818 2,246
同上1件 82 85 122 70 56
当たり
告発分   2,566 4,776 2,542 1,355
2,983
同上1件   107 159 88 47
当たり 115

(注)

  1.  脱税額には加算税額を含む。

(3) 税目別告発事案の推移

イ 税目別の告発件数

年度 平成        
  26 27 28 29 30
区分          
所得税
4 1 10 4 2
法人税 18 14 12 19 15
相続税 1 1 1 - -
消費税 内1 内5 内6 内5 内1
3 6 7 6 11
源泉所得税 - 2 - - 1
合計 26 24 30 29 29

(注)

  1. 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の告発件数である。

ロ 税目別の脱税額

年度 平成        
区分 26 27 28 29 30
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
565 198 800 442 102
法人税 1,969 986 1,113 1,687 747
相続税 332 491 244 - -
消費税 内24 内651 内2,583 内379 内54
117 703 2,619 413 430
源泉所得税 - 188 - - 76
合計 2,983 2,566 4,776 2,542 1,355

(注)

  1. 1 脱税額には加算税額を含む。
  2. 2 消費税の内書は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額である。

告発の多かった業種

平成28 29 30
業種 者数 業種 者数 業種 者数
建設業 6 建設業 11 不動産業 8
時計卸売 3 不動産業 3 建設業 6
不動産業 2 ビルメンテナンス 3
金属製品製造 2 人材派遣 2
商品、株式取引 2

(注)

  1.  同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は1者としてカウントしている。

査察事件の一審判決の状況

項目 1 2     3 4 5
年度 判決 有罪 有罪率 実刑判決 1件当たり犯則税額 1人当たり懲役月数 1人(社)当たり罰金額
  件数 件数 (21) 人数      
平成 百万円 百万円
  内1 内1   内3      
28 28 28 100 4 44 12.4 11
29              
内1 内1   内-      
28 28 100 1 116 17.3 27
30              
内- 内-   内-      
31 31 100 2 50 14.7 9

(注)

  1. 1 表中の内書は他の犯罪との併合事件を示している。
  2. 2 35は他の犯罪との併合事件を除いてカウントしている。