平成24年7月
大阪国税局

適正公平な課税の実現と申告納税制度の維持に資することを目的として、国税査察官は、厳正な査察調査に基づき、悪質な脱税者に対する刑事責任の追及を行っています。
 今般、平成23年度の査察調査の結果がまとまりましたので、その概要を報告します。

1 着手・処理・告発件数、告発率の状況

  • ○ 平成23年度に査察において着手した件数は、45件でした。
  • ○ 平成23年度以前に着手した査察事案について、平成23年度中に処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数は45件、そのうち検察庁に告発した件数は32件であり、告発率は71.1%となりました。
年度 平成        
項目 19 20 21 22 23
着手件数
46 46 45 47 45
処理件数(A) 46 47 47 46 45
告発件数(B) 34 34 34 33 32
告発率(B/A)
73.9 72.3 72.3 71.7 71.1

平成19年度から平成23年度の着手・処理・告発件数、告発率の状況を表した図

2 脱税額の状況

  • ○ 平成23年度に処理した査察事案に係る脱税額は、総額で39億円、そのうち告発分は33億円となりました。
  • ○ 告発した事案1件当たりの脱税額は、平均で1億400万円でした。
  • ○ 告発した事案のうち、脱税額が3億円以上のものは1件でした。
年度 平成        
項目 19 20 21 22 23
脱税額 総額 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
11,250 4,542 4,171 4,442 3,930
同上1件当たり 245 97 89 97 87
告発分 10,784 3,344 3,880 4,089 3,333
同上1件当たり 317 98 114 124 104

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

○ 脱税額
平成19年度から平成23年度の脱税額を表した図

○ 1件当たりの脱税額
平成19年度から平成23年度の1件当たりの脱税額を表した図

(参考1)大口事案の推移

年度 平成        
区分 19 20 21 22 23
告発件数
34 34 34 33 32
  うち脱税額が3億円以上 4 2 2 3 1

(注) 脱税額には、加算税額を含む。

3 税目別告発事案の推移

  • ○ 平成23年度においても、従来どおり、所得税、法人税事案に取り組むとともに、相続税、源泉所得税事案についても積極的に取り組みました。

(参考2)税目別の告発件数

年度 平成19 20 21 22 23
区分 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合 件数 割合
所得税
13 38 9 26 3 9 10 30 11 34
法人税 8 24 22 65 24 70 16 49 15 47
消費税 10 29 3 9 5 15 3 9 - -
その他 3 9 - - 2 6 4 12 6 19
合計 34 100 34 100 34 100 33 100 32 100

(注) その他は、相続税及び源泉所得税である。

年度 平成19 20 21 22 23
区分 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合 脱税額 割合
所得税 百万円 百万円 百万円 百万円 百万円
1,521 14 816 24 223 6 1,350 33 722 22
法人税 1,323 12 2,473 74 2,854 73 1,106 27 1,499 45
消費税 930 9 55 2 624 16 507 12 - -
その他 7,010 65 - - 179 5 1,126 28 1,112 33
合計 10,784 100 3,344 100 3,880 100 4,089 100 3,333 100

(注) 

  • 1 その他は、相続税及び源泉所得税である。
  • 2 脱税額には、加算税額を含む。

4 告発事件の概要

  • ○ 平成23年度に告発した査察事案で多かった業種・取引は、「商品・株式取引」、「人材派遣業」などでした。経済社会情勢を反映し、この数年間多かった「不動産業」、「建設業」が減少する一方、新たに「食料卸」、「運送業」などの告発がありました。
  • ○ 脱税の手段・方法としては、これまでに引き続き、売上除外や架空の原価・経費の計上がありました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金は、現金や預貯金、有価証券として留保されていた他、不動産の購入に充てたり、自己の遊興費に費消するなどの例も多く見られました。
  • ○ 脱税によって得た不正資金の隠匿事例としては、現金を居宅の床下の土中に隠していたものなどがありました。

(1) 告発の多かった業種・取引(2者以上)

21 22 23
業種 者数 業種 者数 業種 者数
不動産業 4 商品・株式取引 5 商品・株式取引 3
鉱物、金属材料卸 2 建設業 4 人材派遣業 3
飲食料品小売 2 機械器具製造 2 食料卸 2
建設業 2 飲食業 2 運送業 2
飲食業 2 協同組合 2 飲食業 2
コンサルタント 2 - - パチンコ 2
- - - - 情報提供サービス 2
- - - - 広告代理 2

(注) 同一の納税者が複数の税目で告発されている場合は、1者としてカウントしている。

(2) 脱税の手段・方法

 脱税の手段・方法としては、売上除外や架空の原価・経費の計上の他、

  • ○ 多額の所得を得ているにも関わらず、全く申告をしないもの
  • ○ 相続税事案では、割引債券や現金、預貯金などを相続財産から除外していたもの

などがありました。

(3) 不正資金の留保状況及び隠匿場所

 脱税によって得た不正資金については、

  • ○ 銀行の貸金庫に現金で保管
  • ○ 海外で開設した預金
  • ○ 金地金

などで留保されていた事例や、

  • ○ 別荘などの不動産を購入
  • ○ 高級外車を購入
  • ○ 貴金属を購入
  • ○ 高級クラブで遊興し費消

していた事例がありました。
 また、脱税によって得た不正資金等の隠匿場所は様々でしたが、

  • ○ 居宅の床下の土中(現金)
  • ○ 居宅の物置のダンボール内(現金)

に隠していた事例がありました。

5 査察調査の状況

  • ○ 平成23年度に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延べ138名を動員し、36か所を調査しました。
  • ○ 平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで8か月の調査期間を要しました。
  • ○ 国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換に取り組みました。
  • ○ 経済取引等のICT化にも的確に対応するため、デジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材の整備・活用に取り組みました。

(1) 動員人数及び調査期間

 平成23年度に着手した査察事案では、1事件当たり、着手日に延138名を動員し、36か所を調査しました。
 平成23年度に告発した査察事案では、1事件当たり、着手から告発まで8か月の調査期間を要しました。調査期間が1年を超えた事件は7件あり、このうち最も長いものは約1年7か月でした。

(2) 国際化への対応

 国際取引が関係した事案にも的確に対応するため、租税条約等の規定に基づく情報交換に取り組みました。
 平成23年度に処理した事案では、情報交換による回答から、不正資金の一部を海外の預金口座で留保していたことが判明したものがありました。

(3) ICT化への対応

 経済取引等のICT化にも的確に対応するため、平成23年度からデジタルフォレンジック(電磁的記録の証拠保全・解析技術)用機材を整備し、事件への活用に取り組みました。
 平成23年度に処理した事案では、削除されていたパソコン内のデータを復元し、売上金額を解明したものがありました。