当社は平成26年11月に、他社から土地及び建物(以下、それぞれ「本件土地」、「本件建物」といい、これらを併せて「本件土地建物」といいます。)を一括購入しました。
 当社は、当初から本件建物を取り壊して本件土地を利用する目的で本件土地建物を取得したため、法人税基本通達7−3−6《土地とともに取得した建物等の取壊費等》により、本件建物の取得価額及び取壊費用は本件土地の取得価額に算入されますが、本件建物の取壊しのための工事費用の一部について国及び地方公共団体より補助金・助成金(以下「本件補助金等」といいます。)の交付を受ける予定です。
 この場合、別紙2の事実関係を前提とすれば、本件土地の取得価額に算入する本件建物の取壊費用は、当該取壊費用から本件補助金等を控除した後の残額、すなわち当社が実質的に負担する取壊費用相当額であると解して差し支えないか、ご照会いたします。

1 本件補助金等の概要

当社が本件建物の取壊しに伴って受領する本件補助金等は、災害に強い国土、地域の構築に向けた建築物の耐震化を促進するために、倒壊の危険性があると判断された一定の基準を満たす建築物を除却、耐震補強工事等をした場合に国等が助成を行うもので、その概要は以下のとおりです。

  1. (1)特定緊急輸送道路沿道建築物に対する耐震診断等助成制度(東京都中央区)
    • イ 対象建築物…東京都が指定した特定緊急輸送道路沿道の建築物で以下のいずれにも該当するもの
      • 1 敷地が特定緊急輸送道路に接する建築物
      • 2 昭和56年6月1日以後に新築の工事に着手したものを除く(旧耐震基準)
      • 3 建築物のそれぞれの部分から特定緊急輸送道路の境界線までの水平距離に、道路幅員の2分の1に相当する距離を加えたものに相当する高さの建築物
    • ロ イを除却する場合の助成限度額…下記のいずれか低い金額
      • 1 除却する建物の延床面積×助成基準単価(48,700円/平方メートル)×助成率※
      • 2 耐震補修工事相当額×助成率※
      • ※ 3分の1(延床面積5,000平方メートル以下の部分)、6分の1(延床面積5,000平方メートルを超える部分)
  2. (2)耐震対策緊急促進事業に係る国の補助金(国土交通省)
    • イ 補助金交付対象事業…要安全確認計画記載建築物の耐震改修等、建替え又は除却に関する事業(除却については、通行障害既存耐震不適格建築物に係るものに限る。)
    • ロ イの補助金の額…1×2
      • 1 要安全確認計画記載建築物の耐震改修工事費
      • 2 補助率A/10
         A:当該事業に対して地方公共団体が社会資本整備総合交付金等を含め事業主体に対して行う補助事業の補助率(上記(1)ロ2の助成率)

2 本件補助金等の交付経過

当社は、本件建物の解体工事に対する助成として、次の手続を踏んだ上で本件補助金等を受領する予定です。

平成27年1月 国土交通省及び東京都へ全体設計承認申請書を提出
平成27年2月 国土交通省及び東京都から全体設計承認通知書を受領
平成27年2月 工事着工
平成27年4月 国土交通省及び東京都へ補助金等交付申請書を提出
平成27年4月 国土交通省及び東京都から補助金等交付決定通知書を受領
平成27年9月 国土交通省及び東京都へ補助金等交付決定変更申請書を提出
平成27年10月 国土交通省及び東京都から補助金等交付決定変更通知書を受領
平成27年11月 工事費用(当初分)を工事請負業者へ支払
平成27年12月 工事終了
平成28年1月 工事費用(追加分)を工事請負業者へ支払
平成28年2月 国土交通省及び東京都へ完了報告書を提出

1 土地の取得価額

土地の取得価額に算入すべき金額について法人税法上明文の規定はありませんが、法人税基本通達7−3−16の2《減価償却資産以外の固定資産の取得価額》において、「減価償却資産以外の固定資産の取得価額については、別に定めるもののほか、令第54条《減価償却資産の取得価額》の規定及びこれに関する取扱いの例による。」とされています。
 したがって、購入によって取得する土地の取得価額は、法人税法施行令第54条第1項第1号に規定する購入した減価償却資産の取得価額の取扱いに準じて、1当該土地の購入代価(購入のために要した費用の額がある場合は、その費用の額を加算した金額)及び2当該土地を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額となるものと考えます。
 当社は、本件土地建物を一括して取得しておりますが、当初から本件土地を利用する目的で本件土地建物を取得しており、本件建物を取得後速やかに取り壊していますので、本件建物の取壊費用の額については、本件土地を事業の用に供するために直接要した費用の額に当たると考えられます。
 したがって、当社が取得した本件土地の取得価額は、本件土地の購入代価(仲介手数料等の費用の額を含みます。)及び本件建物の取壊費用の合計額になると考えます。

2 取壊費用から除かれる額

上記(1)のとおり、当初から土地を利用する目的で土地とともに建物を取得し、当該建物を取り壊した場合には、その取り壊した時の建物の帳簿価額と取壊費用の合計額が、当該土地の取得価額に算入されるものと考えます。法人税基本通達7−3−6もこれと同旨の取扱いになります。
 また、同通達においては、土地の取得価額に算入すべき建物の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額から廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除することが明らかにされています。
 これは、建物の取壊しに伴って収入した金額がある場合には、その収入金額に相当する金額については、実質的に取壊費用の支出がなかったことになりますので、当該金額については、土地の取得価額に算入すべき建物の取壊費用から控除することを認めたものと思われます。
 当社が本件建物の取壊しに伴って受領する本件補助金等は、災害に強い国土、地域の構築に向けた建築物の耐震化を促進するために、倒壊の危険性があると判断された一定の基準を満たす建築物を除却、耐震補強工事等をした場合に国等が助成を行うものです。したがって、本件補助金等は、本件建物の取壊しに伴って生じた収入であるといえます。
 よって、当社が実質的に負担することとなる、本件建物の取壊費用から本件補助金等を控除した金額が、本件土地の取得価額に算入すべき、本件土地を「事業の用に供するために直接要した費用の額」に該当すると考えられます。