別紙1-1
平成20年6月19日
大阪国税局 課税一部
審理課長 殿
社団法人 京都工業会
会長 矢嶋英敏
京都工業会館建設のために会員が支出する特別会費の法人税及び消費税の取扱いについて(照会)
 社団法人京都工業会(以下「工業会」という。)は、京都府内において製造業を営む企業を会員とする団体で、昭和32年の設立以来、会員交流、人材育成、産学交流などの事業活動を行ってきたところです。
 これらの事業活動の実施に当たっては、昭和43年に建設した京都工業会館をその拠点としてきたところですが、建設以来40年を経過しており建築基準の問題や環境面での対応等が必要となっているものの、改築ではその対応等が困難であることから、新たに建て直すこととしたところです。
 この建て直しのための資金は、会員である企業からの特別会費によることを予定していますが、この特別会費を負担する会員における当該特別会費に対する法人税法及び消費税法上の取扱いは、下記に記載する照会事項のとおり解して差し支えありませんか(照会に係る事実関係及び下記の見解に至った理由は、別紙1-2及び1-3に記載します。)。

  • 1 会員が負担する特別会費は、法人税法施行令第14条第1項第6号イ《繰延資産の範囲》に規定する自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用に該当し、法人税法上、繰延資産に該当することとなる。
  • 2
    • (1) 上記により、会員において繰延資産として処理した費用は、法人税基本通達8-3-5(固定資産を利用するための繰延資産の償却)の取扱いにより、工業会が京都工業会館の建設等に着手した時から償却を開始することができる。
    • (2) 会員が特別会費の負担を分割により支払う場合において、上記(1)の建設工事の着手以後に当該特別会費の一部を支払うときには、上記(1)にかかわらず、その支払時から償却を開始することができる。なお、この建設工事の着手以後に支払った特別会費については、その支払の都度、別個の繰延資産を計上することとなる。
  • 3 上記により繰延資産として計上される特別会費については、法人税基本通達8-2-4(港湾しゆんせつ負担金等の償却期間の特例)の取扱いにより、その償却期間を10年とすることとなる。
  • 4 消費税法上、工業会が収受する特別会費は、課税資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、会員が負担する特別会費は、課税仕入れに係る支払対価に該当しないこととすることができる。
     なお、工業会は会員に対してその旨を通知することとしている。

別紙1-2
照会に係る取引の事実関係
  • 1 京都工業会館の使用状況等
    • (1) 事業拠点としての使用
       現在使用している会館(以下「旧会館」という。)は、次に掲げる工業会の活動指針に沿った会員交流事業や人材育成事業などの事業活動の拠点として使用してきたところです。
      • [活動指針]
        ・工業会全体の発展を通して京都産業の振興、発展をはかる
        ・未来に向けて積極的に様々な事業を推進する
        ・関係諸機関との連携を深め、多角的に展開する
      • [事業活動]
        ・会員交流事業:(京都工業クラブ、京都KAIZEN大会ほか)
        ・人材育成事業:(生産問題懇話会、知的財産権研究会、電子システム研究科ほか)
        ・産学交流事業:(産学交流懇談会、京都産学公連携フォーラムほか)
        ・国際:(海外企業・団体との交流)
        ・中堅・中小企業:(中小企業技術幹部交流会、京都ハイブリッドテクノロジーネットほか)
        ・環境:(京都環境管理研究会、関西環境管理者交流会、労働安全衛生研究会ほか)
        ・広報・サービス:(青少年と科学の会、行政・友好団体交流事業など)

      なお、これらの事業活動には、旧会館内の講堂、大会議場、会議室(6室)及び教室(4室)の全12会場(以下「全12会場」という。)を活用しています。

    • (2) その他有効利用等
      • イ 関係団体への部屋の提供
         機械金属業界の福利厚生のために設立した団体及び中小企業の環境対策推進のために設立した団体(以下「関係2団体」という。)は、工業会の活動指針に適合した非営利団体であることから、旧会館内の2室の使用を許可しています。
      • ロ 会員等への部屋の提供
         全12会場について、工業会の主催する事業予定がない場合、会員及び地域の行政・産業団体からの申出に応じて使用を許可しているほか、当該申出もない場合にはその他の者の申出に応じて使用を許可しています。
      • ハ 利用料金について
         上記イ及びロの使用に当たっては、工業会としては不動産賃貸業を営む意思はないことから、水道光熱費や清掃費用などの旧会館の管理維持費用の一部に充てる程度のみの利用料金を使用者から徴しています。

        (注)

        • 1 この旧会館の有効利用については、法人税法施行令第5条第1項第5号《収益事業の範囲》に規定する不動産貸付業に該当することから、収益事業として法人税の申告を行っています。
        • 2 旧会館において、工業会の主催する事業が年間で延べ600回程度開催している(会員等への部屋の提供の回数は、年間で延べ900回程度となっている。)。
  • 2 今回の建替えに至る経緯
    • (1) 旧会館の現状
       旧会館は、会員においては、京都モノづくり企業(特に会員である企業)の人材育成及び会員交流のための拠点として位置付けられており、今後も工業会が上記の事業活動を行っていくに当たって必要不可欠な施設です。
       この旧会館の構造は、建築当時(昭和43年建築)の建築基準等に照らせば優良な建物であったが、築後40年を経て、現時点においては次のような問題が生じており、今後も事業活動の拠点とするためには早期にこれらの問題を改善する必要があります。
      1建築基準面 : 耐震性(建築基準法で求められている震度7強の地震への対応)、バリアフリー化(京都市建築物等のバリアフリーの促進に関する条例等で求められている身障者エレベータ、身障者トイレの設置など)
      2環境面 : 省エネルギー化(京都府地球温暖化対策条例で求められている太陽光発電装置、CO2排出量が低減化された空調設備の設置など)
      3事業推進面 : インテリジェント化(高度情報化社会への対応で求められている光ファイバー設置、AV化など)
      4建物管理面 : 防犯性(社会情勢を踏まえた安全性の確保で求められているセキュリティー強化など)
    • (2) 問題改善の方向性等
       上記の問題改善に向け、旧会館の老築化、改築の所要額等を考慮しつつ、工業会の理事会で検討を進めた結果、旧会館の改築による問題改善を行うことは困難であるとの結論に達し、建直しによる問題改善を図る方向性が理事会で決定されました。
       また、この方向性を受けて新たに建築する京都工業会館(以下「新会館」という。)の建築資金については、会員からの特別会費によることも理事会で決定されました。
       なお、これらの理事会の決定については、平成20年5月30日の工業会の総会において承認され、正式に決定しています。

      (注)

      新会館建築後においては、「1 京都工業会館の使用状況等」で記載した旧会館の使用状況と同様に新会館を使用する予定です。また、旧会館は、新会館の完成後速やかに取り壊す予定です。

  • 3 本件の特別会費
    • (1) 個々の会員が負担する特別会費の金額
       今回、新たに建築する新会館は、その建築費用(約11.4億円)と一部土地の取得に要する費用(約6千万円)との合計である約12億円を次の算式により算出した個々の会員からの特別会費を持って、その資金に充てることとしています。

      (算 式)

      算式

      • 1 基本割当総額=月額会費合計×基本割当月数
      • 2 規模別等割当総額は、会員企業の資本金の額及び役職の有無に応じた次の区分により、それぞれ計算することとしています。
        ・一般会員(資本金3億円未満) : 規模別等割当の対象としない(負担無し)。
        ・一般会員(資本金3億円以上) : 月額会費合計×規模別割当月数
        ・役員企業(資本金3億円未満) : 月額会費合計×資本金3億円の規模別割当月数×役員別割当倍数
        ・役員企業(資本金3億円以上) : 月額会費合計×規模別割当月数×役員別割当倍数

      (注)

      • 1 現時点での建築費総額の見積額(約12億円)を基本割当総額(約4億円)と規模別等割当総額(約8億円)で賄うこととしています(金額比=1:2)。なお、基本割当は全会員を対象としますが、規模別等割当総額は団体会員及び賛助会員を対象としません。
      • 2 月額合計会費とは、会員の資本金の金額に応じた資本金会費と従業員の数に応じた従業員会費の合計額をいい、会員の毎月の通常会費に相当する金額となります。
      • 3 基本割当月数は、正会員の場合は115月とし、賛助会員はその2分の1の57.5月としています。
      • 4 規模別割当月数は、企業会員の資本金の額に応じて決定する月数であり、資本金100億円以上の場合には300月、資本金50億円以上〜100億円未満の場合には150月、資本金3億円以上〜50億円未満の場合には60月とし、3億円未満の場合には0月としています。
      • 5 役員別割当倍数とは、企業会員が工業会の役員企業である場合に、その役職に応じて追加負担を求める倍数です。具体的には、会長の5.5倍を最大倍数とし、役職に応じてその倍率を減少させ、理事・監事の1.5倍を最小倍数としています。
      • 6 現時点での建築費総額の見積額(約12億円)と実際の建築費総額に差額が生じた場合には、その差額を上記1の金額比により区分した上で、基本割当月数及び規模別割当月数を増減して個々の会員の特別会費の総額が実際の建築費総額と一致するよう調整します。
    • (2) 個々の会員の負担方法
       特別会費は、1会員当たりの最大負担額が約7千万円となり、多額の負担を求めることとなるため、一括支払方式と5年間での5回賦課金方式(毎年1月に1年分納入)のいずれかを会員が選択できることとしています。
       なお、その支払(開始)時期については、今後定まっていく建築工事の詳細(建築業者等の決定、建築総額の確定など)を考慮した上で決定することとしています。

別紙1-3
照会者の求める見解となることの理由
  • 1 照会事項1について
    • (1) 法人税基本通達の取扱い
       法人税基本通達8-1-4(共同的施設の設置又は改良のために支出する費用)では、法人が所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金は、法人税法施行令第14条第1項第6号イ《公共的施設の負担金》に規定する「自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用」に該当し、繰延資産に該当することが明らかにされています。ただし、同通達においては、「共同的施設の相当部分が貸室に供される等協会等の本来の用以外の用に供されているとき」には、その部分に係る負担金は、協会等に対する寄附金となることが併せて明らかにされています。
    • (2) 本件の特別会費への当てはめ
       本件の特別会費は、その目的が同業団体等である工業会の新会館を取得するためのものであることから、会員が所属する工業会の行う共同的施設である新会館の建設に要する費用の負担金であり、繰延資産に該当すると解しています。なお、別紙1-2の1「(2) その他有効利用等」において記載しているとおり、旧会館は関係2団体に貸室を行うほか、会員等の申出に応じて全12会場の使用を許可し、これらの者から利用料金を徴しています。
       このため、上記の「共同的施設の相当部分が貸室に供される等協会等の本来の用以外の用に供されているとき」に該当するのではないかとの疑問が生じてきますが、次の理由からこれに該当せず、本件の特別会費の全額が繰延資産に該当するものと解しています。
      • 1 貸室の対象者である関係2団体は、工業会の活動指針に適合した非営利団体であり、これを会館内に設置することは会員の利便の向上にもつながるものであり、また、関係2団体から徴している利用料金も維持管理費程度の金額であることからすれば、これを工業会の本来の用以外の用に供されているとまでは言わないと解していること。
      • 2 仮に1を本来の用以外の用と考えたとしても、貸室の用に供している部屋数は2部屋に過ぎず、工業会の本来事業の用に供されている全12会場との合計部屋数14(新会館の合計部屋数は16となる予定)と比較すれば、これを「相当部分」とは言わないと解していること。
      • 3 会員等の申出に応じた使用許可は、工業会の主催する事業の開催予定がない場合に行われるものに過ぎず、また、会員等から徴している利用料金も維持管理費程度の金額であることからすれば、これを本来の用以外の用に供されているかどうかの判断に影響させる必要はないと解していること。
  • 2 照会事項2について
    • (1) 法人税基本通達の取扱い
       法人税基本通達8-3-5(固定資産を利用するための繰延資産の償却の開始の時期)では、法人が繰延資産となるべき費用を支出した場合において、当該費用が固定資産を利用するためのものであり、かつ、当該固定資産の建設等に着手されていない時は、その繰延資産は当該固定資産の建設等に着手した時から償却することができることが明らかにされています。
    • (2) 本件の特別会費への当てはめ(照会事項2(1))
       本件の特別会費は、その目的が同業団体等である工業会の新会館を取得するためのものであることから、上記の「固定資産を利用するためのもの」に該当します。また、本件の特別会費の支払時期については今後定まるところであり、その支払が新会館の建設工事の着工前であることも考えられます。したがって、本件の特別会費(繰延資産)の支払が、新会館の建設工事の着工前である場合には、当該特別会費(繰延資産)は新会館の建設工事の着工の時から償却することができるものと解しています。
    • (3) 本件の特別会費への当てはめ(照会事項2(2))
       本件の特別会費は、会員の選択により分割払いによることができます。このため、その支払が新会館の建設工事の着工前になる部分と着工以後になる部分に分かれることがあり得ます。
       このような場合において、新会館の建設工事の着工した以後に支払われる部分については、法人税基本通達8-3-5(固定資産を利用するための繰延資産の償却の開始の時期)による取扱いの対象とはならないため、法人税法施行令第64条第1項第2号の規定のとおり「繰延資産となる費用の支出をする日」から償却することができるものと解しています。
  • 3 照会事項3について
    • (1) 法人税基本通達の取扱い
       法人税基本通達8-2-4(港湾しゆんせつ負担金等の償却期間の特例)では、構成員の属する協会等の本来の用に供される共同的施設の設置のために負担する負担金については、法人税基本通達8-2-3(繰延資産の償却期間)による償却期間が10年を超える場合には、その償却期間を10年とすることが明らかにされています。

      (注)

      法人税基本通達8-2-3による新会館の償却期間は、新会館の耐用年数が50年であることから、その10分の7に相当する年数である35年となります。また、一部土地の取得に要する費用については、同通達により償却期間は45年となります。

    • (2) 本件の特別会費への当てはめ
       本件の特別会費は、その目的が同業団体等である工業会の新会館を取得するためのものであることから「構成員の属する協会等の本来の用に供される共同的施設の設置のために負担する負担金」に該当します。また、法人税基本通達8-2-3による償却期間が上記のとおり10年を超える期間であることから、法人税基本通達8-2-4の取扱いにより償却期間を10年とすることとなると解しています。
  • 4 照会事項4について
    • (1) 消費税法基本通達の取扱い
       消費税法基本通達5-5-6(公共施設の負担金等)では、特定の事業を実施する者が当該事業への参加者又は当該事業に係る受益者から受ける負担金については、当該事業の実施に伴う役務の提供との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定するのであるが、例えば、その判定が困難な国若しくは地方公共団体の有する公共的施設又は同業者団体等の有する共同的施設の設置又は改良のための負担金について、国、地方公共団体又は同業者団体等が資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、その負担金を支払う事業者がその支払を課税仕入れに該当しないこととしている場合には、この処理を認めることが明らかにされています。
    • (2) 本件の特別会費への当てはめ
       本件の特別会費は、その目的が同業団体等である工業会の新会館を取得するためのものであることから、会員が所属する工業会の行う共同的施設である新会館の建設に要する費用の負担金であり、「公共施設の負担金等」に該当すると解しています。したがいまして、会員が拠出する特別会費については、当該事業の実施に伴う役務の提供との間に明白な対価関係があるかどうかによって資産の譲渡等の対価であるかどうかを判定することとなります。
       この点については、特別会費を負担する会員は、工業会の主催する事業予定がない場合、地域の行政・産業団体以外の者よりは優先的に新会館の会場を使用することができることから、特別会費とこの役務の提供との間に明白な対価関係があるかどうかを判断することとなりますが、その判断が困難であると認められるため、工業会が収受する特別会費は資産の譲渡等の対価に該当しないものとし、かつ、会員が支払う特別会費は課税仕入れに係る支払対価に該当しないこととすることができるものと解しております。
       なお、工業会は会員に対してその旨を通知することとしております。