【答え】

 群馬県です。

【解説】

 世界遺産に指定された富岡製糸場からも分かるように、群馬県は日本の産業革命を牽引した養蚕・製糸業の中心地でした。当時は、工場の動力確保のために企業家たちが出資して電力会社を作ることが多かったので、主要な産業を持つ地域から電化が進んでいったのです。
 群馬県の次に税額が多かったのは、神奈川県・福岡県でした。この3県が群を抜いていました。神奈川県は、現代に続く京浜工業地帯を抱え、沿岸部に大きな工場地帯が既に展開していました。福岡県は、有力な炭鉱を持ち、八幡製鉄所が作られるなど、重工業の中心地になっていました。大正時代の電柱税は軽工業・重工業が盛んな県の税額が多いのです。
 電柱税は、大正15年(1926年)の税制改正時に、統一的な基準が策定され、東京都以外の46の道府県に導入されました。道府県が電柱税、市町村が電柱税付加税を課税することになったのです。
 昭和11年(1936年)には、電柱税税収額上位3県が、愛知県・兵庫県・岡山県に入れ替わっています。愛知県は、織物業・紡績業・製糸業などの繊維産業が盛んでしたが、第1次世界大戦後から航空機工業など軍事産業の中心となり、重工業も発展しました。中京工業地帯の中心になるのです。兵庫県は阪神工業地帯の中心です。岡山県は従来から繊維産業が盛んでしたが、倉敷市を中心に紡績業が大きく発展しました。紡績業の動力源として設立された中国水力電気が後の中国電力の母体となります。
 明治時代の終わりから日本の産業には、製糸業から紡績業へ、軽工業から重工業へという流れがあります。電柱税の税額上位県の動きを見ると、このような産業の趨勢に対応していたことがうかがえるのです。
 電柱税は、昭和25年(1950年)に地租などとともに固定資産税に統合されました。

(研究調査員 舟橋明宏)