1 事前照会の趣旨

当社は、新規の国産ジェット旅客機となる航空機(以下「国産航空機」といいます。)を開発中であり、当該国産航空機の正式な販売契約を締結した顧客には、国内の航空会社のほか、米国の大手リージョナル航空会社の親会社であるA社があります。
 当社のA社に対する国産航空機の引渡しは、その最終組立工場に隣接した国内の飛行場において行われ、A社は国産航空機の引渡しを受けた後、すぐに当該国産航空機を米国まで回送運航(フェリーフライト)し、その傘下の航空会社が専ら米国内の地域間で行う航空運送事業(以下「米国内の地域航空運送事業」といいます。)の用に供することとなっています。
 また、この場合の国産航空機の輸出申告者はA社となる予定ですが、税関長からA社に対して交付される国産航空機の輸出許可書については、適法に当社が保存するとともに、A社に対して輸出免税制度の適用がない旨を連絡するための書類を交付するなどの一定の措置を講ずることを予定しています。
 この場合、当社のA社に対する国産航空機の譲渡は、事実上、当社が行う輸出取引と同視できるものであり、その取引の性格から当社が消費税の輸出免税の適用を受けることも妥当なものと考えますので、当該国産航空機の譲渡については、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者である当社が輸出免税制度の適用を受けることができるものとしてよいか照会します。

2 事前照会に係る取引等の事実関係

(1)航空機の登録・運航等について

国土交通大臣は、申請により、航空機について耐空証明を行うこととなっており、当該耐空証明は、日本の国籍を有する航空機でなければ、受けることができません(航空法10)。そして、航空機は、原則として、有効な耐空証明を受けているものでなければ、日本国内で航空の用に供してはならないこととなっており(航空法11)、日本で航空機を運航するためには、国による航空機登録を受け、当該航空機が日本国籍を取得している必要があります(航空法3の2、11)。
 ただし、国土交通大臣による耐空証明を有しない航空機であっても、航空機の製造業者が航空機の研究、開発のために行う飛行など一定の試験飛行等については、国土交通大臣に申請してその飛行許可を受けることにより、当該航空機の試験飛行等を行うことができることとなっています(航空法11ただし書)。
 また、航空機の登録は、所有者の申請に基づき、国が備える航空機登録原簿に航空機の製造番号や定置場、所有者の情報などを記載することで行われますが(航空法3)、日本の国籍を有しない人や外国法人などが所有する航空機及び外国の国籍を有する航空機については、日本での登録を受けることができません(航空法4)。
 これらは、国際民間航空条約の規定に基づくものであることから、諸外国においてもほぼ同様のものとなっており、同条約に基づく航空機の二重国籍取得の禁止に伴い、日本で製造された航空機を輸出して外国で登録する場合には、日本政府から新たに登録する外国政府に対し、当該航空機が日本国内での登録を受けていないものである旨を通報する必要があります。
 また、前述の国土交通大臣による耐空証明は、日本で運航される航空機について、国がその航空機自体の安全性や環境に対する基準が満たされているか否かを判定するものですが、日本で製造等された航空機や装備品等を外国に輸出する場合には、日本と耐空性に係る相互承認協定等を締結した外国その他に輸出するための証明書類として、国が発行する輸出耐空証明書(Export Certificate of Airworthiness)があります。

(2)当社が製造する国産航空機の販売手続等について

A社は、その傘下にある航空会社が米国内の地域航空運送事業の用に供するために、当社から国産航空機を購入することとし、当社のA社に対する国産航空機の譲渡は、当社とA社との間で締結した「航空機購入契約」の定めに基づき、次の手順で実施されます。

① 当社は、航空法第11条ただし書に規定する国土交通大臣の許可を受け、航空法の規定に基づく航空機登録を受けずに、A社に販売する国産航空機の試験飛行を実施します。

② 当社は、上記①の試験飛行終了後、国産航空機をA社に引き渡すまでの間に、国土交通省航空局(以下「JCAB」といいます。)に対し、当該国産航空機が日本での登録を受けていない航空機であることの証明として米国連邦航空局(以下「FAA」といいます。)宛に無国籍証明(Non Registration Certificate)を打電するよう依頼するとともに、当該国産航空機を米国に輸出することを証明するために、JCABが発行する輸出耐空証明書の発行を申請し、取得します。

③  一方、A社は、国産航空機の引渡しを受ける日の6か月前までにFAAに対して航空機の予約登録(注)を行い、予約した航空機登録記号(N-Number)を当社に通知します。また、当社は、A社から通知を受けた米国の航空機登録記号を当該国産航空機の機体に表示する塗装をします。

(注)新規登録を予定している機体で、機体記入などのため事前に登録記号を知る必要がある場合において行われます。

④  A社は、当社から国産航空機の引渡しを受ける時までに、その引渡しを受ける国産航空機を輸出しようとすることを税関長に申告し、その輸出の許可を受けます。また、税関長からA社に対して交付される当該国産航空機の輸出許可書については、適法に当社が保存するとともに、A社に対して輸出免税制度の適用がない旨を連絡するための書類を交付するなどの一定の措置を講ずることを予定しています。

⑤  その後、当社は、A社から国産航空機の販売代金が入金されたことを確認の上、その最終組立工場に隣接した国内の飛行場において当該国産航空機をA社に引き渡すとともに、FAA指定の譲渡証明書(Bill Of Sale)及び上記②でJCABから取得した輸出耐空証明書をA社に引き渡します(注)(以下、この国産航空機、譲渡証明書及び輸出耐空証明書を合わせて引き渡すことを「本件引渡し」といいます。)。

(注)譲渡証明書の引渡しは、当社とA社の双方を代理する米国の代理人を通じて米国で行われます。

⑥ A社は、上記Dの本件引渡しを受けた後、上記⑤の譲渡証明書を添付してFAAに上記⑤で引渡しを受けた国産航空機の航空機登録を申請し、その申請当日又は翌日にFAAから米国での航空機登録がなされた旨の通知(fly-wire)をE-mailで受け取るとともに、上記Dの輸出耐空証明書及び日本に派遣されたDAR(Designated Airworthiness Representative:FAAの委任により耐空性の検査等を行う民間の代理人)の当該国産航空機に対する検査に基づき、当該DARからFAAの耐空証明書の発行を受けます。

⑦ A社は、上記⑥のFAAから受け取った通知を印刷した書面をその引渡しを受けた国産航空機に搭載することにより、当該国産航空機を米国の登録航空機として、本件引渡しを受けた後すぐに米国まで回送運航(フェリーフライト)し、その傘下の航空会社が米国内の地域航空運送事業の用に供することとなります。

3 2の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由

(1) 内外判定について
 航空機の譲渡に係る内外判定は、基本的に当該航空機の登録をした機関の所在地で判定されるところ、その登録を受けていない航空機にあっては、当該譲渡を行う者の譲渡に係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下「事務所等」といいます。)の所在地が国内にあるかどうかにより行われます(消費税法4③一、消費税法施行令6①三)。
 この点、本件引渡し時の国産航空機は、上記2事前照会に係る取引等の事実関係の(2)①から④までのとおり、未だいずれの国の航空機登録も受けておらず、「登録を受けていない航空機」に該当します。
 また、当社は内国法人であり、上記2事前照会に係る取引等の事実関係の(2)⑤のとおり、国産航空機の引渡しは、その最終組立工場に隣接した国内の飛行場において行われ、当該引渡しに係る事務所等の所在地も国内にあることから、当社のA社に対する国産航空機の譲渡は、国内において行われる課税資産の譲渡に該当します。

(2) 輸出免税について
 消費税などの内国消費税については、生産地(輸出国)では課税せず、消費地(輸入国)において課税する「消費地課税主義」が国際的な原則となっています。
 日本の消費税においても、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、本邦からの輸出として行われる資産の譲渡については、消費税を免除することとなっており(消費税法7①一)、この場合の「輸出」とは、原則として関税法に規定する輸出(内国貨物を外国に向けて送り出すこと)のことをいいます(消費税法基本通達7−2−1(1))。
 そうすると、当社がA社に譲渡する国産航空機は、上記2事前照会に係る取引等の事実関係の(2)のとおり、当社とA社との間で締結した「航空機購入契約」の定めに基づき、その引渡し後すぐに米国まで回送運航(フェリーフライト)され、米国内の地域航空運送事業の用に供されることから、当該国産航空機は専ら国外において使用されるものであり、当該譲渡に輸出免税を適用することは、消費税の輸出免税の趣旨にも合致するものと考えます。
 また、上記2事前照会に係る取引等の事実関係から、次のような点も踏まえれば、当社が消費税の輸出免税規定の適用を受けることにも相当な理由があるものと考えます。

① A社は、国産航空機を米国内の地域航空運送事業の用に供するために、当社とA社との間で締結した「航空機購入契約」の定めに基づき、日本での航空機登録を受けることなく米国での航空機登録を受けることとしており、当社から当該国産航空機の引渡しを受けた後すぐに、日本国内でこれを使用することなく米国に回送運航(フェリーフライト)することとしていること

② ①の事実は、本件引渡しの前にJCABからFAAに対して当該国産航空機に係る無国籍証明が打電されるとともに、本件引渡しにおいて当社からA社に対して輸出耐空証明書が引き渡されることからも明らかであり、当社はJCABから輸出耐空証明書の発行を受けることから、当社が当該国産航空機をA社の本社がある米国に輸出するものであると考えられること

③ 当該輸出貨物には新造の航空機であるという特殊性があり、新造の航空機については、その最終組立工場に最も近い空港で引き渡すことが世界の航空機メーカーの商慣習となっており、上記2事前照会に係る取引等の事実関係の(2)④、⑥及び⑦のとおり、A社が輸出申告の上、当該国産航空機に係るFAAの航空機登録及び耐空証明を受けて、自ら米国へ回送運航(フェリーフライト)することは、世界的な航空機メーカーの商慣習として、極めて一般的な取引形態であると考えられること

④ 上記① から③までの点を踏まえれば、本件「航空機購入契約」の定めに基づき、本件引渡し前に行われる国産航空機の輸出申告はA社名義により行われるものの、A社は国産航空機の形式的な輸出者であり、実質的な輸出者は当社であると考えられること

そこで、当社が消費税法第7条第1項第1号の輸出免税規定の適用を受けるためには、同条第2項並びに消費税法施行規則第5条第1項柱書き及び同項第1号の規定により、当社が国産航空機を輸出したことを証する書類の保存が必要となりますが、既に実際の輸出者及び名義貸しに係る友好商社等が一定の措置を講ずることを条件に、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者が輸出免税制度の適用を受けることができるものとなっている事例(国税庁質疑応答事例の「輸出取引に係る輸出免税の適用者」)があることに鑑み、当社が国産航空機の輸出許可書を保存するとともに、輸出名義人のA社に対して、本件輸出取引については当社が消費税の輸出免税規定の適用を受けることとなるので、A社にはその適用がないことを連絡する「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」などの書類を交付するなど、当社及びA社が前述の事例における一定の措置と同様の措置を講ずることとしています。
 以上のことから、当社のA社に対する国産航空機の譲渡は、事実上、当社が行う輸出取引と同視できるものであり、その取引の性格から当社が消費税の輸出免税の適用を受けることも妥当なものと考えますので、当該国産航空機の譲渡については、輸出申告書の名義にかかわらず、実際の輸出者である当社が輸出免税制度の適用を受けることができるものと考えます。