1 事前照会の趣旨及び事実関係

当社(以下「A社」といいます。)は、B社とC社の発行済株式の全てを保有しています。なお、A社が保有するB社とC社の発行済株式は全て議決権を有する株式(以下「議決権株式」といいます。)です。
 今般、C社は製品の増産のために工場を増築することとなり、D社を割当先とする第三者割当増資により、増築費用を賄う予定としています。この第三者割当増資に際しては、残余財産の分配を優先して受ける優先株式で議決権を有しないもの(以下「無議決権優先株式」といいます。)を発行する予定としています。また、第三者割当増資後に、B社とC社は共同株式移転(以下「本件株式移転」といいます。)を行い、中間持株会社を設立することを予定しています。本件株式移転に際して、中間持株会社は、D社に対して上記と同内容の無議決権優先株式を交付し、A社に対して議決権株式を交付する予定です。
 本件株式移転前後の株式保有割合は以下の図のようになります。すなわち、株式移転前において、A社は、B社とC社の議決権株式の全部を保有していますが、C社の発行済株式の全部を保有していません(C社の発行済株式の80%を保有)。また、株式移転後において、A社は、中間持株会社(株式移転完全親法人)の議決権株式の全部を保有していますが、発行済株式の全部を保有していません(発行済株式の90%を保有)。
 ところで、本件株式移転が税法上の適格株式移転に該当するか否かの要件は、株式移転前にB社とC社との間に、1同一の者による完全支配関係がある場合と2同一の者による支配関係がある場合とでは異なります。
 本件株式移転については上記のとおり、株式移転前に、A社はC社の発行済株式の全部は保有していませんが、B社とC社の議決権株式の全部を保有していますので、B社とC社の経営に係る意思決定権を完全に掌握している状況にあります。このような場合、B社とC社の間の関係は1同一の者による完全支配関係と2同一の者による支配関係のいずれに該当するのか疑義がありますので、照会いたします。

発行済株式の保有割合

2 照会者の求める見解となることの理由

いわゆる企業グループ内で行う共同株式移転で、当該共同株式移転前に株式移転完全子法人と他の株式移転完全子法人との間に当事者間の支配関係がないもののうち適格株式移転とされるものは、
 株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産が交付されない共同株式移転で、

1 当該共同株式移転前に株式移転完全子法人と他の株式移転完全子法人との間に同一の者による完全支配関係があり、かつ、当該共同株式移転後に株式移転完全親法人と株式移転完全子法人及び他の株式移転完全子法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することが見込まれる場合における当該共同株式移転(法人税法第2条第十二号の十七イ、法人税法施行令第4条の3第19項)

又は

2 当該共同株式移転前に株式移転完全子法人と他の株式移転完全子法人との間に同一の者による支配関係があり、かつ、当該共同株式移転後に株式移転完全親法人と株式移転完全子法人及び他の株式移転完全子法人との間に当該同一の者による支配関係が継続することが見込まれる場合における当該共同株式移転のうち一定の要件を満たすもの(法人税法第2条第十二号の十七ロ、法人税法施行令第4条の3第21項第二号)

とされています。

ここで、「完全支配関係」とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下「当事者間の完全支配の関係」といいます。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係とされています(法人税法第2条第十二号の七の六)。そして、「発行済株式等」とは、法人の発行済株式又は出資で当該法人が有する自己の株式又は出資を除いたものとされているように(法人税法第2条第十二号の七の五、六)、議決権の有無に関する定めはありません。このことは、「支配関係」についても同様です(法人税法第2条第十二号の七の五)。
 したがって、仮に、法人の議決権株式の全部を保有し、経営に係る意思決定権を完全に掌握している状況にあったとしても、完全支配関係又は支配関係に該当するか否かの判定は、保有する発行済株式等の数により行うこととなります。

 本件株式移転について、本件株式移転前に、A社はB社の発行済株式の全部を保有していますので、A社とB社の間には当事者間の完全支配の関係(完全支配関係)があります。しかしながら、本件株式移転前に、A社はC社の議決権株式の全部を保有しているものの、C社の発行済株式の全部を保有していませんので、A社とC社の間には当事者間の完全支配の関係(完全支配関係)はないこととなります。したがって、本件株式移転前にB社とC社の間には、同一の者による完全支配関係はないこととなります。
 なお、本件株式移転前に、A社は、B社の発行済株式の50%超(100%)とC社の発行済株式の50%超(80%)を保有していますので、B社とC社の間には、同一の者による支配関係があることとなります。したがって、本件株式移転後に、A社とB社及びC社との間にA社による支配関係が継続することが見込まれるほか、一定の要件を満たす場合には、本件株式移転は適格株式移転に該当することとなります。